2013/08/18(日) - 10:00
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュの名物坂「ラ・ルドゥット」にゴールするエネコ・ツアー(UCIワールドツアー)第6ステージ。総合上位陣に明暗が分かれる中、序盤から逃げたダビ・ロペスガルシア(スペイン、スカイプロサイクリング)が勝利した。
エネコ・ツアー第6ステージは、最難関のクイーンステージ。オランダ南部の都市マーストリヒトにほど近いベルギーのリエムストをスタートし、リエージュ近郊に広がる丘陵地帯を駆け抜ける。
主催者が指定した登りは合計11カ所で、それ以外にも細かい登りが多数登場する。標高差200mほどのアップダウンを繰り返すコースはまさに「アルデンヌ・クラシック」だ。
終盤にかけて、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュの勝負どころとして知られるラ・ルドゥット(長さ2.0km・平均勾配8.8%)を起点にした周回コースを2周。難所ラ・ルドゥットを合計3回駆け上がった先にフィニッシュが待ち構える全長150kmの厳しいコースが用意された。
「スタートからアタックが続き、自分も逃げに乗り幾度か10人以上の逃げができるも吸収されつづけ、50kmほどでようやく決まった」と宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)は序盤の展開を振り返る。
アタック合戦の末に11名の逃げが形成され、ロペスガルシアやニック・ナイエンス(ベルギー、ガーミン・シャープ)、アンヘル・マドラソルイス(スペイン、モビスター)といった強力なメンバーが先頭に揃った。
逃げメンバーの中で総合成績が最も良いのはリエーベ・ヴェストラ(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)で、総合リーダーから50秒遅れ。11名の逃げグループは、ベルキンプロサイクリングがコントロールするメイン集団から7分のリードを得た。
メイン集団は登り手前の位置取りに伴うナーバスな空気に。宮澤崇史は「登り手前や、細い道の前では常に位置取りが激しい。監督からの無線で細かい道の指示が出されるので、土地勘が無いがタイミングを計りながらチームで動く」と語っている。
レース中盤、ハイスピードで進行するメイン集団内に落車が発生し、総合4位テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム)がリタイア。膝を打った総合6位フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)は再スタートしたものの、地元を通る得意なコースで苦戦を強いられた。
やがてメイン集団ではベルキンに加えてアスタナやオメガファーマ・クイックステップがペースアップを開始。するとケヴィン・デウェールト(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)とティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ベリソル)がメイン集団からアタック。このペースアップによって総合首位ラース・ボーム(オランダ、ベルキンプロサイクリング)が脱落する。
リーダージャージの脱落とともにメイン集団は活性化し、総合上位のアンドレー・グリブコ(ウクライナ、アスタナ)やマキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)、そしてドゥムランが飛び出す。ゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ)やピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)もこの動きに合流し、強力な追走グループが形成された。
それぞれのグループ内でアタックが掛かる白熱した展開。アップダウンコースをこなすうちに先頭からはヴェストラが脱落し、ロペスガルシア、マドラソルイス、パテルスキーの3名に絞られる。その1分後方にドゥムランやスティバルを含む追走グループ、2分後方にボームを含むメイン集団という展開で最終周回を駆け抜ける。
先頭3名は20秒ほどのリードを保ったまま最後のラ・ルドゥットに突入。急勾配の登りを経てゴールスプリント勝負に持ち込まれ、後方から迫るスティバルらを振り切ったロペスガルシアが勝利した。
追い上げたスティバルは2秒差のステージ2位。総合1位ボームが1分59秒遅れ、総合2位シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)が57秒遅れでそれぞれゴールしたため、この日ステージ4位に入ったドゥムランが総合首位に立っている。
今季スカイプロサイクリングに移籍し、ツール・ド・フランスでは山岳アシストを務めたロペスガルシアが今シーズン初勝利。2年ぶりの勝利を掴んだ32歳のクライマーは「自分にチャンスがあるのは今日のような登りのレース。最初から狙っていた」と語る。「本当に疲れたけど、チャンスが回って来たんだ。ラ・ルドゥットで勝てたなんて信じられない。逃げメンバーが強力だったのですぐにタイム差が開いたけど、一日中ずっと後続とのタイム差を気にしながら全開走行を強いられた。信頼して僕を送り出してくれたチームに感謝している」。
表彰台で白いリーダージャージを受け取ったのは、前日の個人タイムトライアルで2位に入り、この日の登りでライバルを蹴散らした22歳のドゥムラン。「今日はフィリップ・ジルベールが巻き込まれた落車に自分も巻き込まれてしまった。落ち着いて追走して集団に追いついたものの、その時点で力を使ってしまっていた。だからこのジャージ獲得を驚いている」と、最終日を前に首位に立ったマーストリヒト出身の長身オールラウンダー。
「今日は本当によく踏めた。同じグループに総合上位のグリブコがいたけど、彼は疲れきっていたので、終盤にグループを引くのは僕しかいなかった。その時点でステージ優勝を諦めて、リーダージャージを目指したんだ。リーダージャージを獲得出来て嬉しいし、明日これを守り抜きたい。でも総合争いにおいてスティバルは強力なライバルだ」。
第6ステージを終えて首位ドゥムランから9秒差でスティバル、24秒差でグリブコが続く。ベルギーのフランドル地方に移動して行なわれる最終第7ステージは、ヘラールツベルヘンにゴールする「北のクラシック」さながらのコース。ロンド・ファン・フラーンデレンのコースから外れてしまったミュール・カペルミュール(長さ1075m・最大勾配19%)にゴールする。
選手コメントはレース公式サイトより。
エネコ・ツアー2013第6ステージ結果
1位 ダビ・ロペスガルシア(スペイン、スカイプロサイクリング) 3h51'13"
2位 ゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ) +02"
3位 マチェイ・パテルスキー(ポーランド、キャノンデールプロサイクリング)
4位 トム・ドゥムラン(オランダ、アルゴス・シマノ) +03"
5位 ヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・レオパード)
6位 アンヘル・マドラソルイス(スペイン、モビスター)
7位 リエーベ・ヴェストラ(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
8位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)
9位 ニック・ナイエンス(ベルギー、ガーミン・シャープ) +12"
10位 アルノー・ジャネソン(フランス、FDJ.fr)
99位 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ) +16'47"
個人総合成績
1位 トム・ドゥムラン(オランダ、アルゴス・シマノ) 20h14'03"
2位 ゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ) +09"
3位 アンドレー・グリブコ(ウクライナ、アスタナ) +24"
4位 ヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・レオパード) +29"
5位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)
6位 リエーベ・ヴェストラ(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) +37"
7位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ) +50"
8位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキンプロサイクリング) +1'07"
9位 ピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ) +1'16"
10位 マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ) +1'33"
120位 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ) +23'48"
ポイント賞
アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)
コンバティビティ賞
ローレンス・デフリース(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)
チーム総合成績
レディオシャック・レオパード
text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla, Cor Vos
エネコ・ツアー第6ステージは、最難関のクイーンステージ。オランダ南部の都市マーストリヒトにほど近いベルギーのリエムストをスタートし、リエージュ近郊に広がる丘陵地帯を駆け抜ける。
主催者が指定した登りは合計11カ所で、それ以外にも細かい登りが多数登場する。標高差200mほどのアップダウンを繰り返すコースはまさに「アルデンヌ・クラシック」だ。
終盤にかけて、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュの勝負どころとして知られるラ・ルドゥット(長さ2.0km・平均勾配8.8%)を起点にした周回コースを2周。難所ラ・ルドゥットを合計3回駆け上がった先にフィニッシュが待ち構える全長150kmの厳しいコースが用意された。
「スタートからアタックが続き、自分も逃げに乗り幾度か10人以上の逃げができるも吸収されつづけ、50kmほどでようやく決まった」と宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)は序盤の展開を振り返る。
アタック合戦の末に11名の逃げが形成され、ロペスガルシアやニック・ナイエンス(ベルギー、ガーミン・シャープ)、アンヘル・マドラソルイス(スペイン、モビスター)といった強力なメンバーが先頭に揃った。
逃げメンバーの中で総合成績が最も良いのはリエーベ・ヴェストラ(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)で、総合リーダーから50秒遅れ。11名の逃げグループは、ベルキンプロサイクリングがコントロールするメイン集団から7分のリードを得た。
メイン集団は登り手前の位置取りに伴うナーバスな空気に。宮澤崇史は「登り手前や、細い道の前では常に位置取りが激しい。監督からの無線で細かい道の指示が出されるので、土地勘が無いがタイミングを計りながらチームで動く」と語っている。
レース中盤、ハイスピードで進行するメイン集団内に落車が発生し、総合4位テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム)がリタイア。膝を打った総合6位フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)は再スタートしたものの、地元を通る得意なコースで苦戦を強いられた。
やがてメイン集団ではベルキンに加えてアスタナやオメガファーマ・クイックステップがペースアップを開始。するとケヴィン・デウェールト(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)とティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ベリソル)がメイン集団からアタック。このペースアップによって総合首位ラース・ボーム(オランダ、ベルキンプロサイクリング)が脱落する。
リーダージャージの脱落とともにメイン集団は活性化し、総合上位のアンドレー・グリブコ(ウクライナ、アスタナ)やマキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)、そしてドゥムランが飛び出す。ゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ)やピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)もこの動きに合流し、強力な追走グループが形成された。
それぞれのグループ内でアタックが掛かる白熱した展開。アップダウンコースをこなすうちに先頭からはヴェストラが脱落し、ロペスガルシア、マドラソルイス、パテルスキーの3名に絞られる。その1分後方にドゥムランやスティバルを含む追走グループ、2分後方にボームを含むメイン集団という展開で最終周回を駆け抜ける。
先頭3名は20秒ほどのリードを保ったまま最後のラ・ルドゥットに突入。急勾配の登りを経てゴールスプリント勝負に持ち込まれ、後方から迫るスティバルらを振り切ったロペスガルシアが勝利した。
追い上げたスティバルは2秒差のステージ2位。総合1位ボームが1分59秒遅れ、総合2位シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)が57秒遅れでそれぞれゴールしたため、この日ステージ4位に入ったドゥムランが総合首位に立っている。
今季スカイプロサイクリングに移籍し、ツール・ド・フランスでは山岳アシストを務めたロペスガルシアが今シーズン初勝利。2年ぶりの勝利を掴んだ32歳のクライマーは「自分にチャンスがあるのは今日のような登りのレース。最初から狙っていた」と語る。「本当に疲れたけど、チャンスが回って来たんだ。ラ・ルドゥットで勝てたなんて信じられない。逃げメンバーが強力だったのですぐにタイム差が開いたけど、一日中ずっと後続とのタイム差を気にしながら全開走行を強いられた。信頼して僕を送り出してくれたチームに感謝している」。
表彰台で白いリーダージャージを受け取ったのは、前日の個人タイムトライアルで2位に入り、この日の登りでライバルを蹴散らした22歳のドゥムラン。「今日はフィリップ・ジルベールが巻き込まれた落車に自分も巻き込まれてしまった。落ち着いて追走して集団に追いついたものの、その時点で力を使ってしまっていた。だからこのジャージ獲得を驚いている」と、最終日を前に首位に立ったマーストリヒト出身の長身オールラウンダー。
「今日は本当によく踏めた。同じグループに総合上位のグリブコがいたけど、彼は疲れきっていたので、終盤にグループを引くのは僕しかいなかった。その時点でステージ優勝を諦めて、リーダージャージを目指したんだ。リーダージャージを獲得出来て嬉しいし、明日これを守り抜きたい。でも総合争いにおいてスティバルは強力なライバルだ」。
第6ステージを終えて首位ドゥムランから9秒差でスティバル、24秒差でグリブコが続く。ベルギーのフランドル地方に移動して行なわれる最終第7ステージは、ヘラールツベルヘンにゴールする「北のクラシック」さながらのコース。ロンド・ファン・フラーンデレンのコースから外れてしまったミュール・カペルミュール(長さ1075m・最大勾配19%)にゴールする。
選手コメントはレース公式サイトより。
エネコ・ツアー2013第6ステージ結果
1位 ダビ・ロペスガルシア(スペイン、スカイプロサイクリング) 3h51'13"
2位 ゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ) +02"
3位 マチェイ・パテルスキー(ポーランド、キャノンデールプロサイクリング)
4位 トム・ドゥムラン(オランダ、アルゴス・シマノ) +03"
5位 ヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・レオパード)
6位 アンヘル・マドラソルイス(スペイン、モビスター)
7位 リエーベ・ヴェストラ(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
8位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)
9位 ニック・ナイエンス(ベルギー、ガーミン・シャープ) +12"
10位 アルノー・ジャネソン(フランス、FDJ.fr)
99位 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ) +16'47"
個人総合成績
1位 トム・ドゥムラン(オランダ、アルゴス・シマノ) 20h14'03"
2位 ゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ) +09"
3位 アンドレー・グリブコ(ウクライナ、アスタナ) +24"
4位 ヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・レオパード) +29"
5位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)
6位 リエーベ・ヴェストラ(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) +37"
7位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ) +50"
8位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキンプロサイクリング) +1'07"
9位 ピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ) +1'16"
10位 マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ) +1'33"
120位 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ) +23'48"
ポイント賞
アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)
コンバティビティ賞
ローレンス・デフリース(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)
チーム総合成績
レディオシャック・レオパード
text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla, Cor Vos
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