7月末に富士急ハイランドにおいて開催されたキャノンデールの2014年モデルプレゼンテーションの模様を2回に渡ってお届けする。今回は話題の新型シナプスのファーストインプレッションと試乗レポートだ。

富士急ハイランドホテルが会場となったキャノンデールブランドキャンプ2013 富士急ハイランドホテルが会場となったキャノンデールブランドキャンプ2013  (c)Makoto.AYANOシナプスのハイエンドモデル、SYNAPSE Hi-MODシナプスのハイエンドモデル、SYNAPSE Hi-MOD (c)Makoto.AYANO


EVOがF1なら新型シナプスは耐久レース用GTマシン

7月31日、世界遺産に登録された富士山の麓にある富士急ハイランドホテル周辺を会場にキャノンデール・ジャパンの2014年モデル発表・体験試乗会が開催された。通称”キャノンデールブランドキャンプ”と名付けられたこの会は主に全国の特約ディーラー向けのものだったが、プレスとしても参加することができた。

全国のプロサイクルショップ向けのこのショー。キャンデールの2014年モデルおよびアパレルの「Sugoi(スゴイ)」の全ラインナップの発表会であるとともに、テクノロジーのセミナー及び試乗会となっている。同社主催のこのキャンプは、2011年は小淵沢・八ヶ岳山麓周辺で、昨2012年は軽井沢プリンスホテル周辺でと、バイクに思う存分乗れるリゾート地を拠点に開催されてきた。

今年は富士スバルラインの拠点にある富士急ハイランドホテルが拠点となり、河口湖周辺が走るエリアに。例年、参加するディーラーさん(つまりプロショップのスタッフ)には、「最高の環境で思う存分バイクに乗れて、同社のバイクへの理解が深められる」と大好評だ。

本格的に乗り込めるようにテストバイクはライダーひとりひとりに最適なサイズとセッティングで提供された本格的に乗り込めるようにテストバイクはライダーひとりひとりに最適なサイズとセッティングで提供された (c)Makoto.AYANOズラリと並んだテストバイクはその数220台!キャノンデールの本気度が伝わってくるズラリと並んだテストバイクはその数220台!キャノンデールの本気度が伝わってくる (c)Makoto.AYANO


同社のマリオ・スタイン社長は「キャノンデールのバイクの特長は乗り心地が最高なことだから、それを体感してほしい。そうすれば私達のバイクが最高の製品であることを理解してもらえる」とキャンプ開催の意図を語る。もちろんその先にセールスあっての企画だが、ユーザーにもっとも近いショップのスタッフがこの場で身を持って体感したことに基づいて購入アドバイスしてくれることになるのは心強い。
ちなみにマリオ社長は東京から会場までをシナプスで自走してきたというから驚き! キャッチフレーズの「プレミアムな冒険へ」を地でいく社長だ。

前振りが長くなったが、キャンプの内容はまず同社の2014ラインナップを解説するプレゼンテーションの座学でスタート。小一時間のテクノロジー紹介を受講した後は、美味しいホテルランチを食べ、それぞれ好きなバイクを選んでテストライドを終日楽しむというもの。走るモデルコースは河口湖の湖畔道路やスバルラインの近辺。盛夏ではあるがしのぎやすい気候のもと、キャノンデール・チャンピオンシステムの選手たちの先導で、楽しくグループライドに出かけられる。

キャノンデール・チャンピオンシステムの山本和之選手らがテストライドをサポートしてくれたキャノンデール・チャンピオンシステムの山本和之選手らがテストライドをサポートしてくれた (c)Makoto.AYANOキャノンデールロゴをあしらったネイルアート。スタッフの自社製品への愛情を感じるキャノンデールロゴをあしらったネイルアート。スタッフの自社製品への愛情を感じる (c)Makoto.AYANO


驚くのはじつに220台のテストバイクが用意され、ほぼ希望通りのサイズセッティングで試し乗りができることだ。同社がいかにこのイベントに力を入れているかが分かる。

同社の今年度の目玉は再デビューとも言えるフルモデルチェンジを果たしたシナプスだろう。このモデルの詳細についてはスペシャルコンテンツに詳しいため改めての解説は省略するが、プロショップのスタッフにとっても実際の製品に触れるのはこの場が初めてとあって、参加したすべての人が大いなる興味をもって臨んだに違いない。今回レポートを担当する筆者自身も記事上では知っているが実物とは初顔合わせ。インプレなども含めて紹介していこう。

キャノンデール SYNAPSE CARBON HI-MOD 3 ULTEGRA

キャノンデール SYNAPSE CARBON HI-MOD 3 ULTEGRAキャノンデール SYNAPSE CARBON HI-MOD 3 ULTEGRA (c)Makoto.AYANO
シナプスのターゲットとなるライダーは、「グランフォンドでの入賞やブルベの目標達成を目指し日々トレーニングに励むライダー」、「ロングライドを楽しむサイクリスト」、「サドルの上で過ごすのが何よりも好きな人」だという。そして、レーシングモデルのEVOが「フォーミュラ1マシン」だとすると、シナプスは「耐久レース用GTマシン」だという。

瞬発的なスピードが速いのはF1だが、それに肉薄するスピードで長時間走り続けるには快適性を備えることが必要で、それを満たすGTマシンにあたるモデルがシナプスというわけだ。つまりロードレースにはEVO、高速ツーリング(あるいはエンデュランス)にはシナプス。ルマン24時間を走るGTマシンのように、長時間高いパフォーマンスを維持することができるバイクを目指してイチから開発されたのが新型シナプスというわけだ。

EVOよりも若干長いトップチューブがS.E.R.G(シナプス・エンデュランス・レース・ジオメトリー)を形成するEVOよりも若干長いトップチューブがS.E.R.G(シナプス・エンデュランス・レース・ジオメトリー)を形成する (c)Makoto.AYANO特徴的な「パワーピラミッド」と呼ばれる二股のシートチューブ特徴的な「パワーピラミッド」と呼ばれる二股のシートチューブ (c)Makoto.AYANO


開発にあたっては次の3つの目標が掲げられた。「振動や衝撃の影響を最小化し、一日中パフォーマンスを維持できる性能とポジション」「パワー効率を追求し、マシンをプロがレースで使用出来るレベルに高める」「ライダーの負担にならない軽量性を追求する」ー それら3つの目標の、優先順はここに挙げた順であるという。

エンデュランスカテゴリーのバイクといえばやはりライバルはスペシャライズドのルーベやトレックのドマーネ、BMC GF01等になる。プレゼンでもこれらの車種との比較を意識した説明がなされた。加えてキャノンデール側の見解としては、エラストマーやベアリング、リンクを設ける等の「構造」によらず、カーボンのレイアップと成型技術によって柔軟性を出していることが強調された。アルミにこだわったことでフルカーボン化が他社よりもずいぶん遅かった同社が、今やカーボンテクノロジーで他社よりも自信を持っていることを伺わせるプレゼンだったことが印象深かった。

フロントフォークブレードの形状も複雑で、逆オフセットエンドとなるフロントフォークブレードの形状も複雑で、逆オフセットエンドとなる (c)Makoto.AYANOシートバインダーさえ排除された25.5mm径の細身のカーボンピラーがしなることで振動を吸収するシートバインダーさえ排除された25.5mm径の細身のカーボンピラーがしなることで振動を吸収する (c)Makoto.AYANOシートステーの螺旋状の成型は実物で確認すると複雑そのもの。これも振動を吸収する工夫だシートステーの螺旋状の成型は実物で確認すると複雑そのもの。これも振動を吸収する工夫だ (c)Makoto.AYANO


会場にディスプレイされたシナプスのハイエンドモデル、SYNAPSE Hi-MODには実際に28Cの太さのロードタイヤがセットされ、それだけでも新しいライドの可能性が開けてくるように感じる。そのバイクの前には同社自慢のホログラムSISLクランクの元となる、アルミの塊から鍛造・削りだしされる過程のものが並べられ、興味を惹いた。

荒れた路面のスムーズさは特筆モノだ。しかし反応性や剛性はEVOに匹敵する高さを確保している荒れた路面のスムーズさは特筆モノだ。しかし反応性や剛性はEVOに匹敵する高さを確保している (c)Makoto.AYANOシナプスのフレームの細部は間近で見ると驚くほど複雑な造形をしている。チェーンステイは螺旋状にねじれ、シートステイも中ほどで大きく潰され、くびれる。これらがSAVE PLUS(セーブプラス)と呼ばれるマイクロサスペンションを形成するのだ。

シートピラーも25.4mmという例を見ない細身のものがセットされる。もちろんMTBのFlash同様にしならせることが目的だ。シートバインダーも使用せず、斜ウスで固定するのもシートピラーがしなる部分を長く確保するためだとか。ピラーは100kgの負荷で6.5cmもしなるというから驚きだ。とにかく設計が徹底している。

展示されたラインナップはスラムRED+ホログラムSiSL仕様のハイエンドモデルに加えて、アルテグラ+ホログラムSLモデルのコストパフォーマンスも魅力的に思えた。女性用モデルのシナプスも現物が用意されていたが、フレーム形状はそのままにスケールダウン。5サイズもの展開がある。

そして何より深みがありつつもポップなカラーが印象的だった。キャノンデールは女性用モデルもいっさい手を抜かない。

SYNAPSE CARBON WOMEN’S 5 105

シマノ105を搭載した女性用モデル キャノンデール SYNAPSE CARBON WOMENS 5 105シマノ105を搭載した女性用モデル キャノンデール SYNAPSE CARBON WOMENS 5 105 (c)Makoto.AYANO
マット調のガンメタリックに鮮やかなカラーが入る塗装が非常に美しいマット調のガンメタリックに鮮やかなカラーが入る塗装が非常に美しい (c)Makoto.AYANO小さなフレームサイズながらパワーピラミッドも搭載小さなフレームサイズながらパワーピラミッドも搭載 (c)Makoto.AYANO




新型SYNAPSE Hi-MOD インプレッション 
河口湖畔の一般道で思う存分のテストライド


会場到着時間の関係でキャノンデール・チャンピオンシステムの選手たちが引率してくれる班には乗り遅れてしまったが、SYNAPSE Hi-MODでたっぷり小一時間、河口湖の湖畔道路をテストライドすることができた。

キャノンデールSYNAPSE Hi-MODキャノンデールSYNAPSE Hi-MOD (c)Makoto.AYANO

富士急ハイランドから河口湖畔にかけてSYNAPSE Hi-MODをテストライド富士急ハイランドから河口湖畔にかけてSYNAPSE Hi-MODをテストライド (c)Makoto.AYANO踏み出してまず感じるのは軽快感と剛性感。コンフォートバイクにありがちなソフトな感じはまったく無し。EVOと共通する反応の良さと軽快感で小気味よく加速していくそれは、レーシングマシンそのものだ。

そして特筆すべきは振動吸収性の高さだ。河口湖周辺のパヴェのようなセクションに容赦なく突っ込んで行ってみる。大きなショックも細かな振動も、どちらも驚くほどスムーズにいなしてくれる。シクロクロスバイクかと思うほどに、違和感なくオフロードに突っ込んでいける。

タイヤは7気圧のままだが、路面が荒れていてもスピードがスポイルされない。振動を除去しつつもまったり感がなく、上級ロードバイクそのものの乗り心地を持っていることに感動すら覚える。バイクが跳ねないので荒れた路面上の速さは群を抜く。スムーズさは速さにつながるのだ。

少し長めのヘッドチューブ。ユニークなヘッドセットスペーサーライトは単体でも発売される予定だ少し長めのヘッドチューブ。ユニークなヘッドセットスペーサーライトは単体でも発売される予定だ (c)Makoto.AYANOパワーピラミッドと呼ばれる二股にわかれたシートチューブパワーピラミッドと呼ばれる二股にわかれたシートチューブ (c)Makoto.AYANO


加速性と巡航性に優れるので、ロードレースに使っても何の不満もないだろう。軽快に走っていると、エンデュランスバイクであるという前提は忘れてしまう。むしろそういった決め付けは意味がないのかもしれない。軽量なことと乗車ポジションからはヒルクライムにも向くように感じた。

S.E.R.G(シナプス・エンデュランス・レース・ジオメトリー)と名付けられたスケルトンはEVOよりアップライトだがヘッドチューブも長すぎず、けっしてコンフォートすぎるものではない。”高速ロングライドに理想的なポジション”を形成してくれ、むしろ自然にハンドルが高めになる日本人体型には向くケースが多いように思えた。実際にポジション合わせしたバイクの外見のバランスはEVOほどレーシーなルックスでないのは確かだが、かといって充分なシャープさは備えている。

フロントフォークは複雑なブレード形状となりエンドに向けて逆オフセットとなるフロントフォークは複雑なブレード形状となりエンドに向けて逆オフセットとなる (c)Makoto.AYANOシートバインダーを排除して25.4mm径のカーボンシートピラーとシートチューブをしならせるシートバインダーを排除して25.4mm径のカーボンシートピラーとシートチューブをしならせる (c)Makoto.AYANOシートステーのカーヴは複雑な曲線を描くシートステーのカーヴは複雑な曲線を描く (c)Makoto.AYANO


プレゼンによればサイズごとにヘッド角は調整され、Fフォークは各サイズ毎にベストなトレール量が設定されているという。それらにより、すべてのサイズのバイクが同じ乗り心地、ハンドリングになるように設計されているという。同じ身体ひとつで体感できるものではないが、キャノンデールのこだわりと開発力に感服せざるを得ない点だ。

チェーンステイは縦方向の振動を吸収しつつ横剛性は高める形状だチェーンステイは縦方向の振動を吸収しつつ横剛性は高める形状だ (c)Makoto.AYANO10アームのホログラムSiSLクランク ペダリングの剛性アップと軽量化に一役買う10アームのホログラムSiSLクランク ペダリングの剛性アップと軽量化に一役買う (c)Makoto.AYANO


フォーク、バックステー、そしてシートピラーなど各パートがそれぞれ狙い通りの働きをするため、縦方向の振動吸収性は総合的に非常に高いレベルにある。しかし横方向の剛性や反応性はEVOと同様に高く、まったく劣る点を感じない。そのため、速く走ることをスポイルせずに快適に走れる。軽めのギアで小刻みにバイクを振って加速していくのが得意な点もロードレーサーと呼べるものだ。違いを感じるとすればジオメトリーからくるライディングポジション。ロードレーサーに乗りなれた人ならその点でフィットするポジションさえ出せれば状況に応じたシナプスの生かし方ができると感じた。レースならEVO、ソロのハイスピードツーリングならシナプスといったように。
(インプレッションby綾野 真)

vol.2ではシナプスのアルミモデル、スーパーシックスEVO、CAAD8、CAAD10等をレポートします。


photo&text:Makoto.AYANO

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