シナプス。それは2006年に誕生したキャノンデール初のフルカーボンロード。2009年にフルモデルチェンジを行ってから4年が経過した2013年4月、キャノンデールはシーズン序盤、北のクラシックで好成績を出した新型シナプスを正式発表した。イタリアにて行われたプレゼンテーションとテストライドの模様をお伝えする。

会場となったBorgo Scopeto Relais会場となったBorgo Scopeto Relais 発表会に出席したペーター・サガン。新型SYNAPSEを駆り、春のクラシックで大きな戦績をあげた発表会に出席したペーター・サガン。新型SYNAPSEを駆り、春のクラシックで大きな戦績をあげた

SYNAPSEはキャノンデールのラインナップ中、長距離を快適にこなすためのエンデュランスロードバイクとして位置づけられるマシンだ。ピュアレーサーであるSUPER SIX EVO(以下、EVO)にはないアップライトなポジションと振動吸収性の高さを売りにしている。しかし、レースでは目立った活躍はなく、EVOの影に隠れてしまっていた。そう、昨年までは。

しかし今年は違った。スロバキアの怪物、ペーター・サガンの駆る新型SYNAPSEはE3プライス・フラーンデレンでの2位を皮切りに、ヘント~ウェヴェルヘム優勝、ツール・デ・フランドル2位と大活躍を見せたのだ。エンデュランスカテゴリーに属するバイクが実戦で大きな功績を残したことは、非常に稀である。SYNAPSECarbonHi-Mod(以下SYNAPSE Hi-Mod)は春先のクラッシックで十分な実力を示したのだ。

サガンと共に登場!SYNAPSE Carbon Hi-MOD

イタリアで2日間に渡って開催されたキャノンデールの新型SYNAPSE発表会。会場となったのはトスカーナ州はシエナにある「Borgo Scopeto Relais」。14世紀に建てられた歴史あるヴィラで、敷地から出るとすぐにストラーデ・ビアンケという、自転車乗り垂涎の立地。現在は高級ホテルとして利用されている由緒ある建物である。

各国報道陣の前でベールを脱いだ新型SYNAPSE各国報道陣の前でベールを脱いだ新型SYNAPSE
プレゼンテーションは初日の朝食後、ホテルのパーティルームにて世界中の有名スポーツバイクメディアのジャーナリスト総勢30名以上が集まる中スタートした。挨拶もそこそこに、新型SYNAPSEを駆り多大な功績をもたらしたペーター・サガン本人が登場。そしてSYNAPSEの暗幕が剥ぎ取られた瞬間、会場は歓声、拍手、口笛に包まれた。

会場に設置されたスクリーンには、「レースでは攻撃的に、そして全てのライディングをコンフォートに」との言葉が。相反する要素の両立、それはまさにサイクリストの“欲望”に応えるということだ。

追い求めたのはハイパフォーマンスとインパクト

「EVOがF1だとしたら、SYNAPSE Hi-MODはマセラッティ・グランツーリズモ。コンセプトは、スピード、ハンドリング性、快適性、路面追従性、軽さを高次元でバランスさせること。性能とビジュアルを両立させること。さらに、乗った瞬間にライダーの心にインパクトを与えること。それらをゴールとして開発した」と、エンジニアは説明した。

クラシックで実績を挙げたサガンの実車をモデルに説明が進むクラシックで実績を挙げたサガンの実車をモデルに説明が進む プレゼンテーションを聞くペーター・サガンプレゼンテーションを聞くペーター・サガン

具体的には、「前作SYNAPSEを上回る剛性」、「路面追従性の向上」、「フレーム重量1,000g以下」という3つの技術的目標をバランスさせること。それは、軍事技術に使用される強度を持つバリステックカーボンと、緻密な計算に基づき設計された画期的な形状のチューブによりクリア。スピードとしなやかさの融合に成功したという。

デザイン性に重きを置いた美しいフォルム

「SYNAPSE Hi-MODでは軽さよりも見た目に重きを置いた」と、開発担当者はコンセプトの説明を続けた。確かに全体的に曲線や偏平加工が多用され、シンプルなルックスのEVOとはまるで対照的だ。特に目立つのは、やはりBB付近で二又に分かれたシートチューブ、そして複雑な形状を見せるバックステーだ。

キャノンデール SYNAPSE Carbon Hi-MODキャノンデール SYNAPSE Carbon Hi-MOD
シートチューブを上から順に見ていくと、ピラー固定方法はTTバイクのような、フレームに内蔵されたウスを用いたカラーレスタイプ。単純にエアロ効果や軽量化だけが目的ではなく、快適性にも大きく影響しているという。そして、BBの間近で双胴の形状をとっているのが一番の特徴。快適性と剛性に一役買っている。

チェーンステーはEVOでも見られたマイクロサスペンションの形状を踏襲している。しかしシートステーは弓なりのカーブを描き、縦横の複雑極まる偏平加工が施されている。他に類を見ない形状だ。フロントフォークはSUPER SIXシリーズやCAAD10とは異なり、ストレートブレードになったもののエンド部分のオフセット加工は共通である。また、ブレード部分にはシートステーにも見られた細かな曲げや潰しが多く見られる。

縦横に偏平したストレートフォーク縦横に偏平したストレートフォーク 左右非対称デザインで剛性バランスがとられている左右非対称デザインで剛性バランスがとられている リアブレーキワイヤーはEVO同様ヘッド右側から入るリアブレーキワイヤーはEVO同様ヘッド右側から入る

ブレーキワイヤーのみでなくシフトワイヤーが内蔵されていることもEVOとの大きな違い。空気抵抗の削減というメリットもあるが、フレームのシルエットを美しく見せる為というのが一番の理由とのこと。リアブレーキワイヤーはヘッドチューブ右側から入り、トップチューブ内の対角線を通るルートを辿る。EVOでも見られた、フレーム内壁にワイヤーが干渉しないようにするための工夫だ。

前後のシフトワイヤーは、ダウンチューブ内を貫通していくというフレーム内蔵処理としては一般的な方法。シフト操作のスムーズさやメンテナンス性を確保するために、フレーム内部にはワイヤー通りをスムーズにする加工が施されているそうだ。

リアシフトワイヤーは右側チェーンステーの中をまっすぐ通り、リアエンド上部の出口から顔を出すリアシフトワイヤーは右側チェーンステーの中をまっすぐ通り、リアエンド上部の出口から顔を出す ブレーキワイヤー出口。スローピングフレームだがワイヤーのカーブは最小限に抑えられるブレーキワイヤー出口。スローピングフレームだがワイヤーのカーブは最小限に抑えられる 細いシートポストは高い振動吸収性に貢献する細いシートポストは高い振動吸収性に貢献する

昨年発表されたSiSL2クランクも見た目のインパクトに一役買っている。チェーンリングとスパイダーアームが一体成形された、483gという超軽量クランクシステム。蜘蛛の巣のような10本のアームによりたわみを減らし、変速性能が飛躍的に向上している。BB30を採用するため剛性も十分だ。

キャノンデール SYNAPSE Carbon Hi-Mod スペック

サイズ48,51,54,56,58
カラーグリーン(Hi-Mod 2 SRAM RED 完成車)
ブラック、ブルー(Hi-Mod 3 ULTEGRA 完成車)
重量950g(フレームセット、塗装済み)、360g(フォーク)
BBシステムBB30A
価格SYNAPSE Carbon Hi-Mod 2 SRAM RED 完成車:729,000円
SYNAPSE Carbon Hi-Mod 3 ULTEGRA 完成車: 459,000円

より詳細なスペックは次ページより、図解と写真を用いて紹介していく。
提供:キャノンデール・ジャパン text:神宮司 高広