第77回フレーシュ・ワロンヌ(UCIワールドツアー)が、4月17日(水)、ベルギーのワロン地方で開催される。最大勾配が26%に達する「ユイの壁」のてっぺんに向かって繰り広げられる熾烈なバトル。今年はワロンが生んだ世界王者フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)が優勝候補に挙げられる。

ワロンを矢のように貫く205km 「ユイの壁」で勝負が決する

フレーシュ・ワロンヌ2013コースマップフレーシュ・ワロンヌ2013コースマップ image: A.S.O.アルデンヌ・クラシックの一つに数えられ、毎年アムステル・ゴールドレースとリエージュ〜バストーニュ〜リエージュに挟まれた水曜日に開催されるフレーシュ・ワロンヌ。ツール・ド・フランスと同じA.S.O.(アモリー・スポルト・アルガニザシオン)が主催するワンディレースだ。

レースの舞台となるのはベルギー南部のワロン地域。「北のクラシック」の舞台である北部のフランデレン地域ではフラマン語が話されているが、このワロン地域ではフランス語が公用語として話されている。「フレーシュ」はフランス語で「矢」を意味しており、レース名は「ワロンを貫く矢」の意味。

フレーシュ・ワロンヌ2013ラスト5kmプロフィールフレーシュ・ワロンヌ2013ラスト5kmプロフィール image: A.S.O.距離の短い上りが連続して登場するコースレイアウトはアルデンヌ・クラシックならでは。昨年までコース全長が200kmに満たない194kmで開催されてきたが、今年はスタート地点がシャルルロワからバンシュに移されたため、コース全長は205kmに。登りの数も10カ所から12カ所に増やされており、コースの難易度は上がっている。

バンシュをスタートした一行は、緩やかに連なる丘陵をひたすら東進。108.5km地点で1回目の「ユイの壁」を越えると、そこからゴール地点ユイを起点とした大小2種類の周回コースに入る。一帯にはコンスタントに風が吹き付けるため、集団内の位置取りがキーポイントになる。

「ユイの壁」最も勾配が増すラスト400mのコーナー「ユイの壁」最も勾配が増すラスト400mのコーナー photo:Kei Tsuji2回目の「ユイの壁」を通過するとゴールまで残り31.5km。この最後の周回コースでレースが大きく動くと言っていい。ゴール15km手前のコル・ダメイ(1500m・6.7%)とゴール8.5km手前のコル・ド・ヴィレルブイエ(1200m・7.5%)でアタックが繰り返される。

連続する登りでセレクションがかけられた集団が、最後の「ユイの壁」に突入する。合計12カ所の登りの中で突出した存在感を放つのがこの「ユイの壁」。長さ1300m、高低差121m、平均勾配9.3%の上りが「壁」と呼ばれる由縁は、コーナー内側の最大勾配が26%に達する激坂ぶりにある。

登りの全長は1300mだが、具体的には、ラスト800mで幹線道路から右に曲がって脇道に入ると「壁」がスタート。登りが進むにつれて勾配が増し、ラスト400mから始まる急勾配区間で勝負が決まる。スローモーションのようなプロトンの中から勢い良く飛び出した選手が表彰台のてっぺんに登るのだ。

フレーシュ・ワロンヌ2013コースプロフィールフレーシュ・ワロンヌ2013コースプロフィール image: A.S.O.

登場する12カ所の上り(登坂距離・平均勾配)
1 76.5km地点 Cote de Naninne      2600m・3.7%
2 90.0km地点 Cote de Groynne       2000m・3.5%
3 108.5km地点 Mur de Huy(1回目)      1300m・9.3%
4 127.5km地点 Cote d'Ereffe        2100m・5.9%
5 146.0km地点 Cote de Peu d'Eau       2700m・3.9%
6 151.0km地点 Cote de Bellaire       1000m・6.8%
7 158.5km地点 Cote de Bohisseau      1300m・7.6%
8 161.5km地点 Cote de Bousalle        1700m・4.9%
9 173.5km地点 Mur de Huy(2回目)      1300m・9.3%
10 190.0km地点 Cote d'Amay        1500m・6.7%
11 196.5km地点 Cote de Villers-le-Bouillet  1200m・7.5%
12 205.0km地点 Mur de Huy(ゴール)    1300m・9.3%

本命はジルベール、コンタドール、サガン、バルベルデ

昨年フレーシュ・ワロンヌ初勝利を飾ったホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)昨年フレーシュ・ワロンヌ初勝利を飾ったホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Kei Tsuji昨年「ユイの壁」で爆発的なスパートを仕掛け、独走でゴールしたのはホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)。しかしバルセロナ生まれの小柄なクライマーは、日曜日のアムステル・ゴールドレースで落車し、大腿二頭筋を痛めてしまう。フレーシュ・ワロンヌ出場は決めたが、連覇には暗雲が立ち込める。カチューシャはアムステルで好走したジャンパオロ・カルーゾ(イタリア)やダニエル・モレーノ(スペイン)での闘いも視野に入れる。

アムステル・ゴールドレースでアタックを仕掛けるフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)アムステル・ゴールドレースでアタックを仕掛けるフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム) photo:Riccardo Scanferlaロドリゲスの怪我により、ワロン出身の世界王者フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)が優勝候補の筆頭に躍り出た。2011年大会の優勝者ジルベールは、日曜日のアムステルで強烈なアタックを繰り出してみせた。結果には繋がらなかったが、登りでの爆発力は抜群だ。

アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ) photo:Riccardo Scanferlaそのアムステルで優勝したロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ)は、アルベルト・コンタドール(スペイン)、カルステン・クローン(オランダ)、ニコラス・ロッシュ(アイルランド)、オリバー・ツァウグ(スイス)という強力なメンバーとともに参戦。

ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) photo:Riccardo Scanferla春先からステージレースを連戦したコンタドールの走りに注目したい。スペイン勢としては他にも2006年大会優勝者のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)がいる。急勾配の登りでは、バスク一周で総合優勝したチームメイトのナイロ・クインターナ(コロンビア)向きかも知れない。

アムステルで精彩を欠いたペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)は、悩んだ末にフレーシュ・ワロンヌ初出場を決めた。暑さに苦しんだサガンは調子を戻すことが出来るのか?本調子で挑むことが出来ればサガンに充分勝ち目がある。モレーノ・モゼール(イタリア)やダミアーノ・カルーゾ(イタリア)が援護に回る。

アムステル3位のサイモン・ゲランス(オーストラリア)が欠場するため、昨年2位に入ったミハエル・アルバジーニ(スイス)がオリカ・グリーンエッジのエースを担うことになるだろう。セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア)、リッチー・ポルト(オーストラリア)、リゴベルト・ウラン(コロンビア)を揃えるスカイプロサイクリングも一大勢力になる。

アムステルやそれまでのセミクラシックの走りを見る限り、ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)やライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ)、バウク・モレマ(オランダ、ブランコプロサイクリング)、サイモン・ゲスク(ドイツ、アルゴス・シマノ)も好調。激坂でのパンチ力ではジルベールらに敵わないが、上位には絡んでくるはずだ。

J SPORTS放送予定:4月17日(水)21:55~ J SPORTS 4


text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla

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