2013/04/15(月) - 10:50
「暑さで脚が攣ってしまった」という優勝候補の筆頭サガンを尻目に、ラスト7kmから独走に持ち込んだロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ)が勇気ある独走勝利。ゴール地点が変更されたアムステル・ゴールドレースで、クロイツィゲルが今シーズン初勝利を飾った。
マーストリヒトのマルクト広場から、リンブルグの丘陵に張り巡らされたアップダウン&ワインディングコースを駆け抜け、カウベルグの先にあるヴァルケンベルグのゴールを目指す第48回アムステル・ゴールドレース。4月上旬まで続いた寒さは和らぎ、20度を超える陽気に包まれた。
251kmコースでエスケープの旅に出たのはヨハン・ファンスーメレン(ベルギー、ガーミン・シャープ)やミケル・アスタルロサ(スペイン、エウスカルテル)、アレクサンドル・プリウスチン(モルドバ、IAMサイクリング)ら5名。ちょうどレース折り返しの中盤にタイム差は11分をマークした。
この日は「1000のコーナー」「ローラーコースター」と形容されるコースに風が吹き付けたため、集団内で落車が多発する。ゴールまで100kmを切ったところでフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)やトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)、アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・レオパード)を巻き込む大きな落車が発生。ジルベールは問題なくレースに復帰したが、ヴォクレールは鎖骨骨折によってリタイア。Aシュレクもしばらく走ってバイクを降りた。
この落車の影響でメイン集団が二分され、飛び出した集団をブランコプロサイクリングが積極的に率いたが、結局は集団は一つの塊に戻る。
先頭では逃げメンバーを振り切ったアスタルロサが独走を開始。すると再びメイン集団内で落車が発生し、今度はホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が膝を打ち付けてリタイア。ロドリゲスはフレーシュ・ワロンヌ連覇に黄色信号が灯る。
ゴールまで40kmを切ると、先頭アスタルロサから2分遅れのメイン集団からカウンターアタックを仕掛けて飛び出す選手が続出。ピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)が口火を切ると、ラーシュペッテル・ノルダーグ(ノルウェー、ブランコプロサイクリング)やアンドレー・グリブコ(ウクライナ、アスタナ)、ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ)が相次いでアタック。ここでクロイツィゲルも動いた。
先頭アスタルロサにはウェーニングやカルーゾ、クロイツィゲルがそれぞれ合流。こうして形成された7名の先頭グループが、メイン集団とのタイム差をキープしながら最終周回を駆け抜ける。ここからラスト7kmでクロイツィゲルが飛び出した。
独走に持ち込んだクロイツィゲルは勢いを落とすことなく最後のカウベルグを駆け上がる。25秒遅れでウェーニングを含む追走グループ、そして40秒遅れでメイン集団が登りに差し掛かる。
この最後の勝負どころでメイン集団から世界チャンピオンのジルベールが強烈なアタック。ジルベールにはサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)やアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が食らいついた。
カウベルグ頂上通過後、牽制するジルベール、ゲランス、バルベルデには後続が合流。先頭クロイツィゲルのリードは揺るぎなく、22秒差の逃げ切り勝利が決まった。
「今日は土地勘のあるカルステン・クローンがGPS役で、僕とニキ・セレンセンの2人がエースだった。ずっと良いポジションをキープしたことが良い結果に繋がったんだと思う。チームメイトたちのおかげで終盤の勝負どころまで温存出来た。最後のカウベルグでは何も考えずに踏み続けたよ」と、7km独走勝利を果たしたクロイツィゲルは語る。
アスタナからサクソ・ティンコフに移籍したクロイツィゲルは、今シーズンここまでティレーノ〜アドリアティコ総合13位、ブエルタ・アル・パイスバスコ総合18位と、まずまずの成績を残して来た。2011年のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで4位に入っており、アルデンヌクラシックで主役になる可能性も。「今日はシャンパングラス一杯の祝杯に抑えておく。だって今週はタフな一週間だから。自分たちの仕事に集中したい」。
クロイツィゲルのマッサーを務める中野喜文さんは「コンディション、レース展開、チームメイトの動き、勇気、運、全てが完璧に回りましたね」と喜びのツイートを残している。
エースのヴォクレールを落車で失ったユーロップカーの新城幸也は、37秒遅れの24位でゴール。一方、優勝候補として期待されたペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)は58秒遅れの36位に終わった。
「予想していたパフォーマンスを発揮出来なかった。終盤に脚が攣ってしまったんだ。距離が長いことによる疲労からくるものではなく、この暑さが原因だった。ここまで2ヶ月にわたって低温が続いていたので、温度の変化に脚が苦しんでいた。フレーシュ・ワロンヌに出場するかどうかは明日決めるよ。ここまでのクラシックシーズンには満足している」とサガンは振り返っている。
選手コメントは各チーム公式サイトより。
アムステル・ゴールドレース2013結果
1位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ) 6h35'21"
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +22"
3位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
4位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
5位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)
6位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、スカイプロサイクリング)
7位 ビョルン・ルークマンス(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)
8位 ピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)
9位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)
10位 バウク・モレマ(オランダ、ブランコプロサイクリング)
24位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +37"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Riccardo Scanferla
マーストリヒトのマルクト広場から、リンブルグの丘陵に張り巡らされたアップダウン&ワインディングコースを駆け抜け、カウベルグの先にあるヴァルケンベルグのゴールを目指す第48回アムステル・ゴールドレース。4月上旬まで続いた寒さは和らぎ、20度を超える陽気に包まれた。
251kmコースでエスケープの旅に出たのはヨハン・ファンスーメレン(ベルギー、ガーミン・シャープ)やミケル・アスタルロサ(スペイン、エウスカルテル)、アレクサンドル・プリウスチン(モルドバ、IAMサイクリング)ら5名。ちょうどレース折り返しの中盤にタイム差は11分をマークした。
この日は「1000のコーナー」「ローラーコースター」と形容されるコースに風が吹き付けたため、集団内で落車が多発する。ゴールまで100kmを切ったところでフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)やトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)、アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・レオパード)を巻き込む大きな落車が発生。ジルベールは問題なくレースに復帰したが、ヴォクレールは鎖骨骨折によってリタイア。Aシュレクもしばらく走ってバイクを降りた。
この落車の影響でメイン集団が二分され、飛び出した集団をブランコプロサイクリングが積極的に率いたが、結局は集団は一つの塊に戻る。
先頭では逃げメンバーを振り切ったアスタルロサが独走を開始。すると再びメイン集団内で落車が発生し、今度はホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が膝を打ち付けてリタイア。ロドリゲスはフレーシュ・ワロンヌ連覇に黄色信号が灯る。
ゴールまで40kmを切ると、先頭アスタルロサから2分遅れのメイン集団からカウンターアタックを仕掛けて飛び出す選手が続出。ピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)が口火を切ると、ラーシュペッテル・ノルダーグ(ノルウェー、ブランコプロサイクリング)やアンドレー・グリブコ(ウクライナ、アスタナ)、ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ)が相次いでアタック。ここでクロイツィゲルも動いた。
先頭アスタルロサにはウェーニングやカルーゾ、クロイツィゲルがそれぞれ合流。こうして形成された7名の先頭グループが、メイン集団とのタイム差をキープしながら最終周回を駆け抜ける。ここからラスト7kmでクロイツィゲルが飛び出した。
独走に持ち込んだクロイツィゲルは勢いを落とすことなく最後のカウベルグを駆け上がる。25秒遅れでウェーニングを含む追走グループ、そして40秒遅れでメイン集団が登りに差し掛かる。
この最後の勝負どころでメイン集団から世界チャンピオンのジルベールが強烈なアタック。ジルベールにはサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)やアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が食らいついた。
カウベルグ頂上通過後、牽制するジルベール、ゲランス、バルベルデには後続が合流。先頭クロイツィゲルのリードは揺るぎなく、22秒差の逃げ切り勝利が決まった。
「今日は土地勘のあるカルステン・クローンがGPS役で、僕とニキ・セレンセンの2人がエースだった。ずっと良いポジションをキープしたことが良い結果に繋がったんだと思う。チームメイトたちのおかげで終盤の勝負どころまで温存出来た。最後のカウベルグでは何も考えずに踏み続けたよ」と、7km独走勝利を果たしたクロイツィゲルは語る。
アスタナからサクソ・ティンコフに移籍したクロイツィゲルは、今シーズンここまでティレーノ〜アドリアティコ総合13位、ブエルタ・アル・パイスバスコ総合18位と、まずまずの成績を残して来た。2011年のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで4位に入っており、アルデンヌクラシックで主役になる可能性も。「今日はシャンパングラス一杯の祝杯に抑えておく。だって今週はタフな一週間だから。自分たちの仕事に集中したい」。
クロイツィゲルのマッサーを務める中野喜文さんは「コンディション、レース展開、チームメイトの動き、勇気、運、全てが完璧に回りましたね」と喜びのツイートを残している。
エースのヴォクレールを落車で失ったユーロップカーの新城幸也は、37秒遅れの24位でゴール。一方、優勝候補として期待されたペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)は58秒遅れの36位に終わった。
「予想していたパフォーマンスを発揮出来なかった。終盤に脚が攣ってしまったんだ。距離が長いことによる疲労からくるものではなく、この暑さが原因だった。ここまで2ヶ月にわたって低温が続いていたので、温度の変化に脚が苦しんでいた。フレーシュ・ワロンヌに出場するかどうかは明日決めるよ。ここまでのクラシックシーズンには満足している」とサガンは振り返っている。
選手コメントは各チーム公式サイトより。
アムステル・ゴールドレース2013結果
1位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ) 6h35'21"
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +22"
3位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
4位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
5位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)
6位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、スカイプロサイクリング)
7位 ビョルン・ルークマンス(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)
8位 ピーター・ウェーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)
9位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)
10位 バウク・モレマ(オランダ、ブランコプロサイクリング)
24位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +37"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Riccardo Scanferla
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