2月23日、ベルギーでクラシックシーズンが動き始めた。伝統のオンループ・ヘットニュースブラッド(UCI1.HC)は、ルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)とステイン・ファンデンベルフ(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)の一騎打ちに持ち込まれ、経験で勝るパオリーニが貫禄の勝利を収めた。

ペースアップによって縦に長く伸びる集団ペースアップによって縦に長く伸びる集団 photo:Riccardo Scanferlaオンループ・ヘットニュースブラッドは、ヘットニュースブラッド紙が1913年に創設したロンド・ファン・フラーンデレン(フランドル)に対抗して、ヘットフォルク紙が1945年に創設したセミクラシック。

レース前半に逃げるザッカリ・デンプスター(オーストラリア、ネットアップ・エンドゥーラ)ら9名レース前半に逃げるザッカリ・デンプスター(オーストラリア、ネットアップ・エンドゥーラ)ら9名 photo:Riccardo Scanferla長年「オンループ・ヘットフォルク」として開催されていたが、2009年にフランドルと同じヘットニュースブラッド紙にスポンサーが変更され、現在の名称に変更された。今年で開催68回目で、このセミクラシック初戦オンループを皮切りに、ベルギーのクラシックシーズンが始動する。

集団前方で石畳区間をこなすトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)集団前方で石畳区間をこなすトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Riccardo Scanferlaヘントを発着する199kmのコースには、石畳が8カ所、そして急坂が12カ所詰め込まれている。フランドルにも登場するレベルグやモーレンベルグが終盤に登場するため、本格的なクラシックシーズンに向けた重要な前哨戦であると言える。

登りで積極的な走りを見せるルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)登りで積極的な走りを見せるルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ) photo:Riccardo Scanferlaスタートを切ったのは、別府史之(オリカ・グリーンエッジ)を含む197名の選手たち。低温と強風を伴う過酷な気象コンディションの中、ザッカリ・デンプスター(オーストラリア、ネットアップ・エンドゥーラ)やウィリアム・クラーク(オーストラリア、アルゴス・シマノ)ら9名が逃げる展開。

先頭9名は最大5分のリードを築いたが、急坂と石畳が連続するレース後半に差し掛かるとタイム差は縮小する。ゴールまで52kmを残したエイケンベルグでのシルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)のアタックを切っ掛けに、集団内の本命たちが動き始めた。

シャヴァネルにはすぐさまマルコ・バンディエラ(イタリア、IAMサイクリング)が反応し、2人で逃げグループに合流。遅れて集団を飛び出したフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)やゲラント・トーマス(イギリス、スカイプロサイクリング)、ルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)、ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ベリソル)、スヴェン・ファンドゥスラール(ベルギー、トップスポート・フラーンデレン)、ステイン・ファンデンベルフ(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)、エゴイツ・ガルシア(スペイン、コフィディス)、マールテン・ワイナンツ(ベルギー、ブランコプロサイクリング)の逃げグループ合流を待たずして、ゴールまで45kmを残し、シャヴァネルは早くも独走を開始した。

シャヴァネルは数十秒のリードを得たが、脚の揃った強力な10名ほどのグループを振り切れない。続くヴァレント、レベルグ、モーレンベルグを先頭通過後、シャヴァネルにはファンアフェルマートらに吸収される。

この時点でメイン集団も30名ほどに絞られており、追走の力は弱い。実質的に逃げ切りが決まった10名の精鋭グループの中から、ゴール30km手前の石畳区間パッデストラートでファンデンベルフとパオリーニが飛び出した。

先頭でレースを展開するステイン・ファンデンベルフ(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)とルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)先頭でレースを展開するステイン・ファンデンベルフ(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)とルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ) photo:Riccardo Scanferla

精鋭グループの中から飛び出したルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)とステイン・ファンデンベルフ(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)精鋭グループの中から飛び出したルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)とステイン・ファンデンベルフ(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Riccardo Scanferla後続とのタイム差を徐々に広げながら先頭を走るファンデンベルフとパオリーニ。石畳区間で時折仕掛けるシーンも見られたが、2人は協力してゴールを目指す。後続の牽制も手伝って、最終的に1分までリードを広げた2人によるゴールスプリントに持ち込まれた。

ファンデンベルフをスプリントで下したルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)ファンデンベルフをスプリントで下したルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ) photo:Riccardo Scanferla身長199cm・28歳のファンデンベルフと、身長174cm・36歳のパオリーニ。ラスト300mでパオリーニが腰を上げてスプリントを開始する。ファンデンベルフもダンシングで加速を試みたが、パオリーニとの距離は広がるばかり。ファンデンベルフが肩を落とすその前で、パオリーニが両手を挙げた。

ロンド・ファン・フラーンデレンで2007年に3位、2012年に7位に入っているベテランパオリーニは「自分にとってもカチューシャにとってもロシアにとっても、この非常に意味のある重要な勝利だ。伝統のベルギークラシックで勝つことが出来て本当に嬉しい。有力選手に対して先手を打つよう心がけ、最後は経験で勝てたんだと思う。全てはチームの戦略通りだった」と語る。今年のクラシックシーズンでは目が離せない存在になるだろう。

地元ベルギーのオメガファーマ・クイックステップは、シャヴァネルとファンデンベルフを前方に送り込みながらも勝利できず。6分27秒の大集団内でゴールしたクラシックシーズンにおけるエースのトム・ボーネン(ベルギー)は「本格的なクラシックシーズンに向けて軌道に乗っているけど、まだまだやるべきことは山ほどあるチームメイトが何人も先頭でレースを展開したことは朗報だ。重要なレースでは彼らの存在がとても重要になる。今日の走りには満足しているよ」とコメントしている。

別府史之は13分39秒遅れで今シーズン最初のセミクラシックをフィニッシュ。フミは翌日のクールネ〜ブリュッセル〜クールネ(UCI1.1)にも出場する予定だ(※追記:雪のためレースのキャンセルが発表された)

また、同日行なわれたオンループ・ヘットニュースブラッドの女子レースには萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)が出場。完走率1/3という過酷なコンディションの中、優勝したティファニー・クロムウェル(オーストラリア、オリカ・AIS)から7分07秒遅れの51位で萩原はレースを終えている。

第68回オンループ・ヘットニュースブラッド表彰台第68回オンループ・ヘットニュースブラッド表彰台 photo:Riccardo Scanferla

選手コメントは各チーム公式サイトより。

オンループ・ヘットニュースブラッド2013
1位 ルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)              4h52'15"
2位 ステイン・ファンデンベルフ(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)
3位 スヴェン・ファンドゥスラール(ベルギー、トップスポート・フラーンデレン)  +1'13"
4位 ゲラント・トーマス(イギリス、スカイプロサイクリング)
5位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)
6位 マルコ・バンディエラ(イタリア、IAMサイクリング)
7位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)
8位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ベリソル)
9位 マールテン・ワイナンツ(ベルギー、ブランコプロサイクリング)
10位 エゴイツ・ガルシア(スペイン、コフィディス)
129位 別府史之(日本、オリカ・グリーンエッジ)                +13'39"

text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla