2013/02/03(日) - 21:58
ベルギー勢による一騎打ちに持ち込まれたシクロクロス世界選手権エリート男子。現ベルギーチャンピオンの30歳クラース・ヴァントルノウトと、前ベルギーチャンピオンの36歳スヴェン・ネイスの闘い。経験豊かなネイスの走りが光った。
アメリカ・ケンタッキー州ルイビルのエヴァバンドマン公園で開催されたシクロクロス世界選手権。世界中から集まった45名が、アルカンシェルを懸けた闘いに挑んだ。
スタート直後からレース先頭に人数を集めたのは、水色のナショナルジャージを着るベルギー勢。しかし、UCIワールドカップ最終戦を制したマルティン・ビーナ(チェコ)やフランシス・ムレー(フランス)が積極的な走りを見せる。少しばらけたベルギー勢をよそに、2周目に入るとムレーが独走を開始した。
雪が解け、泥に覆われたコースを、今年7回目のフランスチャンピオンに輝いたムレーが快走する。追走パックを形成したのは、ケヴィン・パウエルス、クラース・ヴァントルノウト、スヴェン・ネイス、ニールス・アルベルトというベルギー人4名。オランダのラルス・ファンデルハールもこのパックに加わった。
2周にわたって独走を続けたムレーだったが、まずパウエルスが単独で追いつき、遅れてヴァントルノウトとネイス、アルベルトも合流する。何度か落車しながらもバイクを交換しないムレーに対し、ベルギー勢は頻繁にピットでバイクを交換した。
ゴールまで4周を切ると、先頭パックからヴァントルノウトがペースアップし、これにネイスが合流。ここまで好走していたパウエルスはチェーントラブルで後退してしまう。こうしてヴァントルノウトとネイスの先行が決まり、アルベルトが単独で追う展開に。粘り強い走りを見せたファンデルハールがアルベルトをパスし、単独3番手に上がって最終周回に入る。
最終周回の前半はヴァントルノウトがリードしたが、後半のテクニカル区間を前にネイスが一気に仕掛ける。「テクニカル区間を前に、前に出る必要があることを知っていた。障害物(シケイン)を前に差を付けることが出来れば、勝てる。一度仕掛けて少し差が開いたところで、フルパワーで踏んだ。仮に追いつかれてもスプリントで勝てる。だからリラックスして走った」(ネイス)
シケインを軽やかなバニーホップで越えたネイスは、振り返ってヴァントルノウトとの差を確認し、さらに踏んで行く。
「レース中盤にかけて少しペースが落ちたけど、どうにか持ち直した。最終的には『自分が一番強い』と思うようになった。パワー勝負に勝ったんじゃない。経験の差で勝ったんだ」。そう語るネイスが、ヴァントルノウトを振り切ってゴールした。
2005年以来、実に8年ぶりのアルカンシェルを手にしたネイス。「1年前、世界選手権に出る必要は無いと言っていた自分が、今、世界チャンピオンに輝いている。今回のタイトルは前回(2005年)よりも価値がある。私のキャリアはこうして完成した」。
UCIワールドカップでは通算48勝し、6回シリーズチャンピオンに輝いているネイスだが、意外にも世界選手権での勝利数は少ない(1位は2回目、2位は1回、3位は5回)。その理由について「過去10年間の世界選手権は、ハイスピードコースが多くてなかなか勝てなかった。今回のようなテクニックが必要なコースこそ自分向き。この1週間ずっとそう感じていたんだ」と説明する。
1950年に初開催されたシクロクロス世界選手権の歴史の中で、史上初めてヨーロッパを飛び出した2013年大会を「シクロクロス界のカンニバル」と呼ばれる36歳が制した。
また、3位には昨年のU23世界チャンピオンである21歳のファンデルハールが入り、ベルギー勢による表彰台独占を阻止。ジュニア、U23、エリート女子を立て続けに制したオランダの勢いを印象づけた。
日本勢は竹之内悠(コルバ・スペラーノハム)が5分47秒遅れのフルラップで完走。小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)はマイナス5周回の39位に終わっている。
日本人選手のレースの様子やコメントは、田中苑子フォトグラファーによる現地レポートをお待ち下さい。
選手コメントはベルギーのSporzaより。
エリート男子結果
1位 スヴェン・ネイス(ベルギー) 1h05'35"
2位 クラース・ヴァントルノウト(ベルギー) +02"
3位 ラルス・ファンデルハール(オランダ) +25"
4位 バルト・ウェレンス(ベルギー) +41"
5位 フィリップ・ワルスレーベン(ドイツ) +44"
6位 ジュリアン・タラマルカス(スイス)
7位 ラドミール・シムネク(チェコ) +1'15"
8位 ニールス・アルベルト(ベルギー) +1'19"
9位 タイス・ファンアメロンヘン(オランダ) +1'31"
10位 マルティン・ビーナ(チェコ) +1'41"
31位 竹之内悠(コルバ・スペラーノハム) +5'47"
39位 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム) -5Laps
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Riccardo Scanferla, Sonoko Tanaka
アメリカ・ケンタッキー州ルイビルのエヴァバンドマン公園で開催されたシクロクロス世界選手権。世界中から集まった45名が、アルカンシェルを懸けた闘いに挑んだ。
スタート直後からレース先頭に人数を集めたのは、水色のナショナルジャージを着るベルギー勢。しかし、UCIワールドカップ最終戦を制したマルティン・ビーナ(チェコ)やフランシス・ムレー(フランス)が積極的な走りを見せる。少しばらけたベルギー勢をよそに、2周目に入るとムレーが独走を開始した。
雪が解け、泥に覆われたコースを、今年7回目のフランスチャンピオンに輝いたムレーが快走する。追走パックを形成したのは、ケヴィン・パウエルス、クラース・ヴァントルノウト、スヴェン・ネイス、ニールス・アルベルトというベルギー人4名。オランダのラルス・ファンデルハールもこのパックに加わった。
2周にわたって独走を続けたムレーだったが、まずパウエルスが単独で追いつき、遅れてヴァントルノウトとネイス、アルベルトも合流する。何度か落車しながらもバイクを交換しないムレーに対し、ベルギー勢は頻繁にピットでバイクを交換した。
ゴールまで4周を切ると、先頭パックからヴァントルノウトがペースアップし、これにネイスが合流。ここまで好走していたパウエルスはチェーントラブルで後退してしまう。こうしてヴァントルノウトとネイスの先行が決まり、アルベルトが単独で追う展開に。粘り強い走りを見せたファンデルハールがアルベルトをパスし、単独3番手に上がって最終周回に入る。
最終周回の前半はヴァントルノウトがリードしたが、後半のテクニカル区間を前にネイスが一気に仕掛ける。「テクニカル区間を前に、前に出る必要があることを知っていた。障害物(シケイン)を前に差を付けることが出来れば、勝てる。一度仕掛けて少し差が開いたところで、フルパワーで踏んだ。仮に追いつかれてもスプリントで勝てる。だからリラックスして走った」(ネイス)
シケインを軽やかなバニーホップで越えたネイスは、振り返ってヴァントルノウトとの差を確認し、さらに踏んで行く。
「レース中盤にかけて少しペースが落ちたけど、どうにか持ち直した。最終的には『自分が一番強い』と思うようになった。パワー勝負に勝ったんじゃない。経験の差で勝ったんだ」。そう語るネイスが、ヴァントルノウトを振り切ってゴールした。
2005年以来、実に8年ぶりのアルカンシェルを手にしたネイス。「1年前、世界選手権に出る必要は無いと言っていた自分が、今、世界チャンピオンに輝いている。今回のタイトルは前回(2005年)よりも価値がある。私のキャリアはこうして完成した」。
UCIワールドカップでは通算48勝し、6回シリーズチャンピオンに輝いているネイスだが、意外にも世界選手権での勝利数は少ない(1位は2回目、2位は1回、3位は5回)。その理由について「過去10年間の世界選手権は、ハイスピードコースが多くてなかなか勝てなかった。今回のようなテクニックが必要なコースこそ自分向き。この1週間ずっとそう感じていたんだ」と説明する。
1950年に初開催されたシクロクロス世界選手権の歴史の中で、史上初めてヨーロッパを飛び出した2013年大会を「シクロクロス界のカンニバル」と呼ばれる36歳が制した。
また、3位には昨年のU23世界チャンピオンである21歳のファンデルハールが入り、ベルギー勢による表彰台独占を阻止。ジュニア、U23、エリート女子を立て続けに制したオランダの勢いを印象づけた。
日本勢は竹之内悠(コルバ・スペラーノハム)が5分47秒遅れのフルラップで完走。小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)はマイナス5周回の39位に終わっている。
日本人選手のレースの様子やコメントは、田中苑子フォトグラファーによる現地レポートをお待ち下さい。
選手コメントはベルギーのSporzaより。
エリート男子結果
1位 スヴェン・ネイス(ベルギー) 1h05'35"
2位 クラース・ヴァントルノウト(ベルギー) +02"
3位 ラルス・ファンデルハール(オランダ) +25"
4位 バルト・ウェレンス(ベルギー) +41"
5位 フィリップ・ワルスレーベン(ドイツ) +44"
6位 ジュリアン・タラマルカス(スイス)
7位 ラドミール・シムネク(チェコ) +1'15"
8位 ニールス・アルベルト(ベルギー) +1'19"
9位 タイス・ファンアメロンヘン(オランダ) +1'31"
10位 マルティン・ビーナ(チェコ) +1'41"
31位 竹之内悠(コルバ・スペラーノハム) +5'47"
39位 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム) -5Laps
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Riccardo Scanferla, Sonoko Tanaka
Amazon.co.jp