2012/03/01(木) - 11:38
SR01は、BMCの2012年モデルで唯一のアルミフレームのロードバイクだ。そして、BMCの現行ラインナップで最も安価なロードバイクでもある。
完成車のみの販売で、メーンコンポに105を搭載するモデルとティアグラを搭載するモデルの2種類がラインナップされている。いずれも価格は20万円を大きく下回り、ティアグラ搭載モデルは15万円を切るプライスタグが付けられている。
BMCブランドの魅力を最も身近に感じられるモデルである——とも言えるだろう。
価格やパーツ構成から見ても、エントリーモデルに位置づけされるが、安易に安価なパーツを組み合わせた“安くて手軽に乗れるだけのロードバイク”ではない。フレームの細部まで注目して見ると、BMCの「本気度」が分かる。
SR01とはどのようなバイクなのだろうか? まずはバイクの全体像からチェックしていこう。
ハイドロフォーミング加工が生み出す複雑なチューブ形状
SR01のアルミフレームは、カーボンフレームと比べて加工の自由度が低い金属チューブでありながら、実に複雑な形状をしている。最も特徴的なのがトップチューブの形状。上位機種にあたるカーボンフレームと同様、断面がT字型をしているのだ。また、ダウンチューブも台形に近い角断面形状になっている。よく見ると、ヘッドチューブ周辺と中央部、ハンガー周りにかけて少しずつ形を変えているのが分かる。チェーンステーもシートステーも角断面形状だ。
他ブランドのアルミフレームが真円のパイプを扁平加工したチューブを使うことが多いのに対し、SR01は全体的に角断面のチューブを採用している。フレーム全体がエッジの効いた直線的なシェイプをしており、まるでモダン建築のようなシャープな印象を与える。他ブランドとは一線を画すこのフレームデザインこそ、BMCの個性である。
この複雑な形状は、ハイドロフォーミング加工によって生み出されている。ハイドロフォーミングとは、水圧によってチューブの形状を変える加工技術。SR01のアルミフレームはこの技術を駆使してあの特徴的なルックスを生み出している。
もちろん、単なる見た目重視のデザインではない。上位機種で採用されているiSCテクノロジーはこのフレームにも採用されており、軽さや剛性の高さといったロードバイクに求められる性能を追求した上で出されたひとつの答えであり、カタチなのだ。
もちろん目に見えない部分にもこだわりが凝縮されている。そのひとつがトリプルバテッドチューブの採用だ。チューブの肉厚を力のかかる接合部とそうでない中央部とで3段階の厚さに調整し、軽さと剛性を両立している。
また、素材はBMC特注の6000系アルミ合金を採用。アルミフレームで一般的な6061アルミ合金よりより強度が高いという。
エントリーモデルにも上位機種のテクノロジー
SR01はBMCのロードバイクのラインナップで最も安価なエントリーモデルでありながら、上位機種にも採用されているテクノロジーをいくつか継承している。例えばBMCのフレームデザインの根幹をなすiSCテクノロジーは、このモデルにも採用されている。それはシートチューブとトップチューブ・シートステーの接合面付近のデザインを見れば一目瞭然だ。
また、トップチューブ〜ヘッドチューブ〜ダウンチューブの側面を連続した面とする「コンティニュアス・エッジ」も採用されている。これによって上位機種同様にフレーム全体のねじれ剛性とヘッド回りやBB回りの剛性を高めている。
さらに、ダウンチューブやシートチューブのハンガー側の接合部をBB幅いっぱいに広げる「コア・スティフネス」も採用。BB回りの剛性を高めている。
これらのテクノロジーによって、SR01はエントリーモデルとは思えないほどのポテンシャルを秘めるに至った。ツールを制したマシンの命脈は、このモデルにも確かに受け継がれているのだ。
BMC SR01
スペック
フレーム | iSCトリプルバテッドアルミ+BB68mm(JIS) |
フォーク | BMC SE48カーボン+アロイステアラー 1-1/8 |
メインコンポ | シマノ・105またはティアグラから選択可能 |
カラー | ブラック(105仕様)、シルバー(ティアグラ仕様) |
価格 | 178,500円(105仕様)、147,000円(ティアグラ仕様) |
インプレッション
「アルミフレームなのに剛性が高すぎないのがいい」 三宅和真
CW:SR01はBMCで唯一のアルミフレームのロードバイクです。ほかのモデルと比べて印象はいかがでしたか?三宅:気に入りました! 意外にもアルミフレームにありがちな硬さを感じず、しなやかな乗り味だったのが印象的でした。でも、決して剛性が足りないわけではないんです。BB回りやヘッド回りと言った走行性能のキモとなる部分の剛性を高めた——という感じですね。
岩島:全体的なバランスがいいですね。昔のアルミフレームはもっと乗り味がもっさりしていたように思いますが、走っているとそういうことを感じさせません。走行性能が全体的にブラッシュアップされていますね。
CW:お二人ともなかなかの好印象を持たれたようですね。
三宅:フレームが硬いとダイレクト感があってよく進むので、乗り始めの印象はいいと思うんですが、脚がなくなったときにつらくなりがち。SR01ならそういうことがなさそうですね。
岩島:BMCのほかのバイクと比べると、持ったときに重量は感じますし、走りも若干重く感じはするのですが、重さが安定感というプラス方向に作用している感じがしました。
CW:走行性能はどうでしたか?
三宅:乗り味はしなやかなのに、走りはまったりしすぎるわけでもなく、キビキビしすぎているわけでもない——というちょうどいい塩梅ですね。特にハンドリングがキビキビしすぎていないのは、ロードバイク初心者にはいいと思います。それでいて、リア三角がしっかりしているからか、ダンシングをしてもよれない感じがありますね。「よく走る」という印象は、このあたりから来ているのかもしれません。
岩島:「昔のアルミフレームに比べて走りが全体的にブラッシュアップしている印象を受けた」と言いましたが、まず踏み出しが軽いですね。シッティングでもダンシングでもよく進みます。持ったときの重量から受ける印象よりよく進むと感じました。また、フォークもいいですね。ブレーキング時のストッピングパワーをしっかり受け止めるたくましさを感じました。フレームのリア三角と前三角の剛性バランスがいいですね。
「重量が安定感というプラス方向に作用している」 岩島啓太
CW:ショップスタッフの立場から見て、どのようなライダーにおすすめですか?三宅:価格もこなれているので、初めてスポーツバイクに乗るような人やクロスバイクからのステップアップを目指す人におすすめですね。見た目が個性的なので、「人とは違うバイクに乗りたい」と考える人にはいいと思います。
岩島:やはりビギナー向けでしょうね。ルックスがよくて他ブランドのバイクと並べたときにも目立つので、ファーストバイクとしては所有欲も満たしてくれるいい選択肢だと思います。
CW:どういう用途に向いているでしょう?
三宅:よく走りますし、乗り心地も悪くないので、フィットネスライドからエンデューロ、ヒルクライムまで幅広く楽しめると思います。特にビギナーで「自分がどういう乗り方をしたいか分からない」という人にはつぶしのきく1台だと思います。
岩島:私はロングライド向けだと思いますね。そういう方向性を強調するチューンナップをするなら、シートポストをオフセットがもう少し大きなカーボン製のものに変えるといいですね。より乗り心地がよくなると思います。
編集:シクロワイアード 提供:フタバ商店