2012/03/01(木) - 11:37
BMCの2012年モデルのラインナップにおいて、SL01は最も安価に購入できるカーボンフレームのロードバイクである。
販売形態は完成車のみ。搭載されるコンポーネントやホイールが異なる4種類のバリエーションが用意される。
シマノ・アルテグラDi2搭載モデルにはマヴィック・キシリウムエリート、アルテグラ搭載モデルにはDTスイスR-1650チューブレスホイール、105搭載モデルにはマヴィック・アクシウム、ティアグラ搭載モデルにはシマノ・R-501という組み合わせだ。
価格は最も高いアルテグラDi2搭載モデルが399,000円と、RM01よりも高いプライスタグを付ける一方、最も安いティアグラ搭載モデルでは220,500円とぐっと値ごろ感が増す。
このことからも分かるように、SL01は単なるエントリークラスのカーボンロードというよりは、カーボンロードデビューをねらうライダーから中級者までをフォローする。レースからロングライドまで幅広く楽しめる守備範囲の広いバイクであると言えるだろう。
それではSL01のディテールを見ていこう。
上位機種のテクノロジーを継承、優れたポテンシャルを秘める
SL01は、BMCのカーボンフレームのロードバイクでは最も手の届きやすい価格を実現したモデルである——というのは前述の通り。とはいえ、価格なりのチープなバイクではない。上位機種と同様のテクノロジーを継承し、高いポテンシャルを秘めていることをうかがわせる。たとえば、フレームの造形はiSC(インテグレーテッド・スケルトン・コンセプト)の流れに則り、BMCの象徴とも言える独特のシートチューブ周りの造形は、このモデルにも受け継がれている。
さらにBB周りは、ダウンチューブやシートチューブをBB幅いっぱいまで広げることで剛性を確保するコア・スティフネスを採用。トップチューブ〜ヘッドチューブ〜ダウンチューブの角を連続した面とすることで、ヘッド周りとBB周りの剛性、フレームのねじれ剛性を高めるコンティニュアス・エッジの考え方も取り入れられている。これらのテクノロジーは、上位機種と同様だ。
フロントフォークはIMPECやSLR01などと同様、上下異径のテーパードコラムを採用。剛性を高めることで正確なハンドリングときびきびとした走りを獲得している。
また、シートポストの断面形状は空力性能を意識したデザインを採用。固定は通常のシートクランプ方式となっており、サドル高をはじめとするポジション調整の容易さも実現している。
さらにアルテグラDi2搭載モデルには、変速ケーブルストップを持たないDi2専用フレームを採用。変速ケーブルの内蔵を前提としており、ケーブルの取り回しがすっきりとするため、クラスを超えた外観の美しさをもたらす。この端正なルックスは、同価格帯の他社のバイクと比べて一歩抜きんでている感がある。
コストパフォーマンス向上と、優れた走行性能の両立を目指した工夫が随所に
一方で、SL01をRM01などの上位モデルと比較すると、いくつかの違いが見られる。主な目的は、上位モデルの優れた走行性能はそのままに、コストパフォーマンスを向上させることだ。ひとつはBBの仕様がプレスフィット方式から、JIS規格の通常タイプ(BBシェル幅68mm)になっている点だ。これは即ち、シマノやカンパの通常タイプ、スラムGXPタイプ、これらに準ずるサードパーティー製BBなど、旧来のものも含め、多くのBBへの対応を意味する。近年様々な規格が乱立するBB規格において、最も汎用性の高い規格のため、従来の工具やメンテナンスの知識をそのまま使うことが出来る上、コンポ交換の際にも幅広い選択肢があり、安心感をもたらしてくれる。
また、SL01では製造コストが割高となるTCCテクノロジーをあえて採用せず、カーボン素材と設計によってその性能を向上することにこだわった。結果、フレームのコストダウンと上質な乗り味を両立することに成功。高品質なカーボンフレームに2×10スピードのシマノ・ティアグラを組み合わせて20万円台前半という価格を実現した。
これによりBMCは、最高級のレーシング機材であるIMPECやSLR01、性能と価格のバランスに優れたレースマシーンのRM01、より手ごろな価格帯のSL01と、あらゆるレベルのサイクリストにとって、魅力的でバランスのとれたラインナップを揃えることに成功している。
BMC SL01
スペック
フレーム | iSCフルカーボン+BB68mm(JIS) |
フォーク | BMC SE48 SL カーボン |
メインコンポ | シマノ・アルテグラDi2、アルテグラ、105、ティアグラの4種類から選択可能 |
カラー | レッド、ネイキッド(アルテグラ&105仕様のみ) |
価格 | 399,000円(アルテグラDi2仕様)〜220,500円(ティアグラ仕様) |
インプレッション
「アマチュアライダーにも扱いやすい剛性感」 三宅和真
CW:このモデルはBMCで最も安価なカーボンフレームですが、いかがでしたか?三宅:乗り心地がしなやかで、しっとりしているなぁ、というのが第一印象です。最も安いティアグラ仕様で22万円とお値打ち価格ではありますが、カーボンフレームの素性の良さは十分に感じられますね。
CW:乗りやすいバイクであるということですね。
岩島:確かに振動吸収性は高いですね。荒れた路面でも振動がほとんど伝わってこないぐらいでした。直進安定性も高いので、ビギナーを含め、誰にでも乗りやすいバイクだと思います。
CW:走りに関してはいかがでしたか?
三宅:乗り心地も悪くないですが、走りも軽快でいいと思います。フレームのしなやかさに由来すると思うのですが、脚がなくなってからでもそれなりに走れてしまいそうな気がしますね。
岩島:前三角の剛性はそれほど高くないようで、BB回りはペダルを強く踏むと適度にしなるんですよね。でも無駄によれる感じはありません。チェーンステーをはじめとする後ろ三角がしっかりしていて駆動ロスが少ないからでしょう。
三宅:確かにフレームの剛性感が高すぎず低すぎず、ほどよいという印象を受けました。ダンシングしたときに小気味よいリズムで進んでいくのが印象的でした。バリバリのレース志向ではないアマチュアライダーには、これぐらいのバランスがちょうどよいのではないでしょうか。
「初めてのカーボンバイクにぴったり」 岩島啓太
CW:価格を含めたトータルバランスはいかがですか?三宅:アルテグラDi2搭載のモデルはおよそ40万円弱ですが、ティアグラ搭載モデルは22万円ほど。BMCというブランドバリュー、グラフィックの美しさなどを考えると、同じ価格帯の他社のバイクに対して競争力は高いのではないでしょうか。人とは違うモノを求める、分かっている人が選ぶイメージですね。
岩島:アッセンブルされているパーツもいいですね。試乗車のアルテグラ搭載モデルに標準装備されているのがチューブレスタイヤ対応という点にも注目です。ホイールの踏み出しが軽かったです。
CW:アッセンブルされているコンポーネントがアルテグラDi2からティアグラまであり、価格帯も幅広いですよね。ひとつのモデルでここまでコンポのバリエーションを用意するのは珍しいと思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか?
三宅:ショップとしての立場から見ると、コストパフォーマンスの面からDi2にお値打ち感があると感じますね。ワイヤー式のモデルとの価格差が低いのがその理由です。電動でないモデルであれば、105搭載モデルがバランスがよくておすすめです。
岩島:フレームがいいので、105以上のコンポを搭載すれば即レースで使えます。でも、あえてティアグラ搭載モデルを買っておいて、あとでアルテグラあたりにグレードアップするのもひとつの方法かもしれませんね。
CW:どんなライダーにお勧めですか?
三宅:ターゲットはカーボンフレームデビューを目指すライダーですね。ちょっと贅沢かもしれませんが、ファーストバイクでこのモデルを選ぶのもアリかもしれません。用途はロングライドからレースまで幅広く使えるとは思いますが、案外ヒルクライムにもいいと思います。直進安定性が高く、ダンシングで小気味よく走れるので。
岩島:バイク全体のバランスがいいので、ロングライドやエンデューロはもちろん、レースにも使えると思います。10万円前後の入門用アルミフレームのバイクに乗っている人が、初めて乗り換えるならこんなバイクがいいのではないでしょうか。
編集:シクロワイアード 提供:フタバ商店