2010/12/29(水) - 13:55
オールラウンドに使える高性能エントリーカーボン
2007年にカーボンロードのエントリーモデルとして登場したのが「オリオン」だ。プライスパフォーマンスに優れる性能で人気を博してきたが、その内容は年を追うごとに充実。2011年モデルでは、シマノ・105のコンポーネントを搭載して22万5750円というプライスタグが付けられる。以前のオリオンが105を装備して30万円台前半の価格であったことを考えると、大幅なプライスダウンが実行されている。しかも、そのフレームは従来の製品をただトップダウンさせただけではない。価格を見ても分かる通り、このオリオンはビギナークラスのライダーも対象にすることから、そんなユーザーでも扱いやすい性能を求め、2010年モデルからフレームがリニューアルされている。ビギナーに扱いやすい性能とは、しなやかさと剛性感の両立に他ならない。
カーボン素材は24Tのハイモジュールタイプ。ダウンチューブには角形断面を採用して剛性を確保しているが、従来のオリオンに比べて外径を下げることにより、しなやかさが強調されている。外径をそのままに角断面化すると過剛性になってしまうからだ。
トップチューブは従来のT字断面から五角形に変更。さらに、上面の横幅を広くしたシェイプとすることで、ねじれ剛性を高めつつ、縦方向にしなやかさを出して、乗り心地とコントロール性を両立する。
ハンドリングを左右するヘッドからフォークのフロントセクションは、オーソドックスな上下同径のヘッドチューブ。しかし、ボックス形に成型されたヘッド部とボリューム感のあるフォーククラウンによって、フロントセクションにビギナーレベルのライダーにも最適な剛性を求め、コントロール性と乗り心地がバランスされている。
こうしてしなやかさを加えたダウンチューブに対し、チェーンステーは従来のオリオンに比べて外径アップが図られ、BBまわりも十分なボリュームが確保されている。これらによってBB部分からリヤホイールにかけての剛性アップを果たし、ライダーのパワーを無駄にしない走りが追求されている。
一方、快適性を重視する設計は、ホイールの次に振動の入り口となるシートステーにも表れている。新たにモノステーを採用し、ブレーキ台座から下のブレード部を細身に作ることで、路面から受ける振動を積極的に吸収する性能を目指している。
ハイエンドモデルもさることながら、エントリークラスはコストの制約もありフレーム設計がより難しいのも事実。単に剛性が高いモデルはビギナーのフィットネスレベルには苦痛であり、反対にしなやか過ぎればロードバイクとしての軽快な走りや損ねてしまう。そうした意味においてこのオリオンは、ターゲットユーザーに対し明確な設計コンセプトによって、剛性感としなやかさの両立を上手に追求したモデルといえる。
ここ数年、20万円前後のエントリーモデルの進化はめざましく、特に2011年モデルではこの価格帯にカーボンモデルを投入するメーカーも多く、より激戦となっている。こうしたカテゴリーにおいて、オリオンが目指す「エントリーユーザーでも扱いやすい性能」は魅力的であり、ロングライドやロードレースなど、本格的にロードバイクに挑戦したいユーザーにとって最適な1台となるだろう。
インプレッション by 吉本 司
クラスを越えた秀逸なペダリングフィール
エントリークラスの性能進歩は目を見張るものがある。しかし、そのモデルなりの個性があるかというと、コストの制約あるクラスだけにそこには及ばないものも多い。オリオンの魅力とは、エントリークラスながら、そのモデルなりの“味”を体験できることだろう。その最たる部分がペダリングフィールだ。セールストーク通り、フレーム剛性は適度なレベルに抑えられている。踏み出しは高剛性モデルのような鋭さという感覚よりも、軽いという言葉が当てはまる。軽いギヤを回せばスルスルと前に進み、少ない力で気持ちよく走り出せる。
トルクをかけるとBB周辺にしなりを感じるが、上手にしなりが制御されている印象でトルクをかけやすい。剛性が高いフレームは時に脚がはねのけられ、加速の後半や疲れるとトルクをかけにくくなるが、そうした感覚は皆無に等しい。平地の高速巡航ではトルクを広範囲にかけ続けられるし、ダンシングの加速や上りではペダリングのアップストロークとダウンストローク共にスムーズに行なえる。扱いやすい剛性感でスピードを乗せやすく、ベテランライダーでも食指を動かされるフィーリングだ。
このクラスを購入するユーザーは、フィットネスレベルもライディングスキルも上級者のように高くはないので、剛性が高いフレームよりも、適度なレベルに抑えその質に優れるフレームの方が自分の脚力を十分に発揮でき、気持のちいい走りができるだろう。
快適性についてもビギナーとって扱いやすい性能が表現されている。シートステーがしっかり振動を吸収して、重心位置を把握しやすい安定感に優れる走行感覚は、長距離のライディングでも肉体、精神共にストレスを軽減してくれる。ハンドリングも機敏すぎず、わずかにアンダーなのでコーナーワークも安定するはずだ。
ただ1つ残念なのは、ブレーキの性能がいささか乏しい点。加速方向の性能がいいだけに目立ってしまう。それ以外は、この価格としてはかなりレベルの高いお買い得モデルだと思う。自分の目的にパーツを交換しながらいろいろな遊び方ができる1台である。
インプレッション by 佐藤 光国
長距離からヒルクライムまでこなせる高い基本性能
ハンドルやステムに剛性感のあるアルミ製のモデルが装備されているのもありますが、フロント部分の剛性がかっちりとしていてとても好印象です。荷重を前にかけても不安はなく、ダンシングでバイクを振っても安定していて乗りやすかったです。全体的な剛性はノアなどに比べると高いとは言えませんが、BB部分からバックまで十分なしっかり感があって、パワーが逃げずちゃんと推進力に換わる印象があります。乗り心地は抜群というほどではありませんが、カーボンなので不快に感じる振動の角はとってくれて、長距離でも不快感はないと思います。安定感も抜群です。
価格を抑えたモデルなので、バイクを振るような横の動きだと車重の重さを感じますが、ホイールなどに軽量なものを装備すればヒルクライムなどにもいいと思います。価格を考えると非常によくできた入門用バイクです。
インプレッション by 木下 大輝
フレーム販売でも魅力あるほどの高い走行性能
今回乗った3台の中では最も好みのモデルでした。フレーム剛性がとても高いという感じではありませんが、BBやヘッド部分には必要な剛性が保たれています。フレームに芯のある剛性感が備わっているので、パワーをロスする感覚はなく、むしろ推進力につながるしなりでネガティブなものではありません。乗り心地はシートステーが細身なので、しっかりと路面からの衝撃を吸収してくれます。フロント周りの剛性も高く、しかもリヤの衝撃吸収が高いので、下りでも後輪がしっかり路面を捕らえる安心感があります。重心位置もノアやノアRSと同じようにフレームの中心に乗れる感覚があるので乗りやすいですね。フレーム販売しても魅力的なモデルだと思います。
ブレーキがフレームの性能に比べて貧弱なのが残念ですが、ホイールと共に交換すれば実業団クラスのレースでも戦える1台です。
インプレッション by 西井 敏次
デュラエースを装備しても不足のない高性能フレーム
22万5000円とは思えないほどの性能を持っているモデルです。特にフレームのできがいいですね。ノアやノアRSには及びませんが、加速性能も十分満足できますし、乗り心地もいいと思います。フレームの剛性感もあるし、安定感も優れているので乗りやすい。ただ、私は体重が重めなので、下りの後にある急コーナーなどで制動力が足りませんでした。シマノ・105のコンポーネントは性能がいいので、サードパーティ製のブレーキだと余計に性能差が目立ってしまいますね。価格が上がってもいいから、シマノ製のパーツが装備されていると安心できます。
コンパクトドライブのクランクセットが付いていますが、個人的にはノーマルドライブにしてほしいです。ノーマルドライブを使いこなせるパワーが出せるような人でも十分に対応できるしっかりとしたフレームなので。アルテグラやデュラエースを装備しても遜色のないフレーム性能ですね。
リドレー ORION
PRICE | ¥225,750(税込) 完成車 |
FRAME | 24tonハイモジュラスカーボンファイバー |
WEIGHT | 1200g |
COLOR | 1103A,1117A |
SIZE | XXS,XS,S,M |
提供:JPスポーツグループ 企画/制作:シクロワイアード