2010/07/30(金) - 13:35
選手とともに多くの栄光を刻んだ真夏の熱戦
7月25日、ツール・ド・フランス2010の21日間にわたる過酷な戦いは幕を下ろした。シマノ製品とともに戦った選手では、ステージ5勝を挙げ、ポイント賞争いでも2位に食い込んだマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTCコロンビア)をはじめ、険しい山岳コースでステージ優勝を飾ったサンディ・カザール(フランス、フランセーズデジュー)、個人総合3位のデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)、新人賞争いで2位になったロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)らがしっかりとその存在感をアピール。これらの選手たちの活躍を支えたシマノの製品は、長く過酷な戦いをノートラブルで乗り切ったことで、その優れた性能とともに、信頼性や耐久性も高い次元で兼ね備えることを証明した。
今回は後半戦を中心にツール・ド・フランス2010を振り返りつつ、シマノとともに戦った選手やチームの活躍ぶりとそのバイクにスポットを当てる総集編だ。
カヴのステージ5勝を支えたPRO製品
今回のツールをシマノ製品とともに戦い抜いた選手の中で、最も活躍したのがマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTCコロンビア)。大会序盤は不調もささやかれたが、終わってみれば今ツール最多のステージ5勝を挙げ、“現役最強スプリンター”の称号に恥じない強さを存分にアピールした。その走りを支えたのはシマノのコンポーネントとPROの製品。中でもカヴのバイクの代名詞とも言えるバイブシリーズのアルミハンドルとトラック用のカーボンステムの組み合わせは、彼の爆発的なスプリントを勝利に結びつけた功労者であることは間違いない。
バリエーション豊富なデュラエースのホイール
現在レギュラーモデルとして発売されている24mmと50mmというリムハイトに加え、昨年から35mmと75mmのモデルが選手たちによってテストされていたデュラエースのホイール。これでデュラエースのホイールはリムハイトが4種類の展開となり、ステージのコースプロフィールや選手の好みに応じてリムハイトの違うモデルが使い分けられていた。山岳ステージでは上りの軽さと下りでのエアロ効果の両立を狙って35mmハイトのモデル、平坦メインのステージでは50mmハイトのモデルを使う選手が多かった。昨年の時点ですでにかなり製品版に近いプロトタイプだったこともあり、今年のモデルも大きな変更はなく、いよいよ発売が間近であることが予想される。
あらゆるシーンで活躍した電動デュラエース
昨年から各チームが本格的に実戦投入しているデュラエース7970シリーズ。電動シフターを備え、軽い動作でスムーズかつ確実に変速できるのが特徴。DHバーを握りながらでも変速できるため、以前はTTステージでの採用率が高かったが、今年は平坦や山岳ステージでも積極的に電動デュラエースを採用するチームが多かった。雨のプロローグだけでなく、路面の衝撃が厳しい第3ステージのパヴェも難なくこなし、21日間の戦いをトラブルなく乗り切ったことから、その性能だけでなく信頼性や耐久性も非常に高いレベルにあることを証明した。チームピットのメカニシャンたちの証言から
翌日に個人タイムトライアルを控えた第18ステージ終了後、レースを終えたばかりのロードバイクの整備と、翌日に使用するTTバイクのセッティングに余年のない各チームのメカニックピットを訪ねた。メカニシャンたちは時間に追われながらも、まずはステージを走り切ったバイクを手際良く洗浄していく。付着した油脂やタールを強力に分解する洗浄剤を使用しながら、ホースで水を高い圧力で吹きかけながら豪快に汚れを洗い流していくのだ。
「じつのところ、誰にでも勧められる方法ではないけれど」と前置きしながら、フランセーズデジューのメカニックがその手法を教えてくれた。
「まずは油脂を分解する溶剤と洗剤、そして水を使用して、その日の汚れを完全に落とすことから始める。しかしメカニカルな部分は、その内部に含まれたグリスを流してしまわないように気をつけながら作業をする。しかし7800、Di2ともにシールド性能が非常に高いので、この作業で不具合が出ることはない。ケーブルも内部に浸水しないので、軽い操作感が長く持続する。ケーブル交換の頻度がかなり減ったね」と言う。
しかし電動メカ(Di2)の場合はどうなのだろう? 水が入って電子部品がショートしたりしないのだろうか?
「エレクトリック・デュラもさらにシールド性が高いので、ワイヤー式よりも問題が少ないくらいだ。だから雨のステージでもほとんど問題は起こらない」。
電動メカ自身の信頼度は?
「石畳が登場した第3ステージでも大きなトラブルはなかった。一度セッティングしてしまえば後で調整する必要も生じにくいから、ワイヤー式よりもメンテナンスフリーと言えるね」。
ワイヤー式と電動、ふたつはどう使い分けられているのだろう? ラボバンクのメカニックは言う。「選手によって好みで選ばせている。デジタルが好きな選手もいればアナログが好きな選手がいるように、フィーリングの違いで選ばれているようだ。レバーの形状は多少違うので、そこにこだわる選手はいる。しかし電動式かワイヤー式かにこだわる選手はほとんどいない」。
フランセーズデジューのメカニックは言う「このツールではほぼ全員のメインバイクにDi2を装着して走ってきた。全員が気に入っているようで、特に不満はないようだ。トラブルもとくにない。エレキはもはや通常の選択肢になった」。
TTでのサブスイッチの有効性
TTバイクのコンポ選択について、ガーミン・トランジションズのメカニックに訊いてみた。メカニックは言う「積極的にDi2コンポを使用する。DHハンドルの先端など、メインスイッチ以外にサブスィッチを取り付けられるメリットがとても大きい。ハンドルのグリップ位置を持ち替えずに変速することができるので、確実にタイムロスを防ぐことができる。同じ力の選手どうしなら、シマノDi2コンポを使用するか他社コンポを使うかで、結果は絶対に違ってくるはず」。同チームのバイクはDi2コンポ専用設計のTTフレームを用意しており、電気ケーブルの取り回しも非常にスムーズなラインを描いていた。「ワイヤー式ではどうしても引きの抵抗が生じていたが、電気式の場合その抵抗が生じない。ワイヤーよりも無理なく配線できるので、この点でもメリットは大きい」
「ワイヤー式の場合は無理のない引き抵抗にするためにワイヤー類の取り回しに気を使う必要があったが、Di2の場合はケーブルに抵抗が生じないので、ワイヤーの取り回しが複雑になりがちなTTバイクでは大きなメリットがある」とのことだ。
選択肢が豊富で堅牢なホイール
ホイールは主にリムハイトによって重量、エアロダイナミクス、取り回し(操作)のフィーリング、横風からの影響が変わってくる。35mmを軸に、平坦ステージでは50mm、山岳ステージでは24mm、TTでは75mmという具合に組み合わせて選ぶ。風や天候なども考慮に入れながら。ラボバンクのメカニックは言う「シマノのホイールはコースに合わせて選べる選択肢が揃っており、しかも同じ基本性能を持つホイールのシリーズとして非常にチョイスしやすいラインナップだ。タフでメンテンナンス性に優れているのも特長。すぐに製品化できるレベルだ」と言う。
フランセーズデジューのメカニックは言う「とてもタフなホイールで、割れたりするトラブルがない」。
ほとんどのステージではカーボンチューブラーホイールが使われていたようだが、雨のステージではチューブレスホイールもよく使用されていた。安定したブレーキング性能が得られるアルミリム、そしてパンクに強くグリップ力の高いチューブレスホイールが使えることもまた、選手にとって欠かせない性能があるようだ。
レース機材は常に進化し続けている。今回紹介した中には一部プロトタイプの製品も含まれているが、やがて市販化されるものもあるだろう。シマノやPRO製品の進化は、選手たちの走りをさらなる高みへと誘い、ひいてはツール・ド・フランスの歴史に新たな1ページを書き加えることにつながるだろう。
DURA-ACE PD-7900カーボンペダル、ついに発表!
ツール・ド・フランス2010の期間中にシマノからDURA-ACEシリーズの最高峰カーボンペダル PD-7900が発表された。発売予定時期は2010年10月。この特集でも取り上げてきた軽量・高剛性のプロ仕様ペダルであり、ほぼ完成形と目されていただけに、発売を期待していたユーザーは多いだろう。詳しくはこちらの記事を見て確かめてほしい。
新製品情報
DURA-ACEの新型カーボンペダル PD-7900登場
新製品情報
DURA-ACEの新型カーボンペダル PD-7900登場
提供:シマノ 企画/制作:シクロワイアード