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3編に渡って紹介したバスク、マリャビアにある本社訪問取材記に続き、いよいよ本章でオルベアのロードモデルの主軸であるORCAとORCA AERO、そして注目のOQUOホイールのインプレションを紹介する。オルベアを愛するショップ店長2人による評価に刮目してほしい。

数字に表れない、乗れば分かるオルベアの魅力

ORCAシリーズをインプレッション。平坦から登り、下りまであらゆる場面を試した photo:Makoto AYANO

「オルベアの良さは、乗ったら分かる」と人々は言う。実直で極めて真面目、そして仲間やコミュニティを大切にする社風から生まれるバイクたちは、端的に言えば保守的な設計であり、特に目をひくような奇抜なアイディアやギミックは取り入れられていない。しかし、前章の開発インタビューで紹介したように、例えプロユースモデルであっても誰もが乗りこなせる優しさが、そのフレームの奥深くには秘められている。

「坂でアウターギアを踏める感覚に驚きました。これだ!って」と、新型ORCAをマイバイクに選んだEL CAMINOの佐々木優也店長は回想する。「僕はパワーで押し切る走り方なのですが、昨今のディスクブレーキのバイクは足回りの剛性が高くちょっと感覚が合わなかった。でもORCAは違います。ヒラヒラ感があって、しなりのある踏み味。誤解を恐れず言うならリムブレーキ時代の"あの感覚"がORCAにはあるんです。今、僕はORCAに乗るのが楽しくて最高に調子が良い」。
オルベアのロードバイクは7代目に進化したばかりの軽量モデル「ORCA」と、エアロを最重視した「ORCA AERO」、そして快適性を最重視したアルミのエントリーモデル「AVANT」に大別されているが、シクロワイアード読者諸兄の興味を最も惹くのはプロユースモデルであるORCAとORCA AEROだろう。今回はそれぞれのハイグレードモデルであるOMXグレードをお借りし、EL CAMINO佐々木優也店長、そしてocto bicycle久保田裕司店長を招きインプレッションを行った。オルベアのマーケティングを担う野口忍氏も含めた、山岳ライドのアフタートークに注目してほしい。

ORCAシリーズをインプレッション:乗りこなせるレースバイク

テストを担当するのはEL CAMINO佐々木優也店長(左)と、octo bicycle久保田裕司店長(右) photo:Makoto AYANO

「年齢的にも成績を狙ってガンガン走れるのはあと数年。だからこそ妥協ゼロのバイクを組みたかったんです。狙っていたのは得意の登りを活かせる軽量モデル。多くのブランドがエアロを兼ね備えたオールラウンドモデルに移行する中、オルベアは「クライミングバイク」として新型ORCAをリリースした。心に響きましたね」と佐々木店長は言う。かつて大学時代に競技に打ち込み、ブランクから再発進した昨年は全日本選手権のマスターズ30代で優勝するなど、全国屈指の走れる店長として知られる彼だからこそ言葉に重みがある。

「坂でアウターギアを回して登る、僕が昔から培ってきた武器がORCAなら活かせるんです。ディスクブレーキのロードバイクが登場してから十分に時間が経ちましたが、乗り味の変化に戸惑っている人もまだまだいます。僕もその一人でしたが、ORCAは違う。今日初めて乗ったORCA AEROも、当然乗り味は違うけれど自然に馴染めました。扱いやすさは2モデルとも共通なんだな、と」。

「坂でアウターギアを踏める感覚に驚きました。マイバイクとして所有していますが、乗るのが最高に楽しい」 photo:Makoto AYANO

「一方でORCAは平坦でも良いんです。ペダリングのリズムが掴みやすくスイートスポットが広いので、踏んでも回しても進むし、瞬間的な加速も優秀です。練習後にログを確認すると自己新記録が更新されていることがよくありますから。知り合いの競輪選手(S級)に乗ってもらった時もフレーム剛性が高いと言っていましたね」。

「フミ(オルベアアンバサダーを務める別府史之氏)も同じことを言ってましたね」と同調するのは野口氏だ。オルベアの本社マーケティングに就任以降、カスタムオーダープログラムのMyO(マイオー)の売り上げ実績は昨年比681%(!)という途方もない数字を叩き出しているという。「フミ曰く、フレームがしなりながら坂を登っていく、他にはないフィーリングだと言っていました。UAEツアーの登坂フィニッシュではロットの選手が勝ち総合優勝を獲りましたが、そういう走りも効いているんじゃないかと感じます」。

「オルベアの開発部長が話していたのが、トータルバランスを大事にしているということです。軽さだけじゃなく、反応性、乗り心地、ハンドリングへの言及もよく話題になりますね。扱いやすさをしっかりと確保していないと、反応性だけではレースバイクとは言えません。彼がしっかり乗り込んでいるからこそ選手の意見を落とし込める」。

「ORCA AEROはトライアスロンでも武器になる。日本のレースは登りが多く走りの軽さが大事ですから」 photo:Makoto AYANO

一方、ORCA AEROを気に入ったのが久保田裕司さんだ。トレック東京青山の店長を経て、最近世田谷にocto bicycle(オクト バイシクル)をオープンさせた氏は、トライアスロンに打ち込み、アイアンマン経験を持つタフガイ。一人で淡々と走ることが多いトライアスロン経験者だけに、そのエアロ性能に惹かれたという。

「ORCA AEROはDHバーを装着すれば、オリンピックディスタンスで十分武器になるバイク。踏めば踏むだけ進む。トライアスロンのバイクパートって平坦ばかりの印象が強いんですが、国内レースは実は結構上りがあってトッププロじゃない限りエアロロードが使いやすい。ORCA AEROは踏みやすくて、かつスピードを出せば出すほど進んでいく印象が強いですね。横風で煽られることもないし、すごくおすすめしたい。ハンドルバーが31.8mmクランプで、ワイヤーも完全に内装ではないので修理しやすいメリットもありますよね」。

2モデルの共通項は「乗りやすさ」。硬いのみならず走りのバランスに長けているのだ photo:Makoto AYANO

(野口):「ORCA AEROは大げさに言うとハンドリング性能がめちゃくちゃ良いTTバイク。スピード域はTTバイクのようで、それでいてスムーズに走らせられる。早稲田大学のトライアスリート、大室杏夢さんもORCA AEROに乗り換えた直後のアジアカップで3位に入賞したんですよ。これまではバイクパートで苦しむ場面が多かった彼ですが、乗り換えてから集団で楽できるようになった、と。ORCA AEROをメインで使うロット・ディステニーも好調です。昨年の今時期と比べて圧倒的に成績が出ていますし、オルベアの良さが証明されているのではないでしょうか。

無敵のコストパフォーマンスを誇るOQUOホイール

抜群のコスパを誇るOQUO。最高峰モデルで27万円、かつ無料カラーオーダーが可能だ photo:Makoto AYANO

ORCAシリーズの走りが良いことは先述のコメントでお分かり頂けたと思う。しかし、ここで注目してほしいのがオルベアの新規オリジナルホイール「OQUO(オークォ)」だ。3年前に開発に着手し、一昨年にMTBホイールを、昨年にロードホイールをリリース。「他社に頼ることなく、自らバイク全体の性能向上に繋がるホイールを作りたかった」という志のもと作られるホイールは完成車にもスペックインされている。だからこそ、その走り、そして完成度に興味を持つ方も少なくないだろう。

「すごく感触が良いですね。特にRP45(45mmハイト)はしなりを伴いながら気持ち良くスピードが伸びていく。フレームメーカーのホイールって最近多いから正直どうなんだろうと思っていましたが、いい意味で裏切られました」と言うのは佐々木店長だ。事実マイORCAには別ブランドのホイールを組み合わせたそうだが、「購入前に試乗していたら選択は変わっていたかもしれない」とも。

「ホイールもバイクもコストパフォーマンスは圧倒的。こんなに優しいブランドは他にない」 photo:Makoto AYANO

「RP57(57mm)でも硬さは感じないし、スピードが伸びるし、振動吸収性もいい。RP45は前後セットで1,380g。ジップ製ハブは超高価格な同社のNSWシリーズに使われるものだそうですし、ハイエンド(LTDグレード)で27万円という価格はすごくアリ」とは久保田店長の言葉だ。高いコストパフォーマンスに加え、LTDならばホイールカラーも無料で変更できることもオークォホイールの特筆するに値するポイント。MyOではフレームカラーに合わせた色を選べるし、ホイール単体で購入する場合でもOK。前後で違うカラーをオーダー可能だったりと、その自由度は他の追従を許さない。話は当然オルベアの誇るMyOプログラムにも及んだ。

どうしれここまでできるのか。MyOの懐の広さ

「MyOは圧倒的な割安価格が魅力です。他ブランドのカスタマイズプログラムだと、好みのパーツや色を選んでいったら普通に200万円を超えてしまうこともある。でもオルベアなら完成車54万円(ORCA M35)から自分だけのバイクを作れるし、MyOではなくてもクランク長など細かいところまで選択できるから、購入後に自分に合ったパーツを買い直す必要がない。ロードだけじゃなくて、マウンテンバイク、グラベルバイク、TTバイクまでありとあらゆる車種が選べる。こんなシステムは他にありません。だからこそocto bicycleでもメインブランドに据えようと思っているんです」(久保田店長)。

「オルベアは国内で今、一気にブームが来ようとしている」 photo:Makoto AYANO

「本当ですよね。この値段でここまでカスタムまでできるのか、って。私がオルベアの取り扱いを始めたタイミングでは、お客様の中でもブランドを知らない方も少なくなかった。でも私が乗っていることもあって、今年に入って何人もの方がMyOでオーダーしてくれました。まだまだ知名度は低いのですが、今一気にブームが来ようとしていますよね。今回試乗する機会を経て改めてオルベアの良さを理解することができましたし、もっとこの良さを広めていきたいですね」(佐々木店長)。

飛躍するバスクブランド。オルベア再来は数字に表れる

改めてオルベア製品の高品質ぶりを意識させられたテストになった photo:Makoto AYANO

プロを満足させる軽さと剛性を流麗なデザインで包んだ第2世代ORCAが一世を風靡したのが約20年前。ロードとMTBで北京五輪を制すなど絶頂期を過ごしたオルベアだったが、やがて北米ブランドの台頭と対照的に、日本国内でブランドイメージがトーンダウンしたことは否めない事実だ。

しかし「バスクの伝統」と「世界で戦える高品質な製品づくり」を地道に、そして頑なに守り抜いてきたオルベアは、その製品の良さに輪をかけて、MyOの充実、そしてロット・ディステニーやパリ五輪出場を決めた與那嶺恵理(ラボラル・クチャ)のサポート、別府史之氏のアンバサダー着任など、力強いビジビリティによって今まさに躍進を遂げる最中にある。日本国内でのMyOの売り上げ前年比681%という尋常ではない数字は、明らかにオルベアムーブメントのリバイバルを表すものに違いがない。

テストライダー/ショップインフォメーション

EL CAMINO佐々木優也店長(左)と、octo bicycle久保田裕司店長(右) photo:Makoto AYANO

佐々木優也さん(El Camino):高校時代に自転車競技を始め、京都産業大学在学中にはNIPPOのサポート選手として活動し、トレック・マルコポーロなどUCIコンチネンタルチームに所属した経験も。2017年に自身のショップEl Caminoを広島県広島市西区をオープン。親しみやすい接客で多くのユーザーを抱えつつ、昨年は全日本選手権マスターズ30代で優勝するなど全国屈指の走れる店長としても活躍中。

El Camino
〒733-0834 広島県広島市西区草津新町2丁目14−17
082-577-6071
https://elcamino-cycle.com/

久保田裕司さん(octo bicycle):10代でトレック・コンセプトストアに入社し、直営店の六本木店に配属されたのちにトレック・ジャパンへ。トライアスロンに打ち込みアイアンマンにも出場しつつ、全国屈指の売り上げを誇る六本木店、青山店の店長を歴任した。現在は独立し、東京都世田谷区にOcto Bicycleをオープンさせたばかり。充実したアフターケアで自転車の楽しさを伝えることがモットー。

Octo Bicycle
〒154-0017 東京都世田谷区世田谷2丁目28−21
070-3227-6440
https://www.instagram.com/octobicycle/


2人のオルベアライダーがパリ五輪出場内定

さて、ここで日本のオルベアファンにとって嬉しいニュースが入ってきた。JCF(日本自転車競技連盟)が6月13日にパリオリンピック代表メンバーを発表し、2人の女子オルベアライダー、女子ロードレースの與那嶺恵理(ラボラル・クチャ)と女子MTBの川口うららが代表入りを果たした。與那嶺が今年からオルベアライダーであることはこれまで何度も触れている通りだが、川口はオリンピックに向けてオルベアのクロスカントリーモデル「OIZ」で本戦に挑むという。川口は6月23日開催に開催されるUCI MTBワールドカップでOIZを実戦投入し、オリンピックには赤と白の日本ナショナルカラーに塗られた特別なOIZに乗るという。こちらもバイクが仕上がり次第紹介する予定だ。
日本国内輸入販売:(有)サイクルクリエーション
TEL:0297-79-4714
email: info.japan@orbea.com

提供:オルベア text:So Isobe