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トップレーサーやハイアマチュアを魅了するホイールブランドがフルクラムだ。トップエンドのSPEEDシリーズや、今なお進化を遂げるアルミスポークモデルの筆頭、Racing ZEROシリーズを、ブランドヒストリーやテクノロジー紹介、そしてキナンレーシングチームによるインプレッションを織り交ぜながら紹介していきたい。

トップ選手が信頼を寄せるイタリアンブランド

トップレーサーを支えるイタリアンホイールブランド、フルクラム。4編に渡りその魅力を掘り下げるトップレーサーを支えるイタリアンホイールブランド、フルクラム。4編に渡りその魅力を掘り下げる (c)カワシマサイクルサプライ
特にハイエンド系のスポーツバイクホイール界における一大ブランドに数えられるフルクラム。設立自体は2004年と有名ホイールブランドの中ではまだ新しいものの、その出自はカンパニョーロのエンジニア3名が独立し、航空宇宙技術を活かした開発をスタートさせたことに端を発する。

翌年には当時世界最強チームの一つだったクイックステップに正式採用され、早速その年にはトム・ボーネン(ベルギー)が世界選手権で勝利。続けざまにパオロ・ベッティーニ(イタリア)が翌年の世界選手権を制したことでフルクラムは立ち上げ早々にアルカンシエルを2度手にするという快挙を遂げている。そうした戦績や、赤スポークに代表されるイタリアンブランドらしい精悍なデザインも重なり、ベッティーニや若きボーネンを支えたRacing SPEEDやRacing Light、あるいはカーボン地の美しいクランクセットはその時代を代表する、憧れのパーツとして名を轟かせた。

創業直後のフルクラムは若きトム・ボーネンや、パオロ・ベッティーニの活躍をサポート創業直後のフルクラムは若きトム・ボーネンや、パオロ・ベッティーニの活躍をサポート photo:CorVos'08年ツール。若きヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)がRacing SPEEDで山岳ステージを駆ける'08年ツール。若きヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)がRacing SPEEDで山岳ステージを駆ける photo:CorVos

ランプレはフルクラムと長いパートナーシップを組んだチームの一つ。新城幸也も当時フルクラムホイールを使用したランプレはフルクラムと長いパートナーシップを組んだチームの一つ。新城幸也も当時フルクラムホイールを使用した photo:Fulcrum wheels
フランスのUCIワールドチーム、AG2Rも特別カラーのフルクラムホイールを使ったフランスのUCIワールドチーム、AG2Rも特別カラーのフルクラムホイールを使った photo:Fulcrum wheelsRacing SPEEDは2015年にSPEEDシリーズへとモデルチェンジRacing SPEEDは2015年にSPEEDシリーズへとモデルチェンジ photo:Fulcrum wheels

SPEED 40を履き、2018年ミラノ〜サンレモを劇的な逃げ切りで制したヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)SPEED 40を履き、2018年ミラノ〜サンレモを劇的な逃げ切りで制したヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari / Alpozzi
フルクラムは創業時こそリムやスポークなどカンパニョーロのテクノロジーを色濃く引き継いでいたものの、時代の変遷の中で徐々に独自性を強め、現在はカンパニョーロを良い意味でライバル視する(日本販売代理店の担当者談)別会社として歩んでいる。2:1スポークや、2015年に世界で初めてフルクラムが世に送り出したカーボンリム+アルミスポークのホイール(Racing ZERO CARBON)などはその筆頭と呼べるだろう。

また、アルミ製の各ホイールは外周の質量をリムの継目と釣り合わせる特別なリム設計「ダイナミック・バランス・テクノロジー」を採用。これによって実現する、歪みの無さはプロチームはもちろん、プロショップのメカニックからも高く評価される部分だ。

プロユースのSPEED、軽量アルミスポークのRacing ZERO

カーボンディープリムモデルの最高峰、SPEEDシリーズカーボンディープリムモデルの最高峰、SPEEDシリーズ photo:Makoto.AYANO
先に記した通り、創業と同時にクイックステップへのサポートを開始するなど、フルクラムは常に世界トップチームの走りを支え、そのフィードバックを得て製品のブラッシュアップにつなげてきた。リクイガス、コフィディス、ランプレ、そしてバーレーン...。その中でRacing SPEED XLRは現在まで続くSPEEDシリーズに進化し、Racing ZEROシリーズのバリエーション増強、そしてグラベル用のRAPIDシリーズの登場など、時代の流れも汲みながら製品ラインアップは着実なアップデートを果たしている。

RACING ZEROシリーズの最高峰モデル、CARBON CMPTZN DBRACING ZEROシリーズの最高峰モデル、CARBON CMPTZN DB (c)カワシマサイクルサプライ
現在のフルクラムラインアップで双璧を成すのは、カーボンディープリムの最高峰レーシングモデルであるSPEEDシリーズ(40&55)と、合計6種類のバリエーションを誇るアルミスポーク+ロープロファイルリムのRacing ZEROシリーズの2つ。これらの全モデルにはハブベアリングに真球度の高いセラミックボールが使われていることが大きな特徴だ。

通常タイプの玉受けと玉押しを使いつつ、セラミックボールを奢ることで抵抗低減を図ったUSB(ウルトラ・スムース・ベアリング)ベアリングがスタンダードモデルに使われるほか、さらにチューブラー版のSPEED 55Tと40T、そして「CMPTZN(コンペティツィオーネ)」と銘打たれたハイエンドモデルには、ベアリングの玉受けと玉押しに特殊加工を施すことで究極の回転抵抗低減を狙ったCULT(カルト:セラミック・アルティメイト・レベル・テクノロジー)ベアリングが奢られる。

最高級モデルに奢られるカーボン製のハブボディ。内部のベアリングもフルクラム自慢のセラミック製だ最高級モデルに奢られるカーボン製のハブボディ。内部のベアリングもフルクラム自慢のセラミック製だ (c)カワシマサイクルサプライ
真球度の高いセラミック製ボール。CULTとUSBベアリングのいずれにも採用されている真球度の高いセラミック製ボール。CULTとUSBベアリングのいずれにも採用されている (c)カワシマサイクルサプライボールのみならず、レースにも特殊加工を施した最上級ベアリング、CULTボールのみならず、レースにも特殊加工を施した最上級ベアリング、CULT (c)カワシマサイクルサプライ

なおUSBベアリングとCULTベアリングはアップグレードキットとしても単品発売されているため、カップ&コーンのベアリングを採用するフルクラムホイールであれば、その多くに装着が可能(RACING 3 DBや旧RACING ZERO DBシリーズの一部を除く)。このように後々のアップグレード、そして簡単なメンテナンスが可能であることも、フルクラムホイールの利点と言えるだろう。

カーボン地美しい、ツイル-カーボンフィニッシュのリムカーボン地美しい、ツイル-カーボンフィニッシュのリム (c)カワシマサイクルサプライ
スポークテンションの均一化を図る2:1スポークシステムスポークテンションの均一化を図る2:1スポークシステム (c)カワシマサイクルサプライインパクト溢れるルックスのオーバーサイズフランジインパクト溢れるルックスのオーバーサイズフランジ (c)カワシマサイクルサプライ

SPEEDシリーズには弟分であるWINDシリーズが揃い、さらに末弟モデルとしてカーボンリムの2Way-Fit(クリンチャー/チューブレスレディ)モデルである最新ホイール「AIRBEAT 400DB」(14万円)が加わったことが話題。Racing ZERO以下にはRacing 3からRacing 6まで各カテゴリーでコストパフォーマンスに優れるモデルが揃っているのはブランド創設期と一切変わらない。

インプレッションモデル ラインナップ

今回インプレッションを行ったのは、SPEEDシリーズに代表されるカーボンディープリムホイール3モデル(SPEED 40 DB、WIND 40 DB、AIRBEAT 400 DB)と、Racing ZEROシリーズ2モデル(RACING ZERO CARBON CMPTZN DB、RACING ZERO CMPTZN DB)。

次章より、フルクラムホイールでレースを戦うキナンレーシングチームの畑中勇介と新城雄大・両選手を招き、乗り比べたインプレッションを紹介していく。

インプレッションライダー プロフィール

キナンレーシングチームの畑中勇介と新城雄大・両選手によるインプレッションを紹介キナンレーシングチームの畑中勇介と新城雄大・両選手によるインプレッションを紹介 photo:Makoto AYANO
畑中勇介
ジャパンカップを走った栗村修氏に憧れて自転車競技をスタート。2003年のジュニア全日本選手権優勝、2007年のU23全日本タイムトライアル優勝といった肩書きと共にプロ入り以来、日本を代表する選手の一人として走り続けるオールラウンダーだ。キャリアハイライトは独走で射止めた2017年の全日本選手権優勝。出身地八王子をレペゼン。ニックネームは「オレ8」。

新城雄大
キナンレーシングのチームキャプテンを務める26歳。U23時代にはヨーロッパ経験を積み、U23個人タイムトライアル日本王者に輝いた実績を持つ。エースとして、頼れるアシストとして経験を重ね。2021年の広島ロードレースで念願のプロ初勝利を飾った。

キナンレーシングチーム