Astemo 宇都宮ブリッツェンらが駆り、注目を集めるメリダの新型REACTO。今回はそのセカンドグレードである「CF3」をインプレッションした。トップモデルとの比較も含め、イメージと価格を超えた価値ある「良いバイク」を掘り下げる。



メリダ REACTO 4000(SILK BLACK)

メリダのREACTOが、エアロロード興盛の一翼を担ってきたことは間違いない事実と言えるだろう。今から既に15年前、近代エアロロードのデザイン確立前夜の2011年にデビューした初代REACTOは、今に繋がる直線的なフレームデザインを引っ提げて「これこそエアロロードだ」というイメージを確立。以来、第2世代、第3世代、そしてディスクブレーキ化した第4世代(2020年デビュー)と着実に進化を続け、2026年春の第5世代モデル発表へと繋げるに至った。

ロードバイクが空力の時代へ突入して10年以上。軽さを無視し空力だけを突き詰めた近代エアロロード黎明期を経て、空力と軽さ、剛性と各種性能をバランスよくミックスした「エアロ・オールラウンダー」が現在のメインストリームとなり、それまでレース界の主軸を担ってきた「軽量オールラウンダー」を置き換えたことは事実の通り。今や軽さだけに注力したバイクはホビーライダーのものだけとなり、フレーム形状を規定するUCIルールの改正に端を発する弩級のエアロロードも登場するなど、空力を追求する時代はさらに加熱の一途を辿っている。

シートチューブの造形は特徴的。空力よりも軽量性を優先し、リアタイヤに沿う部分を大きくカットアウトしている
フロントフォークからヘッドチューブにかけては大きく進化した部分。レイノルズとの協業で空力性能に磨きをかけた



そんなエアロロード戦線の真っ只中に放たれた第5世代REACTOは、メリダらしい、REACTOらしい直線基調のデザインを維持しつつ、「エアロロードとしてのバランス」を突き詰めたレーシングバイク。「扱いやすく、トレンドを取り込みつつも普遍的であること」を根幹とし、ホイールブランドであるレイノルズと共にデザインを磨き上げた。

新型REACTOにおける空力面のコアは、前後方向に伸びたヘッドチューブやフロントフォークなど、フロント周りに集約されていると言って良いだろう。しかしそれでいてフォーククラウンとダウンチューブを一体デザインとせず、さらにシートチューブも大胆にカットアウトするなど、UCIの最適重量である6.8kgを目指すための軽量デザインも同居させている。

メリハリの効いたエアロデザイン。それでいて丸断面コラムを継続し、整備性を確保している。エアロロードとしては数少ないユーザーフレンドリーな方針と言える

タイヤクリアランスは先代の30mmから32mmに拡大。現実的にはよりワイドサイズも装着可能だ
ハンドル+ステムはメリダオリジナルのアルミ製を採用



REACTOのフレームは、プロやハイアマチュアユースを想定した最高峰の「CF5」と、現実的なプライスタグを下げる弟分の「CF3」という2グレード展開。スペインでの発表特集記事に続く本記事で取り上げるのは、メリダが「価値あるミドルグレードと謳う」CF3フレームの完成車、REACTO 4000だ。

REACTO 4000は機械式変速のシマノ105を搭載し、新型REACTOの中で最も安価な税込429,000円というプライスタグを掲げる。CF3のフレームセット(税込328,900円)にプラス10万円で完成車になるというメリダならではの高いコストパフォーマンスは、これからレースにチャレンジしようというユーザーにとって大きな魅力だ。

フレームに使うカーボン素材を変更しつつ、「200ワットを下回れば超一線級」と言われるドイツ・TOUR誌の厳格な風洞テスト基準で196ワットを達成(オプションとして用意されるUCI非認証のTEAM CW 1Pコクピットを使用した場合)したというフレームデザインはCF5と全く同じ。公称値でフレーム1185g/フォーク519gと、CF5比較でフレーム+235g/フォーク+44gと重量を増しているが、開発を主導したベンジャミン・ディーマー氏によればヘッドやボトムブラケットなど各種剛性値はCF5共通。そもそも、隠されがちなセカンドグレードモデルの重量をきちんとカタログスペックとして公表しているあたりも、実直なものづくりを心がけるメリダの良心と言える部分だ。

コンパクトなリアステーは先代から継続。空力性能に優れ、小気味良い反応性を実現する
4000と5000完成車はどちらもプロロゴのAkero RS PASサドルを装備。ライトなどを取り付けできるマウントも付属する



REACTO 4000はブラックと、落ち着いた色味のダークレッド、そして限定カラーのゴールドという3カラー展開。新型REACTOラインナップの中で最も豊富なカラーバリエーションを誇る。

なお、同じCF3フレームにシマノ105 DI2や、チューブレスにも対応するヴィジョンのアルミホイールを搭載するワンランク上の「REACTO 5000」完成車は13万円増の税込559,900円。初期投資を抑えて後々のアップグレードを目指すならREACTO 4000、最初からDI2装備を狙うならREACTO 5000と、希望に合わせて購入できることも嬉しいポイントだ。

シートステーとシートチューブの交点は、先代よりもメリハリの効いたデザインに
メリダ伝統のシートチューブ形状。ワイドタイヤと合わせて振動を除去する意図が見て取れる



まだプロトタイプ時代の2025年ツール・ド・フランスで実戦デビューし、レニー・マルティネス(フランス) によるジャパンカップ制覇も含め、半年以上の熟成期間を経てデビューするなど、既に十二分の戦績を誇るREACTOの、価値あるセカンドグレードがCF3。言わずと知れた名門ショップ、なるしまフレンドの小畑郁さんと、本記事の筆者であり、スペイン発表会でCF5を乗り込んだCWスタッフの磯部がREACTO 4000を試した。



重さを打ち消す、スムーズな加速と高いバランス

小畑:うん、癖がなく非常に乗りやすいですね。実際の重量はそれなりにありますが、適度にウィップが出て踏みも軽いです。エアロフレーム特有の「硬さに抗いながら踏み続ける」ような感覚ではなく、極めてスムーズにスピードが乗ります。エントリーグレードのホイールが装着されていることを考慮しても、登りは悪くありません。非常にバランスが良いバイクだと思いました。

「癖がなくて非常に乗りやすい。バランスが良く、多くのユーザーの選択肢になり得ます」小畑郁(なるしまフレンド)

磯部:本当に乗りやすいですね。スペインで乗ったCF5の印象とはかなり違います。CF5は高出力、具体的には300ワットほどで踏まないとウィップが出ず、いかにもヨーロッパのプロ選手が求める剛性感でした。完成車を手に持つと重量感があって身構えるのですが、走り出すとバネ感があって、そのリズムに乗ると登りでもどんどん加速します。重さによる弊害が実走においてほとんどない点には驚きました。今回は重たいホイールに引っ張られて印象が悪くなることを懸念して、上位グレードのホイールも用意していたのですが、変える必要性がなかった。

CW編集部:重量があるのに走りのダルさを感じにくい理由は何でしょうか?

小畑:自転車って、剛性が高ければ速いわけではないんです。自転車が上手く進むためには「乗り手と車体のバランス」が存在していて、プロユースを想定した高剛性バイク、特に剛性が出やすいエアロロードは、アマチュアが気持ちよく出せる出力では剛性に負けてしまい、車体が進まない現象が起きやすい。高いケイデンスで綺麗に回し続ければそれは解消されますが、少し踏み込むと硬さに脚が負けてしまう。

今回はCF5を試していないので、磯部さんの話を聞いた上での想定ですが、CF3グレードのフレームで、良いパーツに組み替えて走らせた方が、多くの人が幸せになれるような気もする。こういう乗り味の方が脚を残せるし、プロ選手も含めて好きな人は少なくないんじゃないかと思うんですよね。体重の軽い方なら、CF3の方が気軽に走れる場合も多いかと。

CWスタッフ磯部にとってはスペイン発表会でのトップグレード(CF5)に続く試乗。バネ感のある、重量を感じさせない走りに驚かされた

磯部:そうですよね。キツくなってきた時に助けてくれるのはCF3だと思うんです。先頭集団で展開して、最後のスプリントで勝負!っていう走り方と脚なら絶対的にCF5に乗った方が良いと思うけれど、CF3の万能さ、乗りやすさには驚きました。それはCF5がとにかく剛性重視だったから余計。いい意味で驚かされましたね。

ハンドリングはCF5と同様に、ストレートでどっしりと安定するものでした。ヒラヒラと軽いニュアンスではなく、高速巡航時に不必要な気遣いを強いられません。コーナリング中もバンク角の維持がイージーで、「オンザレール」感を伴ってビタッと進みます。ハンドルまわりやホイールの重さによる慣性もありますが、その大部分はフレーム自体の乗り味に起因するものだと感じます。ここにはエアロロードらしさを強く感じますね。

小畑:フレーム形状も上手くデザインされているのか、ダンシングしても違和感は感じません。登りも含めてこれくらい乗りやすければ、たとえば富士ヒルクライムのような斜度のキツくない登りなら、ホイールなどをグレードアップして、軽量化すれば、超絶に硬いハイグレードフレームよりも結果的に早く走れるような可能性すら感じますよね。

剛性って人によってはあればあるほど良いというわけじゃなくて、その昔、(ファビアン)カンチェラーラがあえてグレードの低いシューズを使っていた逸話もあるし、国内の某有名選手が樹脂ソールのシューズを使っていたのを見たこともあります。重量が気になる状況で使うなら話は別ですが、国内トップカテゴリーの周回レースなら十分走れますよ。

「価格設定も悪くない。少し予算を足せればDI2完成車を選べる。CF3のフレームセットがあることも高評価」小畑郁(なるしまフレンド)

磯部:発表会で開発を主導したベンジャミン氏と話したのですが、彼はメリダとしてはロードバイクのラインナップに「軽量モデル」と「エアロモデル」の2軸が絶対的に必要だと言い切りました。REACTOはもちろん、スクルトゥーラの乗り味やルックスを好むユーザーもいるため、開発を止めることも、2モデルを統合することもないというスタンスです。ユーザー視点で見れば、明確な選択肢があることは大いに評価できます。

小畑:この仕様の完成車で42万円。10年前の市場価格からすれば高価ですが、あらゆる物価が高騰している現在の基準、何よりこの性能ベースで評価するならば、相当に頑張った価格設定だと言えますね。少し予算を足せればDi2仕様も選べますし、セカンドグレードでありながらフレームセットの展開がある点も評価が高いです。

何度も繰り返してしまいますが、自転車は人とバイクの相性です。自身の脚質、よく走るシチュエーション、目標とするレースや大会をトータルで掘り下げるほど、正解に近づきます。その点で、新型REACTOのCF3は極めて多くのライダーにマッチします。重量が明確なデメリットになる環境を除けば、使い道は非常に幅広い。完成度が極めて高いからこそ、そう断言できます。

メリダ REACTO 4000(SILK BLACK)

メリダ REACTO 4000
コンポーネント:Shimano 105(機械式変速)
ホイール:MERIDA EXPERT CW
タイヤ:Continental Grand Prix 700x28C
ハンドルバー:MERIDA EXPERT CW aluminum
サドル:Prologo Akero RS PAS
重量:9.1kg(Mサイズ)
カラー:PASSION RED(SLATE GRAY)、SILK BLACK(GUNMETAL GREY)
限定カラー:MINERAL GOLD(BLACK)※メリダパートナーショップ&公式オンラインストアにて販売
税込価格:429,000円



インプレッションライダープロフィール

小畑郁(なるしまフレンド)
小畑郁(おばたかおる)
圧倒的な知識量と優れた技術力から国内No.1メカニックとの呼び声高い、なるしまフレンドの技術チーフ。勤務の傍ら精力的に競技活動を行っており、ツール・ド・おきなわ市民210kmでは2010年に2位、2013年と2014年に8位に入った他、国内最高峰のJプロツアーではプロを相手に多数の入賞経験を持つ。2026年にはJプロサイククリングチーム「NEXT TEST SET」を立ち上げ、若手の技術指導・育成への貢献を目指す。

なるしまフレンド神宮店(レコメンドショップページ)
なるしまフレンド HP


磯部聡(シクロワイアード編集部)

シクロワイアードスタッフ歴15年、参加した海外ブランド発表会は40回を数えるテック担当。ロードの、あるいはグラベルのダウンヒルを如何に速く、そしてスマートにこなすかを探求してやまない。スペインで開催されたREACTOの発表会に出席し、開発陣と直接話すことで理解を深めることができた。エアロロードファンながら、ウィップの効いた乗り味が好きという面倒な趣味を持つ。犬好き。

リンク