2020/08/29(土) - 08:55
最後に紹介するのはクロスカントリーレーサーへのトレイルライドのすすめ。ここではクロカン派のマウンテンバイカーに、速さを求めるのではなく、少し太めのタイヤを履いて里山のトレイルを存分に楽しんで欲しいという提案です。XCレース派の人にとってのタイヤ選択は、重量や転がり抵抗の軽さを重視しがちですが、グリップに余裕のあるタイヤを履けばテクニックを磨く走りが楽しめます。
この章で紹介するヴィットリアAGGARO(アガーロ) は、クロスカントリータイヤの系譜でありながらも純XCレースタイヤに比べるとノブが大きく、グリップ力に余裕をもちます。XCバイクにこのタイヤとドロッパーポストを装着することで、開放感を味わうトレイルバイクとしての遊び方が可能になります。
軽量なXCタイヤに慣れているライダーには970g(29×2.35サイズ)という重量は重たく感じると思うけど、速く走る事を追求する「トレーニング」や「レース」とは視点を変えて、いつもの身近なフィールドで「トレイルライド」を楽しんでみてはいかがでしょう? 急な登りを低速で上ってトラクションコントロールの向上に取り組んだり、いつもは直線的なラインで通過しているトレイルでも、視点を変えてバンクを積極的に利用して「フローを感じるライン取り」にチャレンジするなど、テクニックの向上に取り組めば走りの幅を広げることができます。その副産物として、レースでは技術面で余裕が出てレース中のテクニカルな場面でスムーズに走る事が出来るようになります。それに何よりライドが楽しくなります。
そのコツはノブが大きくグリップ力に長けるタイヤに替えてみること。もちろんその重量増から、速く転がるタイヤではなくなります。しかしXCレースタイヤでは味わえない、以下のような状況ごとの性能が楽しめるのです。状況別にAGGAROの性能イメージのインプレッションを挙げます。
バイクとタイヤの組み合わせの原則
上の例ではXCバイクのタイヤをより走破性の高いものに交換することをおススメしましたが、気をつけたいのはその車種が想定しているタイヤの種類と太さのカテゴリーを欲張って2つ以上飛び越えると、アンマッチが起きてしまうということ。例えば純XCレースバイクにトレイル系タイヤをセットすればより下りを楽しめるバイクに近づきますが、欲張ってアグレッシブな下り系タイヤをセットすると、タイヤ性能に対してフレームやサスの剛性、ストローク量が足りなかったり、「役不足」や「不釣り合い」を感じるバイクになってしまいます。過ぎたるは及ばざるが如し。車種を2つ飛び越えないタイヤ選びに留めるのが良いでしょう。
タイヤをセットするリムも、リム幅をカタログデータ等で調べたうえで適合タイヤ太さ内に留めるべきです。古い規格のナロー(狭い)リムにワイドリムを想定した太いタイヤを装着するとヨレが大きくなり不安定感を生みます。標準仕様からのカスタマイズ時に注意したい基本ルールです。
インプレ総括
富士見パノラマMTBコースでの撮影ロケを含めて前後約1ヶ月ほど、この記事内で紹介したヴィットリアのMTBタイヤを日常のライドでも徹底的に使って試してみました。じつはヴィットリアは最近使ったことのないブランドだったのですが、つきあってみるとどのタイヤも性能が非常に高く、アドバンテージが大きいことを思い知らされました。
とくにグラフェン2.0コンパウンドと4Cテクノロジーは他ブランドにない性能で、かつトレッドやノブ形状もよく計算されている。そして今回紹介したのは3モデルに留めましたが、数多くのモデル、サイズ、トレッドの異なるラインアップがヴィットリアには揃っていますから、自分の求める性能で細かく選ぶことにも応えてくれます。唯一のデメリットはまだ日本のMTB界でポピュラーな存在ではないので、ショップでの入手に苦労することでしょうか。しかし今後は勢力図が塗り替わる可能性はおおいにあります。スポーツサイクルタイヤ専業メーカーであるヴィットリアの本気をみた気がします。今後の展開に注目していきたいと思います。
ライドシーン5
XCレースバイクを楽しく里山を走れるバイクに変えるタイヤ選択
インプレッション
モデルバイクは世界中のXCレーサーに愛用者が多く居るハードテイル29er、モンドレイカーPODIUM。この軽量XCレーシングバイクをベースに、里山のトレイルライドを楽しむスタイルを提案します。この章で紹介するヴィットリアAGGARO(アガーロ) は、クロスカントリータイヤの系譜でありながらも純XCレースタイヤに比べるとノブが大きく、グリップ力に余裕をもちます。XCバイクにこのタイヤとドロッパーポストを装着することで、開放感を味わうトレイルバイクとしての遊び方が可能になります。
軽量なXCタイヤに慣れているライダーには970g(29×2.35サイズ)という重量は重たく感じると思うけど、速く走る事を追求する「トレーニング」や「レース」とは視点を変えて、いつもの身近なフィールドで「トレイルライド」を楽しんでみてはいかがでしょう? 急な登りを低速で上ってトラクションコントロールの向上に取り組んだり、いつもは直線的なラインで通過しているトレイルでも、視点を変えてバンクを積極的に利用して「フローを感じるライン取り」にチャレンジするなど、テクニックの向上に取り組めば走りの幅を広げることができます。その副産物として、レースでは技術面で余裕が出てレース中のテクニカルな場面でスムーズに走る事が出来るようになります。それに何よりライドが楽しくなります。
そのコツはノブが大きくグリップ力に長けるタイヤに替えてみること。もちろんその重量増から、速く転がるタイヤではなくなります。しかしXCレースタイヤでは味わえない、以下のような状況ごとの性能が楽しめるのです。状況別にAGGAROの性能イメージのインプレッションを挙げます。
ジープロード(グラベル)
転がり具合、コーナーリング、ブレーキングともバランスが良いのはブロックパターンが適しているのだろう。また、密に配置されたブロックによりガレ場での尖った石によるトレッド面のカットが起こりにくいことが期待できる。セルフディスカバリー王滝100㎞などで最速タイムの更新を狙わないのであれば、カットパンクのリスクが少なく、安全確実に完走するためには最適なチョイスであるとも言える。しかし反対に、もしタイムを狙うならより軽量なBARZOやMAZCALを選ぶことになる路面状況です。平坦路や緩斜面の進みぐあい
砂利のグラベル、土系トレイルの平坦路や緩斜面などでは、走行抵抗の少ない密なブロックパターンのおかげでスピードのノリが大変スムースだった。AGGAROのタイヤ重量(29×2.35 / 940g)を気にしていたが、転がり抵抗が軽く、速く走れるタイヤなので重量増は気にしなくて良いとも感じた。キャンバーのコーナー
里山道にありがちなキャンバーのコーナー。いかにも滑りやすい場面なので、適切な速度に下げてからコーナーに侵入しよう。密なブロックが路面を掴み、XCレースタイヤより確実なグリップ感でコーナーを曲がれる。しかしMAZZAやMARTELLOほどはグリップの限界は高くない。しかし粘ってから限界を超えて一気にスッポ抜けるようなハイグリップタイヤと違い、流れ始めが早い分、スライドしていくタイヤをコントロールしやすいのだ。粘土質のスリッピーな路面
粘土質の急斜面、そのうえ湿っていてスリッピーなコンディション。豊富なエアボリュームと細かく密なブロックパターンが相まって路面を掴むので、低速でトラクションコントロールがしやすい。ただ、滑り始めた後のリカバーは、細いタイヤで大きなブロックを突き刺してグリップさせるタイプのタイヤに比べると弱い。泥でブロックの間が埋まってしまう「マッドスリック」な状態になることも。濡れた木の根っこ
ノブが密に配置されたブロックパターンで、常に複数のノブが広くグリップ力を発揮し、一気に横滑りしずらい。また、コンパウンド自体が濡れた表面・路面との相性が良いようだ。泥以外の滑る状況にとても強いタイヤだ。石の連続するガレ場
XCレース用タイヤだと細めのサイズになりがちで、それ故にエア圧を高めることになる。しかしワイドリムと太め(2.35)のAGARROタイヤなら、そのしなやかなケーシングが路面との接触面積を稼ぎ、このような危うい場面をクリアしていく。ここでもコンパウンドの良さを発揮。XCレースタイヤ以上の性能で、結果的に速く走れるということが実感できる。石が濡れている場合はさらにトラクションに慎重になることと、コンパウンドの性能が差を分ける。まとめ
総合的にAGGARO は標準的な軽量XCレースタイヤと比べると、転がり抵抗の軽さを除けばどの性能においても余裕がみられるため、難易度の高いコースでのXCレースで使えば重量増のデメリットを打ち消して結果的に速く走れる人も多いのではないかと思う。もちろんテクニックのある人なら軽量タイヤを選ぶのが正解だろうが、テクニック不足をカバーしてくれるタイヤでミスを減らすのも速さや余裕につながる。普段の練習やファンライドではこういったタイヤでテクを磨くのは、すべてのXCレーサーにおススメしたい上達方法だ。ぜひXCバイクで里山ライディングの楽しさを見つけて欲しい。バイクとタイヤの組み合わせの原則
「適合の組み合わせを2つ飛ばさない」
上の例ではXCバイクのタイヤをより走破性の高いものに交換することをおススメしましたが、気をつけたいのはその車種が想定しているタイヤの種類と太さのカテゴリーを欲張って2つ以上飛び越えると、アンマッチが起きてしまうということ。例えば純XCレースバイクにトレイル系タイヤをセットすればより下りを楽しめるバイクに近づきますが、欲張ってアグレッシブな下り系タイヤをセットすると、タイヤ性能に対してフレームやサスの剛性、ストローク量が足りなかったり、「役不足」や「不釣り合い」を感じるバイクになってしまいます。過ぎたるは及ばざるが如し。車種を2つ飛び越えないタイヤ選びに留めるのが良いでしょう。
タイヤをセットするリムも、リム幅をカタログデータ等で調べたうえで適合タイヤ太さ内に留めるべきです。古い規格のナロー(狭い)リムにワイドリムを想定した太いタイヤを装着するとヨレが大きくなり不安定感を生みます。標準仕様からのカスタマイズ時に注意したい基本ルールです。
インプレ総括
「ヴィットリアがMTBタイヤ界の勢力図を変えるかもしれない」 三上和志
富士見パノラマMTBコースでの撮影ロケを含めて前後約1ヶ月ほど、この記事内で紹介したヴィットリアのMTBタイヤを日常のライドでも徹底的に使って試してみました。じつはヴィットリアは最近使ったことのないブランドだったのですが、つきあってみるとどのタイヤも性能が非常に高く、アドバンテージが大きいことを思い知らされました。とくにグラフェン2.0コンパウンドと4Cテクノロジーは他ブランドにない性能で、かつトレッドやノブ形状もよく計算されている。そして今回紹介したのは3モデルに留めましたが、数多くのモデル、サイズ、トレッドの異なるラインアップがヴィットリアには揃っていますから、自分の求める性能で細かく選ぶことにも応えてくれます。唯一のデメリットはまだ日本のMTB界でポピュラーな存在ではないので、ショップでの入手に苦労することでしょうか。しかし今後は勢力図が塗り替わる可能性はおおいにあります。スポーツサイクルタイヤ専業メーカーであるヴィットリアの本気をみた気がします。今後の展開に注目していきたいと思います。
提供:VTJ、photo&text:Makoto.AYANO