2020/08/11(火) - 09:17
3つのライドシチュエーションごとにタイヤのチョイスとセッティングを、三上さんが遊び方・ライディングスタイルの提案と併せて教えてくれる。なおトレイル保護の観点からハードブレーキングを含む限界走行による徹底テストは富士見パノラママウンテンバイクコースで実施して撮影を行い、かつ長期使用によるタイヤの詳細なインプレは三上さんのホームトレイルでの普段のライドを通じて行い、後日フィードバックしていただいた。
サンタクルズ MEGATOWER+MAZZA 29×2.4エンデューロケーシング(フロント&リアとも) photo:Makoto.AYANO
MAZZA 29×2.4エンデューロケーシング もっともアグレッシブな下り系タイヤだ
これだけ性能・剛性が十分な高性能バイクになると、タイヤも相応のものが必要です。エンデューロレースや下りを攻めるライドを想定すれば、MAZZAはトレイルケーシングよりもアグレッシブに使えるエンデューロケーシングの方が良いでしょう。
フロント、リアともにMAZZA 29×2.4エンデューロケーシングをチョイス
ステップ形状になったノブとその表面上にあるサイピングのデザインがMAZZAの特徴
僕の”ダウンヒラー未満”の実力での下り能力だと、いくら攻めてもタイヤが逃げることなく、コーナーリングでよく踏ん張り、ハードブレーキングでもグリップを失うことなく、わざとパニックブレーキをかけてロックさせたりもしましたが、高負荷にもグリップが破綻せず、タイヤが負けない。MAZZAの性能はそれほどまでに高いです。
サンタクルズ MEGATOWER+MAZZA 29×2.4エンデューロケーシング(フロント&リアとも) photo:Makoto.AYANO
ノブのデザインが効いているんでしょう、ブレーキをかけた時に広がって粘るようです。センターノブが広がって路面に刺さり、引っかかり、良くブレーキが効きました。サイドはノブ間隔が空いており、隙間があるにもかかわらずセンターからサイドに荷重が移るときにも一気に荷重が抜けるような挙動を起こさず、センターからサイドにグリップが緩やかに受け渡せている。それはステップ形状になったノブとその表面上にあるサイピングのデザインの良さなんでしょう。
MTBゲレンデに典型的な締まった土のバームのダウンヒルはノブを路面に刺すことを意識してクリアする photo:Makoto.AYANO
そしてノブ表面は柔らかいゴムなのに、芯に硬いコアがあり、腰砕けしない。ノブ同士の間に大きめのスペースがあり、見た目から「ノブがヨレるかも」という心配を覆します。路面が締まって硬いバンクでもグリップは安定していました。ブレーキング、コーナリングともに大きな荷重をかけてねじる様にしてもケーシングの硬さが程良く、破綻しない。バイクとタイヤの性能が見合っていて、限界が高く、むしろ力が足りないのは自分でした(笑)。
MAZZA 29×2.4エンデューロケーシング(フロント&リアとも)のハードブレーキングテスト photo:Makoto.AYANO
強化された2PLY(二重)のエンデューロケーシングは、アスファルト上でねじる力を加えてもそれを受け止める剛性感があります。これがトレイルケーシングのモデルだと同じ空気圧でも受け止めきれず、ケーシングが負けてブリブリとヨジレてしまってグリップを失い、ラインが外へ逃げてしまいます。ですのでハードなエンデューロを想定したロングストロークのサスペンション+高剛性なWサスのハイスペックバイクには、それに見合った強化型のエンデューロケーシングがおススメです。
同カテゴリーの他社製のライバルにあたるタイヤと比べても、それらが安易なつくりに見えるほどですね。グラフェン2.0コンパウンド、4C、ノブの細かな設計まで全方位で進化したヴィットリアのタイヤを使ってみることをオススメします。MAZZA Enduroはフルサスバイクでのエンデューロレースに最適な性能を持っています。
サンタクルズ CHAMELEON29、フロント:MAZZA 29×2.4、リア:MARTELLO 29×2.6 photo:Makoto.AYANO
フロント:MAZZA 29×2.4 TRAILケーシング
タイヤサイズはフロントがMAZZAの2.4、リアがMARTELLOの2.6と、前タイヤが細くて後ろが太い組み合わせになっています。これが僕が今エンデューロレースに出場するときに選びたい組み合わせです。国内のエンデューロレースにもハードテールクラスがありますが、あえて総合順位でWサス勢に対してどこまで食い込めるか楽しんでいます。テクニックで勝負という面はありますが、タイヤの性能が試されるとも言えますね。
MAZZA 29×2.4 前輪は路面に刺して走りたいため2.4のチョイス
ノブが大きく張り出すMAZZA 29×2.4。前タイヤが細く、リアが太い組み合わせ。
ダウンヒルやエンデューロで標準的な太さのタイヤを選びます。乗り心地の面白さを求めるなら前後共に29+(29プラス)で、フロントにも2.6の太さを入れてあげるとフワフワして面白くはなるんですが、それだとフロントの面圧が低いんです。つまりコーナリングでエッジが効かない。フロントタイヤが太いとブロックが刺さる感覚が弱まるので、ライン選びが少し難しくなるんです。速く走るために攻める場合、前輪は路面に刺さってくれた方が良いので2.4のチョイスです。
リアはMARTELLO 29×2.6。太めで快適性と耐パンク性を追求
それがフルサスであれば前後同じ2.4を選ぶんですが、ハードテイルでより速く走ろうという時は、同じタイヤを入れてしなやかさを求めようとするとリム打ちの危険がでてくるのもあります。今はタイヤの中にコアライナー(発泡コア材)を入れてパンクを防止する方法があります。
もう一つの方法として、リアタイヤを太くするというこの選択を私は好んでやっています。コア材を入れずにリム打ちをしないよう、太いタイヤで乗り心地を確保する空気圧にしています。ヴィットリアのラインナップ中だとAGARROにも29×2.6があるけれど、アグレッシブに走る時にはMARTELLOの方がふさわしいトレッドパターンなのでこれを選んでいます。硬く締まったバンク路面などでタイヤの面圧が低いと横滑りしやすいので、ブロックが路面に刺さるように利くパターンのタイヤを履くのがコツです。
大きなジャンプを決められる軽量ハードテイルだが、着地時のリアタイヤの負担が大きい photo:Makoto.AYANO
ケーシングは「Trail」のしなやかなフィーリングが好みですね。空気圧は前後共に1.2気圧で合わせました。もし同じ太さのタイヤの場合だとリアは0.2気圧くらい高くします。エンデューロレースをこのセッティングで攻めて速く走ります。
ハードテイルバイクでのゲレンデダウンヒルでアグレッシブな走りをする時にもこの組み合わせは良さそうです。里山のトレイルであればこれらのタイヤセッティングはややオーバースペックで、無駄に漕いで強くブレーキをかけて熱く攻めたくなることでしょう。でもトレイルを痛める走りは禁物ですよ!
ロングストロークFサスの剛性とタイヤのアグレッシブさでコーナリングをクリアしていく photo:Makoto.AYANO
逆に、前後にMARTELLOの2.6をセットで使えば、少し大人しい走りになりますが里山トレイルライドから雪の中だって何処だって乗って行けちゃうと思います。MARTELLOは穏やかなトレイルタイヤの範囲に入るけど、オールマウンテンのど真ん中のタイヤ。使いやすいニュートラルなセンター的存在です。アグレッシブ度を上げてMAZZAを選ぶなら、フレームやフォークの強度や耐ヨレ性能がタイヤに見合っているかを気にしたいところです。
トレイルケーシングのしなやかさと空気量で路面のギャップをいなす。コアライナーを使用するのもテだ photo:Makoto.AYANO
フロントがMAZZAの2.4、リアがMARTELLOの2.6で富士見パノラマBコースを全開で攻めたインプレッション走行で、最終的に空気圧はフロント1.2、リア1.4に落ち着きました。1.2と1.2だとガレ場に着地した際にリム打ちしそうだったので、少し高めることで対応しました。フロントはノブを刺して曲がるけど、リアは少し滑らせ気味で、やや癖がある乗り方になります。直線でスピードを出す時には適切な組み合わせだけど、コーナーを曲がる時には前後性格の違うタイヤを入れることによる挙動の違いがあります。そこがトレイルライド的にも面白くて。エンデューロレースで考えると、乗りこなすのに癖があることに気をつける必要があります。
ガレ場のコーナリング時にはトレイルケーシングと太さによる空気量が効果的 photo:Makoto.AYANO
その「癖」とは、前がしっかりグリップしているのに、後ろが滑りやすいことでオーバーステアになりやすいこと。つまり前はがっちり掴むのにリアが流れてしまうこと。しかしただ速さだけでなく、ジャンプを楽しんだり、荒れた路面にあえて入ったりして遊ぶ際にはリアにエアボリュームがあることで余裕が出るので、面白い走りができる組み合わせと言えそうです。
前がしっかりグリップしているのに、後ろが滑りやすいことでオーバーステアになりやすい photo:Makoto.AYANO
そのいっぽう、エンデューロレースをシンプルに速く走るのであれば前後MAZZAの2.4を入れて、空気圧を下げた時の安心感を上げるためにコア材を入れるのがレースには向いているでしょう。ハードテイルでのダウンヒルは、上記をヒントにご自分の好みと走りにあったチョイスを見つけてみて下さい。
ライドシーン1
最新フルサスバイクでタイムを狙うエンデューロレース
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使用機材
バイク | サンタクルズ MEGATOWER |
タイヤ | MAZZA 29×2.4 ENDURO(フロント&リアとも) |
空気圧セッティング | 前後1.2気圧 |
インプレッション
エンデューロ&DH系フルサスバイクとして高い人気を誇るサンタクルズ MEGATOWERは、カーボンフレームに36mm径&160mmストロークのFサスを組み合わせた最強の下り系セットアップ。富士見パノラマなら上級コースにチャレンジする十分な性能を持ちます。まずは新作タイヤのフラッグシップ、MAZZA(マッツァ)にふさわしいバイクとして選びました。エンデューロやダウンヒルレースを想定して、MAZZAのタイヤセッティングを考えていきます。
これだけ性能・剛性が十分な高性能バイクになると、タイヤも相応のものが必要です。エンデューロレースや下りを攻めるライドを想定すれば、MAZZAはトレイルケーシングよりもアグレッシブに使えるエンデューロケーシングの方が良いでしょう。
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僕の”ダウンヒラー未満”の実力での下り能力だと、いくら攻めてもタイヤが逃げることなく、コーナーリングでよく踏ん張り、ハードブレーキングでもグリップを失うことなく、わざとパニックブレーキをかけてロックさせたりもしましたが、高負荷にもグリップが破綻せず、タイヤが負けない。MAZZAの性能はそれほどまでに高いです。
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ノブのデザインが効いているんでしょう、ブレーキをかけた時に広がって粘るようです。センターノブが広がって路面に刺さり、引っかかり、良くブレーキが効きました。サイドはノブ間隔が空いており、隙間があるにもかかわらずセンターからサイドに荷重が移るときにも一気に荷重が抜けるような挙動を起こさず、センターからサイドにグリップが緩やかに受け渡せている。それはステップ形状になったノブとその表面上にあるサイピングのデザインの良さなんでしょう。
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そしてノブ表面は柔らかいゴムなのに、芯に硬いコアがあり、腰砕けしない。ノブ同士の間に大きめのスペースがあり、見た目から「ノブがヨレるかも」という心配を覆します。路面が締まって硬いバンクでもグリップは安定していました。ブレーキング、コーナリングともに大きな荷重をかけてねじる様にしてもケーシングの硬さが程良く、破綻しない。バイクとタイヤの性能が見合っていて、限界が高く、むしろ力が足りないのは自分でした(笑)。
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強化された2PLY(二重)のエンデューロケーシングは、アスファルト上でねじる力を加えてもそれを受け止める剛性感があります。これがトレイルケーシングのモデルだと同じ空気圧でも受け止めきれず、ケーシングが負けてブリブリとヨジレてしまってグリップを失い、ラインが外へ逃げてしまいます。ですのでハードなエンデューロを想定したロングストロークのサスペンション+高剛性なWサスのハイスペックバイクには、それに見合った強化型のエンデューロケーシングがおススメです。
同カテゴリーの他社製のライバルにあたるタイヤと比べても、それらが安易なつくりに見えるほどですね。グラフェン2.0コンパウンド、4C、ノブの細かな設計まで全方位で進化したヴィットリアのタイヤを使ってみることをオススメします。MAZZA Enduroはフルサスバイクでのエンデューロレースに最適な性能を持っています。
ライドシーン2
ハードテイルバイクで下りを攻めるエンデューロレース
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使用機材
バイク | サンタクルズCHAMELEON 29 |
タイヤ フロント | MAZZA 29×2.4 |
タイヤ リア | MARTELLO 29×2.6 |
空気圧セッティング | インプレ中で言及 |
インプレッション
超人気車種サンタクルズCAMEREON、ハードテイルのカーボンフレームにFサスは130mmストローク、そしてこのシーンでは29インチで乗ります(CAMEREONは29と27.5インチのコンパチ使用が可能なバイク)。
タイヤサイズはフロントがMAZZAの2.4、リアがMARTELLOの2.6と、前タイヤが細くて後ろが太い組み合わせになっています。これが僕が今エンデューロレースに出場するときに選びたい組み合わせです。国内のエンデューロレースにもハードテールクラスがありますが、あえて総合順位でWサス勢に対してどこまで食い込めるか楽しんでいます。テクニックで勝負という面はありますが、タイヤの性能が試されるとも言えますね。
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ダウンヒルやエンデューロで標準的な太さのタイヤを選びます。乗り心地の面白さを求めるなら前後共に29+(29プラス)で、フロントにも2.6の太さを入れてあげるとフワフワして面白くはなるんですが、それだとフロントの面圧が低いんです。つまりコーナリングでエッジが効かない。フロントタイヤが太いとブロックが刺さる感覚が弱まるので、ライン選びが少し難しくなるんです。速く走るために攻める場合、前輪は路面に刺さってくれた方が良いので2.4のチョイスです。
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それがフルサスであれば前後同じ2.4を選ぶんですが、ハードテイルでより速く走ろうという時は、同じタイヤを入れてしなやかさを求めようとするとリム打ちの危険がでてくるのもあります。今はタイヤの中にコアライナー(発泡コア材)を入れてパンクを防止する方法があります。
もう一つの方法として、リアタイヤを太くするというこの選択を私は好んでやっています。コア材を入れずにリム打ちをしないよう、太いタイヤで乗り心地を確保する空気圧にしています。ヴィットリアのラインナップ中だとAGARROにも29×2.6があるけれど、アグレッシブに走る時にはMARTELLOの方がふさわしいトレッドパターンなのでこれを選んでいます。硬く締まったバンク路面などでタイヤの面圧が低いと横滑りしやすいので、ブロックが路面に刺さるように利くパターンのタイヤを履くのがコツです。
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ケーシングは「Trail」のしなやかなフィーリングが好みですね。空気圧は前後共に1.2気圧で合わせました。もし同じ太さのタイヤの場合だとリアは0.2気圧くらい高くします。エンデューロレースをこのセッティングで攻めて速く走ります。
ハードテイルバイクでのゲレンデダウンヒルでアグレッシブな走りをする時にもこの組み合わせは良さそうです。里山のトレイルであればこれらのタイヤセッティングはややオーバースペックで、無駄に漕いで強くブレーキをかけて熱く攻めたくなることでしょう。でもトレイルを痛める走りは禁物ですよ!
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逆に、前後にMARTELLOの2.6をセットで使えば、少し大人しい走りになりますが里山トレイルライドから雪の中だって何処だって乗って行けちゃうと思います。MARTELLOは穏やかなトレイルタイヤの範囲に入るけど、オールマウンテンのど真ん中のタイヤ。使いやすいニュートラルなセンター的存在です。アグレッシブ度を上げてMAZZAを選ぶなら、フレームやフォークの強度や耐ヨレ性能がタイヤに見合っているかを気にしたいところです。
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フロントがMAZZAの2.4、リアがMARTELLOの2.6で富士見パノラマBコースを全開で攻めたインプレッション走行で、最終的に空気圧はフロント1.2、リア1.4に落ち着きました。1.2と1.2だとガレ場に着地した際にリム打ちしそうだったので、少し高めることで対応しました。フロントはノブを刺して曲がるけど、リアは少し滑らせ気味で、やや癖がある乗り方になります。直線でスピードを出す時には適切な組み合わせだけど、コーナーを曲がる時には前後性格の違うタイヤを入れることによる挙動の違いがあります。そこがトレイルライド的にも面白くて。エンデューロレースで考えると、乗りこなすのに癖があることに気をつける必要があります。
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その「癖」とは、前がしっかりグリップしているのに、後ろが滑りやすいことでオーバーステアになりやすいこと。つまり前はがっちり掴むのにリアが流れてしまうこと。しかしただ速さだけでなく、ジャンプを楽しんだり、荒れた路面にあえて入ったりして遊ぶ際にはリアにエアボリュームがあることで余裕が出るので、面白い走りができる組み合わせと言えそうです。
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そのいっぽう、エンデューロレースをシンプルに速く走るのであれば前後MAZZAの2.4を入れて、空気圧を下げた時の安心感を上げるためにコア材を入れるのがレースには向いているでしょう。ハードテイルでのダウンヒルは、上記をヒントにご自分の好みと走りにあったチョイスを見つけてみて下さい。
提供:VTJ、photo&text:Makoto.AYANO
協力:サンタクルズ(ウィンクレル)
協力:サンタクルズ(ウィンクレル)