2020/08/01(土) - 13:18
ヴィットリアがトレイル/エンデューロカテゴリーとして新たにラインナップするMTBタイヤ3種(MAZZA、MARTELLO、AGARRO)。それぞれのタイヤをゲレンデダウンヒル、下り系オールマウンテン、里山の3つのライドシチュエーションにあわせたセッティングで乗り比べるインプレッションをお届け。同時にタイヤ選びのコツをレクチャーします。
全く新しいミックステライン用モデル MAZZA(マッツァ)は、ヴィットリアのトレイル/エンデューロラインでもっともアグレッシブなタイヤとなる。トレッドパターンは中央2列、サイド1列ずつ、いずれもシンプルに整列される。パターンの特徴は中央2列は間隔を広く取ることでブレーキング時のトラクションや泥ハケ性を確保していること。
ノブの形状が非常に凝ったつくりとされ、パフォーマンスアップを狙っている。中央2列は階段状の「ステップ」が設けられたノブと標準的な台形型のノブの2パターンを交互に配置。いずれにも設けられた回転方向と平行に入れられた深いサイプによって、ノブ上側に横方向の柔軟性を持たせている。これにより通常の直進時は転がり抵抗を抑えつつ、オフキャンバーなど横方向に粘りが欲しい時に機能してくれるノブとなっている。
階段状のステップが設けられた形状となっている「リーディングエッジ」ノブは、ハードコンディション向けXCタイヤのGATO、トレイル用のAGARROにも採用される技術。段差を設けることで転がり抵抗を低減しつつ、登り坂などでノブが路面を捉える高トラクション性能を獲得している。
サイドノブも形状の異なる2パターンが互い違いに配置されている。これらにはサイプ(溝)の幅を変化させる「プログレッシブサイプワイズ」というテクノロジーが採用されている。異なる幅のサイプを配置することでノブの柔軟性を部分的に変化させ、コーナリング時のグリップ感や挙動変化を捉えやすくなっているという。
コンパウンド設計は、中央ノブとサイドノブ、そしてトレッド下部、サイド部などそれぞれ異なる4種のコンパウンドを用いる「4Cテクノロジー」が採用されている。いずれもグラフェン2.0コンパウンドを使用しているが、それぞれに異なる特性を持たせることでグリップ力、耐久性、転がり抵抗といった性能を強化している。
MAZZAには120TPIのナイロン生地1枚を折り重ねたケーシング+耐パンクレイヤー(サイドウォール)というケーシング構造のTRAILモデルと、120TPIのナイロン生地2枚を折り重ねたENDUROモデルの2種類がラインアップされる。いずれもリム打ちパンクを防ぐAPFがインサートされている。
用途の広いオールコンディションタイヤ MARTELLO(マルテッロ)はモーターサイクルからインスパイアされた四角いノブによる安定性と耐久性が特徴だ。エンデューロレースタイヤほどアグレッシブでなく、しかし下り系トレイルライドに十分対応するボリュームのノブ群は、大・小のノブが多方向に組み合わされる。
ノブの表面には徐々に変わるサイプ幅のパターンが刻まれ、スピードやグリップを犠牲にすることなく触知感の高いグリップを実現。変化のあるトレイルの上りも下りもバランス良くこなせる、全状況に対応する万能型タイヤだ。グラフェン2.0コンパウンドによる高いウェット性能と4Cテクノロジーの採用により、耐摩耗性の高さと転がりの抵抗の低さを両立している。MAZZA同様にケーシングはトレイルとエンデューロの2タイプがある。
先行してラインアップされたAGARRO(アガーロ)もMAZZAに用いられるテクノロジーを数多く採用したトレイル用タイヤ。XCレース用タイヤよりも高いグリップ力を備えつつ、エンデューロなど下り系タイヤのようにノブが大きすぎないように設計されたモデルだ。エンデューロ用タイヤと見比べてみると、ノブの背丈は低く、間隔は狭め。これにより転がり抵抗を軽減させつつもグリップ力を獲得している。
トレッドには4Cテクノロジーが用いられ、特性の異なる4種類のグラフェン2.0コンパウンドをトレッド表面とベースなど適材適所に配置することでグリップ、転がり抵抗、耐久性といった性能をバランス良く向上させている。
ケーシングは軽量性を重視したTRAILモデルのみの展開。120TPIナイロン生地1枚を使用したチューブレスレディ仕様かつ、サイドには耐パンクレイヤーを配置し、ビード付近にはリム打ちパンクのリスクを低減するAPFラバーが内蔵される。AGARROはややハードな路面にフィットし、登りも下りも自走というようなトレイルライド向きと言えそうだ。
豊口さんは一昨年まで某タイヤメーカーに勤務。オフロード系タイヤの設計・開発に携わった。退職後の昨年からは、CJシリーズや各レース会場でヴィットリアのタイヤサポートブースを展開。出場選手のトラブルに対応したり、タイヤの使い方のアドバイスを行っている頼もしい存在だ。
豊口:まずAGGAROはヴィットリアのXCタイヤとエンデューロタイヤ両方の良いところを採用したトレイルタイヤですね。上りも下りもあるテレインに対応すべく、センタートレッドのノブは密、しかし泥捌けに配慮してあります。サイドは小さめのノブでそこそこに横へ張り出して、コーナーでグリップを稼ぎます。
MARTERLLOはトレイルからエンデューロ向けに開発されたモデルです。センター部のノブはハイトを低めにして転がりの軽さを、サイドはエッジを効かせてあります。今回の3種のちょうど真ん中の性格の下り系タイヤです。
新作のMAZZAは本格エンデューロ向けタイヤで、下り系トレイルライド〜DHレースまでカバーするヴィットリアでもっともアグレッシブなモデルです。大きなブロックパターンのノブで、サイドにも大型ノブを配置してエッジを効かせたコーナリングを可能にします。ノブに割りやサイプ(溝)を入れることでロックセクションもよく登り、かつ滑り出しも穏やかなコントロール性にも優れるタイヤです。
三上:この3種類のモデルで、太さやケーシングを選んでいくことで自分のバイクや好みの走りにあったチョイスがほぼできますね。マッドタイヤなどの特化系モデルは今回省略しましたが、状況次第で選ぶことができる。それだけの幅広いラインナップがヴィットリアには揃っていますね。
ヴィットリアのMTBタイヤには3種類ものケーシングがあるんですね?
豊口:MAZZAはケージングの違いでTRAILとENDUROに分かれています。里山を走るにはしなやかさのTRAILケーシング(グレーサイド)、フルサスでスピードを出すレースなどの際には2プライ(二重)ケーシングでよりハードでコシのあるENDUROケーシング(ブラックサイド)が有利でしょう。そして今回は取り上げませんがクロスカントリーレース向けモデルのBARZOやMAZCALなどには、もっとも軽くてしなやかなXC-RACEケーシングが使用されます。それぞれさらに細分化して、重量や剛性を調整した多種類のケーシングが使用されています。
三上:4種類のコンパウンドが使用されているのにも驚きます。じつは今日のテストライドの前にすでにホームコースの山で全モデルの試し乗りを済ませているんですが、濡れた岩などでも滑らないんです。コンパウンドが効いているのと、ノブの表面が柔らかいのに芯があって、踏ん張るんです。4種のコンパウンドの効果でしょうか。
豊口:はい。他社ならデュアル(2種)、多くてトリプル(3種)まででしょう。ヴィットリアは「4C」=クアッド・コンパウンドとして4種類ものコンパウンドをひとつのタイヤに使用する唯一のメーカーです。センターとサイド部のノブの役割の違い、転がり抵抗や耐摩耗性、表面はソフトに、奥の層には芯を、と、硬さや性質の違う配合が異なるコンパウンドでトレッドをつくり上げています。他社にはない技術の成形機を使うことで乗り味を最適化することに成功したと聞いています。4Cとしてトレッドの内側までコントロールするのはヴィットリアだけですね。
三上:それが実際に乗って感じ取れるのが凄いところです。あと、ノブ形状も段差や溝がつけられて面白いカタチに工夫されていますね。
豊口:最近のヴィットリアのトレイルタイヤはサイプ(=溝)をノブに刻むことでグリップの方向性をコントロールしていますね。サイプの働きで、ノブがうまく潰れて凸凹を掴むんです。そしてノブ全体は最後までは潰れず、コシがある。元タイヤ開発者としては、ライディングに対するノブの働きをうまく考えてあると感心しますね。
三上:ノブやトレッド表面を触ると柔らかくて、「すぐに減っちゃうんじゃないか」と心配になるけど、減らないんですね。これはヴィットリアのロードタイヤにも言えることで、摩耗に強くて長持ちするので驚いています。
豊口:グラフェン2.0になって、全方位的に性能が上がっているので、グリップ、耐久性も向上しているようです。ロード選手の方々からは信じられないぐらいタイヤが長持ちすると伺っています。MTBでもそれが感じられますか?
カタログのセールスポイントを読んで「そんなにうまいこといくのか?」と疑心暗鬼でしたが、本当にそれ(性能)が達成できているのは驚きです。雨でのグリップがいい、スピードの乗りもいい、いいところ総取りなんです。ひとつのコンパウンドだと成り立たないけど、4つを使い分けることで部位ごとに役割をもたせて設計しているようです。グラフェン2.0 かつ4Cコンパウンドが、他ブランドとの差をつけていると感じますね。
グラフェン2.0、4Cテクノロジー紹介動画
三上:そもそも他ブランドのタイヤをOEMで製造しているのもヴィットリア(※グループの製造部門であるライオンタイヤ)だったりするんですが、そこは図抜けた技術力があるんでしょうね。
綾野(CW編集部): ヴィットリアのタイ工場を訪問取材した際、その技術力とともにあらゆるスポーツバイクタイヤがほとんどハンドメイドに近いのに驚きました。そして世界最高の設備を誇るコンパウンド工場&開発センターがバンコク郊外にある。元MTBタイヤ開発者としてみたヴィットリアはどんな会社でしょう?
豊口:派手なことをしない会社ですね。しかし製品はちゃんとつくり込みされている。ロードの世界だとCORSAなど高い評価を得る定番のタイヤがあるんですが、もともとビットリアはGEAX(ジアックス)のブランド名でMTBタイヤを展開してきて、5年前にブランド名をヴィットリアに戻しているんです。ですので歴史がないブランドなわけじゃないんですが、新規参入のイメージになってしまうんだと思います。MTBタイヤのプロモーションも今までしていなかったようです。
三上:GEAX時代は「硬めのノブを刺していくタイヤ」という独自の傾向がありました。しかし最近は現在のMTB界で主流のライディングスタイルに合わせた製品を出してきていますね。
豊口:今のヴィットリア製タイヤはノブが柔らかいけどモゲないよう強度も意識している。ちゃんとアールを取りながら、サイプを入れるなどして動きやヨレを想定内に抑えているようです。激しいライドをするとノブがもげるタイヤは割と多くありますからね。
三上:MTBタイヤの味付けは変わってきていますね。主要な他社メジャーブランドのタイヤも少し前までコンパウンドが硬いものが多かったんですが、今は柔らかくなってきています。見えにくいトレンドとして、トレッド表面は柔らかいながらも、芯のあるコシのもたせかたなど、ヴィットリアも変わってきているニーズにうまく合わせてきています。
三上:MAZZAも、これだけ大きなノブでもいざ滑ったときにもコントロールしやすいタイヤになっているのは他のタイヤに無い性能ですね。滑り始めはそのぶん少し速いけど、スライドしてからも一気にはグリップが抜けず、流れず、コントロールしやすいタイヤになっています。そのあたりの限界性能は里山のトレイルでは試せないので、今日はゲレンデダウンヒルで試すのが楽しみです。
ヴィットリアとしてはトレイル/エンデューロ系MTBタイヤのラインアップが完成したように思えます。今まで他ブランドに任せていた部分を、ついに攻めに来た、という印象です。
豊口:かつてヴィットリアにはクロカン黄金時代がありました。今もXC系のワールドカッパーの使用率は高いんですが、その主流に合わせてきたぶん、エンデューロや下り系の開発に熱心じゃなかったのかなと思います。転がり抵抗重視で、抵抗の少ない速いXCタイヤを目指していた。あくまでレース志向のブランドとして、それは今でもラインナップにモデルが充実していますね。
三上:攻め攻めのイタリア系スピードタイヤ。選択肢は多いが、欧州の乾いた土質に合わせたコンパウンドやトレッドで、ウェットやマッドの状況はあまり考慮されていない性格もありました。でもようやくトレイル、エンデューロタイヤに本腰を入れてきた?
豊口:ヴィットリアは他の多くの有名ブランドのタイヤをOEM生産していて、会社の方針では「その社のために開発した技術は自社の製品に転用しない」という原則を大事にしている。横展開をしない、というルールをもってやってきた。しかし同時に自社の技術を研ぎ澄まし続け、自社ブランドとしての製品を開発しだすと、すでに他社を大きく超えた技術で展開を始めたという印象です。
それと、マウンテンバイクタイヤの開発の中心はアメリカに変わったんです。それで今までと毛色の違ういいタイヤが出てきた面はあります。
三上:ショップ店長の立場で言わせてもらうと、MAZZAで7800円。絶妙な価格設定だと思います(笑)。市場の他社の安いタイヤと高いタイヤのちょうど真ん中で、高いタイヤの性能を超えている。選ばれる競争力を持っていると思います。対コンシュマーでは人気が出るにも価格競争という面はありますから。
豊口:近年、CJシリーズのダウンヒルレースでも意外に使ってくれている選手が多いんですよね。他の有名ブランドのスポンサードライダーが多いなかで、すでに性能で選んでくれている選手が少なからずいる。
三上:あと僕が気になるのは、ヴィットリアのMTBタイヤはサイドのラベルの主張がかなり強いデザインですね。オールマウンテンや横乗り系のバイクで流行りのナチュラル系のカラーやデザインのバイクに着けると違和感があると感じるほどです。タイヤがバイク全体のデザインに及ぼすイメージは大きいですからね。でも、これが性能で選ばれるようになれば「そのブランドのタイヤを使用していることがかっこいい」となるので、心配するほどのことではないんですが(笑)。
豊口:なるほど、確かに。それはブランドのこれからの課題でしょうか。
三上:では富士見パノラマのコースを使ってのテストライドに入りましょう。地元の山で試し乗りしてきたんですが、今日は限界性能も試したく、トレイルを痛める心配をしなくていいゲレンデで思いっきりタイヤに負荷をかけてのテストを行います。そしてライドシチュエーションごとのタイヤチョイスやセッティングのアドバイスもできればと思います。
※当プログラムは参加いただく販売店様のみ対象の店舗限定となります。
※返金対応はできません。
※交換に必要な作業工賃が発生する場合は、お客様のご負担となります。
※原則、交換品は店頭にある在庫に限ります。
※無償交換は1回限りです。
詳しくはこちら。なおキャンペーン参加店は現在拡大中だ。
アドバイザー&テストライダー
三上和志さん(サイクルハウスMIKAMI)
埼玉県飯能市のサイクルハウスMIKAMI店長。地元の山でのMTBライドを毎朝欠かさず、ENSエンデューロシリーズにも参戦するマウンテンバイカー。愛する飯能・阿須の山々では奥武蔵マウンテンバイク友の会を主宰し、トレイル整備や清掃活動を通して地域に貢献、自治体と協力し合いながらマウンテンバイクの地位向上につとめている。ENSシリーズではハードテイルMTBでフルサスに乗ったワークスライダーを喰ってしまう成績を出すテクニックの持ち主だ。
埼玉県飯能市のサイクルハウスMIKAMI店長。地元の山でのMTBライドを毎朝欠かさず、ENSエンデューロシリーズにも参戦するマウンテンバイカー。愛する飯能・阿須の山々では奥武蔵マウンテンバイク友の会を主宰し、トレイル整備や清掃活動を通して地域に貢献、自治体と協力し合いながらマウンテンバイクの地位向上につとめている。ENSシリーズではハードテイルMTBでフルサスに乗ったワークスライダーを喰ってしまう成績を出すテクニックの持ち主だ。
新しく出揃ったヴィットリアのトレイル/エンデューロタイヤ 3モデル
MAZZA(マッツァ)
全く新しいミックステライン用モデル MAZZA(マッツァ)は、ヴィットリアのトレイル/エンデューロラインでもっともアグレッシブなタイヤとなる。トレッドパターンは中央2列、サイド1列ずつ、いずれもシンプルに整列される。パターンの特徴は中央2列は間隔を広く取ることでブレーキング時のトラクションや泥ハケ性を確保していること。
ノブの形状が非常に凝ったつくりとされ、パフォーマンスアップを狙っている。中央2列は階段状の「ステップ」が設けられたノブと標準的な台形型のノブの2パターンを交互に配置。いずれにも設けられた回転方向と平行に入れられた深いサイプによって、ノブ上側に横方向の柔軟性を持たせている。これにより通常の直進時は転がり抵抗を抑えつつ、オフキャンバーなど横方向に粘りが欲しい時に機能してくれるノブとなっている。
階段状のステップが設けられた形状となっている「リーディングエッジ」ノブは、ハードコンディション向けXCタイヤのGATO、トレイル用のAGARROにも採用される技術。段差を設けることで転がり抵抗を低減しつつ、登り坂などでノブが路面を捉える高トラクション性能を獲得している。
サイドノブも形状の異なる2パターンが互い違いに配置されている。これらにはサイプ(溝)の幅を変化させる「プログレッシブサイプワイズ」というテクノロジーが採用されている。異なる幅のサイプを配置することでノブの柔軟性を部分的に変化させ、コーナリング時のグリップ感や挙動変化を捉えやすくなっているという。
コンパウンド設計は、中央ノブとサイドノブ、そしてトレッド下部、サイド部などそれぞれ異なる4種のコンパウンドを用いる「4Cテクノロジー」が採用されている。いずれもグラフェン2.0コンパウンドを使用しているが、それぞれに異なる特性を持たせることでグリップ力、耐久性、転がり抵抗といった性能を強化している。
MAZZAには120TPIのナイロン生地1枚を折り重ねたケーシング+耐パンクレイヤー(サイドウォール)というケーシング構造のTRAILモデルと、120TPIのナイロン生地2枚を折り重ねたENDUROモデルの2種類がラインアップされる。いずれもリム打ちパンクを防ぐAPFがインサートされている。
ヴィットリア MAZZA TRAIL
タイヤ形式 | チューブレスレディ |
ケーシング | 120TPIナイロン+耐パンクレイヤー |
サイズ(重量) | 27.5×2.4(890g)、27.5×2.6(1030g)、29×2.4(950g)、29×2.6(1100g) |
価格 | 7,800円(税抜) |
ヴィットリア MAZZA ENDURO
タイヤ形式 | チューブレスレディ |
ケーシング | 120TPIナイロン (2PLY)+耐パンクレイヤー |
サイズ(重量) | 27.5×2.4(1090g)、27.5×2.6(1230g)、29×2.4(1150g)、29×2.6(1300g) |
価格 | 7,800円(税抜) |
MARTELLO(マルテッロ)
用途の広いオールコンディションタイヤ MARTELLO(マルテッロ)はモーターサイクルからインスパイアされた四角いノブによる安定性と耐久性が特徴だ。エンデューロレースタイヤほどアグレッシブでなく、しかし下り系トレイルライドに十分対応するボリュームのノブ群は、大・小のノブが多方向に組み合わされる。
ノブの表面には徐々に変わるサイプ幅のパターンが刻まれ、スピードやグリップを犠牲にすることなく触知感の高いグリップを実現。変化のあるトレイルの上りも下りもバランス良くこなせる、全状況に対応する万能型タイヤだ。グラフェン2.0コンパウンドによる高いウェット性能と4Cテクノロジーの採用により、耐摩耗性の高さと転がりの抵抗の低さを両立している。MAZZA同様にケーシングはトレイルとエンデューロの2タイプがある。
ヴィットリア MARTELLO TRAIL
タイヤ形式 | チューブレスレディ |
ケーシング | 120TPIナイロン+耐パンクレイヤー |
サイズ(重量) | 27.5×2.35(920g)、27.5×2.6(1100g)、27.5×2.8(1140g)、29×2.35(960g)、29×2.6(1100g) |
価格 | 7,800円(税抜) |
ヴィットリア MARTELLO ENDURO
タイヤ形式 | チューブレスレディ |
ケーシング | 120TPIナイロン(2PLY)+耐パンクレイヤー |
サイズ(重量) | 27.5×2.35(1180g)、27.5×2.6(1260g)、27.5×2.8(1300g)、29×2.35(1230g)、29×2.6(1100g) |
価格 | 7,800円(税抜) |
AGGARO(アガーロ)
先行してラインアップされたAGARRO(アガーロ)もMAZZAに用いられるテクノロジーを数多く採用したトレイル用タイヤ。XCレース用タイヤよりも高いグリップ力を備えつつ、エンデューロなど下り系タイヤのようにノブが大きすぎないように設計されたモデルだ。エンデューロ用タイヤと見比べてみると、ノブの背丈は低く、間隔は狭め。これにより転がり抵抗を軽減させつつもグリップ力を獲得している。
トレッドには4Cテクノロジーが用いられ、特性の異なる4種類のグラフェン2.0コンパウンドをトレッド表面とベースなど適材適所に配置することでグリップ、転がり抵抗、耐久性といった性能をバランス良く向上させている。
ケーシングは軽量性を重視したTRAILモデルのみの展開。120TPIナイロン生地1枚を使用したチューブレスレディ仕様かつ、サイドには耐パンクレイヤーを配置し、ビード付近にはリム打ちパンクのリスクを低減するAPFラバーが内蔵される。AGARROはややハードな路面にフィットし、登りも下りも自走というようなトレイルライド向きと言えそうだ。
ヴィットリア AGARRO
タイヤ形式 | チューブレスレディ |
ケーシング | 120TPIナイロン+耐パンクレイヤー |
サイズ(重量) | 27.5×2.35(850g)、27.5×2.6(940g)、29×2.35(940g)、29×2.6(970g) |
価格 | 7,800円(税抜) |
ヴィットリアのトレイル/エンデューロタイヤってどんな性質?
3つのタイヤの実走&インプレに入る前に、三上さんとヴィットリア日本総代理店V.T.J(ブイ・ティー・ジェイ)のサービスアドバイザー 豊口さんによるQ&A対談を紹介しよう。豊口さんは一昨年まで某タイヤメーカーに勤務。オフロード系タイヤの設計・開発に携わった。退職後の昨年からは、CJシリーズや各レース会場でヴィットリアのタイヤサポートブースを展開。出場選手のトラブルに対応したり、タイヤの使い方のアドバイスを行っている頼もしい存在だ。
三上和志さん×豊口泰弘さん対談から見るタイヤの特徴
三上:改めてヴィットリアのトレイル/エンデューロタイヤ、今回テストする3モデルについてそれぞれ性格を教えて下さい。豊口:まずAGGAROはヴィットリアのXCタイヤとエンデューロタイヤ両方の良いところを採用したトレイルタイヤですね。上りも下りもあるテレインに対応すべく、センタートレッドのノブは密、しかし泥捌けに配慮してあります。サイドは小さめのノブでそこそこに横へ張り出して、コーナーでグリップを稼ぎます。
MARTERLLOはトレイルからエンデューロ向けに開発されたモデルです。センター部のノブはハイトを低めにして転がりの軽さを、サイドはエッジを効かせてあります。今回の3種のちょうど真ん中の性格の下り系タイヤです。
新作のMAZZAは本格エンデューロ向けタイヤで、下り系トレイルライド〜DHレースまでカバーするヴィットリアでもっともアグレッシブなモデルです。大きなブロックパターンのノブで、サイドにも大型ノブを配置してエッジを効かせたコーナリングを可能にします。ノブに割りやサイプ(溝)を入れることでロックセクションもよく登り、かつ滑り出しも穏やかなコントロール性にも優れるタイヤです。
三上:この3種類のモデルで、太さやケーシングを選んでいくことで自分のバイクや好みの走りにあったチョイスがほぼできますね。マッドタイヤなどの特化系モデルは今回省略しましたが、状況次第で選ぶことができる。それだけの幅広いラインナップがヴィットリアには揃っていますね。
ヴィットリアのMTBタイヤには3種類ものケーシングがあるんですね?
豊口:MAZZAはケージングの違いでTRAILとENDUROに分かれています。里山を走るにはしなやかさのTRAILケーシング(グレーサイド)、フルサスでスピードを出すレースなどの際には2プライ(二重)ケーシングでよりハードでコシのあるENDUROケーシング(ブラックサイド)が有利でしょう。そして今回は取り上げませんがクロスカントリーレース向けモデルのBARZOやMAZCALなどには、もっとも軽くてしなやかなXC-RACEケーシングが使用されます。それぞれさらに細分化して、重量や剛性を調整した多種類のケーシングが使用されています。
三上:4種類のコンパウンドが使用されているのにも驚きます。じつは今日のテストライドの前にすでにホームコースの山で全モデルの試し乗りを済ませているんですが、濡れた岩などでも滑らないんです。コンパウンドが効いているのと、ノブの表面が柔らかいのに芯があって、踏ん張るんです。4種のコンパウンドの効果でしょうか。
豊口:はい。他社ならデュアル(2種)、多くてトリプル(3種)まででしょう。ヴィットリアは「4C」=クアッド・コンパウンドとして4種類ものコンパウンドをひとつのタイヤに使用する唯一のメーカーです。センターとサイド部のノブの役割の違い、転がり抵抗や耐摩耗性、表面はソフトに、奥の層には芯を、と、硬さや性質の違う配合が異なるコンパウンドでトレッドをつくり上げています。他社にはない技術の成形機を使うことで乗り味を最適化することに成功したと聞いています。4Cとしてトレッドの内側までコントロールするのはヴィットリアだけですね。
三上:それが実際に乗って感じ取れるのが凄いところです。あと、ノブ形状も段差や溝がつけられて面白いカタチに工夫されていますね。
豊口:最近のヴィットリアのトレイルタイヤはサイプ(=溝)をノブに刻むことでグリップの方向性をコントロールしていますね。サイプの働きで、ノブがうまく潰れて凸凹を掴むんです。そしてノブ全体は最後までは潰れず、コシがある。元タイヤ開発者としては、ライディングに対するノブの働きをうまく考えてあると感心しますね。
三上:ノブやトレッド表面を触ると柔らかくて、「すぐに減っちゃうんじゃないか」と心配になるけど、減らないんですね。これはヴィットリアのロードタイヤにも言えることで、摩耗に強くて長持ちするので驚いています。
豊口:グラフェン2.0になって、全方位的に性能が上がっているので、グリップ、耐久性も向上しているようです。ロード選手の方々からは信じられないぐらいタイヤが長持ちすると伺っています。MTBでもそれが感じられますか?
カタログのセールスポイントを読んで「そんなにうまいこといくのか?」と疑心暗鬼でしたが、本当にそれ(性能)が達成できているのは驚きです。雨でのグリップがいい、スピードの乗りもいい、いいところ総取りなんです。ひとつのコンパウンドだと成り立たないけど、4つを使い分けることで部位ごとに役割をもたせて設計しているようです。グラフェン2.0 かつ4Cコンパウンドが、他ブランドとの差をつけていると感じますね。
グラフェン2.0、4Cテクノロジー紹介動画
三上:そもそも他ブランドのタイヤをOEMで製造しているのもヴィットリア(※グループの製造部門であるライオンタイヤ)だったりするんですが、そこは図抜けた技術力があるんでしょうね。
綾野(CW編集部): ヴィットリアのタイ工場を訪問取材した際、その技術力とともにあらゆるスポーツバイクタイヤがほとんどハンドメイドに近いのに驚きました。そして世界最高の設備を誇るコンパウンド工場&開発センターがバンコク郊外にある。元MTBタイヤ開発者としてみたヴィットリアはどんな会社でしょう?
豊口:派手なことをしない会社ですね。しかし製品はちゃんとつくり込みされている。ロードの世界だとCORSAなど高い評価を得る定番のタイヤがあるんですが、もともとビットリアはGEAX(ジアックス)のブランド名でMTBタイヤを展開してきて、5年前にブランド名をヴィットリアに戻しているんです。ですので歴史がないブランドなわけじゃないんですが、新規参入のイメージになってしまうんだと思います。MTBタイヤのプロモーションも今までしていなかったようです。
三上:GEAX時代は「硬めのノブを刺していくタイヤ」という独自の傾向がありました。しかし最近は現在のMTB界で主流のライディングスタイルに合わせた製品を出してきていますね。
豊口:今のヴィットリア製タイヤはノブが柔らかいけどモゲないよう強度も意識している。ちゃんとアールを取りながら、サイプを入れるなどして動きやヨレを想定内に抑えているようです。激しいライドをするとノブがもげるタイヤは割と多くありますからね。
三上:MTBタイヤの味付けは変わってきていますね。主要な他社メジャーブランドのタイヤも少し前までコンパウンドが硬いものが多かったんですが、今は柔らかくなってきています。見えにくいトレンドとして、トレッド表面は柔らかいながらも、芯のあるコシのもたせかたなど、ヴィットリアも変わってきているニーズにうまく合わせてきています。
三上:MAZZAも、これだけ大きなノブでもいざ滑ったときにもコントロールしやすいタイヤになっているのは他のタイヤに無い性能ですね。滑り始めはそのぶん少し速いけど、スライドしてからも一気にはグリップが抜けず、流れず、コントロールしやすいタイヤになっています。そのあたりの限界性能は里山のトレイルでは試せないので、今日はゲレンデダウンヒルで試すのが楽しみです。
ヴィットリアとしてはトレイル/エンデューロ系MTBタイヤのラインアップが完成したように思えます。今まで他ブランドに任せていた部分を、ついに攻めに来た、という印象です。
豊口:かつてヴィットリアにはクロカン黄金時代がありました。今もXC系のワールドカッパーの使用率は高いんですが、その主流に合わせてきたぶん、エンデューロや下り系の開発に熱心じゃなかったのかなと思います。転がり抵抗重視で、抵抗の少ない速いXCタイヤを目指していた。あくまでレース志向のブランドとして、それは今でもラインナップにモデルが充実していますね。
三上:攻め攻めのイタリア系スピードタイヤ。選択肢は多いが、欧州の乾いた土質に合わせたコンパウンドやトレッドで、ウェットやマッドの状況はあまり考慮されていない性格もありました。でもようやくトレイル、エンデューロタイヤに本腰を入れてきた?
豊口:ヴィットリアは他の多くの有名ブランドのタイヤをOEM生産していて、会社の方針では「その社のために開発した技術は自社の製品に転用しない」という原則を大事にしている。横展開をしない、というルールをもってやってきた。しかし同時に自社の技術を研ぎ澄まし続け、自社ブランドとしての製品を開発しだすと、すでに他社を大きく超えた技術で展開を始めたという印象です。
それと、マウンテンバイクタイヤの開発の中心はアメリカに変わったんです。それで今までと毛色の違ういいタイヤが出てきた面はあります。
三上:ショップ店長の立場で言わせてもらうと、MAZZAで7800円。絶妙な価格設定だと思います(笑)。市場の他社の安いタイヤと高いタイヤのちょうど真ん中で、高いタイヤの性能を超えている。選ばれる競争力を持っていると思います。対コンシュマーでは人気が出るにも価格競争という面はありますから。
豊口:近年、CJシリーズのダウンヒルレースでも意外に使ってくれている選手が多いんですよね。他の有名ブランドのスポンサードライダーが多いなかで、すでに性能で選んでくれている選手が少なからずいる。
三上:あと僕が気になるのは、ヴィットリアのMTBタイヤはサイドのラベルの主張がかなり強いデザインですね。オールマウンテンや横乗り系のバイクで流行りのナチュラル系のカラーやデザインのバイクに着けると違和感があると感じるほどです。タイヤがバイク全体のデザインに及ぼすイメージは大きいですからね。でも、これが性能で選ばれるようになれば「そのブランドのタイヤを使用していることがかっこいい」となるので、心配するほどのことではないんですが(笑)。
豊口:なるほど、確かに。それはブランドのこれからの課題でしょうか。
三上:では富士見パノラマのコースを使ってのテストライドに入りましょう。地元の山で試し乗りしてきたんですが、今日は限界性能も試したく、トレイルを痛める心配をしなくていいゲレンデで思いっきりタイヤに負荷をかけてのテストを行います。そしてライドシチュエーションごとのタイヤチョイスやセッティングのアドバイスもできればと思います。
ヴィットリアMTBタイヤ30日間無償交換プログラム
ヴィットリアのMTBタイヤに満足できなかった場合、購入から30日以内にタイヤとレシートを購入した店舗へ持ち込むと、店頭にある他のMTBタイヤと交換することができる「30日間無償交換プログラム」を実施中だ。性能に満足できなかった場合、あるいはタイヤ選びを間違えたとき、他のタイヤに交換できるキャンペーンだ。概要
MTBにとって、テライン、コンディションに合ったタイヤを選ぶことは非常に重要です。異なったタイプのテラインや、天候が変化した場合に、ライドに適切なタイヤとトレッドパターンを選ぶことは簡単ではありません。このプログラムによって、上記のような問題につながるリスク要因を無くすことが出来ます。ユーザーは購入したヴィットリアMTBタイヤに満足しなかった場合、どのような理由であれ、他のヴィットリアタイヤと無償で交換することができます。※当プログラムは参加いただく販売店様のみ対象の店舗限定となります。
※返金対応はできません。
※交換に必要な作業工賃が発生する場合は、お客様のご負担となります。
※原則、交換品は店頭にある在庫に限ります。
※無償交換は1回限りです。
購入から交換まで
- プログラム参加店で購入する。(必ずレシート等販売証明書を受け取る)
- 交換が必要な場合、購入日から30日の間に、外したタイヤと購入証明書を持参の上、購入店へ申し出る。
※自身でタイヤを外せない場合はホイールを持参。その場合、取り外し工賃が発生します)
※タイヤは泥やシーラント剤をきれいに除去の上、持参ください。 - 店頭にある他のVittoria製MTBタイヤと交換する。※自身で装着できない場合、工賃が発生します。
- 店頭で簡単なアンケートに答えていただきます。
詳しくはこちら。なおキャンペーン参加店は現在拡大中だ。
提供:VTJ、photo&text:Makoto.AYANO