2016/09/01(木) - 14:02
スペシャライズドが送り出すエアロロードの極北 Venge ViAS
昨年衝撃的なデビューを飾ったスペシャライズドのエアロロード、Venge ViAS。前作となる初代Vengeから大幅な進化を遂げたVenge ViASはワイヤー類のフル内装を実現する”Aerofly ViASハンドル”、フレームやフォークと一体化した”ゼロドラッグブレーキ”といったトータルインテグレーションデザインによって、TTバイクにも迫る空力性能を獲得したスペシャルマシンだ。「史上最速のエアロロードバイクを製作すること」という極めてシンプルな命題を実現すべく、1000時間以上というテストを長い開発期間を費やし送り出されたVenge ViASは、既に多くのレースで勝利を収めている。
ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)やマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)らによって、今年のツール・ド・フランスの平坦ステージでは勝利を量産。高速のスプリント勝負、そしてその前哨戦たるトレイン同士の主導権争いにおいて、Venge ViASのエアロダイナミクスが大きな支えとなったことに疑う余地はない。
エアロロード×ディスクブレーキ 総合力を高めたVenge ViAS Disc
名実ともに世界最速バイクとしての座を確固たるものとしたVenge ViASだが、2017年モデルではディスクブレーキモデルが追加されることが発表された。エアロロード×ディスクブレーキというのは意外な組み合わせ。2017モデルローンチ会場では多くの参加者が驚きの表情に。
しかし、新たなフロンティアを切り拓いていく姿勢こそ、まさにスペシャライズドスピリット。Tarmac、Roubaixに加え、このVenge ViAS Discの登場により、全てのロードラインアップにディスクブレーキモデルが完備されることとなった。それも、ディスクブレーキが今後メインストリームとなるという強い確信があってこそ。
エアロダイナミクスという観点から見ると”ゼロドラッグ”ブレーキモデルから一歩劣ってしまうディスクブレーキモデルだが、その分絶対的な制動力やコントロール性能、オールウェザーに対応する安定したブレーキフィーリング、そしてメンテナンス性といったさまざまな側面で大きなアドバンテージを持っている。
速く走るだけではない、きっちりと曲がり、しっかりと止まる。ロードバイクの基本にして最も大切な性能を追い求めた結果、ディスクブレーキの採用はVenge ViASの持つポテンシャルを更なる高みへと押し上げることとなった。
また、ディスクブレーキ化にあたり外見上は大きな変化はないものの、実は抜本的な設計変更が行われているという。ディスクブレーキの強大なストッピングパワーに対応するために、スルーアクスルとなったフロントフォークやリアエンド近辺の剛性を強化しているのはもちろんのこと、全体的な剛性バランスを見直し、カーボンレイアップスケジュールを刷新することによって、更なるライディングフィールの向上を果たしているという。
また、ユーティリティー性も高められている。Venge ViASでは、Aerofly ViASハンドルを使用し、ヘッドチューブからワイヤーを通すフル内装のケーブルルーティングのみとなっていたが、Venge ViAS Discではフレームやフォークにもケーブル挿入口が設けられており、通常のバイクと同じような組み方が可能となっている。もちろんフル内装で組むことも可能だ。
ラインアップは最上級モデルのS-Works Venge ViAS DiscとセカンドグレードのVenge ViAS Expert Discの2グレード展開となっている。S-Worksにはフレームセットと、Red etapで組まれた完成車が用意される。それでは、S-Works Venge ViAS Discのインプレッションをお届けしよう。
インプレッション:「進化を遂げたスーパーバイク」
筆者にとってVenge ViASに乗るのは、昨年のデビュー前にカリフォルニアで開催されたローンチイベントに参加して以来ぶりだ。個人的には最も特徴的なアイコンでもあったはずの専用キャリパーブレーキをあっさりと止め、空気抵抗も大きくなるであろうディスクブレーキ化を果たした部分に、乗り味としてどのような違いがもたらされたのかが大変興味があった。先のメディア発表会では開発陣から直接、専用ブレーキに対する熱意の大きさを聞いていただけに。今回は試乗会場内のみのテストであることを最初にお断りしておきたいが、果たして、従来モデルとVenge ViAS Discの違いは見た目の変化以上に大きかった。と言うか、ポジションを合わせて最初の2〜3漕ぎですぐに分かるほどに違ったのだ。
何がそんなに違うのか。カリフォルニアで初めてVenge ViASを試した時は、重心の高さゆえにバイクが直立しようとする「立ち」が強いため、直進安定性が素晴しい反面、ダンシングの振りやコーナリングでは慣れないと動きがギクシャクすることがあった。それがVenge ViAS Discでは、ディスクブレーキ化によって重心が下げられたことでバランスが是正され、挙動がナチュラルに。Venge ViASで感じた「突っ掛かり感」がきれいに無くなった。高い直進安定性はそのままだが、様々な状況で使いやすく、乗りやすくなったのだ。そしてもちろん、従来の専用ブレーキとの制動力の差は歴然だ。
フレーム全体からほとばしる強い剛性感はそのままだが、Venge ViASの豪脚専用かのような踏み味はほんの少し和らぎ、リアからの突き上げも抑えられたようだ。これも乗りやすさに繋がっているのだろう。フロントのみで目一杯急制動を掛けてもフォークのビビリが微塵も無いレベルなのに、少し不思議にさえ感じる。
キャリパーモデルとの厳密な空力性能を語ることは難題すぎるが、一般的なバイクと比較すると一直線の下りでのスピードの乗りは明らかに速い。体感的には40km/h以上でスルスルと車体が前に進み、車速の伸び止まりも遥かに高い位置にある。TTはもちろん、サーキットエンデューロなど、高速で走り続けられる場面では最高にマッチしてくれるはずだ。
エアロロードとディスクブレーキという不思議な掛け合わせ。最初こそ違和感を持つのだが、乗ってみれば体感面での明らかな「改良」を得ることができるはず。Venge ViASに比べて独自性は薄れたかもしれないが、新たな境地を切り開くという意味での先進性は1ミリも失われていない。決して「お買い得」「誰にでもオススメ」とは言えないが、価値あるスーパーパフォーマンスだと感じる。
Impression:So.Isobe
提供:スペシャライズドジャパン 製作:シクロワイアード編集部