2016/11/01(火) - 11:14
全ての"アドベンチャー"を楽しむ方へ
人々の目を丸くさせた、「フューチャーショック」を搭載した新型Roubaixや、ディスクブレーキとエアロロードバイクの先駆けとなったVenge ViAS Discなど、話題のモデルを多数発表したスペシャライズド。だがその中で「セコイヤ」というツーリング車を見つけた方はどれだけいるだろうか。現在、北米を発祥としてヨーロッパ、そしてアジアにも波及しているサイクルムーブメントの一つ、”バイクパッキング”。キャリアやパニアバッグではなく、大容量のフレームバッグなどを用いてなるべくコンパクトに、そして軽量にツーリングを楽しむという概念の総称だが、こうした流れをいち早く掴むこともスペシャライズドの得意技。その概念が定着してきた今年、大手としては先手を打ってデビューしたバイクこそ、レイノルズ製スチールチューブを採用した原点回帰のツーリングモデル「Sequoia(セコイヤ)」である。
セコイア(英: Sequoia、学名:Sequoia sempervirens)。高さ100m近くにもなる世界有数の大高木で、特にアメリカ西海岸では「大きく育つもの」の象徴として神聖な意味すら持つ存在だ。そんな名を冠したこのツーリングバイクは、どのようなモデルなのか。そしてどのような意味を持つのか。
スペシャライズド・ジャパンのSBCU(Specialized Bicycle Components University、販売店向けの講習や、一般向けに製品の解説、普及活動を行う部門)担当、佐藤修平氏に話を聞いた。
SBCU先生に聞く、セコイヤの意味、目的、遊び方
CW:佐藤さんはアメリカ本社の研修で、セコイヤを使ったツーリングも経験してきたと聞きました。佐藤:メンバー全員でセコイヤに乗り、本場のグラベルライドを経験してきました。キャンプこそしませんでしたが、本物の遊び方を経験できたことは大きな糧になりましたね。日本で言うグラベルライドとは全てが違って、路面は基本的に締まった走りやすいダートなんだけど、時々荒地や泥、石敷きもあったりする。もちろんアップダウンも。その中を遊びながらガタイの良い欧米人がハイスピードで飛ばしていくんです。
だから40c以上の太いタイヤや、急勾配にも耐えられるギア比、荷物を積んでも機敏に動ける性能が自転車には求められる。そうしたニーズとスペシャライズドの技術が組み合わさって生まれたのが、セコイヤというモデルです。ある意味ではRoubaixやVengeにも劣らない、最新最高峰のパッケージと言えるでしょう。
CW:具体的にはどのようなモデルなのでしょうか
佐藤:レイノルズ製のスチールパイプがメインですが、スルーアクスルやディスクブレーキ、マッシブなカーボンフォークなど、最新トレンドをうまく融合させたことが特徴です。そしてカラーリングや特製バーテープ、サドル、セコイヤのために開発されたタイヤやリムとのマッチング、控えめなサイズのロゴなど、ビスポークのエッセンスを色濃くしていることもポイント。もちろん「スペシャライズド・アドベンチャーギア」と銘打ったバッグやアパレル類など周辺ギアも全て揃え、トータルでのパッケージングも考えられた製品です。
CW:すでにAWOLというカーボンツーリングモデルがありますが、なぜスチールを選んだのでしょう?
佐藤:それは、このセコイヤが「本物」だからです。過酷な状況で酷使して、もし落車などでフレームが曲がったりつぶれたり、折れたりしても街のどこかには修理できる工場があるはずですから。
それから、セコイヤというネーミングにはスペシャライズドとして深い意味が持たされています。
ここに至るまで何度かセコイヤという同様の製品が発売されていますが、最初のモデルは1976年にデビューしたオリジナルツーリングバイク。まだMTB登場前夜のことですね。当時カリフォルニアで名の知れたビルダーが図面を引き、彼の知識と技術が詰まったものでした。そして第2世代のセコイヤは、今もオレゴンでフレームビルドを行うジム・メルツというビルダーが手がけたもの。彼は後に本社のエンジニアリングまで勤めた人物ですが、それはともかくとしてその時代の最新トレンドを取り込んだツーリングバイクがセコイヤだったわけです。
「セコイヤ」というネーミングも、マイク・シンヤード(スペシャライズド創業者)が大切にしている名であり、「大きく育つもの」の象徴という意味も込めて、本社ビルの中に大きな切り株が鎮座していたりもするんです。例えばMTBのスタンプジャンパーだって、もともとは「切り株を飛び越えろ」という意味合いを持っていたり、豊かな自然の中から発想を得た製品はたくさんある。あまり表に出て来ないセコイヤですが、スペシャライズドとしては相当に思い入れが強いアイテムなのです。
でも、だからと言って懐古主義ではありません。今回再び登場した背景には、ここ最近北米で顕著なムーブメントを巻き起こしているバイクパッキングが存在していて、それは従来のキャンパースタイルのリバイバルではなくて、全く新しいもの。そうしたエッジーで尖ったものを、マスプロダクトブランドである我々が製品化することによって、より多くの方に広めたいという思いや使命があるんです。
CW:これまでのツーリングバイクとは全く違ったもの、と捉えて良いのでしょうか。
佐藤:その通りです。近年ではトレイルランニングやキャンプといったアウトドアスポーツも軽量ギアを使った「ウルトラライト」という概念が定着してきました。従来のキャンプツーリングだとフレームを取り付けて、それからパニアバッグをつけて、と段階が多く、とにかく重かった。そうではなくて、必要最小限の荷物だけをピックアップしてフレームバッグに詰め込み、キャンプをやりきる。これまでは自転車は完全な道具であって、移動手段としてしか捉えられていなかった。そうではなく、自転車本来の運動性能を楽しみつつ、現地ではキャンプを楽しむ。そう言った趣向の方にアプローチしているんですね。
CW:どういうユーザー層にオススメな一台なのですか?
佐藤:もちろん、アドベンチャーを楽しみたい方全員に。それは数日間のキャンプでもいいし、ちょっと裏道を探索したい方でも良くって、アドベンチャーの規模感は問いません。でもセコイヤの魅力を一番引き出せるのは、ロードバイクを一回り楽しみ尽くしてしまった人や、カーキャンピングに飽きちゃった人。いずれにしても遊びを突き詰めてきたコアなユーザー層こそ、「おっ、これいいね」と思ってくれる層だと捉えています。ぜひともバイク単体でなく、周辺のギアやファッションまで合わせてコーディネイトしてほしい、そんな一台です。
提供:スペシャライズド・ジャパン、製作:シクロワイアード編集部