2016/04/20(水) - 17:15
9年ぶりのフルモデルチェンジを果たしたIRCのレーシングチューブレス「Formula PRO」シリーズ。オールラウンドモデルである、Formula PRO RBCCのインプレッションをお伝えしよう。
IRCのタイヤといえば、この記事で特集している「チューブレスタイヤ」である。そしてもう一つ、IRCの代名詞ともいえるテクノロジーが「RBCC(ライス・ブラン・セラミック・コンパウンド)」であることに異論を挟むサイクリストはいないのではないだろうか。
RBCCとは、米ヌカから作られる硬質多孔性炭素素材「RBセラミック粒子」をトレッドゴムに配合する技術。もともとは、自動車のスタッドレスタイヤにくるみの粉やガラスビーズを混ぜ込むという技術に着想を得て、東北大学とともに研究開発を行った結果生まれた、IRC独自のテクノロジーである。
200~300㎛の極小微粒子であるRBセラミック粒子は、まるで小さなスパイクのように路面をがっちりと掴むことで、グリップを高める効果を発揮する。コンパウンドから抜け落ちても、新たな粒子が顔を出すため長い間効果がある他、抜け落ちた跡も微小なエッジとして路面に食いつく効果をもたらしてくれる。また、多孔質であるため吸水性に優れ、ウェットな路面でのグリップ力の向上にも貢献しているのだ。
そんなRBCCは「レッドストーム」にてデビューして以来、15年以上にわたってIRCのタイヤに使われてきたコアテクノロジーであり、市場においても高いグリップ力を評価されてきた。しかし、NIPPOヴィーニファンティーニの選手たちからは、さらなるグリップの向上を求める声が上がってきたという。
その声に応えるべく、IRCの開発陣はこのタイヤのために「New RBCC」としてさらなる進化を遂げた新しいコンパウンドを投入した。補強材として最新のシリカを採用することで、さらなるグリップの向上を図った。「以前はシリカというと、カラータイヤのために使用される補強材というイメージがありましたが、今は違います。」とは開発を担当した山田さん。
「シリカに最適化されたゴムや、エージェントと呼ばれるゴムの結合を強化する薬品の開発によって、最新のシリカコンパウンドは狙った性能を引き出しやすい素材となりました。実際、オートバイや4輪のレースでもシリカ配合が主流になってきています。コストはかかりますが、それに見合った高い性能を期待できるのが最新のシリカコンパウンドなんですよ。」
そう山田さんが語るように、新しいRBCCコンパウンドは優れた特性を示した。数値で表すと、グリップ性能が4%アップすると同時に、転がり抵抗を10%抑えることに成功している。コーナーでの粘りと、軽やかな走行感。まさにレース現場で求められる理想の性能を獲得した「New RBCC」を採用したFormula PRO RBCCのインプレッションをお届けしよう。
空気圧によって、かなり印象が変わってくるタイヤですね。最初は6気圧、次に7.2気圧まで上げて走ってみたのですが、安心感の6気圧、軽快感の7気圧というところでしょうか。
とにかくグリップの良いタイヤだと聞いていたので、どれほどのものなんだ?と思いながら走り出したのですが、スタートした瞬間からその性能を感じましたね。路面にぴったりと食いついて離さないような、良い意味での粘り気を感じました。
特に低圧だと、路面の凸凹にたいしてもスムーズに追従してくれるので乗り味も良いですし、とても安心感がある。ただ、普段から高圧で乗っている人だと、マイルドすぎて爽快感に欠けると受け取る人もいるかもしれないです。
でも、そういった走りの軽さを求める人はもう少し気圧を上げるとビックリするんじゃないかな。1気圧くらい足すだけで、すごく引き締まってキレのある乗り味になるから。チューブレス特有の、『前へ連れて行ってくれる』感覚が強く出てくる一方で、6気圧の時のように凸凹や異物を踏んでもタイヤがいなしてくれる安定感は失われてしまうので、そこは好みとシチュエーションに合わせていくべきでしょう。
肝心のコーナーでのグリップ力は、空気圧が低めでも高めでも大きく変わりません。しっとりとしたトレッドが路面をしっかり掴んでくれるので、倒しこんでいく不安は少ないですね。選手の要望で入ったというトレッドパターンが、挙動の掴みやすさに繋がっているのは確かです。それはヨーロッパで走っていた自身の経験から言っても、選手たちからそういった要望が出てくるのはとても自然なことだと思いますし、実際このタイヤは彼らを満足させるだけの乗り味を手に入れています。
スピードの高い低いにかかわらず、路面への食いつき方に大きな変化を感じないことも極めて優秀な特性ですね。複数のコンパウンドを使用するタイヤですと、倒しこむ量によってグリップ感が急激に変わることがありますが、このタイヤはそういったことはありません。サイドまで大きく回り込んだトレッドが良い仕事をしているのでしょう。
ハイスピードコーナーからタイトなコーナーへと、リズムが変化するテクニカルセクションでも落ち着いて処理できるのは、初心者はもちろんトップレベルの選手にもメリットとなるでしょう。今回のテストでも、60km/hで大きく回るコーナーの直後に15km/hまで大きく減速する必要のあるヘアピンが続く箇所でも、自然とバイクを切り返していけることにはとても感心させられました。
良い意味でチューブレス臭さが取り除かれ、とてもナチュラルなフィーリングを味わえるタイヤです。チューブレスタイヤというカテゴリを越え、あらゆるタイヤの中で見ても高い完成度を誇る一本です。レーシングタイヤというと、「初心者お断り」というイメージがあるかもしれませんが、高いグリップと素直な性格を持つFormula PRO RBCCはテクニックの伴わない初心者にこそ助けとなるでしょう。
「RBCC」 米ヌカが生み出すハイグリップコンパウンド
IRCのタイヤといえば、この記事で特集している「チューブレスタイヤ」である。そしてもう一つ、IRCの代名詞ともいえるテクノロジーが「RBCC(ライス・ブラン・セラミック・コンパウンド)」であることに異論を挟むサイクリストはいないのではないだろうか。
RBCCとは、米ヌカから作られる硬質多孔性炭素素材「RBセラミック粒子」をトレッドゴムに配合する技術。もともとは、自動車のスタッドレスタイヤにくるみの粉やガラスビーズを混ぜ込むという技術に着想を得て、東北大学とともに研究開発を行った結果生まれた、IRC独自のテクノロジーである。
200~300㎛の極小微粒子であるRBセラミック粒子は、まるで小さなスパイクのように路面をがっちりと掴むことで、グリップを高める効果を発揮する。コンパウンドから抜け落ちても、新たな粒子が顔を出すため長い間効果がある他、抜け落ちた跡も微小なエッジとして路面に食いつく効果をもたらしてくれる。また、多孔質であるため吸水性に優れ、ウェットな路面でのグリップ力の向上にも貢献しているのだ。
最新テクノロジーでさらなる進化を遂げた「New RBCC」
そんなRBCCは「レッドストーム」にてデビューして以来、15年以上にわたってIRCのタイヤに使われてきたコアテクノロジーであり、市場においても高いグリップ力を評価されてきた。しかし、NIPPOヴィーニファンティーニの選手たちからは、さらなるグリップの向上を求める声が上がってきたという。
その声に応えるべく、IRCの開発陣はこのタイヤのために「New RBCC」としてさらなる進化を遂げた新しいコンパウンドを投入した。補強材として最新のシリカを採用することで、さらなるグリップの向上を図った。「以前はシリカというと、カラータイヤのために使用される補強材というイメージがありましたが、今は違います。」とは開発を担当した山田さん。
「シリカに最適化されたゴムや、エージェントと呼ばれるゴムの結合を強化する薬品の開発によって、最新のシリカコンパウンドは狙った性能を引き出しやすい素材となりました。実際、オートバイや4輪のレースでもシリカ配合が主流になってきています。コストはかかりますが、それに見合った高い性能を期待できるのが最新のシリカコンパウンドなんですよ。」
そう山田さんが語るように、新しいRBCCコンパウンドは優れた特性を示した。数値で表すと、グリップ性能が4%アップすると同時に、転がり抵抗を10%抑えることに成功している。コーナーでの粘りと、軽やかな走行感。まさにレース現場で求められる理想の性能を獲得した「New RBCC」を採用したFormula PRO RBCCのインプレッションをお届けしよう。
インプレッション BY 宮澤崇史
空気圧によって、かなり印象が変わってくるタイヤですね。最初は6気圧、次に7.2気圧まで上げて走ってみたのですが、安心感の6気圧、軽快感の7気圧というところでしょうか。
とにかくグリップの良いタイヤだと聞いていたので、どれほどのものなんだ?と思いながら走り出したのですが、スタートした瞬間からその性能を感じましたね。路面にぴったりと食いついて離さないような、良い意味での粘り気を感じました。
特に低圧だと、路面の凸凹にたいしてもスムーズに追従してくれるので乗り味も良いですし、とても安心感がある。ただ、普段から高圧で乗っている人だと、マイルドすぎて爽快感に欠けると受け取る人もいるかもしれないです。
でも、そういった走りの軽さを求める人はもう少し気圧を上げるとビックリするんじゃないかな。1気圧くらい足すだけで、すごく引き締まってキレのある乗り味になるから。チューブレス特有の、『前へ連れて行ってくれる』感覚が強く出てくる一方で、6気圧の時のように凸凹や異物を踏んでもタイヤがいなしてくれる安定感は失われてしまうので、そこは好みとシチュエーションに合わせていくべきでしょう。
肝心のコーナーでのグリップ力は、空気圧が低めでも高めでも大きく変わりません。しっとりとしたトレッドが路面をしっかり掴んでくれるので、倒しこんでいく不安は少ないですね。選手の要望で入ったというトレッドパターンが、挙動の掴みやすさに繋がっているのは確かです。それはヨーロッパで走っていた自身の経験から言っても、選手たちからそういった要望が出てくるのはとても自然なことだと思いますし、実際このタイヤは彼らを満足させるだけの乗り味を手に入れています。
スピードの高い低いにかかわらず、路面への食いつき方に大きな変化を感じないことも極めて優秀な特性ですね。複数のコンパウンドを使用するタイヤですと、倒しこむ量によってグリップ感が急激に変わることがありますが、このタイヤはそういったことはありません。サイドまで大きく回り込んだトレッドが良い仕事をしているのでしょう。
ハイスピードコーナーからタイトなコーナーへと、リズムが変化するテクニカルセクションでも落ち着いて処理できるのは、初心者はもちろんトップレベルの選手にもメリットとなるでしょう。今回のテストでも、60km/hで大きく回るコーナーの直後に15km/hまで大きく減速する必要のあるヘアピンが続く箇所でも、自然とバイクを切り返していけることにはとても感心させられました。
良い意味でチューブレス臭さが取り除かれ、とてもナチュラルなフィーリングを味わえるタイヤです。チューブレスタイヤというカテゴリを越え、あらゆるタイヤの中で見ても高い完成度を誇る一本です。レーシングタイヤというと、「初心者お断り」というイメージがあるかもしれませんが、高いグリップと素直な性格を持つFormula PRO RBCCはテクニックの伴わない初心者にこそ助けとなるでしょう。
提供:IRC 制作:シクロワイアード編集部