2016/05/04(水) - 10:08
9年ぶりのフルモデルチェンジで大幅な進化を果たしたFormula PROシリーズ。その高い性能はこれまでの章でお伝えしたとおりだが、リムへの取り付けやすさが大幅に向上していることも大きなポイントだ。IRCのチューブレスタイヤの開発者である山田浩志さんのレクチャーのもと、取り付けのコツをお伝えしよう。
確かに、登場した当時のチューブレスタイヤにそういった課題があったことは事実である。Formula PROの開発に深くかかわってきた山田さんは「開発当初、組み付けはショップにお願いしてもらうというイメージで進めたいと思うほど、ビード周りの設計は難航しました。絶対にタイヤが外れないという安全マージンと、組み付けやすさという相反する性能をどう両立するかには悩まされましたね。」と当時を振り返る。
開発者としては、組み付けやすいに越したことはないが、それ以上に優先されるのは何があってもリムからビードが外れないという安全性である。安全性を確保しつつ、出来る限り組み付けやすいタイヤを造るためのこだわりは、ビード素材にも及んでいる。
様々なテストを行う中で、クリンチャータイヤで一般的なケブラーではそのバランスを実現できないことが判明し、カーボンファイバーをテスト。しかし、強度には優れていたものの折れや曲げに弱いカーボンはビードには不適とされ、最終的には非常に高価であるものの、現存する繊維としては最強を誇る有機繊維を採用することとなった。ちなみに、このビードの仕様を決定するまでに2年の歳月を要しているという。
「特に効果が大きかったのは、ケーシングを180TPIへと変更したことですね。ケーシングが薄くなることでビード自体がスリムになり、とても取り付けがしやすくなりました。初代モデルを知っている方が、今のモデルを使うとあまりのはめ易さにびっくりしてしまうはずです。」
「チューブを入れない分、クリンチャーよりも作業自体は速く終わります。コツさえつかめば誰でも簡単にできますよ」と自信たっぷりに語る山田さん。それでは、実際の取り付け手順を分解写真とムービーでお伝えしよう。
まず用意するのは、石鹸水とスポンジだ。スポンジは薄くネットに包まれた食器洗い用の物がベスト。スポンジを石鹸水に浸し、リムをなぞっていく。ビードが滑りやすくするための石鹸水がきちんと塗られているかどうかが、後の工程に影響するのでたっぷりと塗ろう。なお、IRCからはボトルタイプの「フィッティングローション」も用意されているので、出先の作業ではそちらを使うと良いだろう。
これは普通のクリンチャータイヤと同じだが、一つ注意点がある。それはバルブの反対側からはめていき、最後にバルブ付近をはめるということ。また、今回モデルチェンジしたFormula PROチューブレスはトレッドパターンがついたので、回転方向にも気をつけて組み付けよう。
残ったもう一方のビードをリムへとはめていく。ここでもバルブの反対側からはめこみはじめること。この段階で全てのビードを入れる必要はないので、手で入れられるところまで入れていこう。バルブ付近まではめ終わったら、次の手順に移ろう。
チューブレス対応リムには中央部に溝が設けられている。この溝にビードが収まることで周長に余裕が生まれ、タイヤをはめ易くなるのだ。だが、最初に入れた側のビードがあるため、反対側のビードは溝に収まりづらい。そこで、タイヤをこじることで、最初に入れたビードにもぐりこませるように反対側のビードをリムの溝に落としていく。このとき注意したいのは、バルブ付近のまだはまっていないビードを手で押さえながらもう一方の手で作業を行うことだ。
全周にわたってビードを落とせば、あら不思議。先程まではとても入りそうになかったバルブ付近のビードに余裕が生まれている。ここまでくれば残りのビードも手であっさりとはめられるはずだ。それでも難しい場合に備えて、IRCではチューブレス専用のタイヤレバーを用意している。どうしても入りそうにない時はこのタイヤレバーを使っても良いだろう。
ここまでくれば後は空気を入れるだけ。エアーコンプレッサーが必要だというイメージを持っている人もいるかもしれないが、タイヤがきちんと取り付けられていれば通常のフロアポンプで十分だ。タイヤをなじませるために最初は少し高めの空気圧(9気圧程度)を充填し、しばらく置くと良いだろう。なお、ビードが馴染んだらパンク予防策としてあらかじめシーラントを少量入れておくのもオススメだ。バルブのコアを外し、液状のシーラントを注入しよう。
通常のシーラントとは異なり、泡状になったパンク修理剤とCO2ボンベが一体になったファストリスポーンの使い方は簡単。付属する専用のアダプターをバルブに装着し、ファストリスポーンをあてがった後、ぐっと押しこむだけ。それだけでパンク修理剤がタイヤ内に充填され、穴を塞いでくれ、再び走りだすことができるのだ。
改良されたビードの設計や、フィッティングローションやタイヤレバー、ファストリスポーンといった便利なグッズによって格段に扱いやすくなったIRCのチューブレスタイヤ。対応するホイールをお持ちの方は、一度試してみるだけの価値はある。クリンチャーともチューブラーとも異なる世界が貴方を待っている。
安全性を追求した初代Formula PRO TUBELESS
低い転がり抵抗、高い快適性と安全性など多くのメリットを持つチューブレスタイヤ。一方で、タイヤをはめる作業がしづらい、パンクした時の対応が難しいといったイメージを持っている人も少からずいるのではないだろうか。確かに、登場した当時のチューブレスタイヤにそういった課題があったことは事実である。Formula PROの開発に深くかかわってきた山田さんは「開発当初、組み付けはショップにお願いしてもらうというイメージで進めたいと思うほど、ビード周りの設計は難航しました。絶対にタイヤが外れないという安全マージンと、組み付けやすさという相反する性能をどう両立するかには悩まされましたね。」と当時を振り返る。
開発者としては、組み付けやすいに越したことはないが、それ以上に優先されるのは何があってもリムからビードが外れないという安全性である。安全性を確保しつつ、出来る限り組み付けやすいタイヤを造るためのこだわりは、ビード素材にも及んでいる。
様々なテストを行う中で、クリンチャータイヤで一般的なケブラーではそのバランスを実現できないことが判明し、カーボンファイバーをテスト。しかし、強度には優れていたものの折れや曲げに弱いカーボンはビードには不適とされ、最終的には非常に高価であるものの、現存する繊維としては最強を誇る有機繊維を採用することとなった。ちなみに、このビードの仕様を決定するまでに2年の歳月を要しているという。
9年の歴史の中で大きく向上した作業性
こうして発売にこぎつけた初代Formula PRO TUBELESSは、発売以来ビードにまつわるトラブルが原因での事故は一切起こっていないという。そして、その安全性を維持しつつ、ビードの周長や形状、ケーシングなどを見直すことで組み付けやすさを改善してきたことにより、最新のモデルは初代とは別物と言っていいほどに作業性が向上している。「特に効果が大きかったのは、ケーシングを180TPIへと変更したことですね。ケーシングが薄くなることでビード自体がスリムになり、とても取り付けがしやすくなりました。初代モデルを知っている方が、今のモデルを使うとあまりのはめ易さにびっくりしてしまうはずです。」
「チューブを入れない分、クリンチャーよりも作業自体は速く終わります。コツさえつかめば誰でも簡単にできますよ」と自信たっぷりに語る山田さん。それでは、実際の取り付け手順を分解写真とムービーでお伝えしよう。
開発者が教える Formula PRO TUBELESS 取り付けのコツ
手順1:リムに石鹸水を塗ろう
まず用意するのは、石鹸水とスポンジだ。スポンジは薄くネットに包まれた食器洗い用の物がベスト。スポンジを石鹸水に浸し、リムをなぞっていく。ビードが滑りやすくするための石鹸水がきちんと塗られているかどうかが、後の工程に影響するのでたっぷりと塗ろう。なお、IRCからはボトルタイプの「フィッティングローション」も用意されているので、出先の作業ではそちらを使うと良いだろう。
手順2:片側のビードをホイールにはめよう
これは普通のクリンチャータイヤと同じだが、一つ注意点がある。それはバルブの反対側からはめていき、最後にバルブ付近をはめるということ。また、今回モデルチェンジしたFormula PROチューブレスはトレッドパターンがついたので、回転方向にも気をつけて組み付けよう。
手順3:反対側のビードをはめていこう
残ったもう一方のビードをリムへとはめていく。ここでもバルブの反対側からはめこみはじめること。この段階で全てのビードを入れる必要はないので、手で入れられるところまで入れていこう。バルブ付近まではめ終わったら、次の手順に移ろう。
手順4:中央の溝にビードを落としていこう
チューブレス対応リムには中央部に溝が設けられている。この溝にビードが収まることで周長に余裕が生まれ、タイヤをはめ易くなるのだ。だが、最初に入れた側のビードがあるため、反対側のビードは溝に収まりづらい。そこで、タイヤをこじることで、最初に入れたビードにもぐりこませるように反対側のビードをリムの溝に落としていく。このとき注意したいのは、バルブ付近のまだはまっていないビードを手で押さえながらもう一方の手で作業を行うことだ。
手順5:バルブ付近のビードをはめよう
全周にわたってビードを落とせば、あら不思議。先程まではとても入りそうになかったバルブ付近のビードに余裕が生まれている。ここまでくれば残りのビードも手であっさりとはめられるはずだ。それでも難しい場合に備えて、IRCではチューブレス専用のタイヤレバーを用意している。どうしても入りそうにない時はこのタイヤレバーを使っても良いだろう。
手順6:最後に空気を入れよう
ここまでくれば後は空気を入れるだけ。エアーコンプレッサーが必要だというイメージを持っている人もいるかもしれないが、タイヤがきちんと取り付けられていれば通常のフロアポンプで十分だ。タイヤをなじませるために最初は少し高めの空気圧(9気圧程度)を充填し、しばらく置くと良いだろう。なお、ビードが馴染んだらパンク予防策としてあらかじめシーラントを少量入れておくのもオススメだ。バルブのコアを外し、液状のシーラントを注入しよう。
動画で見るチューブレスタイヤの取り付け方
動画で見るパンク修理剤「ファストリスポーン」の使い方
耐パンク性能に優れるチューブレスタイヤだが、それでもパンクしてしまう時はある。もちろん出先でチューブを入れて応急処置することもできるが、もっと手軽に修理できる方法がある。それが「ファストリスポーン」だ。通常のシーラントとは異なり、泡状になったパンク修理剤とCO2ボンベが一体になったファストリスポーンの使い方は簡単。付属する専用のアダプターをバルブに装着し、ファストリスポーンをあてがった後、ぐっと押しこむだけ。それだけでパンク修理剤がタイヤ内に充填され、穴を塞いでくれ、再び走りだすことができるのだ。
改良されたビードの設計や、フィッティングローションやタイヤレバー、ファストリスポーンといった便利なグッズによって格段に扱いやすくなったIRCのチューブレスタイヤ。対応するホイールをお持ちの方は、一度試してみるだけの価値はある。クリンチャーともチューブラーとも異なる世界が貴方を待っている。
提供:IRC 制作:シクロワイアード編集部