2016/01/16(土) - 12:09
初日午後のショートライドをキャンセル(その代わりにジャーナリストたちで行ったワイナリーツアーは最高だった)に追いやった雨雲はぶどう畑の向こうに消え、これぞカリフォルニア! と言わんばかりの眩しい光が朝もやをオレンジに染め上げる。
「今年のカリフォルニアは雨が多いんだ」とつぶやいたのはライドに同行するサーヴェロのスタッフ。暖かな日差しに照らされているが、前日の大雨で日陰や山間の北側斜面はウェットコンディション。日本の路面とは異なり、アスファルトはザラザラで、路肩には小石が散らばっている。山間の狭い峠は驚くほどひび割れ、タイトコーナーが続いている。つまり、Cシリーズにおあつらえ向きのコンディションだ。
今回借り受けたのは51サイズ。身長176cmの私には若干小さめだが、あくまでコンフォートバイクなので難しいことは考えない。ボリュームのある28cスリックタイヤに6barを充填し、15名の隊列がナパバレーのワインディングロードに駆け出した。
正直言って驚いた。いかにもコンフォートバイクと言わんばかりのフォルムだが、ひとたび走り出すと、このジャンルのバイクに感じがちな鈍重さはかけらも無く、シルキーな乗り味のままギュンギュンと加速していく。確かにハンドルポジションこそ高いものの、それ以外は乗車前のイメージを完全に覆すほど軽快だ。
この走り心地を引き出す大きな要因の一つが、850g(フレーム)+350g(フォーク)という軽さだろう(56サイズ計測なので、私がテストした51サイズはもっと軽いはずだ)。エンデュランスロードとは思えないほどにダンシングの振りが軽く、ディスクブレーキが搭載されている左側への倒し込みが重いな、と感じてしまうほどにフレームの質量的な存在感が薄い。
もちろんレーシングバイクと比較すれば相当にソフトで、スプリントを掛ければダイレクト感には欠ける。しかしペダリングに対する芯は強く、大きな踏み込みに対して、リアバックを絶妙にしならせながら加速に繋げていく。”猫足”と言うべきなのか、ダルさが無いのに硬さも無い。それでいてタイヤが路面に食いついている様子も手に取るように分かる。これは……なんて気持ちが良い乗り物なんだろう!。
ハンドリングだって、長いホイールベースを感じさせないほどナチュラルで、ポジションに慣れてしまえばダウンヒルで思いっきり突っ込める。ふわふわと前ホイールが外に向かってしまうことも無く、バンクの付いた急コーナーでも、荒れた路面でもギュッと路面に粘りつく。それが病みつきになってしまうほどに。
そう言えば、試乗車のブレーキが「左前」で組まれていてことを一瞬忘れてしまい、濡れた下りでリアが流れてしまったことがあった。しかし75mmというBB下がりがもたらす低重心と振動吸収性に助けられ、一瞬ヒヤリとしただけで済んでしまった。これは極端な例かもしれないが、安定した走りは長距離ライドでのノンストレスにも繋がる。実際に120kmのライドを終えても、普段より疲れを感じなかった。
そして登りで追い込む走りをした際には、BBのしなりが脚へのダメージを防いでくれることに気づいた。疲れてペダリングが雑になってしまっても、極端な硬さが無いため、いびつなペダリングを修正してくれるかのよう。ここ一発のダッシュは不得意だが、じわりじわりと一定時間を踏み続けるような加速はとても良い。
華奢に思えるフォークだが、油圧ブレーキのストッピングパワーに負けること無く、それでいてブレード全体が動いて路面の凹凸を打ち消してくれる。28cタイヤとの相性も良い。ローディーだとうっかり23cタイヤを入れてしまいたくなるが、このバイクには28cがベストマッチだろう。今回はルートに組み込まれなかったが、気圧をうんと下げて未舗装路に繰り出すのも、楽しくないワケが無い。私はライドの休憩中、未舗装の脇道で遊んでいたのだが、一人、また一人とその輪に加わってきて、ニヤリとしたのだった。
いやはや、C5がこれほどまで軽快で、濃密で、楽しさあふれる乗り味だとは思っていなかった。ルックスから想像される走りの重さは一切無く、カテゴリー分けこそエンデュランスバイクだが、その根本には長年に渡って「エアロダイナミクス」や「軽量」というキーワードを追求してきたサーヴェロの、レーシングスピリットが間違いなく宿っている。
サーヴェロへの憧れはあったけれど、乗れなかった。そんなロングライド派も少なくなかっただろう。しかしCシリーズのデビューによって、サーヴェロは遂に世のサイクリスト全員が手にできるブランドになったのだ。まさに同社にとっての新しい章の幕開けであり、その恩恵を受ける層は幅広い。
確かに高価で、サーヴェロの従来のイメージからはやや外れるルックスかもしれない。でも私は、これほどまで非レース派の友となってくれるバイクを他に知らないし、長距離レースやヒルクライムであれば、より好成績を狙う上で選択肢に十分割って入るだろう。疲れないことはつまり、体力を絞り尽くすようなレースで大きな武器になりうると私は感じる。
カリフォルニアでたった1日、120km乗っただけでは全然物足りなかった。また乗りたい。もっと乗ってみたい。そう思わせて止まない、最高に気持ちが良いバイクだった。
C5に乗って、極上のワインディングロードへ
ワインで有名なカリフォルニア、ナパバレーに用意されたキャンプ地でライド準備を進めるのは12名のジャーナリストたち。私、CW編集部の磯部もこの機会を預かり、およそ120kmのグループライドを含む1日半のメディア発表会に参加させて頂いた。「今年のカリフォルニアは雨が多いんだ」とつぶやいたのはライドに同行するサーヴェロのスタッフ。暖かな日差しに照らされているが、前日の大雨で日陰や山間の北側斜面はウェットコンディション。日本の路面とは異なり、アスファルトはザラザラで、路肩には小石が散らばっている。山間の狭い峠は驚くほどひび割れ、タイトコーナーが続いている。つまり、Cシリーズにおあつらえ向きのコンディションだ。
今回借り受けたのは51サイズ。身長176cmの私には若干小さめだが、あくまでコンフォートバイクなので難しいことは考えない。ボリュームのある28cスリックタイヤに6barを充填し、15名の隊列がナパバレーのワインディングロードに駆け出した。
常識を覆す、軽やかで濃密なライドフィール
正直言って驚いた。いかにもコンフォートバイクと言わんばかりのフォルムだが、ひとたび走り出すと、このジャンルのバイクに感じがちな鈍重さはかけらも無く、シルキーな乗り味のままギュンギュンと加速していく。確かにハンドルポジションこそ高いものの、それ以外は乗車前のイメージを完全に覆すほど軽快だ。
この走り心地を引き出す大きな要因の一つが、850g(フレーム)+350g(フォーク)という軽さだろう(56サイズ計測なので、私がテストした51サイズはもっと軽いはずだ)。エンデュランスロードとは思えないほどにダンシングの振りが軽く、ディスクブレーキが搭載されている左側への倒し込みが重いな、と感じてしまうほどにフレームの質量的な存在感が薄い。
もちろんレーシングバイクと比較すれば相当にソフトで、スプリントを掛ければダイレクト感には欠ける。しかしペダリングに対する芯は強く、大きな踏み込みに対して、リアバックを絶妙にしならせながら加速に繋げていく。”猫足”と言うべきなのか、ダルさが無いのに硬さも無い。それでいてタイヤが路面に食いついている様子も手に取るように分かる。これは……なんて気持ちが良い乗り物なんだろう!。
ハンドリングだって、長いホイールベースを感じさせないほどナチュラルで、ポジションに慣れてしまえばダウンヒルで思いっきり突っ込める。ふわふわと前ホイールが外に向かってしまうことも無く、バンクの付いた急コーナーでも、荒れた路面でもギュッと路面に粘りつく。それが病みつきになってしまうほどに。
そう言えば、試乗車のブレーキが「左前」で組まれていてことを一瞬忘れてしまい、濡れた下りでリアが流れてしまったことがあった。しかし75mmというBB下がりがもたらす低重心と振動吸収性に助けられ、一瞬ヒヤリとしただけで済んでしまった。これは極端な例かもしれないが、安定した走りは長距離ライドでのノンストレスにも繋がる。実際に120kmのライドを終えても、普段より疲れを感じなかった。
そして登りで追い込む走りをした際には、BBのしなりが脚へのダメージを防いでくれることに気づいた。疲れてペダリングが雑になってしまっても、極端な硬さが無いため、いびつなペダリングを修正してくれるかのよう。ここ一発のダッシュは不得意だが、じわりじわりと一定時間を踏み続けるような加速はとても良い。
華奢に思えるフォークだが、油圧ブレーキのストッピングパワーに負けること無く、それでいてブレード全体が動いて路面の凹凸を打ち消してくれる。28cタイヤとの相性も良い。ローディーだとうっかり23cタイヤを入れてしまいたくなるが、このバイクには28cがベストマッチだろう。今回はルートに組み込まれなかったが、気圧をうんと下げて未舗装路に繰り出すのも、楽しくないワケが無い。私はライドの休憩中、未舗装の脇道で遊んでいたのだが、一人、また一人とその輪に加わってきて、ニヤリとしたのだった。
サーヴェロは世のサイクリスト全員が手にできるブランドに
いやはや、C5がこれほどまで軽快で、濃密で、楽しさあふれる乗り味だとは思っていなかった。ルックスから想像される走りの重さは一切無く、カテゴリー分けこそエンデュランスバイクだが、その根本には長年に渡って「エアロダイナミクス」や「軽量」というキーワードを追求してきたサーヴェロの、レーシングスピリットが間違いなく宿っている。
サーヴェロへの憧れはあったけれど、乗れなかった。そんなロングライド派も少なくなかっただろう。しかしCシリーズのデビューによって、サーヴェロは遂に世のサイクリスト全員が手にできるブランドになったのだ。まさに同社にとっての新しい章の幕開けであり、その恩恵を受ける層は幅広い。
確かに高価で、サーヴェロの従来のイメージからはやや外れるルックスかもしれない。でも私は、これほどまで非レース派の友となってくれるバイクを他に知らないし、長距離レースやヒルクライムであれば、より好成績を狙う上で選択肢に十分割って入るだろう。疲れないことはつまり、体力を絞り尽くすようなレースで大きな武器になりうると私は感じる。
カリフォルニアでたった1日、120km乗っただけでは全然物足りなかった。また乗りたい。もっと乗ってみたい。そう思わせて止まない、最高に気持ちが良いバイクだった。
提供:東商会 text : 磯部聡 制作:シクロワイアード編集部