2014/08/28(木) - 12:02
「最軽量ロード」のエモンダSLRからSまでを徹底テスト
国立京都国際会館の駐車場に設けられた試乗エリアでセッティングを整え、場外の試乗コースに繰り出して行くショップスタッフやジャーナリストたち。エモンダの3グレードの印象を探るべく、普段からマドンとドマーネに乗る影山善明(オンザロード)と對間進也(バイクプラス)の両氏に、SLRからSまで時間をかけてインプレッションしていただいた。
エモンダSLR
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影山:それは同意見です。私も脚に優しい感じを受けました。踏んで進んでいるのに、ガツガツというダメージを受けない。角が取れている印象です。失速感が少ないというか、ペースを保ちやすくて、弾むようにウネウネと進んで行く。脚を貯めながら登り続けることができる。マドンやドマーネとは、たわみのコントロールの仕方を意図的に変えているのだと思います。それはシリーズを通して言えます。
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影山:軽量で軽快で、ヒルクライムにはこれ以上のチョイスがないですね。でも加速感に関してはマドンに分があるかな。大出力でガンッと踏んだときの反応はマドンが上。
對間:確かにマドンと比べると、平地でグイグイ行くタイプのフレームではなさそうです。自分は平坦向きの大柄な体つきということもあり、後から押される感じがあるドマーネと同じ乗り方だと伸びて行く感じを受けない。ダンシングで飛び出したときの物足りなさは確かに有りました。でもそれが女性や小柄なライダー向けであるとも言えます。自分の店(バイクプラス多摩センター)の周りの丘陵地帯のような地形にとてもマッチしている。脚にダメージを与えることなく、リズムで丘を越えて行くことができる。これは大きなアドバンテージになります。
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影山:フレームサイズ的にも「Women’s Specific Design」だと44から有り、お客さんに勧めやすいですね。長い登りを淡々と進むヒルクライムレースには打ってつけだと思います。ペースを保ちやすく、ペースの上げ下げにも対応できる。軽すぎるバイクにありがちな神経質な乗り味では全くなく、何にでも使えるバイク。ステージレースで選手が使いたがるのも頷けます。ここまで軽さと乗り心地を両立しているバイクは他に無いんじゃないですかね。重量を聞くと「軽量過ぎて大丈夫なの?」と思うけど、乗るとその不安が払拭される頑丈さがあります。
對間:フレームが690gでフォークが280gとは思えない剛性感。それでいて腰高感がないのが不思議です。超軽量バイクとは思えない安定感がある。剛性の高いディープリムを使えば平地の伸び方も変わってくるのかも。どんなバイクを選んだらいいのか分からなくなった人に乗ってほしいですね。
影山:最初に乗って「これはずるい!」と連発してしまいました。「このハンドリングと軽さでここまで乗り心地が良くて、ずるい」と。アイオロス3を装着して走りたい。アイオロスの固さを活かせるフレームだと思います。フレーム単体で比較するとSLの倍以上の値段がしますが、乗るとその価格も納得です。
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エモンダSL
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
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影山:この価格とこのパフォーマンス。現実的に、多くの方にこのSLに乗っていただきたいです。これまでのトレックバイクに乗られている方がSLに乗ると、まずその走りに比べて値段があまりに安いことに驚くと思います。キャラクターとしてはSLRに通じるものがしっかりあります。ヒルクライムでタイムを狙う決戦用ならSLRですが、日常使用によるダメージへの不安等を考えるとSLが実用的かと思います。フレームで300gほど違うので、確かにSLRと比べて重さは感じます。
對間:シマノ105仕様だと30万円を切るのですから、びっくりです。縦剛性が抑えられているので、路面に食いつく感じがありますね。でもパリッとしているSLRと比べて、よりしっとりしている。ペダリングに関しては反発の仕方が心地よく、踏み下ろしが軽い。それがマドンにもドマーネにもない特徴で、SLRからSまでエモンダ共通の味付けがされている。
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影山:カーボンの肉厚が異なるので、反発の音からグレードの違いは分かりやすいけど、ハンドリングやペダリングの印象は共通している。エモンダの走りがシリーズを通して確立されていると感じました。3台で同じマンホールの段差越えを試したのですが、SLRは衝撃の返りが速い。SLのほうが少し身体に優しく、余裕があるように感じました。シリーズを通して言えることですが、OCLVの3シリーズ、5シリーズ、7シリーズそれぞれが進化しているような印象です。
對間:まだ乗り始めでペダリングの仕方が分からない人にも乗りやすい。雑にペダリングしても良く進んで行くのがシリーズに共通することですね。コストパフォーマンスが極めて高いので、値段がずるいです(笑)。フレームにポテンシャルがあるので将来性がある。ホイールを交換して試してもらいたいですね。
エモンダS
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對間:SLRとSLに乗った後だったので、Sを持ち上げた時に「現実世界に戻された」と感じました(笑)。
影山:でも、乗った瞬間に「おっ」と思わず声が出てしまいました。乗る前に持ち上げた印象とは裏腹に、走りが軽い。エモンダのキャラクターがしっかりと備わっている。しっかりと登るし、ハンドリングも軽快。初対面の印象は良くなかったのに、乗り終わってみると「お前いいやつじゃないか!」と握手したくなるような。
對間:軽さ=エモンダではなく、この乗り味=エモンダなのだと。マドンの3シリーズを思い出しながら乗りましたが、別物でした。カーボン素材は一緒でも、レイアップの問題でしょう。エモンダで技術の革新が顕著に出ましたね。シートステーがモノステーなので、SLRやSLと違う乗り味を想像していたのですが、共通したものを持っていました。SLRとSを比べると、SLRはシート付近の剛性により強固な感じがあります。
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影山:完成車についているホイールの重さも影響していたと思います。究極の軽さは上のグレードに譲るにしても、ホイールを交換すればかなり走る。オールラウンドに楽しみたい方には良いチョイスだと思います。「まずはS5(105搭載:229,000円)を買って、次のボーナスで良いホイールを買って下さい」と言いたいです。販売店としては最初の一台にアルミロードを勧めがちでしたが、それに取って代わることができるバイクですね。
對間:予算に合わせた選択がしやすく、拡張性が高い。良いホイールを履かせれば、それに応えるポテンシャルがフレームにはある。この値段にして、数年前のハイエンドカーボンバイク並みの走りです。最初の一台としてお勧めですが、フレームがしっかりしているので永く使えることは間違いないです。パーツを替えればそれだけの反応を見せてくれる。あとあとパーツを交換する楽しみを提供できるとも言えますね。
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ライダープロフィール
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影山善明(オンザロード)
オンザロードつくば店の店長を務め、「ウソをつかないサービス」をモットーにする38歳。学生時代にはインカレロードにも出場し、MTBクロスカントリーではエリート選手として長く活動するなど、その自転車経験は幅広い。現在は茨城シクロクロスのオーガナイザーも務める。
→オンザロードつくば店
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對間進也(バイクプラス)
バイクプラス多摩センター店勤務の24歳。MTBレースに出場した際にゲーリー・フィッシャー氏に出会い、以降自転車の世界にのめり込む。「身体を動かさないとだめなタイプ」という、インプレッションには定評のある、大柄でパワフルな走りが得意な若手ライダー。
→バイクプラス多摩センター店
提供:トレック・ジャパン photo/text:Kei Tsuji 制作:シクロワイアード