2012/12/21(金) - 10:22
11月23日(金)に、中東はオマーンで開催された「オマーンセンチュリーライド」。アラビアの宝石と呼ばれる美しい風土を舞台に、国交樹立40周年を祝い開催された友好サイクリングイベントだ。大会を経て、温かい人柄に触れた。
「オマーン」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべるだろうか。「砂漠がずっと広がるアラブの国」だったり、スポーツが好きな方ならばサッカーを思い浮かべたり。プロロードレースに興味のある方ならば、春先に開催されるUCIレース、ツアー・オブ・オマーンを真っ先にイメージするかもしれない。ともかくオマーンについての情報が少ないため、的確に答えられる人はきっと少ないだろう。
2012年は、そんなアラビアの神秘的な国であるオマーンと、日本が国交40周年を迎える年。それを祝い、日本側が主体となって開催された一般参加型スポーツイベントが11月23日に開催されたオマーンセンチュリーライドだ。
オマーンセンチュリーライドへと日本から参加したのは、一般参加者、関係者、大会のサプライヤーを含め計75名ほど。私、CW編集部磯部もこのイベントを取材する機会に恵まれ、参加者の皆さんと共に2泊4日のツアーに同行させて頂いた。
この居心地の良さはなんだろう? オマーンの人々の優しさに迎えられて
カタールの首都にあるドーハ空港を経由し、計15時間の長旅を経てオマーンのマスカット空港へと到着すると、そこはやはり中東だ。気温は11月も後半だというのに30℃を越していてて、海が近いからか意外と蒸していて、初冬の日本から来ると一瞬頭がクラっとする。大会前日のお昼頃にホテル入りし、別便で来ていた参加者の皆さんと合流してバスでコースの下見に出かけた。
スルタン(国王)制を敷くオマーン。私達が訪れたちょうど1週間前には国王の即位42周年を迎えたばかり。当初センチュリーライドは2月のツアー・オブ・オマーンに併催される予定だったが、この即位記念日に合わせて日程を変更し、開催されるのだという。街中はお祝い電飾や装飾が多く施されとても賑やかな雰囲気だ。
平和という事前情報は聞いていたが、中東という一括りで情勢不安定なイメージを抱いてしまっていたことも事実。現在内紛が起きているイエメンは隣国だ。しかし街を歩いてみて、すぐにそのイメージが間違っていることに気付かされる。
ホテルの外を夜一人で歩いていても全く危険を感じないし、オマーン在留日本人は100名程度と珍しいからか、オマーニ(オマーン人のこと)はみんな、日本人だと知ると屈託の無く色々なことを聞いてくる。みんなとても人懐こくて、表情がとてもやわらかい。どういうわけかカメラを向けるとキリッとした表情になってしまうのだけど。
こんなことがあった。スーパーのレジでジュースを持って待っていると、後ろに並んでいた人がどこから来たのかと聞いてきた。日本からと答えると、「ならその支払いは私のだ。ウェルカムの気持ちだよ!」と言って自分の会計に混ぜてしまった。
後で教えてくれたが、現国王の祖父は日本人と結婚し、王妃の母親も日本人と日本との関係も深い。だから日本に対してとても友好的で、良いイメージを持っているという。
恐らくその人は少しオーバーだと思うが、その辺を歩いている人に話しかけても皆親切だ。そのスーパーで売っていた惣菜を選んでいたら、「あのチキンがうまい」「いや、あっちのマトンのほうがいい」と私の周りにたくさんの人が集まっていた。でも、親切の見返りが欲しくて話しかけているのではない、というのはすぐに分かる。英語が広く通じるのも交流の助けになった。
計2日強のショートステイだったため、正直オマーンの一部しか見ていない。しかし2日半の間で小さな親切や温かい人柄に触れる機会が多くあり、この国のことがとても好きになった。中東にこんなにも平和な国があるとは全く思っていなかった。
砂漠のイメージは間違い。山がちで美しい、風光明媚なオマーンにライドの期待が膨らむ
さて、オマーンセンチュリーライドのコースは計155km。基本的にはほとんど海側の平坦コースを走るが、序盤には斜度の急な山岳地帯も通過する。中東とは言え、全体的にオマーンの国土は山がちで、切り立った裸の岩山が広がり、標高3,000mを超える山岳もあるそうだ。
下見ツアーのバスの車窓からは、日本では決して見ることのできない荒涼とした山岳の光景と、その裾野に広がるアラビックな街の様子が見て取れる。砂漠が広がり、ラクダが歩いているような最初に抱いていたイメージとは全く異なり、「こんな世界があるんだ」と感心するばかり。あまりに普段の生活からかけ離れている光景に、どこかテレビの画面を眺めているような不思議な気分になった。
首都のマスカットや、観光名所の港街マトラは至る所に花の咲く植え込みで街が飾られ、メイン通りや建物には即位記念の電飾が至る所に行われていた。都市の外周部では建設ラッシュが進んでいて、さすが産油国だけあって景気が良いんだなと感じた。
日本から競輪トップスターの長塚・新田選手がゲスト出場。女性ライダーも参加
ゲストライダーは日本輪界のトップスター、長塚智広・新田祐大両選手が迎えられた。長塚選手はアテネオリンピックのチームスプリントで銀メダルを獲得、新田選手もロンドンオリンピックチームスプリントで8位に入るなど輝かしい実績を持つ、両選手ともオマーンと日本の国交40周年記念スポーツイベントに相応しい選手だ。
日本から参加した一般エントリーの中には女性参加者の姿もあり、外国で、しかも異国情緒あふれる中東でのライドを楽しみにしている様子。およそ3時間をかけた下見ツアーを終え、バスはホテルへと到着。すぐさま翌日はオマーンセンチュリーライド当日を迎える。
ライド当日の様子は続編にて。
続く。
text&photo:So.Isobe
「オマーン」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべるだろうか。「砂漠がずっと広がるアラブの国」だったり、スポーツが好きな方ならばサッカーを思い浮かべたり。プロロードレースに興味のある方ならば、春先に開催されるUCIレース、ツアー・オブ・オマーンを真っ先にイメージするかもしれない。ともかくオマーンについての情報が少ないため、的確に答えられる人はきっと少ないだろう。
2012年は、そんなアラビアの神秘的な国であるオマーンと、日本が国交40周年を迎える年。それを祝い、日本側が主体となって開催された一般参加型スポーツイベントが11月23日に開催されたオマーンセンチュリーライドだ。
オマーンセンチュリーライドへと日本から参加したのは、一般参加者、関係者、大会のサプライヤーを含め計75名ほど。私、CW編集部磯部もこのイベントを取材する機会に恵まれ、参加者の皆さんと共に2泊4日のツアーに同行させて頂いた。
この居心地の良さはなんだろう? オマーンの人々の優しさに迎えられて
カタールの首都にあるドーハ空港を経由し、計15時間の長旅を経てオマーンのマスカット空港へと到着すると、そこはやはり中東だ。気温は11月も後半だというのに30℃を越していてて、海が近いからか意外と蒸していて、初冬の日本から来ると一瞬頭がクラっとする。大会前日のお昼頃にホテル入りし、別便で来ていた参加者の皆さんと合流してバスでコースの下見に出かけた。
スルタン(国王)制を敷くオマーン。私達が訪れたちょうど1週間前には国王の即位42周年を迎えたばかり。当初センチュリーライドは2月のツアー・オブ・オマーンに併催される予定だったが、この即位記念日に合わせて日程を変更し、開催されるのだという。街中はお祝い電飾や装飾が多く施されとても賑やかな雰囲気だ。
平和という事前情報は聞いていたが、中東という一括りで情勢不安定なイメージを抱いてしまっていたことも事実。現在内紛が起きているイエメンは隣国だ。しかし街を歩いてみて、すぐにそのイメージが間違っていることに気付かされる。
ホテルの外を夜一人で歩いていても全く危険を感じないし、オマーン在留日本人は100名程度と珍しいからか、オマーニ(オマーン人のこと)はみんな、日本人だと知ると屈託の無く色々なことを聞いてくる。みんなとても人懐こくて、表情がとてもやわらかい。どういうわけかカメラを向けるとキリッとした表情になってしまうのだけど。
こんなことがあった。スーパーのレジでジュースを持って待っていると、後ろに並んでいた人がどこから来たのかと聞いてきた。日本からと答えると、「ならその支払いは私のだ。ウェルカムの気持ちだよ!」と言って自分の会計に混ぜてしまった。
後で教えてくれたが、現国王の祖父は日本人と結婚し、王妃の母親も日本人と日本との関係も深い。だから日本に対してとても友好的で、良いイメージを持っているという。
恐らくその人は少しオーバーだと思うが、その辺を歩いている人に話しかけても皆親切だ。そのスーパーで売っていた惣菜を選んでいたら、「あのチキンがうまい」「いや、あっちのマトンのほうがいい」と私の周りにたくさんの人が集まっていた。でも、親切の見返りが欲しくて話しかけているのではない、というのはすぐに分かる。英語が広く通じるのも交流の助けになった。
計2日強のショートステイだったため、正直オマーンの一部しか見ていない。しかし2日半の間で小さな親切や温かい人柄に触れる機会が多くあり、この国のことがとても好きになった。中東にこんなにも平和な国があるとは全く思っていなかった。
砂漠のイメージは間違い。山がちで美しい、風光明媚なオマーンにライドの期待が膨らむ
さて、オマーンセンチュリーライドのコースは計155km。基本的にはほとんど海側の平坦コースを走るが、序盤には斜度の急な山岳地帯も通過する。中東とは言え、全体的にオマーンの国土は山がちで、切り立った裸の岩山が広がり、標高3,000mを超える山岳もあるそうだ。
下見ツアーのバスの車窓からは、日本では決して見ることのできない荒涼とした山岳の光景と、その裾野に広がるアラビックな街の様子が見て取れる。砂漠が広がり、ラクダが歩いているような最初に抱いていたイメージとは全く異なり、「こんな世界があるんだ」と感心するばかり。あまりに普段の生活からかけ離れている光景に、どこかテレビの画面を眺めているような不思議な気分になった。
首都のマスカットや、観光名所の港街マトラは至る所に花の咲く植え込みで街が飾られ、メイン通りや建物には即位記念の電飾が至る所に行われていた。都市の外周部では建設ラッシュが進んでいて、さすが産油国だけあって景気が良いんだなと感じた。
日本から競輪トップスターの長塚・新田選手がゲスト出場。女性ライダーも参加
ゲストライダーは日本輪界のトップスター、長塚智広・新田祐大両選手が迎えられた。長塚選手はアテネオリンピックのチームスプリントで銀メダルを獲得、新田選手もロンドンオリンピックチームスプリントで8位に入るなど輝かしい実績を持つ、両選手ともオマーンと日本の国交40周年記念スポーツイベントに相応しい選手だ。
日本から参加した一般エントリーの中には女性参加者の姿もあり、外国で、しかも異国情緒あふれる中東でのライドを楽しみにしている様子。およそ3時間をかけた下見ツアーを終え、バスはホテルへと到着。すぐさま翌日はオマーンセンチュリーライド当日を迎える。
ライド当日の様子は続編にて。
続く。
text&photo:So.Isobe
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