大好きな台湾を大好きな自転車で、単身台湾一周の旅に走り出した大河原正晴さん。少し詰め込みすぎの荷物とスケジュールで悪戦苦闘し、台湾の人々に何度も助けられながら進んできた旅もいよいよ後半に突入。今回はゴールの台北を目指す完結編。ところが台湾を後にした最終日に想像もしない事態に遭遇することに。



3月8日 花蓮~太魯閣~花蓮

今回もパワー全開!でも今日はさすがにちょっと控えめのスタート今回もパワー全開!でも今日はさすがにちょっと控えめのスタート みなさんこんにちは、バイシクルトレーナーズ・ジャパンの大河原です。
ここまで本当に行き当たりばったりの旅を続け、さまざまなハプニングに遭遇しました。なかでも天から大きなお叱りが下り、この旅で最も厳しいライドとなった昨日は、さすがに私も反省した次第です。

ということで、今日は大きな移動は止めることにして、花蓮にもう一泊。ここまでの激動の日々から一転し、のんびり小休止の日と決め込みました。そのぶん市内のメリダやGIANTのお店を廻り、自転車のメンテナンスを済ませて、それからこの近くの景勝地、太魯閣渓谷の観光に出掛けてきます。

花蓮から海岸沿いを30kmほど北へ、そこから西へ少し入るとすぐに目当ての太魯閣渓谷入り口です。多くの観光客でにぎわう渓谷は、自転車で来ると自分のペースで気持ちよく見学できるお薦めのスポット。澄んだ空気と切り立った崖、そして谷間を流れる川と壮大な景色の中を悠々と自転車で走れるのは、まるでここまで頑張ってきたご褒美のよう。

宿の側にあったGIANTのお店に。ところで犬ってこんな寝方しますっけ?南国モード?宿の側にあったGIANTのお店に。ところで犬ってこんな寝方しますっけ?南国モード? 中国本土から来ていた、マダムたちに捕まって、記念撮影中国本土から来ていた、マダムたちに捕まって、記念撮影


ここではロードバイクのヒルクライム大会も開催されていて、海抜600m前後から3,000m以上まで上り続けるという、私と負けないくらい欲張りな方にぴったりのイベントが行われます。いずれは日本から猛者を連れて挑戦したいので、下見を兼ねて少し上ってみます。上のほうでは桜が咲いていると聞いていたのですが、今日は頂上付近の天候が原因で通行禁止。残念ですが次回の楽しみにとっておきます。
夜は花蓮の猛者とバドミントン交流後、送別会をしていただき、明日からは、また移動の始まりです。

危険なサイズの落石もちらほら。この翌日、観光客に落石が直撃したというニュースが流れていました危険なサイズの落石もちらほら。この翌日、観光客に落石が直撃したというニュースが流れていました 明日からの移動に備えしばし休息の一日明日からの移動に備えしばし休息の一日


本日の移動距離 66.3km



3月9日 花蓮~宜蘭~礁渓

さて、今日から再び移動を開始します。しかしその前に・・・
ここから台北まではバドミントンの予定はないので、まずは荷物を送って身軽になって出発。
この花蓮~宜蘭にかけての蘇花公路は、狭い道とアップダウンにトンネルと大型トラックの多さが有名な場所。地元の方からも、この区間だけは電車に乗ることを強く薦められました。しかし忘れてはいけません。私は“大使”という責任を背負ってやってきました。自分の目で見ないことには、伝えることができません。そうです、決して無謀な欲張りなわけではないんです!

そういうわけで立派な大義名分が出来たので、早めに出かけます。最初のうちは、左側に壮大な山、右には断崖絶壁と美しい眺望の海。まるでハワイの絶景を思い出すようです。時々とんでもないようなスピードで、反対車線までふくらんで落ちてくるような勢いのトラックに怯えつつ、海岸線を上ります。

景色は最高。アップダウンの標高差も最高景色は最高。アップダウンの標高差も最高 逃げ道のないトンネルが吸い込まれそうに続く逃げ道のないトンネルが吸い込まれそうに続く


最初のトンネルを進むと距離は短いものの道幅が狭く、ここでもし前後から大型トラックが来たら完全に逃げ場はなさそうです。こんなところをいくつも越えるには、かなりの強運が必要です。今日までを振り返れば、少なくとも今の自分には“運”は欠けているような・・・さらに昨年の落石で発生した、事故の話まで聞いてしまい、早くもすっかり戦意喪失となりました。

そんなところへ、昨日知り合ったばかりの日本人のお二人に奇跡的に遭遇。車で来ているお二人の途中まで乗せて行ってくださるというご好意を、ありがたく受けることにしました。車に乗ってもトンネルと断崖とカーブの連続は、まるで遊園地のアトラクション。

先日知り合った日本人の方と奇跡の遭遇、危険極まりないトンネルいくつかを自転車ごと車でスルーさせていただきました。感謝です先日知り合った日本人の方と奇跡の遭遇、危険極まりないトンネルいくつかを自転車ごと車でスルーさせていただきました。感謝です 海岸線の自然豊かな峠をいくつも越えて、先に進みます。自然に埋もれて、マイナスイオン満喫中です海岸線の自然豊かな峠をいくつも越えて、先に進みます。自然に埋もれて、マイナスイオン満喫中です


危険な場所を少しでも回避できたことをお二人に感謝して、また走り出します。その後は絶景の海岸線を上って下るの繰り返し。しばらく進むと落石撤去の工事で大渋滞。目の前についさっき落ちたばかりの巨大な岩が転がっています。聞けば観光バスもこの区間の走行を控えるよう、指導されているそうです。景色は素晴らしいのですが、やはりこの区間は電車で通過するほうが賢い選択となるでしょう。

なんとか順調に距離を稼いでいると、またしても恒例の大雨とパンクがやってきました。どうやら私の辞書には“運”という文字はないらしいです。雨で全身が泥まみれになりつつも、宜蘭を抜けて礁渓まで行くことを決意。理由は単純、礁渓は台湾有数の温泉街だからです。これだけ頑張れば、温泉に入れるご褒美もありでしょう。
なんとか頑張って到着し、大雨で冷えきった体を温めました。しかし持っていた洋服は雨で全滅。それを知った宿の親切な女将さんは、風呂に入っている間に全て洗濯してくれました。本当に感謝です。

雨とパンクでまたもやこの通り。なんだか数日前にも同じようなことがあったような・・・雨とパンクでまたもやこの通り。なんだか数日前にも同じようなことがあったような・・・ 目的地手前で、屋台のすし屋発見!予想以上の美味しさに感動でした目的地手前で、屋台のすし屋発見!予想以上の美味しさに感動でした


たくさん頑張った先に、温泉のご褒美は自転車ツアーには嬉しいところ。またゆっくりと訪れたい街が増えました。
ところがここで個人的に悲しいニュース、明日の降水確率100%。確実に運は遠ざかっているようです。

本日の移動距離 128.8km



3月10日 礁渓~台北松山駅~中山駅

早朝5時に起床、出発準備を整えて一途の望みを託して外に出ると、天気予報は見事に的中!部屋に戻って天気予報を見ると、海岸線は強風に注意とのこと。やっぱり私には運も天も見方してくれそうにありません。
もうしばらく待機して、天気の回復を待つ作戦に。まずはもう一度ゆっくりと温泉に入って天候を伺うも、一向に回復の兆しは見えないどころか、悪くなる一方。台北でのバドミントンに間に合うよう、ギリギリまで待ったのですが、願いもむなしく、この旅初めての汽車に乗ることを決意したのです。

天気予報は見事に的中!しばし部屋で待機するも・・・天気予報は見事に的中!しばし部屋で待機するも・・・ 自転車で台北に戻るのは諦め、この旅初めて汽車で移動自転車で台北に戻るのは諦め、この旅初めて汽車で移動


自転車の積み込みが可能な松山駅行きの列車に乗り込みます。運賃は120台湾ドルと自転車輸送費60台湾ドル。この金額で自転車ごと運んでくれるとは、なんと良心的なことか。切符を購入後、腹ごしらえをして駅のロータリーの足湯で一休み。今回走れなかった分、いつかまたこの区間を自転車で走りに再訪することを心に決めて汽車に乗り込みました。

駅前で食事を済ませ、汽車の時間までしばし足湯でくつろぎタイム駅前で食事を済ませ、汽車の時間までしばし足湯でくつろぎタイム この区間はいつかリベンジに来なくちゃ。いままでの旅路を振り返り、異国のホームで思いふける大河原 正晴、まもなく31歳この区間はいつかリベンジに来なくちゃ。いままでの旅路を振り返り、異国のホームで思いふける大河原 正晴、まもなく31歳


今までとは一転して、平和な移動の時間は今回の旅を振り返りながら、汽車に揺られて過ごしました。無事に松山駅に到着し最後は自転車に乗り換えて旅をスタートした台北の街に戻ってきました。そして今夜はこの旅で最後のバドミントンの練習会場へと向かいました。

本日の移動距離 9.7km



3月11日 台北市街~松山空港~羽田空港

いよいよこの旅の最終日。バドミントンに自転車を存分にやりつくして乗りつくした感慨に満ち溢れつつ、最初に訪れた台湾行政院青年指導委員会にご挨拶。あらゆる面でのバックアップのお礼と、無事に帰還したことを報告してきました。その後は再訪を誓って、地元の自転車ショップへも挨拶へ行き、宿泊施設の下見をしながら帰国の準備。

そして今回の旅で、とても頼りになったレンタル携帯電話を返却するために青年志工中心へ向かい、携帯電話を返却する直前、日本での大地震を知り、空港閉鎖のニュースを確認したのです。飛行機が出発するのかどうか判らないことと、じつは翌週にも台湾へ来訪する予定があったので、自転車は友人宅へ預け空港へ向かいます。

日本にも走りに来たことのある親日の店長さんのお店へご挨拶日本にも走りに来たことのある親日の店長さんのお店へご挨拶 地震のニュースを知ってから、帰国できるかわからないままとりあえず松山空港へ。カウンターは大混乱地震のニュースを知ってから、帰国できるかわからないままとりあえず松山空港へ。カウンターは大混乱


松山空港に着くと、日本行きのカウンターは長蛇の列、そしてフライトの時間や状況を表示する電光掲示板は遅延を知らせる赤い文字がずらり。人で溢れかえる出発ロビーで数時間、飛行機の状況を知らせるアナウンスを待つことになりました。自分の2つ前の便は欠航、1つ前の便は羽田に到着できるか判らないまま出発、そして自分の便は3時間遅れとはなったものの出発し、なんとか羽田空港に到着することはできました。ところが東京の皆さんならご存知のように、じつは大変だったのはここからなんです。

日本行きの飛行機は遅延や欠航の案内日本行きの飛行機は遅延や欠航の案内 ありがたいことになんとか羽田まで到着できました。国際線は身動きできない人々でごった返していましたありがたいことになんとか羽田まで到着できました。国際線は身動きできない人々でごった返していました


旅の写真や整理に朝まで没頭。食料もトイレも室温も確保された場所で過ごせたことは非常にありがたいことです旅の写真や整理に朝まで没頭。食料もトイレも室温も確保された場所で過ごせたことは非常にありがたいことです 地震の影響で羽田からの公共交通機関は全て麻痺、道路も渋滞がひどくて全く動けないようです。こんなときに、ずっと旅を共にしてきたロードバイクは、台湾の友人宅に預けてきてしまいました。結局この日は羽田空港で帰宅難民となった1万数千人の1人となり過ごすことになりました。

災害時の毛布やマット、非常食が配られましたが、たくさんの子供連れやご老人に毛布やマットを譲り、自分は空港内で安全そうな場所を確保して、朝までダンボールの上でストレッチしながら今回の旅の写真の整理。ちょうど自転車のヘルメットがあったので、余震の際にはそれを被って緊急時に備えていました。


このときは、都内でも交通機関がストップする大混乱。こんなときこそ自転車の機動力が大活躍するのですが、肝心なときに自転車がないという情けない状態でした。
こうして一生忘れることができない旅の最終日が暮れていくのでした。

今回の旅の総走行距離
トータル 1112.3km となりました



最後は想像もしなかったことが起こりましたが、ありがたかったのは、今回の旅で出会ったたくさんの人が、大地震のニュースを見て、続々と電話をくれたことです。みなさんに無事を伝えるとともに、旅が終わってまで感謝の気持ちでいっぱいになりました。

台湾は美しくも厳しい自然、その時々でまったく違う色を見せてくれる気候、それに伴う景色が素晴らしく、自転車のために整備されつつある道路や、島一周をサポートしてくれる自転車店の多さ、専用地図の種類など、自転車で廻るにはありがたことばかりです。







そんな中でも際立って印象的なのは、台湾の人々の熱情です。毎日のように誰かに出会い、仲良くなって、初めて合った人にも何の見返りも求めずに、自分のできる何かをしてあげる。そんな素晴らしい人々に出会える台湾の旅はみなさんにもぜひお勧めしたいと思います。
でも今後台湾一周をしようと考えている皆さんには、もう少しスケジュールにも荷物にも余裕をもって計画的にまわることをオススメします。


それではみなさんが、これからも多くの人との素晴らしい出会いと、楽しいサイクルライフを送ってくださることを心から祈っています。



text&photo:大河原 正晴





大河原 正晴大河原 正晴 大河原 正晴 プロフィール

BICYCLE TRAINERS JAPAN 代表。
JCAサイクリングインストラクターを始め、上級救命技能、高齢者体力づくり支援士などの資格を有し、バドミントンと自転車を武器に日本各地、世界各国を駆け巡り、ウェルネスライフを実践するPERSONAL TRAINER。
都内フィットネスクラブ・自宅・出張にてパーソナルトレーニング指導したり、都内を拠点にパーソナルライド、パーソナルランニングセッションも実施する。
クライアントは運動未経験の女性からトップアスリートまで、年齢も子供から高齢者に至るまで、多岐に渡る。自身の身体能力を引き出すためのトレーニング、コンディショニングアドバイスを中心に、将来長く健康を維持するための生活習慣の見直しや提案、生涯スポーツへの挑戦もサポートもしてくれる。
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