2011/01/04(火) - 17:50
2010年12月4日、サイパン島を舞台に100kmレース「ヘルオブマリアナ」が開催された。南の島の地形を生かしたこのユニークなレースは、誰もが楽しんで挑戦できる魅力に溢れている。実走レポートをシリーズでお届けする。
「マリアナの地獄」という名のファンレース
ヘルオブマリアナは、2007年に誕生し、今回紹介する2010年12月の大会で4回目を迎えるまだ新しい大会だ。
レースを主催するのはサイパン随一のリゾートホテルであるパシフィックアイランドクラブ・サイパン(以下P.I.C.サイパン)。マリアナ政府観光局と地元の協賛と協力を得て開催され、地元ライダーに加えてグアムやサイパン近隣諸島、そして日本や韓国からも参加者が集まっている。今回も日本から17名が参加。その参加ツアーにCW編集部も同行させていただいた。
「マリアナの地獄」という、ちょっとおどろおどろしい名前がついているこのレース。キャッチコピーは"The Toughest bikerace in Marianas"(=マリアナ地域でもっともタフなバイクレース)だ。それが本当かどうかはこれからのレポートで確かめていただくとして、編集部の判定では、走りごたえがあるレースであることは間違いない。そして、レースというカテゴリーだが、その中身はなかなか楽しめるファンライドでもあった。
100kmコースのロングライドにソロで挑戦するのが基本だが、仲間同士でエントリーするリレー部門も設けられていて、100キロコースを50キロずつ2名チームで走る「タンデム」 と、100キロコースを25キロずつ4名チームで挑戦する「クウォッド」もある。今回は日本から職場の社員旅行として参加した素人女性4人組がリレー部門の「クウォッド女子」にエントリーした。
日本からわずか3時間半の楽園
サイパン島には成田からわずか3時間半のフライトで到着。年間平均気温は27℃の常夏の島だ。ツール・ド・おきなわは那覇から名護への2時間程度の移動が伴うが、スタート地点にもなっているPIC・サイパンホテルには空港からものの5分で到着。翌日のレースを迎えた。
100kmで獲得標高1700m!
スタートは朝6:15。夜明けと共に走り出すのはツール・ド・おきなわやホノルルセンチュリーライドなどと同じだ。
スタートラインに並ぶのは、地元選手に加えてグアム島やアメリカ人、韓国人、そして日本人など国際色豊か。エクステラやトライアスロンなどに参戦するアドベンチャーレーサーとして知られる小笠原崇裕選手の姿も。しかし本格レーサーはほんの一握り。ほとんどはファン系ライダーで、マウンテンバイクで走る「チャレンジャー」の姿も多いことがこのイベントの性格を良く表している。
サイパン島は総面積が約185キロ平米(伊豆大島の約2倍)の小さな島とあって、100kmのコースをとるにはほぼ全島をくまなく走る必要がある。島の幹線道路をメインコースに、そこからアプローチできる登りポイントと下りポイントを組みわせて走ることになるのだ。それらほとんどのチェックポイントが登りか下りの先にあり、登っては下るの繰り返し。アップダウンを繰り返しての全コースの獲得標高差は1700mにのぼるから、これはなかなかハードな数字だ。
スタートしばらくは前方に集団ができるが、大部分のライダーはバラバラ。アップダウンの厳しいチェックポイントをひとつ経れたあとは、ほぼすべてのライダーが単独に近い形で走ることになる。
登っては下る・下っては登るの繰り返し
メインの幹線道路はもちろんなだらかだが、そこから分岐するチェックポイントまでの道はかなりの登り・下りだ。海岸線まで一気に下っては登り返し、展望ポイントまで登っては下るの繰り返し。
各チェックポイントでは通過チェックが行われ、同時に補給ポイントにもなっている。ここではボランティアさんがスポーツドリンクの入ったボトルを手渡ししてくれるので、暑くても補給に困ることはない。補給食の類は用意されないのは、レースだから。スタートの6時15分から6時間が制限時間になっているから、ギリギリで走る人なら補給を自分でもつ必要はある。長丁場のレースの経験者なら、通常のロードレース同様にエナジージェルなどをいくつか持てば足りるだろう。
この通過チェックと補給を行ってくれるボランティアさんたちのノリの良さはサイパンならでは。ハワイがアロハならサイパンでは「ハファダイ!」と、陽気な掛け声とノリのいい応援に勇気づけられる。ひとりで参加しても孤独を感じることがないだろう。
コース上の最高標高ポイントのレーダータワー(戦時中に使われたレーダーの廃墟)、そしてスーサイドクリフへの登りでは、サイパンならではの碧い海とエメラルドの珊瑚礁が眼下いっぱいに臨める。
コース全体を通した道路状況は概ね良好で、道幅は広く、とくにスーサイドクリフ周辺のハイライトにあたるコースでは交通量の少ない広々とした道路をサイクリストたちが独占して走れる(実際にはクルマも通る)感じなので、非常に気持ちがいい。
唯一、序盤の幹線道路に3kmほど工事区間があったのは気になったが、一時的なものなので来年の開催時には舗装が完了されているとのことだ。
ただし、そこは島の道路なので例外なく雨の日は路面が滑る。この日は途中スコールが降り、下りでスリップして転倒した人が何人かいた。チェックポイントまでの上り下りは例外なく急坂なので、スピードが出た状態で落車して、リタイアを予備なくされる人も。
通り雨を経験したが、一日を通しては南の島の晴れの天気。島の北端のバンザイ・クリフからゴールまでの帰路の30kmはほぼ平坦の幹線道路。早い人で3時間。コースに手を焼いた人で5時間半程度でほぼ全員が制限時間内に完走した。
とにかくゴキゲンなアワードパーティ
昼のゴールの後は、13時半からのアワードパーティ(表彰式)が待っている。PICホテルのレストランで、皆で昼食を食べながらレースを振り返る楽しいひととき。ごきげんなDJの進行により、次々に表彰される人がコールされていく。
表彰部門が多いのがうれしい。ソロ部門はエイジグループ(16歳以上25歳以下、35歳以下、45歳以下、55歳以下、 56歳以上)それぞれ男・女に分けられ、各部門で表彰がある。
賞金もたっぷり出るのが魅力的で、100kmソロ(オープン)男・女それぞれ上位入賞者3名に賞金が授与される。ちなみに1位賞金は1500USドル(約12万2千円)という高額!
男子オープンの優勝者は元梅丹本舗GDR(エキップアサダ)で走っていた韓国人のソウ・ジュニヨン。そして女子は現地在住の日本人女性トライアスリートのミエコ・ケリーさん。ふたりとも1500ドル獲得だ。
そして社員旅行として参加した日本人素人女性4人組がリレー部門の「クウォッド女子」で優勝(この部門の唯一の参加チーム)して、賞金獲得。そのうちの一人がポーカーラン賞と称する謎の賞(ブービー賞のようなもの?)を獲得。そして女性ソロに参加したロード初心者の加藤直子さんは、エイジ別で2位となり、100ドルのショッピング券を獲得した。
競争率の高い男性陣こそまったく表彰されなかったが、日本人参加者たちはおかげで大盛り上がり。とくにリレー部門の4人にはいい社員旅行の思い出になったようだ。これを機に日本でも自転車を始めるかも?
表彰部門が多いのは、とにかく多くの人に賞をあげようという大会の意向のようだ。表彰を受ける人がぞくぞく壇上に呼ばれ、プレゼントを受け取る。皆でそれを讃え、喝采。このフレンドリーなパーティに出るだけでハッピーな気分になれる。
レースで疲れた後は、ホテルの充実したプールやビーチ施設でゆっくりと体を休ませながらリゾートステイを楽しむ。ホテルの敷地内にはファミリーで楽しめる施設が充実しており、さらにシュノーケリングやボディボード、カヤックなどのビーチアクティビティは宿泊客なら無料で好きなだけ楽しめるようになっている。参加者たちは日焼けした身体を癒しに、思い思いに海へと出かけていった。
ヘル・オブ・マリアナはサイパン島の美しい海、自然、風、そしてローカルの声援をたっぷり味わえるアットホームなレースだった。上り下りした坂の記憶はしっかりと身体に刻まれ、100kmといえど走りごたえはたっぷり。誰もが十分な達成感を味わえるし、もしあなたが実力派のレーサーなら、上位の賞金を狙うのもいいと思う。コースの厳しさは「ホノルルセンチュリーライド以上、ツール・ド・おきなわの130kmレース部門と同等」という感想だ。
2011年は日本からの参加ツアーも本格的に募集される。ツアーを利用する場合は米国便に通常課される片道200ドル程度の自転車搬送費が軽減されるように航空会社と交渉が進められているとのことだ。
※シクロワイアードではヘル・オブ・マリアナの参加レポートをシリーズで掲載してゆきます。お楽しみに。
photo&text Makoto.AYANO
「マリアナの地獄」という名のファンレース
ヘルオブマリアナは、2007年に誕生し、今回紹介する2010年12月の大会で4回目を迎えるまだ新しい大会だ。
レースを主催するのはサイパン随一のリゾートホテルであるパシフィックアイランドクラブ・サイパン(以下P.I.C.サイパン)。マリアナ政府観光局と地元の協賛と協力を得て開催され、地元ライダーに加えてグアムやサイパン近隣諸島、そして日本や韓国からも参加者が集まっている。今回も日本から17名が参加。その参加ツアーにCW編集部も同行させていただいた。
「マリアナの地獄」という、ちょっとおどろおどろしい名前がついているこのレース。キャッチコピーは"The Toughest bikerace in Marianas"(=マリアナ地域でもっともタフなバイクレース)だ。それが本当かどうかはこれからのレポートで確かめていただくとして、編集部の判定では、走りごたえがあるレースであることは間違いない。そして、レースというカテゴリーだが、その中身はなかなか楽しめるファンライドでもあった。
100kmコースのロングライドにソロで挑戦するのが基本だが、仲間同士でエントリーするリレー部門も設けられていて、100キロコースを50キロずつ2名チームで走る「タンデム」 と、100キロコースを25キロずつ4名チームで挑戦する「クウォッド」もある。今回は日本から職場の社員旅行として参加した素人女性4人組がリレー部門の「クウォッド女子」にエントリーした。
日本からわずか3時間半の楽園
サイパン島には成田からわずか3時間半のフライトで到着。年間平均気温は27℃の常夏の島だ。ツール・ド・おきなわは那覇から名護への2時間程度の移動が伴うが、スタート地点にもなっているPIC・サイパンホテルには空港からものの5分で到着。翌日のレースを迎えた。
100kmで獲得標高1700m!
スタートは朝6:15。夜明けと共に走り出すのはツール・ド・おきなわやホノルルセンチュリーライドなどと同じだ。
スタートラインに並ぶのは、地元選手に加えてグアム島やアメリカ人、韓国人、そして日本人など国際色豊か。エクステラやトライアスロンなどに参戦するアドベンチャーレーサーとして知られる小笠原崇裕選手の姿も。しかし本格レーサーはほんの一握り。ほとんどはファン系ライダーで、マウンテンバイクで走る「チャレンジャー」の姿も多いことがこのイベントの性格を良く表している。
サイパン島は総面積が約185キロ平米(伊豆大島の約2倍)の小さな島とあって、100kmのコースをとるにはほぼ全島をくまなく走る必要がある。島の幹線道路をメインコースに、そこからアプローチできる登りポイントと下りポイントを組みわせて走ることになるのだ。それらほとんどのチェックポイントが登りか下りの先にあり、登っては下るの繰り返し。アップダウンを繰り返しての全コースの獲得標高差は1700mにのぼるから、これはなかなかハードな数字だ。
スタートしばらくは前方に集団ができるが、大部分のライダーはバラバラ。アップダウンの厳しいチェックポイントをひとつ経れたあとは、ほぼすべてのライダーが単独に近い形で走ることになる。
登っては下る・下っては登るの繰り返し
メインの幹線道路はもちろんなだらかだが、そこから分岐するチェックポイントまでの道はかなりの登り・下りだ。海岸線まで一気に下っては登り返し、展望ポイントまで登っては下るの繰り返し。
各チェックポイントでは通過チェックが行われ、同時に補給ポイントにもなっている。ここではボランティアさんがスポーツドリンクの入ったボトルを手渡ししてくれるので、暑くても補給に困ることはない。補給食の類は用意されないのは、レースだから。スタートの6時15分から6時間が制限時間になっているから、ギリギリで走る人なら補給を自分でもつ必要はある。長丁場のレースの経験者なら、通常のロードレース同様にエナジージェルなどをいくつか持てば足りるだろう。
この通過チェックと補給を行ってくれるボランティアさんたちのノリの良さはサイパンならでは。ハワイがアロハならサイパンでは「ハファダイ!」と、陽気な掛け声とノリのいい応援に勇気づけられる。ひとりで参加しても孤独を感じることがないだろう。
コース上の最高標高ポイントのレーダータワー(戦時中に使われたレーダーの廃墟)、そしてスーサイドクリフへの登りでは、サイパンならではの碧い海とエメラルドの珊瑚礁が眼下いっぱいに臨める。
コース全体を通した道路状況は概ね良好で、道幅は広く、とくにスーサイドクリフ周辺のハイライトにあたるコースでは交通量の少ない広々とした道路をサイクリストたちが独占して走れる(実際にはクルマも通る)感じなので、非常に気持ちがいい。
唯一、序盤の幹線道路に3kmほど工事区間があったのは気になったが、一時的なものなので来年の開催時には舗装が完了されているとのことだ。
ただし、そこは島の道路なので例外なく雨の日は路面が滑る。この日は途中スコールが降り、下りでスリップして転倒した人が何人かいた。チェックポイントまでの上り下りは例外なく急坂なので、スピードが出た状態で落車して、リタイアを予備なくされる人も。
通り雨を経験したが、一日を通しては南の島の晴れの天気。島の北端のバンザイ・クリフからゴールまでの帰路の30kmはほぼ平坦の幹線道路。早い人で3時間。コースに手を焼いた人で5時間半程度でほぼ全員が制限時間内に完走した。
とにかくゴキゲンなアワードパーティ
昼のゴールの後は、13時半からのアワードパーティ(表彰式)が待っている。PICホテルのレストランで、皆で昼食を食べながらレースを振り返る楽しいひととき。ごきげんなDJの進行により、次々に表彰される人がコールされていく。
表彰部門が多いのがうれしい。ソロ部門はエイジグループ(16歳以上25歳以下、35歳以下、45歳以下、55歳以下、 56歳以上)それぞれ男・女に分けられ、各部門で表彰がある。
賞金もたっぷり出るのが魅力的で、100kmソロ(オープン)男・女それぞれ上位入賞者3名に賞金が授与される。ちなみに1位賞金は1500USドル(約12万2千円)という高額!
男子オープンの優勝者は元梅丹本舗GDR(エキップアサダ)で走っていた韓国人のソウ・ジュニヨン。そして女子は現地在住の日本人女性トライアスリートのミエコ・ケリーさん。ふたりとも1500ドル獲得だ。
そして社員旅行として参加した日本人素人女性4人組がリレー部門の「クウォッド女子」で優勝(この部門の唯一の参加チーム)して、賞金獲得。そのうちの一人がポーカーラン賞と称する謎の賞(ブービー賞のようなもの?)を獲得。そして女性ソロに参加したロード初心者の加藤直子さんは、エイジ別で2位となり、100ドルのショッピング券を獲得した。
競争率の高い男性陣こそまったく表彰されなかったが、日本人参加者たちはおかげで大盛り上がり。とくにリレー部門の4人にはいい社員旅行の思い出になったようだ。これを機に日本でも自転車を始めるかも?
表彰部門が多いのは、とにかく多くの人に賞をあげようという大会の意向のようだ。表彰を受ける人がぞくぞく壇上に呼ばれ、プレゼントを受け取る。皆でそれを讃え、喝采。このフレンドリーなパーティに出るだけでハッピーな気分になれる。
レースで疲れた後は、ホテルの充実したプールやビーチ施設でゆっくりと体を休ませながらリゾートステイを楽しむ。ホテルの敷地内にはファミリーで楽しめる施設が充実しており、さらにシュノーケリングやボディボード、カヤックなどのビーチアクティビティは宿泊客なら無料で好きなだけ楽しめるようになっている。参加者たちは日焼けした身体を癒しに、思い思いに海へと出かけていった。
ヘル・オブ・マリアナはサイパン島の美しい海、自然、風、そしてローカルの声援をたっぷり味わえるアットホームなレースだった。上り下りした坂の記憶はしっかりと身体に刻まれ、100kmといえど走りごたえはたっぷり。誰もが十分な達成感を味わえるし、もしあなたが実力派のレーサーなら、上位の賞金を狙うのもいいと思う。コースの厳しさは「ホノルルセンチュリーライド以上、ツール・ド・おきなわの130kmレース部門と同等」という感想だ。
2011年は日本からの参加ツアーも本格的に募集される。ツアーを利用する場合は米国便に通常課される片道200ドル程度の自転車搬送費が軽減されるように航空会社と交渉が進められているとのことだ。
※シクロワイアードではヘル・オブ・マリアナの参加レポートをシリーズで掲載してゆきます。お楽しみに。
photo&text Makoto.AYANO
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