2010/10/14(木) - 21:57
9月19日に島根県松江市周辺で開催された出雲路センチュリーライド。神話のふるさとと言われる魅力的な出雲路を堪能する160kmのロングライド。編集部で実走したレポートをお届けしよう。
古代の日本において大きな精神的影響力を持ったとされ、神話のふるさとと呼ばれる「出雲」地方こと島根県東部。出雲大社や宍道湖、多くの自然と文化的遺産を持つこの地で開催されるのが出雲路センチュリーライドだ。
東京及び関東圏からはなかなか遠く、行くことができなかったこのイベントに、今回念願かなって出場することができた。出雲は、沖縄や北海道よりも遠い気がするのは、なぜか?
大会前日の9月18日、水の都・松江市に到着した。前夜の22時までスタート地点で受付けをしているとのことで、昼ごろに到着してから自転車を組み立て、練習と観光を兼ねて周辺を走りだした。
宍道湖といっても中海(なかうみ)と宍道湖の2つの湖がつながっており、その周囲を走るのはいいアイデアだと思った。イベントでは通らない安来(やすぎ)や、鳥取県の米子、境港(さかいみなと)の方面もついでに走っておきたいと思ったのだ。
境港はゲゲゲの鬼太郎で有名な漫画家・水木しげるさんのふるさと。そして松江は小泉八雲として帰化したラフカディオ・ハーンの第2のふるさととして有名だ。小泉八雲も「耳なし芳一」を書いた。出雲一帯は妖怪・怪談のメッカでもあり、神話の国以上に、すでに十分神秘的ではある(笑)。
流しながら走って、中海ののどかな風景を堪能し、夕方、宍道湖に戻った。湖に沈む夕陽が名物ということだが、まるで絵に書いたような鮮やかな夕陽に遭遇して言葉を失う。湖面と松江市街が黄金色に染まる風景に、心の底から完全ノックアウト。前日だというのに早くも感動でいっぱい。大満足だ。
日が沈んでからスタート地点になる松江イングリッシュガーデンに到着。ここで前日受付けしてもらえる。
「当日朝の受付も可能ですが、参加者に不安がでないように前日の受付を用意しているんです」と話してくれたのは事務局の吉野勝雄さん(NPO法人サイクリストビュー)。吉野さんは地元のペアラレーシングの代表でもある。
島根県一帯には石見銀山のある浜田市大田市を往復する日本で数少ない本格的なグランフォンドイベント「石見ライド」や、ヒルクライムイベントの「飯南ヒルクライム」などが開催されている。その主催者はいずれも「NPO法人サイクリストビュー」だ。島根県を自転車イベントで盛り上げる、いわゆる「むらおこし」の活動にはいつも共鳴する。シクロワイアードもサイクリストビューのイベントを後援させていただいている。
出雲路の今年の参加者は600人ほどと聞く。昨年より増えたとはいえ、小さな大会に違いない。受付時に漂うアットホームな空気に、翌日への期待をふくらませる。そしてその夜は地の美味いものを食べに松江の街に繰り出した。旅の楽しみだ。
大会当日 レポート前編
山陰の自転車仲間大集合!
当日朝、7時半のスタートにあわせ5時頃から参加者が集まりだす。山陰のイベント取材は初めてで、見知らぬチームジャージがほとんど。知っている参加者もほぼいない。目立ってたチームの皆さんを取材させていただきました。なるべく島根のクラブを優先で、どうぞ。
スタートから始まるアップダウンに前途多難?
7時半にスタート。600人の参加者は、数ウェーブに別れて走りだしていく。宍道湖のほとりのスタート地点だが、すぐに山側に入り、宍道湖畔道路は走らない。これはこの人数が狭い湖畔道路で交通の妨げになるとこを避けるための配慮だ。
入った山側の道はアップダウンが断続的に続き、いきなりけっこう脚にくる。宍道湖西岸までの約25kmほどは、アップダウンの連続する山道のため、集団はいきなりばらける。初心者にはちょっとした洗礼だろう。中盤以降は山深い路に入っていくことを知っていると、一日に160km走ることがちょっと大変だなぁ、と思うようになる。
出雲路を味わい尽くす
ここで改めて全コースの行程をざっと紹介しておこう。通称「出雲路ワンデイラン160」として親しまれてきたこのイベントは、2008年から「出雲路センチュリーライド」と名前を改めた。コースは毎年少しづつ変更されるが、今年は松江イングリッシュガーデンをスタートし、宍道湖を回り込むようにして斐川から雲南市に向かい、神話のふるさとを走破、熊野神社や中海を経由して、日本海沿岸沿いを回って戻ってくるという、まさに出雲路を味わいつくすコースだ。
マップリーディングによってチェックポイント(エイドステーション)を回るというスタイルだが、コースの要所には進行方向を示す案内標識と立哨員がいるので、迷うことは少ない(ときどき迷う人はいるとのこと)。
途中に関門はあるものの、ゴールの制限時間は夕刻18:00と、距離は長いが余裕を持った設定がされている。主催者代表の森脇博史さんは「集団の先頭を牽いてもがくのではなく、前の人の背中にくらいつくのではなく、参加者ひとりひとりのスピードで、そしてひとりひとりの目線で出雲国(いずものくに)の自然と歴史を感じ取って欲しい」と話す。センチュリーライドの名に違わず、距離は160kmだ。
序盤のアップダウンに洗礼は受けたが、宍道湖西岸に出てからしばらくはのどかな風景が続く。出雲空港の近くでは向日葵の咲く畑が続き、少し時期外れ?と思ったが、冷凍保存した種によるものと聞いて納得。黄色い絨毯を行く自転車という、ツール・ド・フランスさながらの風景を楽しむ。
道端で応援にしてくれる子供たちやおばちゃんたち。首都圏では味わえないふれあいアリ。いい雰囲気です。
縁結びのセンチュリーライド
出雲の国は今「縁結び」の地として盛り上がっている。観光協会のポスターにもそのキャッチコピーが踊っている。
コレ、ちょっと気恥ずかしいキャッチコピーなのだが、出雲大社はもともと「縁結びの神様」と知られる。旧暦の10月にあたるこの月を「神無月」と言い、その神様たちが会議のために集う場所が出雲であると信じられている。
だから逆に、旧暦10月を出雲では神々が集う「神在月」と呼ぶ。全国の神様が出雲地方にお集まりになられ、日本の神様は皆が健康であるよう、皆の生活が繁栄するよう、皆が仲良く暮らせるよう取り計らうという。
そして集う神様たちが話しあう議題の一つが人の運命と「縁結び」なのだそうだ。
出雲にはパワースポットやスピリチュアルスポットと呼ばれる場所がたくさんあり、このイベントを走るだけで運気が上昇するかも?とのこと。
だから、出雲路センチュリーライドは縁結びのセンチュリーライドなのだ。よい出会いがありますように。
幽玄な山深い道を行く
宍道湖西岸を離れ、コースは加茂ラメールのエイドステーションから山中の道に入る。古きよき田舎の風景が続く、のどかな道だ。
とくに何があるわけでもない、山村の風景を楽しむ路。観光化されていないからこその風景が続く。
ところどころ険しい坂があるが、おおむね走りやすく、幽玄な風景だけが楽しめる。
出雲大社と同じく、オオクニヌシノミコトが祀られている熊野大社は、コース上にこつ然と現れる。出雲風土記的には出雲大社の兄貴分にあたるとされている神社だ。山中のためわざわざ訪れる人は少ない。
コース上もっとも南に位置する山村では、民家の庭先で湧く清水をいただく。じつは大会直前になって民家のほうから申し入れがあり、私設給水所となったと聞いた。古民家のおばあたちが揃って見守る中、冷たい湧き水をボトルに詰め、頭からかぶった。
民家からは自家製の梅干しのサービス。これも素朴な味で、いい塩分補給になった。なによりおばあたちの素朴な歓迎ぶりが嬉しく、いちばんの思い出になった。
後編では湖と海の風景を楽しみながら走ります。後編はこちら
photo&text(c)Makoto.AYANO
古代の日本において大きな精神的影響力を持ったとされ、神話のふるさとと呼ばれる「出雲」地方こと島根県東部。出雲大社や宍道湖、多くの自然と文化的遺産を持つこの地で開催されるのが出雲路センチュリーライドだ。
東京及び関東圏からはなかなか遠く、行くことができなかったこのイベントに、今回念願かなって出場することができた。出雲は、沖縄や北海道よりも遠い気がするのは、なぜか?
大会前日の9月18日、水の都・松江市に到着した。前夜の22時までスタート地点で受付けをしているとのことで、昼ごろに到着してから自転車を組み立て、練習と観光を兼ねて周辺を走りだした。
宍道湖といっても中海(なかうみ)と宍道湖の2つの湖がつながっており、その周囲を走るのはいいアイデアだと思った。イベントでは通らない安来(やすぎ)や、鳥取県の米子、境港(さかいみなと)の方面もついでに走っておきたいと思ったのだ。
境港はゲゲゲの鬼太郎で有名な漫画家・水木しげるさんのふるさと。そして松江は小泉八雲として帰化したラフカディオ・ハーンの第2のふるさととして有名だ。小泉八雲も「耳なし芳一」を書いた。出雲一帯は妖怪・怪談のメッカでもあり、神話の国以上に、すでに十分神秘的ではある(笑)。
流しながら走って、中海ののどかな風景を堪能し、夕方、宍道湖に戻った。湖に沈む夕陽が名物ということだが、まるで絵に書いたような鮮やかな夕陽に遭遇して言葉を失う。湖面と松江市街が黄金色に染まる風景に、心の底から完全ノックアウト。前日だというのに早くも感動でいっぱい。大満足だ。
日が沈んでからスタート地点になる松江イングリッシュガーデンに到着。ここで前日受付けしてもらえる。
「当日朝の受付も可能ですが、参加者に不安がでないように前日の受付を用意しているんです」と話してくれたのは事務局の吉野勝雄さん(NPO法人サイクリストビュー)。吉野さんは地元のペアラレーシングの代表でもある。
島根県一帯には石見銀山のある浜田市大田市を往復する日本で数少ない本格的なグランフォンドイベント「石見ライド」や、ヒルクライムイベントの「飯南ヒルクライム」などが開催されている。その主催者はいずれも「NPO法人サイクリストビュー」だ。島根県を自転車イベントで盛り上げる、いわゆる「むらおこし」の活動にはいつも共鳴する。シクロワイアードもサイクリストビューのイベントを後援させていただいている。
出雲路の今年の参加者は600人ほどと聞く。昨年より増えたとはいえ、小さな大会に違いない。受付時に漂うアットホームな空気に、翌日への期待をふくらませる。そしてその夜は地の美味いものを食べに松江の街に繰り出した。旅の楽しみだ。
大会当日 レポート前編
山陰の自転車仲間大集合!
当日朝、7時半のスタートにあわせ5時頃から参加者が集まりだす。山陰のイベント取材は初めてで、見知らぬチームジャージがほとんど。知っている参加者もほぼいない。目立ってたチームの皆さんを取材させていただきました。なるべく島根のクラブを優先で、どうぞ。
スタートから始まるアップダウンに前途多難?
7時半にスタート。600人の参加者は、数ウェーブに別れて走りだしていく。宍道湖のほとりのスタート地点だが、すぐに山側に入り、宍道湖畔道路は走らない。これはこの人数が狭い湖畔道路で交通の妨げになるとこを避けるための配慮だ。
入った山側の道はアップダウンが断続的に続き、いきなりけっこう脚にくる。宍道湖西岸までの約25kmほどは、アップダウンの連続する山道のため、集団はいきなりばらける。初心者にはちょっとした洗礼だろう。中盤以降は山深い路に入っていくことを知っていると、一日に160km走ることがちょっと大変だなぁ、と思うようになる。
出雲路を味わい尽くす
ここで改めて全コースの行程をざっと紹介しておこう。通称「出雲路ワンデイラン160」として親しまれてきたこのイベントは、2008年から「出雲路センチュリーライド」と名前を改めた。コースは毎年少しづつ変更されるが、今年は松江イングリッシュガーデンをスタートし、宍道湖を回り込むようにして斐川から雲南市に向かい、神話のふるさとを走破、熊野神社や中海を経由して、日本海沿岸沿いを回って戻ってくるという、まさに出雲路を味わいつくすコースだ。
マップリーディングによってチェックポイント(エイドステーション)を回るというスタイルだが、コースの要所には進行方向を示す案内標識と立哨員がいるので、迷うことは少ない(ときどき迷う人はいるとのこと)。
途中に関門はあるものの、ゴールの制限時間は夕刻18:00と、距離は長いが余裕を持った設定がされている。主催者代表の森脇博史さんは「集団の先頭を牽いてもがくのではなく、前の人の背中にくらいつくのではなく、参加者ひとりひとりのスピードで、そしてひとりひとりの目線で出雲国(いずものくに)の自然と歴史を感じ取って欲しい」と話す。センチュリーライドの名に違わず、距離は160kmだ。
序盤のアップダウンに洗礼は受けたが、宍道湖西岸に出てからしばらくはのどかな風景が続く。出雲空港の近くでは向日葵の咲く畑が続き、少し時期外れ?と思ったが、冷凍保存した種によるものと聞いて納得。黄色い絨毯を行く自転車という、ツール・ド・フランスさながらの風景を楽しむ。
道端で応援にしてくれる子供たちやおばちゃんたち。首都圏では味わえないふれあいアリ。いい雰囲気です。
縁結びのセンチュリーライド
出雲の国は今「縁結び」の地として盛り上がっている。観光協会のポスターにもそのキャッチコピーが踊っている。
コレ、ちょっと気恥ずかしいキャッチコピーなのだが、出雲大社はもともと「縁結びの神様」と知られる。旧暦の10月にあたるこの月を「神無月」と言い、その神様たちが会議のために集う場所が出雲であると信じられている。
だから逆に、旧暦10月を出雲では神々が集う「神在月」と呼ぶ。全国の神様が出雲地方にお集まりになられ、日本の神様は皆が健康であるよう、皆の生活が繁栄するよう、皆が仲良く暮らせるよう取り計らうという。
そして集う神様たちが話しあう議題の一つが人の運命と「縁結び」なのだそうだ。
出雲にはパワースポットやスピリチュアルスポットと呼ばれる場所がたくさんあり、このイベントを走るだけで運気が上昇するかも?とのこと。
だから、出雲路センチュリーライドは縁結びのセンチュリーライドなのだ。よい出会いがありますように。
幽玄な山深い道を行く
宍道湖西岸を離れ、コースは加茂ラメールのエイドステーションから山中の道に入る。古きよき田舎の風景が続く、のどかな道だ。
とくに何があるわけでもない、山村の風景を楽しむ路。観光化されていないからこその風景が続く。
ところどころ険しい坂があるが、おおむね走りやすく、幽玄な風景だけが楽しめる。
出雲大社と同じく、オオクニヌシノミコトが祀られている熊野大社は、コース上にこつ然と現れる。出雲風土記的には出雲大社の兄貴分にあたるとされている神社だ。山中のためわざわざ訪れる人は少ない。
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民家からは自家製の梅干しのサービス。これも素朴な味で、いい塩分補給になった。なによりおばあたちの素朴な歓迎ぶりが嬉しく、いちばんの思い出になった。
後編では湖と海の風景を楽しみながら走ります。後編はこちら
photo&text(c)Makoto.AYANO
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