2010/10/30(土) - 22:43
9月19日に島根県松江市周辺で開催された出雲路センチュリーライドの実走レポート後編。神話のふるさとと言われる魅力的な出雲路を堪能する160kmのロングライドは、いよいよ後半のクライマックスである湖と海の道へ。
海を結ぶ道
レポート前編では山がちなコース前半をこなしたが、出雲路センチュリーライドの後半のハイライトが、中海を通る海の道だ。
中海に浮かぶ大根(だいこん)島と江島は、堤防の路でつながっている。この宍道湖へつながる一帯は、日本海と宍道湖が、境水道、中海、大橋川とつながっており、淡水と海水が半々に混じり合った汽水湖となっている。それゆえのしじみの名産地になっているという特殊な地形だ。
サイクリストたちはこの堤防と橋の道を、水の風景を眺めながら走ることになる。橋はときに高くアーチ状となり、高いところから湖の風景を眺めることができる。しじみの他にもスズキやモロゲエビ、ウナギなど「宍道湖七珍」とよばれる生物の宝庫。水鳥の種類も多く、生き物の多様な生態も覗き見ることができる。
地形や生態系をひっくるめて貴重な土地を走る感覚。なんともぜいたくなハイライトだ。
出雲を味わえる補給食のふるまい
出雲路センチュリーのエイドステーションでは、出雲路ならではの味が楽しめる。今回供された補給食を挙げておくと、もずくのスープ、黒米を使った団子汁、巻き寿司、さざえのおにぎり、ちくわ、いちじくなど、地元で採れた食材を使った補給食が用意される。決して贅沢というわけではないし、量も多くはないが、主催者たちの心のこもったおもてなしを感じて、なんともうれしくなる。
スポーツするうえでの消化や効率を考えたらバナナとかが良いのだろうけれど、ここはやはりわざわざ出雲まで脚を伸ばした身としては、口にするものでもその土地を味わいたいと思う。主催者側がこういった補給食を用意するのはとても手間とコストが掛かることだが、それによる充足感はそのまま思い出になる。
そして、おだやかな眺めを楽しみながら、湖の水面に近い高さを走る堤防の道を走るのは気持ちがいい。
一路、日本海へ
中海ののどかな風景を離れ、コースは山間部を越えて日本海へと進む。千酌湾、そして侵食した海岸地形と洞窟で有名な加賀の潜戸(くけど)を見ながらの断崖のコースとなる。神話のうえでも神様の生まれた土地であり、小泉八雲の小説にも登場し、その題名にもなっている土地だ。
サイクリスト泣かせなのはその坂の厳しさ。断崖絶壁の地形にそってつけられた海岸道路はアップダウンも厳しく、後半になって脚に堪える。自転車を降りて押してしまう人も続出。文字通りこの一帯が最後の難所になっているようだ。
5つめのエイドステーションである「マリンゲートしまね」で、17:00が足切りタイムだ。
出雲平野へ。長い一日の終わりに
最後のエイドステーションを越えれば、あとの25kmはアップダウンも少なく、比較的ラクに松江を目指せる。日本海から宍道湖・松江へ。湖をつなぐ水路を脇に走ると、ちょうど夕刻を迎える。
スタート地点でもあったゴールの松江イングリッシュガーデンには、レポーターの私は16時半ごろ到着。
距離も、アップダウンもあった。そして長い行程でずっと楽しめる出雲の豊かな風景があった。大満足の160kmだった。
最終ゴール時間は18時だ。前半の厳しいアップダウンに、完走率は低いのだろうと思ったが、なかなかどうして9割以上が完走したとのこと。
完走した皆さん、おめでとう!
主催者に聞く
「心ゆくまで島根の良さを味わって欲しい」
NPO法人サイクリストビュー代表 森脇博史さん
― こじんまりした大会ですね。参加者はどれぐらいですか?
今年の参加者が600人ということで、昨年に比べても、毎年100人近くは増えています。規模の拡大は狙っていないんです。都市部の1000人規模の大会とは違うところを目指しています。
― 走りながらとても楽しかったです。風景が懐かしくて、ずっと旅情を感じながら走っていました。
島根のこのあたりはよく「いい田舎の風景が残っている」と言われますね。何があるわけじゃないんですが、昔ながらの懐かしい日本の姿がいい形で残っていると。
― コースのとりかたのポイントは?
島根のいいところを味わってもらおうということで、コースを設定し、大会を運営しています。
できるだけ信号や交通量の少ない道を選び、島根を味わう「いいとこどり」のコースを心がけています。
センチュリーライド的な走り方と、走ったあとの爽快感と、走った達成感を求めつつ、ほのぼのとして終われるコースを目指しています。サイクリストの皆さんに喜んでいただけるコースがいいですね。幸いエキスパートの「センチュリーランを走る会」の皆さんにも高評価を頂いていますね。
あと、例えばエイドステーションでは、例えばさざえおにぎりとか、地の物を出せるように婦人会にお願いしたりしています。それで力が出るかは分かりませんが、島根の味を味わっていただきたいな、と。
― 大会の雰囲気がアットホームな感じがするのがいいですね。規模は拡大していくのでしょうか?
運営側もNPOなのでできる限界はありますが、700人の大会で定員とするのか、警察とも相談して1000人を狙ってみるのか、迷うところはありますね。
ホームメイド感があるところがいいと思いますので。走る人たちの楽しい時間を長くとりたい。そして暑くなくて、ぎりぎり日照時間の長い時期として大会開催日を決めています。
地元にも認知されてきました。大会が始まった4年前、島根にはスポーツ自転車の「じ」の字もなかったんです。今回たくさんのチームメイトが参加した大東チャレンジャーズの皆さんが住む雲南市大東町にはサイクルショップすらないですから。
それが徐々に根付き、広がって、出雲路センチュリーに出るためにクラブができたり、自転車を始めてみようという人が増えてきた。「おらが町走るから、おらが町チームをつくろう」というノリで(笑)、草野球みたいな感じですね。そういう流れができたことは、今年すごく感じたことです。
県外の方もくる、おらが町のチームも来る、そういうイベントがいいですね。20年たったら皆が知ってるイベントになっているといいなと思いますよ。
コースマップおよび周辺の練習コースは公式サイトのコース紹介に詳しく紹介されています。
photo&text(c)Makoto.AYANO
海を結ぶ道
レポート前編では山がちなコース前半をこなしたが、出雲路センチュリーライドの後半のハイライトが、中海を通る海の道だ。
中海に浮かぶ大根(だいこん)島と江島は、堤防の路でつながっている。この宍道湖へつながる一帯は、日本海と宍道湖が、境水道、中海、大橋川とつながっており、淡水と海水が半々に混じり合った汽水湖となっている。それゆえのしじみの名産地になっているという特殊な地形だ。
サイクリストたちはこの堤防と橋の道を、水の風景を眺めながら走ることになる。橋はときに高くアーチ状となり、高いところから湖の風景を眺めることができる。しじみの他にもスズキやモロゲエビ、ウナギなど「宍道湖七珍」とよばれる生物の宝庫。水鳥の種類も多く、生き物の多様な生態も覗き見ることができる。
地形や生態系をひっくるめて貴重な土地を走る感覚。なんともぜいたくなハイライトだ。
出雲を味わえる補給食のふるまい
出雲路センチュリーのエイドステーションでは、出雲路ならではの味が楽しめる。今回供された補給食を挙げておくと、もずくのスープ、黒米を使った団子汁、巻き寿司、さざえのおにぎり、ちくわ、いちじくなど、地元で採れた食材を使った補給食が用意される。決して贅沢というわけではないし、量も多くはないが、主催者たちの心のこもったおもてなしを感じて、なんともうれしくなる。
スポーツするうえでの消化や効率を考えたらバナナとかが良いのだろうけれど、ここはやはりわざわざ出雲まで脚を伸ばした身としては、口にするものでもその土地を味わいたいと思う。主催者側がこういった補給食を用意するのはとても手間とコストが掛かることだが、それによる充足感はそのまま思い出になる。
そして、おだやかな眺めを楽しみながら、湖の水面に近い高さを走る堤防の道を走るのは気持ちがいい。
一路、日本海へ
中海ののどかな風景を離れ、コースは山間部を越えて日本海へと進む。千酌湾、そして侵食した海岸地形と洞窟で有名な加賀の潜戸(くけど)を見ながらの断崖のコースとなる。神話のうえでも神様の生まれた土地であり、小泉八雲の小説にも登場し、その題名にもなっている土地だ。
サイクリスト泣かせなのはその坂の厳しさ。断崖絶壁の地形にそってつけられた海岸道路はアップダウンも厳しく、後半になって脚に堪える。自転車を降りて押してしまう人も続出。文字通りこの一帯が最後の難所になっているようだ。
5つめのエイドステーションである「マリンゲートしまね」で、17:00が足切りタイムだ。
出雲平野へ。長い一日の終わりに
最後のエイドステーションを越えれば、あとの25kmはアップダウンも少なく、比較的ラクに松江を目指せる。日本海から宍道湖・松江へ。湖をつなぐ水路を脇に走ると、ちょうど夕刻を迎える。
スタート地点でもあったゴールの松江イングリッシュガーデンには、レポーターの私は16時半ごろ到着。
距離も、アップダウンもあった。そして長い行程でずっと楽しめる出雲の豊かな風景があった。大満足の160kmだった。
最終ゴール時間は18時だ。前半の厳しいアップダウンに、完走率は低いのだろうと思ったが、なかなかどうして9割以上が完走したとのこと。
完走した皆さん、おめでとう!
主催者に聞く
「心ゆくまで島根の良さを味わって欲しい」
NPO法人サイクリストビュー代表 森脇博史さん
― こじんまりした大会ですね。参加者はどれぐらいですか?
今年の参加者が600人ということで、昨年に比べても、毎年100人近くは増えています。規模の拡大は狙っていないんです。都市部の1000人規模の大会とは違うところを目指しています。
― 走りながらとても楽しかったです。風景が懐かしくて、ずっと旅情を感じながら走っていました。
島根のこのあたりはよく「いい田舎の風景が残っている」と言われますね。何があるわけじゃないんですが、昔ながらの懐かしい日本の姿がいい形で残っていると。
― コースのとりかたのポイントは?
島根のいいところを味わってもらおうということで、コースを設定し、大会を運営しています。
できるだけ信号や交通量の少ない道を選び、島根を味わう「いいとこどり」のコースを心がけています。
センチュリーライド的な走り方と、走ったあとの爽快感と、走った達成感を求めつつ、ほのぼのとして終われるコースを目指しています。サイクリストの皆さんに喜んでいただけるコースがいいですね。幸いエキスパートの「センチュリーランを走る会」の皆さんにも高評価を頂いていますね。
あと、例えばエイドステーションでは、例えばさざえおにぎりとか、地の物を出せるように婦人会にお願いしたりしています。それで力が出るかは分かりませんが、島根の味を味わっていただきたいな、と。
― 大会の雰囲気がアットホームな感じがするのがいいですね。規模は拡大していくのでしょうか?
運営側もNPOなのでできる限界はありますが、700人の大会で定員とするのか、警察とも相談して1000人を狙ってみるのか、迷うところはありますね。
ホームメイド感があるところがいいと思いますので。走る人たちの楽しい時間を長くとりたい。そして暑くなくて、ぎりぎり日照時間の長い時期として大会開催日を決めています。
地元にも認知されてきました。大会が始まった4年前、島根にはスポーツ自転車の「じ」の字もなかったんです。今回たくさんのチームメイトが参加した大東チャレンジャーズの皆さんが住む雲南市大東町にはサイクルショップすらないですから。
それが徐々に根付き、広がって、出雲路センチュリーに出るためにクラブができたり、自転車を始めてみようという人が増えてきた。「おらが町走るから、おらが町チームをつくろう」というノリで(笑)、草野球みたいな感じですね。そういう流れができたことは、今年すごく感じたことです。
県外の方もくる、おらが町のチームも来る、そういうイベントがいいですね。20年たったら皆が知ってるイベントになっているといいなと思いますよ。
コースマップおよび周辺の練習コースは公式サイトのコース紹介に詳しく紹介されています。
photo&text(c)Makoto.AYANO
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