2020/09/06(日) - 11:46
本場仕込みのトレイルビルダーによって3年前にトレイルに手が加えられ、入門者向けのスキルアップコースや上級者向けのジャンプトレイルがオープンするなど、大きく変わった富士見パノラマMTBパーク。リニューアルした日本を代表するMTBゲレンデの魅力を改めてお伝えする。
約30人ほどのマウンテンバイカーが長野県諏訪市の富士見パノラマスキー場に集った。このミニイベントはアメリカのMTBブランド「サンタクルズ」の日本代理店「ウインクレル」によって企画されたもの。参加者は主にマウンテンバイクを取り扱うサイクルショップのオーナーやスタッフたち。私、CW編集部・綾野もメディア関係者としてショップにお声がけいただき、いちMTBerとして参加させてもらった。
富士見パノラマMTBパークといえば、MTB愛好家なら誰もが知っている、いちばんにその名前を挙げるMTBゲレンデだ。八ヶ岳を正面に仰ぎ見る入笠山の山麓に広がる、冬季はスキー場であるスノーゲレンデの夏の営業として開業したMTBパークで、標高1780mまでゴンドラで上がり、レベルごとに引かれたトレイルを下って楽しむことができるMTBパークだ。
日本のMTB聖地として親しまれる富士見パノラマだが、3年前からコースのリニューアルを経て生まれ変わったことでさらに好評を得ている。オーストラリアやニュージーランドでトレイルビルダーの経験を積んだ浦島悠太氏、ニュージーランド人のアダム・キング氏らの手によって変貌を遂げたのだ。浦島氏は世界トップレベルの競技コース造成を請け負うWorld Trail社でビルダーとして活躍し、南半球最大級のバイクパーク「クライストチャーチアドベンチャーパーク」や世界最大級のマウンテンバイクの祭典「クランクワークス」のコース造成にも携わった経歴を持つ。
このライドを企画した小林聡さん(ウインクレル代表)は言う。「マウンテンバイクを取り扱うショップが増えていますが、ここ数年、意外にも『富士見パノラマに行ったことがない』という店長さんやスタッフさんが多いんです。『難しいのでは?』『敷居が高いと感じている』という声も聞き、じつにもったいないな、と。そこで、ナビゲーター役の皆さんにまずは体験して欲しいということで企画しました。今日楽しめたら、お客さんや仲間を連れてここに戻ってきて欲しいんです」。
ゴンドラ1日券は通常5,000円だが、この日はウインクレルと富士見パノラマリゾートの協力によりなんと1,000円で利用可能に。数日前に岩岳でのライドで転倒し、脱臼した腕をギプスで吊った小林氏の姿に同情しつつ、「たった1,000円でパノラマを楽しめるなんて!」と喜ぶ(なんて現金な...)。
もちろんサンタクルズのPRの一環でもあるのだろうが、MTB界の盛り上げのためにそこまでしてくれる代理店は他にない。しかもサポートライダーの井本はじめ選手(2017、2018全日本DHチャンピオン)、山田淳一選手がガイドし、ライドをレクチャーしてくれるというのだ。
「ディガー(掘る人)」とも呼ばれるトレイルビルダー。本場のハイレベルのトレイルを知る浦島氏らが富士見パノラマに加えた変更は、より幅広い層のMTBerが楽しめるパークにすることだった。「スキルアップエリア」と呼ぶ、リフトで登ってから下る、ライディングテクニックの向上を練習できるエリアが造られ、入門者であっても十分に楽しみながらスキル向上ができるトレイルが用意された。
スイッチバックを繰り返すトレイルは、上級者でも攻めれば十分にテクニカルで楽しめ、単に簡単というわけではない。しかしレンタルバイクで始めてみようという初心者でも危険無くライドを楽しめる。「それまではダウンヒルメインのコア層の方が来るゲレンデだったのですが、初心者やレジャー層でも楽しめるようなパークに変えたいというのが3年前に変更に着手した狙いです」と浦島氏は言う。
そして眼前に八ヶ岳を見渡しながら、開けたパノラマビューのなかを下る「絶景トレイル」も好評だ。数本あるどのトレイルも手が加えられ、縦の動き、横の動きを存分に駆使して下る、思わず「イーハーッ!」と叫んでしまうゴキゲンなライディングを楽しめるようになっている。数年ぶりに走った人も驚くはずだ。
そして本格的なジャンプトレイル「ブルーホーネット」もオープンした。もともとの「9番」(旧Cコース下)をリニューアルしてできたトレイルは上級者向けだが、「世界で一番有名なジャンプトレイルである ”A-line” のようなものをいきなり造るのではなく、まずは日本のレベルに合わせた中級者向けのジャンプトレイルをビルドしました」とのこと。
今回の参加者のレベルではブルホーネットは規格外ということで走らなかったが、テクニシャンはチャレンジして欲しい。なおジャンプせずにテーブルトップをなめて下ることもできるため、あくまでジャンプできる人がチャレンジするなら、ということ。
井本はじめ、山田淳一の2選手はトレイルをガイドしつつ、いろんな走りを教えてくれた。参加者たちは先行してコース脇で待機。そこを派手なトレインを組んだトップテクニシャンのジャンプやコーナリング、アクションを惜しみ無く披露してくれた。拍手喝采だ。
参加者の中にはサイスポ最速店長選手権優勝の涌本正樹さん(滋賀・守山のショップ「スクアドラ」店長)が居ることに驚く。マトリックスパワータグで走った元ロード選手の氏だが、プライベートでは下り系MTBライドにハマっているとのこと。「今度の店長選手権はフルサスDHマシンで連覇を狙います!」とのこと。ホントかな?(笑)。
コースの様子を文章で書くより、まずは読者の皆さんも興味が沸けばパノラマに行ってライドを体験してみて欲しい。フルサスMTBやプロテクター、ヘルメットなどのレンタルも充実していて、手ぶらで来たとしてもそれらを買い続けるよりお得な料金で高価な最新モデルに乗ることができる。協賛各社も気合が入っていて、さながらサイクルモードのオフロード版で、ハイグレードのレンタルバイクが揃っているのだ。
筆者自身、ほぼ10年ぶりの富士見パノラマでのライドだったが、以前に比べてトレイルは変化に富み、面白くなっていることに感心した。バイクも進化し、サスのストロークも伸びてライディングスタイル自体が変化しているのもあるだろうが、現在のMTBの高性能を存分に駆使して走り、楽しみながらテクニックが向上できるのはゲレンデならではの楽しさだ。
富士パノラマの担当者、櫻井恒樹さんは言う。「マウンテンバイクシーンを盛り上げるという使命感を持って日々営業しています。ショップのクラブなど、まとまって来られた場合はテント設置エリアを確保するなど便宜を図らせていただきますのでご相談ください。さらなるシーンの盛り上げに尽力していきます」。
なお現在のパノラマは新型コロナウィルス感染拡大防止に配慮しながらの営業だ。ゴンドラに乗るときは必ずマスク着用で。走り出せば自然と人と人との距離が保てる。レストランも営業中で、頂上売店で名物「ルバーブソフトクリーム」を楽しむのはオススメだ。あとは各自で通常通りの心がけを。
そして今回参加したサイクルショップのスタッフたちは、ウインクレルが用意した試乗車を持ち帰り、ショップのお客さん向けに試乗車として乗ってもらうという。当然、ゲレンデでそのバイクのキャラクターを把握したショップのスタッフが体験を元に購入希望のお客さんにその特徴を説明することができるという「エコシステム」だ。
今回私も自分の愛車スコットSPARKを持ち込みながら、サンタクルズの試乗バイクを借りて走ってみた。29インチで130mmストロークのフルサス「TOLL BOY(トールボーイ)」と、27.5インチで140/130mmストロークの「5010(フィフティー・テン)を乗り比べた。
現代のMTBはかなり細分化しているので、ロード以上に乗ってみなければ分からない。試乗しながら、ゲレンデでの適正や、自分の地元のフィールドで乗るなら? SDA王滝で乗るなら? 下りで走破性が高いのは? テクニックを身につけるにはどっちが良い? ダニー・マッカスキルのようなアクションを楽しむなら? ……いろんなシーンを想定しながらゲレンデを走れば、たくさんのモデルから楽しく迷いながら自分に最適なモデルを選ぶことができそうだと分かった。
text&photo:Makoto AYANO
約30人ほどのマウンテンバイカーが長野県諏訪市の富士見パノラマスキー場に集った。このミニイベントはアメリカのMTBブランド「サンタクルズ」の日本代理店「ウインクレル」によって企画されたもの。参加者は主にマウンテンバイクを取り扱うサイクルショップのオーナーやスタッフたち。私、CW編集部・綾野もメディア関係者としてショップにお声がけいただき、いちMTBerとして参加させてもらった。
富士見パノラマMTBパークといえば、MTB愛好家なら誰もが知っている、いちばんにその名前を挙げるMTBゲレンデだ。八ヶ岳を正面に仰ぎ見る入笠山の山麓に広がる、冬季はスキー場であるスノーゲレンデの夏の営業として開業したMTBパークで、標高1780mまでゴンドラで上がり、レベルごとに引かれたトレイルを下って楽しむことができるMTBパークだ。
日本のMTB聖地として親しまれる富士見パノラマだが、3年前からコースのリニューアルを経て生まれ変わったことでさらに好評を得ている。オーストラリアやニュージーランドでトレイルビルダーの経験を積んだ浦島悠太氏、ニュージーランド人のアダム・キング氏らの手によって変貌を遂げたのだ。浦島氏は世界トップレベルの競技コース造成を請け負うWorld Trail社でビルダーとして活躍し、南半球最大級のバイクパーク「クライストチャーチアドベンチャーパーク」や世界最大級のマウンテンバイクの祭典「クランクワークス」のコース造成にも携わった経歴を持つ。
このライドを企画した小林聡さん(ウインクレル代表)は言う。「マウンテンバイクを取り扱うショップが増えていますが、ここ数年、意外にも『富士見パノラマに行ったことがない』という店長さんやスタッフさんが多いんです。『難しいのでは?』『敷居が高いと感じている』という声も聞き、じつにもったいないな、と。そこで、ナビゲーター役の皆さんにまずは体験して欲しいということで企画しました。今日楽しめたら、お客さんや仲間を連れてここに戻ってきて欲しいんです」。
ゴンドラ1日券は通常5,000円だが、この日はウインクレルと富士見パノラマリゾートの協力によりなんと1,000円で利用可能に。数日前に岩岳でのライドで転倒し、脱臼した腕をギプスで吊った小林氏の姿に同情しつつ、「たった1,000円でパノラマを楽しめるなんて!」と喜ぶ(なんて現金な...)。
もちろんサンタクルズのPRの一環でもあるのだろうが、MTB界の盛り上げのためにそこまでしてくれる代理店は他にない。しかもサポートライダーの井本はじめ選手(2017、2018全日本DHチャンピオン)、山田淳一選手がガイドし、ライドをレクチャーしてくれるというのだ。
「ディガー(掘る人)」とも呼ばれるトレイルビルダー。本場のハイレベルのトレイルを知る浦島氏らが富士見パノラマに加えた変更は、より幅広い層のMTBerが楽しめるパークにすることだった。「スキルアップエリア」と呼ぶ、リフトで登ってから下る、ライディングテクニックの向上を練習できるエリアが造られ、入門者であっても十分に楽しみながらスキル向上ができるトレイルが用意された。
スイッチバックを繰り返すトレイルは、上級者でも攻めれば十分にテクニカルで楽しめ、単に簡単というわけではない。しかしレンタルバイクで始めてみようという初心者でも危険無くライドを楽しめる。「それまではダウンヒルメインのコア層の方が来るゲレンデだったのですが、初心者やレジャー層でも楽しめるようなパークに変えたいというのが3年前に変更に着手した狙いです」と浦島氏は言う。
そして眼前に八ヶ岳を見渡しながら、開けたパノラマビューのなかを下る「絶景トレイル」も好評だ。数本あるどのトレイルも手が加えられ、縦の動き、横の動きを存分に駆使して下る、思わず「イーハーッ!」と叫んでしまうゴキゲンなライディングを楽しめるようになっている。数年ぶりに走った人も驚くはずだ。
そして本格的なジャンプトレイル「ブルーホーネット」もオープンした。もともとの「9番」(旧Cコース下)をリニューアルしてできたトレイルは上級者向けだが、「世界で一番有名なジャンプトレイルである ”A-line” のようなものをいきなり造るのではなく、まずは日本のレベルに合わせた中級者向けのジャンプトレイルをビルドしました」とのこと。
今回の参加者のレベルではブルホーネットは規格外ということで走らなかったが、テクニシャンはチャレンジして欲しい。なおジャンプせずにテーブルトップをなめて下ることもできるため、あくまでジャンプできる人がチャレンジするなら、ということ。
井本はじめ、山田淳一の2選手はトレイルをガイドしつつ、いろんな走りを教えてくれた。参加者たちは先行してコース脇で待機。そこを派手なトレインを組んだトップテクニシャンのジャンプやコーナリング、アクションを惜しみ無く披露してくれた。拍手喝采だ。
参加者の中にはサイスポ最速店長選手権優勝の涌本正樹さん(滋賀・守山のショップ「スクアドラ」店長)が居ることに驚く。マトリックスパワータグで走った元ロード選手の氏だが、プライベートでは下り系MTBライドにハマっているとのこと。「今度の店長選手権はフルサスDHマシンで連覇を狙います!」とのこと。ホントかな?(笑)。
コースの様子を文章で書くより、まずは読者の皆さんも興味が沸けばパノラマに行ってライドを体験してみて欲しい。フルサスMTBやプロテクター、ヘルメットなどのレンタルも充実していて、手ぶらで来たとしてもそれらを買い続けるよりお得な料金で高価な最新モデルに乗ることができる。協賛各社も気合が入っていて、さながらサイクルモードのオフロード版で、ハイグレードのレンタルバイクが揃っているのだ。
筆者自身、ほぼ10年ぶりの富士見パノラマでのライドだったが、以前に比べてトレイルは変化に富み、面白くなっていることに感心した。バイクも進化し、サスのストロークも伸びてライディングスタイル自体が変化しているのもあるだろうが、現在のMTBの高性能を存分に駆使して走り、楽しみながらテクニックが向上できるのはゲレンデならではの楽しさだ。
富士パノラマの担当者、櫻井恒樹さんは言う。「マウンテンバイクシーンを盛り上げるという使命感を持って日々営業しています。ショップのクラブなど、まとまって来られた場合はテント設置エリアを確保するなど便宜を図らせていただきますのでご相談ください。さらなるシーンの盛り上げに尽力していきます」。
なお現在のパノラマは新型コロナウィルス感染拡大防止に配慮しながらの営業だ。ゴンドラに乗るときは必ずマスク着用で。走り出せば自然と人と人との距離が保てる。レストランも営業中で、頂上売店で名物「ルバーブソフトクリーム」を楽しむのはオススメだ。あとは各自で通常通りの心がけを。
SANTACRUZの2モデル TOLLBOYと5010を試した
MTB界をリードするサンタクルズのバイクは、XC、AM、DHまですべてのライドを網羅し、29、27.5、サスのストロークでも100〜150mm、ライドキャラクター(味付け)ではレーシングからファンライド、ジャンプ&テクニカル等々、現在のマウンテンバイクのすべての形態を網羅するラインナップを取り揃えている。ユーザーは自分の好みのライドやフィールドの特色などを踏まえてモデルを選択することができるのだ。それを実際に思う存分走ることができるフィールドのゲレンデで試せるのだから、これ以上の機会は無い。そして今回参加したサイクルショップのスタッフたちは、ウインクレルが用意した試乗車を持ち帰り、ショップのお客さん向けに試乗車として乗ってもらうという。当然、ゲレンデでそのバイクのキャラクターを把握したショップのスタッフが体験を元に購入希望のお客さんにその特徴を説明することができるという「エコシステム」だ。
今回私も自分の愛車スコットSPARKを持ち込みながら、サンタクルズの試乗バイクを借りて走ってみた。29インチで130mmストロークのフルサス「TOLL BOY(トールボーイ)」と、27.5インチで140/130mmストロークの「5010(フィフティー・テン)を乗り比べた。
現代のMTBはかなり細分化しているので、ロード以上に乗ってみなければ分からない。試乗しながら、ゲレンデでの適正や、自分の地元のフィールドで乗るなら? SDA王滝で乗るなら? 下りで走破性が高いのは? テクニックを身につけるにはどっちが良い? ダニー・マッカスキルのようなアクションを楽しむなら? ……いろんなシーンを想定しながらゲレンデを走れば、たくさんのモデルから楽しく迷いながら自分に最適なモデルを選ぶことができそうだと分かった。
text&photo:Makoto AYANO
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