2018/08/18(土) - 14:35
ツール・ド・フランスでめちゃくちゃ忙しいシクロワイアード編集部にメタボ会長から届いた不穏なメール。「明日朝7時に会社集合で名栗のホームコースにサイクリングに出かけます。全員カメラ持参のこと。」ということでメタボ会長が最近購入した飛び道具のE-BIKEを引っさげて接待ライドに行ってきました。
今年の7月は特に忙しい。自転車界のビックイベント、ツール・ド・フランスが開催されているのは例年通りだが、それもさることながら、多くの自転車ブランドから最新モデルのロードバイクが発表されたこともあり、シクロワイアード編集部はてんやわんやという感じだ。こういうときは無駄な仕事を避けつつ、効率的にタスクをこなしていきたいもの。百戦錬磨のCW編集部員達は毎日集中した面付きで業務を遂行していたのである。
そんな編集部に突如不穏なメールが一通。そう!あのメタボ会長からだ。風の噂で、今話題のシマノSTEPSをパワーユニットに持つE-BIKE”ミズタニ・Seraph E-01S”を手に入れた事は聞いていたのだが・・・。そんな会長から「明日の朝7時に会社集合でサイクリングに出かけます。行先は名栗のホームコースで登坂3本セットコース。全員カメラ持参のこと。」とメールが届いたのだった。
そのメールが届いた時の状況にについてヤスオカ先輩は後日以下のように回想している。「まさに、晴天の霹靂でした。私はちょうど一つの重要なタスクが完了し、次のタスクに取り掛かろうとしているところだったのです。他の編集部員もまた同様に集中して業務に取り組んでいたタイミングでしょう。そんな時に突如として鳴ったメール通知。クライアントからの仕事の依頼ならすぐにタスクの一つとして作業の振り分けにかかりますが、あのメールにはどう対処していいか分からなかった。あえて言えば、深い絶望感が編集部に立ち込めていました。」
彼が乗ってくるバイクは確実にあのE-BIKE”ミズタニ・セラフ”であろう。「ツール・ド・フランスを頂点とする総合自転車メディア」を運営する我々としては、己の脚から繰り出すパワーのみがサイクリングの全てであり、E-BIKEなんてのは禁断の果実だ。手を出してはいけないモータードーピングそのものであり、全くけしからん話だ。とは言え、メタボ会長は我々が所属するシクロワイアード編集部の組織の長。逆らうことが出来るわけもなく、ちょっと重い空気のまま、皆早めの退勤をキメたのだった。
そして運命の当日。しぶしぶ編集部に集まった我々に対し、「みんな集まったか?じゃあ行くぞ!」とこっちの気持ちを知ってか知らずかにこやかな会長。まぁいつものホームコースだし、ササッと行ってササッと帰ってきましょうと編集部のメンツは一致団結して出発だ。
編集部から圏央道青梅インターまでの12.5kmは平均勾配0.6%というほぼ平坦の道。要するに本格的な登坂に向けての移動時間&ウォーミングアップタイムだ。イソベ先輩、ヤスオカ先輩の両名が軽やかにローテーションを回しながら28km/hほどのペースをキープし続ける。
しかし走り出してすぐにメタボ会長が珍しく弱音を吐く。「イソベ君、ちょっと速すぎるぞ!もう少しペースを落としてくれ!」あれれ?おかしいぞ?メタボ会長といえば登坂は大の苦手だが、平坦路でのスピードは凄まじく速かったのに。それでもペースを緩めない先輩方に私が伝令として話を伝えに行くと・・・。
「E-BIKEは25km/hでアシストが切れるからなぁ~」とニヤニヤするヤスオカ先輩。お、恐ろしい先輩方。実はこのペーシングは会長を疲れさせるための意図的なものだったのだ。よくこんなことを実行に移せるものだ。なかなかその肝っ玉の大きさには感心せざる得ない。そもそもE-bikeはこういった高速域でのスポーツ走行を前提としていない。そういったE-BIKE事情をしっかり理解していながらも行動に移す辺り、罪が深い。
圏央道青梅インター下の交差点で信号待ち。常に苦悶の表情を浮かべていたメタボ会長が「18kgのクロスバイクであの巡航はキツすぎるぞ!ここまで全然アシスト使えてないから、バッテリーが99%も残っちゃってるじゃないか!これじゃただの拷問だぞ!」と愚痴る。”それは災難でしたね”と一言添えるヤスオカ先輩。この人の罪は相当深い。
軽く苦笑いを浮かべるメタボ会長に、ちょっとヒヤヒヤしつつペダルを進める。東京の身近なオアシス、岩蔵温泉をかすめて東京バーディークラブの登坂路、通称、東京バーディー坂に向かう。”小曽木福祉センター前”交差点を右折すると現れるこの登り坂は距離600m平均勾配9.5%というプロフィール。短めな距離に比例して勾配がキツくパンチがある登坂だ。
登坂に入ると編集部で一番走り込んでいるヤスオカ先輩がアタック開始。どうやらここでも会長を引き離す作戦のようだ。これはいつか呪われるなと思いつつも追従する。心拍を上げペダルを踏み込み”これがロードバイクの走り方なんだよ!”と言わんばかりの走りで進んでいく。ある程度登ったところで、ヤスオカ先輩が「暑いし思ったよりキツイな、よし、でもここまで来たら会長も離れただろう」と後ろを見ると、思ったよりも近いところにメタボ会長がいるではないか!それも余裕綽々の澄まし顔をしているではないか。
対する我々は息も切れ切れに結構キツイ状況。初っ端から踏んでいったため、踏み直す気力はない。そんな我々二人をいとも容易く抜いていくメタボ会長。15km/hほどのスピードで淡々と登っていく姿は、普段のロードバイクに乗る会長からは考えられないほどスムーズである。「ずるいズルすぎる!あんなの飛び道具ではないか!」
とりあえずバーディー坂をクリアし、次に向かうは南高麗中学校前から始まる距離3.5km平均勾配3.5%の”山王峠”である。一見難易度低めの登坂に見えるが、頂上手前の600mは平均勾配9.5%まで上昇するため、結構厄介な坂である。今度こそは千切ってみせると息巻く我々編集部員。ここはスーパーサブのムラタを先行させ、続けざまに私カマタ、ヤスオカ先輩、イソベ先輩が攻勢に躍り出る作戦で行くことにした。
登りが始まり、ムラタを先行させる。よしこの後に3人でアタックすれば、いくらE-BIKEと言えど、あのメタボ会長だ。大した敵ではないと息巻く。と思ったが会長のペースが思った以上に早い。正直ちょっと気合を入れないと遅れてしまうようなスピードである。その上どう見てもその表情は楽チンモードで走っているではないか。
”このペースではアタック出来なくね?”と編集部員で見回すが、先輩の”とりあえず行ってこい!”の号令で私だけ飛び出す。しかし長くは持たず、後半の勾配が上がるポイントで吸収、もとい抜かれてしまった。気を取り直してゆっくり登る。「んー。E-BIKEって速いなー。ちょっと欲しくなってきたぞ」なんて悠長なことを考えながら登っていると、上からヤスオカ先輩まで落ちてきた。曰く完全にエネルギー切れで走りが重たいとのこと。こりゃ駄目だと思いそのままゆっくり頂上に到着した。
次こそE-BIKEに乗ったメタボ会長に勝ってみせます。
メタボ会長連載のバックナンバーは こちら です
今年の7月は特に忙しい。自転車界のビックイベント、ツール・ド・フランスが開催されているのは例年通りだが、それもさることながら、多くの自転車ブランドから最新モデルのロードバイクが発表されたこともあり、シクロワイアード編集部はてんやわんやという感じだ。こういうときは無駄な仕事を避けつつ、効率的にタスクをこなしていきたいもの。百戦錬磨のCW編集部員達は毎日集中した面付きで業務を遂行していたのである。
そんな編集部に突如不穏なメールが一通。そう!あのメタボ会長からだ。風の噂で、今話題のシマノSTEPSをパワーユニットに持つE-BIKE”ミズタニ・Seraph E-01S”を手に入れた事は聞いていたのだが・・・。そんな会長から「明日の朝7時に会社集合でサイクリングに出かけます。行先は名栗のホームコースで登坂3本セットコース。全員カメラ持参のこと。」とメールが届いたのだった。
そのメールが届いた時の状況にについてヤスオカ先輩は後日以下のように回想している。「まさに、晴天の霹靂でした。私はちょうど一つの重要なタスクが完了し、次のタスクに取り掛かろうとしているところだったのです。他の編集部員もまた同様に集中して業務に取り組んでいたタイミングでしょう。そんな時に突如として鳴ったメール通知。クライアントからの仕事の依頼ならすぐにタスクの一つとして作業の振り分けにかかりますが、あのメールにはどう対処していいか分からなかった。あえて言えば、深い絶望感が編集部に立ち込めていました。」
彼が乗ってくるバイクは確実にあのE-BIKE”ミズタニ・セラフ”であろう。「ツール・ド・フランスを頂点とする総合自転車メディア」を運営する我々としては、己の脚から繰り出すパワーのみがサイクリングの全てであり、E-BIKEなんてのは禁断の果実だ。手を出してはいけないモータードーピングそのものであり、全くけしからん話だ。とは言え、メタボ会長は我々が所属するシクロワイアード編集部の組織の長。逆らうことが出来るわけもなく、ちょっと重い空気のまま、皆早めの退勤をキメたのだった。
そして運命の当日。しぶしぶ編集部に集まった我々に対し、「みんな集まったか?じゃあ行くぞ!」とこっちの気持ちを知ってか知らずかにこやかな会長。まぁいつものホームコースだし、ササッと行ってササッと帰ってきましょうと編集部のメンツは一致団結して出発だ。
編集部から圏央道青梅インターまでの12.5kmは平均勾配0.6%というほぼ平坦の道。要するに本格的な登坂に向けての移動時間&ウォーミングアップタイムだ。イソベ先輩、ヤスオカ先輩の両名が軽やかにローテーションを回しながら28km/hほどのペースをキープし続ける。
しかし走り出してすぐにメタボ会長が珍しく弱音を吐く。「イソベ君、ちょっと速すぎるぞ!もう少しペースを落としてくれ!」あれれ?おかしいぞ?メタボ会長といえば登坂は大の苦手だが、平坦路でのスピードは凄まじく速かったのに。それでもペースを緩めない先輩方に私が伝令として話を伝えに行くと・・・。
「E-BIKEは25km/hでアシストが切れるからなぁ~」とニヤニヤするヤスオカ先輩。お、恐ろしい先輩方。実はこのペーシングは会長を疲れさせるための意図的なものだったのだ。よくこんなことを実行に移せるものだ。なかなかその肝っ玉の大きさには感心せざる得ない。そもそもE-bikeはこういった高速域でのスポーツ走行を前提としていない。そういったE-BIKE事情をしっかり理解していながらも行動に移す辺り、罪が深い。
圏央道青梅インター下の交差点で信号待ち。常に苦悶の表情を浮かべていたメタボ会長が「18kgのクロスバイクであの巡航はキツすぎるぞ!ここまで全然アシスト使えてないから、バッテリーが99%も残っちゃってるじゃないか!これじゃただの拷問だぞ!」と愚痴る。”それは災難でしたね”と一言添えるヤスオカ先輩。この人の罪は相当深い。
軽く苦笑いを浮かべるメタボ会長に、ちょっとヒヤヒヤしつつペダルを進める。東京の身近なオアシス、岩蔵温泉をかすめて東京バーディークラブの登坂路、通称、東京バーディー坂に向かう。”小曽木福祉センター前”交差点を右折すると現れるこの登り坂は距離600m平均勾配9.5%というプロフィール。短めな距離に比例して勾配がキツくパンチがある登坂だ。
登坂に入ると編集部で一番走り込んでいるヤスオカ先輩がアタック開始。どうやらここでも会長を引き離す作戦のようだ。これはいつか呪われるなと思いつつも追従する。心拍を上げペダルを踏み込み”これがロードバイクの走り方なんだよ!”と言わんばかりの走りで進んでいく。ある程度登ったところで、ヤスオカ先輩が「暑いし思ったよりキツイな、よし、でもここまで来たら会長も離れただろう」と後ろを見ると、思ったよりも近いところにメタボ会長がいるではないか!それも余裕綽々の澄まし顔をしているではないか。
対する我々は息も切れ切れに結構キツイ状況。初っ端から踏んでいったため、踏み直す気力はない。そんな我々二人をいとも容易く抜いていくメタボ会長。15km/hほどのスピードで淡々と登っていく姿は、普段のロードバイクに乗る会長からは考えられないほどスムーズである。「ずるいズルすぎる!あんなの飛び道具ではないか!」
とりあえずバーディー坂をクリアし、次に向かうは南高麗中学校前から始まる距離3.5km平均勾配3.5%の”山王峠”である。一見難易度低めの登坂に見えるが、頂上手前の600mは平均勾配9.5%まで上昇するため、結構厄介な坂である。今度こそは千切ってみせると息巻く我々編集部員。ここはスーパーサブのムラタを先行させ、続けざまに私カマタ、ヤスオカ先輩、イソベ先輩が攻勢に躍り出る作戦で行くことにした。
登りが始まり、ムラタを先行させる。よしこの後に3人でアタックすれば、いくらE-BIKEと言えど、あのメタボ会長だ。大した敵ではないと息巻く。と思ったが会長のペースが思った以上に早い。正直ちょっと気合を入れないと遅れてしまうようなスピードである。その上どう見てもその表情は楽チンモードで走っているではないか。
”このペースではアタック出来なくね?”と編集部員で見回すが、先輩の”とりあえず行ってこい!”の号令で私だけ飛び出す。しかし長くは持たず、後半の勾配が上がるポイントで吸収、もとい抜かれてしまった。気を取り直してゆっくり登る。「んー。E-BIKEって速いなー。ちょっと欲しくなってきたぞ」なんて悠長なことを考えながら登っていると、上からヤスオカ先輩まで落ちてきた。曰く完全にエネルギー切れで走りが重たいとのこと。こりゃ駄目だと思いそのままゆっくり頂上に到着した。
次こそE-BIKEに乗ったメタボ会長に勝ってみせます。
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メタボ会長
身長 : 172cm 体重 : 84kg 自転車歴 : 9年目
当サイト運営法人の代表取締役。平成元年に現法人を設立、平成17年に社長を辞し会長職に退くも、平成20年に当サイトが属するメディア事業部の責任者兼務となったことをキッカケに自転車に乗り始める。豊富な筋肉量を生かした瞬発力はかなりのモノだが、こと登坂となるとその能力はべらぼうに低い。日本一登れない男だ。
身長 : 172cm 体重 : 84kg 自転車歴 : 9年目
当サイト運営法人の代表取締役。平成元年に現法人を設立、平成17年に社長を辞し会長職に退くも、平成20年に当サイトが属するメディア事業部の責任者兼務となったことをキッカケに自転車に乗り始める。豊富な筋肉量を生かした瞬発力はかなりのモノだが、こと登坂となるとその能力はべらぼうに低い。日本一登れない男だ。
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