2018/02/28(水) - 08:57
さて、最大の目的だった払沢の滝(一足出遅れたせいで完全結氷は逃してしまったけれど……。)をその目に収め、自転車乗りらしく登りもこなし、あとは美味しいごはんを食べて帰るだけ。五日市・檜原エリアの魅力を伝えるライドレポート第三弾をお届けします。
さて、そんなわけでお昼ご飯スポットを探し始めた我々二人。一万円のフレンチが食べたーい!なんて真昼間から夢物語ををほざくフジワラは置いておいて、向かった先はラーメン屋。奥多摩サイクリストにとっては馴染み深い「たちばなや」さんへとお邪魔することに。
南秋川渓谷のほとりにあるこのラーメン屋さんは、美しい川のせせらぎを楽しみながら自慢のラーメンを味わえるというダブルで美味しいお店として、檜原エリアでも屈指の人気を誇っている。週末はトレッキングを楽しんだハイカーやサイクリストたちで満員になることも珍しくはないけれど、今日は平日ということもあり、窓際の特等席へすんなり着席。
「なんだ、ラーメン屋ですか……」と、あからさまにがっかりした様子のフジワラ。いやいや、そんなこと言われても、フレンチがこの辺りにあるわけないだろ!あっても行かないけど。その代わりといっては何だけど、ラーメンに何かプラスアルファしてあげようか、餃子とか……。
そう仏心を出した私の目に飛び込んできたのは「払沢の滝完全結氷記念!鮎の塩焼き特別価格」の張り紙。なんと2匹の鮎塩焼きが950円で食べられるのだとか。旬の時期からはかなり離れているけれど、川魚の王者がこの値段で頂けるのであれば頼まない手があろうか、いやない(反語)!
そして運ばれてきたラーメンは、最近では珍しい透明なTHE・醤油ラーメン、といった趣の一杯。「こういうのもいいですね!」といきなりご機嫌になるフジワラ。こいつ、単に腹が減っていただけでは……?という疑念に襲われつつ、自分もずるずると麺を啜る。うん、やっぱうまい!
トラディショナルな「中華そば」のスタイルで、軽やかなのど越しのスープ、柔らか目で口当たりの良い麺、そして自家製と思しきチャーシューが生み出すのは、濃厚な家系や魚介スープとは違う、身体に優しくいつの間にか完食しているさっぱり感。まるで、熟練のビルダーがカイセイの015やタンゲのプレステージで丁寧に造り上げた軽量スチールレーサーに軽量アルミチューブラーを組み合わせたかのごとく、飽きがこない上質な味に、気づけば丼は空っぽになっていた。
そして、ちょうど焼きあがった鮎が2尾、机の上へとやってくる。「わーい!鮎ゥ!」と頭からかぶりつく。骨が柔らかいので、頭から丸ごと食べられるんだよ、なんて講釈を垂れつつ、至福の時を味わう。丸々と太ったお腹には卵がみっしりと入った子持ち鮎で、さらに得した気分に。若鮎と落ち鮎、どっちも甲乙つけがたいけれど、今日はもちろん落ち鮎派だ。
思わぬグルメにありついて、満足しきったところで帰りの途へ。その前に、ちとせやの少し先にある「茅倉の滝」まで足を延ばすことに。中山の滝や払沢の滝のように、道から歩く必要もなく橋の上から観察できるコストパフォーマンス(?)に優れた滝ながらも結構な落差があり、なかなかの迫力。今回3つ目の滝を巡って、いざ五日市へと走り出す。
「いやあ、今回はいろいろ回って楽しいライドでしたよ!とご機嫌なフジワラを従え、下り基調の檜原街道を進み、十里木の交差点を左折。「え、なんで左に曲がるんですか?五日市は直進では?」と怪しむフジワラに一言告げる。「実は黙ってたんだけど、今回は釣-リング企画でもあったんだよ」
そう、ここまで写真にちらほら写っていたバックパックの横の筒状の物体は、釣り竿だったのだ!(ナ、ナンダッテー!)衝撃の事実を告げられたフジワラはしばしの沈黙の後、「え、僕はどうすればいいんですか?道具もないし釣りしたこともないですよ?」と尤もな質問を口にした。だが、それは織り込み済み。「竿は2セットあるから心配しなくていいし、とりあえずさわりは教えるから大丈夫だよ」と即答し、秋川国際マス釣り場へと向かっていく。
国際マス釣り場、といっても外国人さん向けの釣り場というわけではなく、「国際マス」の釣り場という意味。国際マスとはいわゆるニジマスのことで、日本在来種のヤマメやイワナといった魚に対し、海外から移入されたニジマスを国際マスと呼んでいた時代があったのだ。というわけで、大体国際マス釣り場とつく管理釣り場はかなり歴史のある場所であることが多く、今回お邪魔した秋川国際マス釣り場もそんな老舗の一つである。
受付のための建物の脇にはなんとバイクラックが設置されており、僕らのようなサイクリストアングラーにも嬉しいところ。今回の大きな目的は3月の解禁前に新調したベイトフィネスタックルに慣れておきたいのが目的。入漁券を購入し、釣り座を決めてフジワラにタックルを用意し投げ方などを説明した後、自分の準備に取り掛かったのだが……。
「お、折れとる……。」まさかのトラブルである。手軽にたためる振出式の竿だったのだが、鞄の中で圧迫されたのか、一番先端の部分が折れてしまっているのだ。前回の釣-リング記事に続き、まさかの失態である。一度も使うことなく逝ってしまった竿だが、どうにか誤魔化し釣り始めると、なかなか反応が良い。どうやら、昨日から気温が上がっていたため魚の活性も上がっていたようだ。
これなら初めてのフジワラもすぐ釣れるはず、と思っていると「あわわ、釣れました!」と人生初の魚をゲットしたようだ。おっかなびっくり針を外し、遊んでくれた魚に感謝しながら逃がしてあげる。リリースするときは魚に手を触れないように外すのがマナーである、冷水域に棲むマス類にとって、36℃以上ある人間の手の平は熱湯のようなもの。触る必要がある時は、水に手を浸して温度を下げてから触ってあげないとやけどしてしまうのだ。
そんなことをレクチャーしつつ、自分も何匹か釣りあげて、ニュータックルに入魂完了。折れてるけど……。とりあえず、帰ったらすぐに修理に出してケースも見繕わないとな、なんて思いつつも釣り自体は楽しいもの。そして楽しい時は短いもので、陽も陰り気温が下がってきた頃合いで納竿。計一時間半程の釣行となった。
「釣りと自転車って、全然結びつかなかったんですけどいいですね!僕も釣り具買おうかな……」と思案顔のフジワラに、「やっぱり自分のタックルがあると違うよ!(新たな沼にようこそ)」と諸手を上げて歓迎するのであった。
それにしても、かなり冷えてきた。ここは少し温まってから帰りたいということで、一番近い温泉である「瀬音の湯」へ。ここには無料で入ることの出来る足湯もある。最初は足湯で温まっていた2人だが「「やっぱり、結構汗もかいたしさっぱりしたいよね」」と意見を一致させ、建物の中へ。
900円の入浴券を購入し、ちゃちゃっと脱いでささっと汚れを落としざぶーんと露天風呂へ直行だ。「ふはあー」と思わず魂が抜け出るような間抜け声が出てくるのを抑えられない、まさに極楽浄土である。露天風呂からは秋川の流れも見え、美しい風景を味わいながら最高のお湯を楽しめるというのは、幸せという概念を具現化したようなひと時である。
ただ一つ惜しむらくは、お風呂上がりの牛乳が無い点だろうか。これは画龍点睛を欠くというもので、例えるならば、ルックスはパーフェクトで乗り味も最高に気に入ったバイクが、BB下のダイレクトマウントブレーキを採用しているかのようなもの。(※個人の感想です)
その代わりといってはなんだけれど、ここはお土産屋さんの品揃えが盛りだくさん。地元でとれた野菜や魚を活かした料理やお菓子が並んでいる。個人的な一押しは秋川沿いの福祉センターひのきのそので作られるクッキーだ。中でもバナナクッキーはなかなかのもので、目につくと買ってしまうほどお気に入り。
お風呂に入りさっぱりして、お土産も買ったところで今度こそ帰り道へ。休日はサイクリストがたむろする戸倉のセブンイレブンを過ぎ、五日市市街へと入ったところで、目に入ってきた「松村精肉店」の看板。全く予定になかったけれど、夕飯手前の時間とあって少しお腹が空いてきたところにこれ以上ないタイミングで現れたのは、天の采配というものでしょう。
いわゆるお肉屋さんのコロッケやメンチといえば、大体外れが無いということは皆さんも経験上ご存知でしょう。松村精肉店はバイクラックも設置されているサイクリストフレンドリーなお店で、奥多摩帰りに小腹を満たすにはぴったりなスポット。
といいつつ、実は私も来るのは初めてで「オススメとかあります?」とお姉さんに尋ねてみると、「揚げるのに時間かかりますけど、秋川牛のコロッケとメンチですねー」との事。どうやら、東京にもブランド牛がいるということに驚きつつ、幸い時間はあるので「じゃあ一つずつお願いします!」と即答し、待つこと数分で出てきたのは揚げたてホカホカのコロッケとメンチ。
まずはコロッケから、等分に分けて2人で頂く。「「ん?」」なにか入っているぞこれ、なんだ?ジャガイモと牛脂の甘みの中にさわやかな辛味が隠されており、これまでのコロッケでは味わったことのない奥行きのある世界が広がっている。フジワラも「なんですかねこれ?からし?」と不思議がりつつ、食べる手は止まらない。
そして、続くメンチカツ。こちらは割った瞬間にじゅわりと肉汁が溢れ出し、目だけで既に美味。口に入れれば想像上のジューシーさが現実に。夢中で食べ続け、ものの30秒で平らげてしまう。「このお店めっちゃいいですね、リピート確定ですよ!」とかなりスマッシュヒットだったようだ。帰り際に、コロッケの隠し味について聞いてみたところ、なんとワサビが入っていたとのこと。なるほど、納得である。
最後にとびきりのグルメをいただいて、武蔵五日市の駅前に帰ってきたときには、日没も間近な黄昏れ時となっていた。これにて今回のツーリングは終了。正味の距離でいえば40kmも走っていないショートライドで、自宅から都民の森へ往復する定番のトレーニングライドに比べると1/3ほどの距離。でも、あっという間に一日が終わってしまう濃厚さでは、勝るとも劣らない一日になったはず。一秒を縮めようと、目を三角にしながら走っていた時には絶対に気づくことが出来なかった魅力的なスポットがたくさん詰まっていた。
「正直、『まだ都民の森で消耗してるの?』って感じですよね」と今にも高知に移住しそうなセリフを放つフジワラだが、その言い分もよくわかる。毎週末、峠のタイムを縮めるためにひたすら走り続けるのも、一つの自転車の楽しみ方だけど、きっといつか飽きてしまう時が来る。特に、思うように走れない時期は。
そんな時に、これまで脇目もふらずに通り過ぎてきた道に、どれだけ見逃してきた素敵な景色や料理があったのか。それを知る一日を作ってみたら、また自転車を楽しむ余裕が生まれてくるかもしれない。広い視界とすぐに停まれる気軽さこそが、自転車が持つ圧倒的なアドバンテージ。毎週定番のコースでも、少し周りを見渡せば、楽しむヒントはたくさん転がっているはずだ。
text:Naoki.Yasuoka
photo:Naoki.Yasuoka、Gakuto.Fujiwara
さて、そんなわけでお昼ご飯スポットを探し始めた我々二人。一万円のフレンチが食べたーい!なんて真昼間から夢物語ををほざくフジワラは置いておいて、向かった先はラーメン屋。奥多摩サイクリストにとっては馴染み深い「たちばなや」さんへとお邪魔することに。
南秋川渓谷のほとりにあるこのラーメン屋さんは、美しい川のせせらぎを楽しみながら自慢のラーメンを味わえるというダブルで美味しいお店として、檜原エリアでも屈指の人気を誇っている。週末はトレッキングを楽しんだハイカーやサイクリストたちで満員になることも珍しくはないけれど、今日は平日ということもあり、窓際の特等席へすんなり着席。
「なんだ、ラーメン屋ですか……」と、あからさまにがっかりした様子のフジワラ。いやいや、そんなこと言われても、フレンチがこの辺りにあるわけないだろ!あっても行かないけど。その代わりといっては何だけど、ラーメンに何かプラスアルファしてあげようか、餃子とか……。
そう仏心を出した私の目に飛び込んできたのは「払沢の滝完全結氷記念!鮎の塩焼き特別価格」の張り紙。なんと2匹の鮎塩焼きが950円で食べられるのだとか。旬の時期からはかなり離れているけれど、川魚の王者がこの値段で頂けるのであれば頼まない手があろうか、いやない(反語)!
そして運ばれてきたラーメンは、最近では珍しい透明なTHE・醤油ラーメン、といった趣の一杯。「こういうのもいいですね!」といきなりご機嫌になるフジワラ。こいつ、単に腹が減っていただけでは……?という疑念に襲われつつ、自分もずるずると麺を啜る。うん、やっぱうまい!
トラディショナルな「中華そば」のスタイルで、軽やかなのど越しのスープ、柔らか目で口当たりの良い麺、そして自家製と思しきチャーシューが生み出すのは、濃厚な家系や魚介スープとは違う、身体に優しくいつの間にか完食しているさっぱり感。まるで、熟練のビルダーがカイセイの015やタンゲのプレステージで丁寧に造り上げた軽量スチールレーサーに軽量アルミチューブラーを組み合わせたかのごとく、飽きがこない上質な味に、気づけば丼は空っぽになっていた。
そして、ちょうど焼きあがった鮎が2尾、机の上へとやってくる。「わーい!鮎ゥ!」と頭からかぶりつく。骨が柔らかいので、頭から丸ごと食べられるんだよ、なんて講釈を垂れつつ、至福の時を味わう。丸々と太ったお腹には卵がみっしりと入った子持ち鮎で、さらに得した気分に。若鮎と落ち鮎、どっちも甲乙つけがたいけれど、今日はもちろん落ち鮎派だ。
思わぬグルメにありついて、満足しきったところで帰りの途へ。その前に、ちとせやの少し先にある「茅倉の滝」まで足を延ばすことに。中山の滝や払沢の滝のように、道から歩く必要もなく橋の上から観察できるコストパフォーマンス(?)に優れた滝ながらも結構な落差があり、なかなかの迫力。今回3つ目の滝を巡って、いざ五日市へと走り出す。
「いやあ、今回はいろいろ回って楽しいライドでしたよ!とご機嫌なフジワラを従え、下り基調の檜原街道を進み、十里木の交差点を左折。「え、なんで左に曲がるんですか?五日市は直進では?」と怪しむフジワラに一言告げる。「実は黙ってたんだけど、今回は釣-リング企画でもあったんだよ」
そう、ここまで写真にちらほら写っていたバックパックの横の筒状の物体は、釣り竿だったのだ!(ナ、ナンダッテー!)衝撃の事実を告げられたフジワラはしばしの沈黙の後、「え、僕はどうすればいいんですか?道具もないし釣りしたこともないですよ?」と尤もな質問を口にした。だが、それは織り込み済み。「竿は2セットあるから心配しなくていいし、とりあえずさわりは教えるから大丈夫だよ」と即答し、秋川国際マス釣り場へと向かっていく。
国際マス釣り場、といっても外国人さん向けの釣り場というわけではなく、「国際マス」の釣り場という意味。国際マスとはいわゆるニジマスのことで、日本在来種のヤマメやイワナといった魚に対し、海外から移入されたニジマスを国際マスと呼んでいた時代があったのだ。というわけで、大体国際マス釣り場とつく管理釣り場はかなり歴史のある場所であることが多く、今回お邪魔した秋川国際マス釣り場もそんな老舗の一つである。
受付のための建物の脇にはなんとバイクラックが設置されており、僕らのようなサイクリストアングラーにも嬉しいところ。今回の大きな目的は3月の解禁前に新調したベイトフィネスタックルに慣れておきたいのが目的。入漁券を購入し、釣り座を決めてフジワラにタックルを用意し投げ方などを説明した後、自分の準備に取り掛かったのだが……。
「お、折れとる……。」まさかのトラブルである。手軽にたためる振出式の竿だったのだが、鞄の中で圧迫されたのか、一番先端の部分が折れてしまっているのだ。前回の釣-リング記事に続き、まさかの失態である。一度も使うことなく逝ってしまった竿だが、どうにか誤魔化し釣り始めると、なかなか反応が良い。どうやら、昨日から気温が上がっていたため魚の活性も上がっていたようだ。
これなら初めてのフジワラもすぐ釣れるはず、と思っていると「あわわ、釣れました!」と人生初の魚をゲットしたようだ。おっかなびっくり針を外し、遊んでくれた魚に感謝しながら逃がしてあげる。リリースするときは魚に手を触れないように外すのがマナーである、冷水域に棲むマス類にとって、36℃以上ある人間の手の平は熱湯のようなもの。触る必要がある時は、水に手を浸して温度を下げてから触ってあげないとやけどしてしまうのだ。
そんなことをレクチャーしつつ、自分も何匹か釣りあげて、ニュータックルに入魂完了。折れてるけど……。とりあえず、帰ったらすぐに修理に出してケースも見繕わないとな、なんて思いつつも釣り自体は楽しいもの。そして楽しい時は短いもので、陽も陰り気温が下がってきた頃合いで納竿。計一時間半程の釣行となった。
「釣りと自転車って、全然結びつかなかったんですけどいいですね!僕も釣り具買おうかな……」と思案顔のフジワラに、「やっぱり自分のタックルがあると違うよ!(新たな沼にようこそ)」と諸手を上げて歓迎するのであった。
それにしても、かなり冷えてきた。ここは少し温まってから帰りたいということで、一番近い温泉である「瀬音の湯」へ。ここには無料で入ることの出来る足湯もある。最初は足湯で温まっていた2人だが「「やっぱり、結構汗もかいたしさっぱりしたいよね」」と意見を一致させ、建物の中へ。
900円の入浴券を購入し、ちゃちゃっと脱いでささっと汚れを落としざぶーんと露天風呂へ直行だ。「ふはあー」と思わず魂が抜け出るような間抜け声が出てくるのを抑えられない、まさに極楽浄土である。露天風呂からは秋川の流れも見え、美しい風景を味わいながら最高のお湯を楽しめるというのは、幸せという概念を具現化したようなひと時である。
ただ一つ惜しむらくは、お風呂上がりの牛乳が無い点だろうか。これは画龍点睛を欠くというもので、例えるならば、ルックスはパーフェクトで乗り味も最高に気に入ったバイクが、BB下のダイレクトマウントブレーキを採用しているかのようなもの。(※個人の感想です)
その代わりといってはなんだけれど、ここはお土産屋さんの品揃えが盛りだくさん。地元でとれた野菜や魚を活かした料理やお菓子が並んでいる。個人的な一押しは秋川沿いの福祉センターひのきのそので作られるクッキーだ。中でもバナナクッキーはなかなかのもので、目につくと買ってしまうほどお気に入り。
お風呂に入りさっぱりして、お土産も買ったところで今度こそ帰り道へ。休日はサイクリストがたむろする戸倉のセブンイレブンを過ぎ、五日市市街へと入ったところで、目に入ってきた「松村精肉店」の看板。全く予定になかったけれど、夕飯手前の時間とあって少しお腹が空いてきたところにこれ以上ないタイミングで現れたのは、天の采配というものでしょう。
いわゆるお肉屋さんのコロッケやメンチといえば、大体外れが無いということは皆さんも経験上ご存知でしょう。松村精肉店はバイクラックも設置されているサイクリストフレンドリーなお店で、奥多摩帰りに小腹を満たすにはぴったりなスポット。
といいつつ、実は私も来るのは初めてで「オススメとかあります?」とお姉さんに尋ねてみると、「揚げるのに時間かかりますけど、秋川牛のコロッケとメンチですねー」との事。どうやら、東京にもブランド牛がいるということに驚きつつ、幸い時間はあるので「じゃあ一つずつお願いします!」と即答し、待つこと数分で出てきたのは揚げたてホカホカのコロッケとメンチ。
まずはコロッケから、等分に分けて2人で頂く。「「ん?」」なにか入っているぞこれ、なんだ?ジャガイモと牛脂の甘みの中にさわやかな辛味が隠されており、これまでのコロッケでは味わったことのない奥行きのある世界が広がっている。フジワラも「なんですかねこれ?からし?」と不思議がりつつ、食べる手は止まらない。
そして、続くメンチカツ。こちらは割った瞬間にじゅわりと肉汁が溢れ出し、目だけで既に美味。口に入れれば想像上のジューシーさが現実に。夢中で食べ続け、ものの30秒で平らげてしまう。「このお店めっちゃいいですね、リピート確定ですよ!」とかなりスマッシュヒットだったようだ。帰り際に、コロッケの隠し味について聞いてみたところ、なんとワサビが入っていたとのこと。なるほど、納得である。
最後にとびきりのグルメをいただいて、武蔵五日市の駅前に帰ってきたときには、日没も間近な黄昏れ時となっていた。これにて今回のツーリングは終了。正味の距離でいえば40kmも走っていないショートライドで、自宅から都民の森へ往復する定番のトレーニングライドに比べると1/3ほどの距離。でも、あっという間に一日が終わってしまう濃厚さでは、勝るとも劣らない一日になったはず。一秒を縮めようと、目を三角にしながら走っていた時には絶対に気づくことが出来なかった魅力的なスポットがたくさん詰まっていた。
「正直、『まだ都民の森で消耗してるの?』って感じですよね」と今にも高知に移住しそうなセリフを放つフジワラだが、その言い分もよくわかる。毎週末、峠のタイムを縮めるためにひたすら走り続けるのも、一つの自転車の楽しみ方だけど、きっといつか飽きてしまう時が来る。特に、思うように走れない時期は。
そんな時に、これまで脇目もふらずに通り過ぎてきた道に、どれだけ見逃してきた素敵な景色や料理があったのか。それを知る一日を作ってみたら、また自転車を楽しむ余裕が生まれてくるかもしれない。広い視界とすぐに停まれる気軽さこそが、自転車が持つ圧倒的なアドバンテージ。毎週定番のコースでも、少し周りを見渡せば、楽しむヒントはたくさん転がっているはずだ。
text:Naoki.Yasuoka
photo:Naoki.Yasuoka、Gakuto.Fujiwara
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