2017/12/02(土) - 09:02
11月30日の夜、東京のボルボスタジオ青山を会場に「新城幸也×飯島美和 トークと写真のコラボレーション」が開催された。フォトグラファーとしてプロレースを撮る美和さんとユキヤ。写真とトークによる初めての企画だ。
新城幸也選手と、パートナーの飯島美和さんによるフォト&トークショー。会は平日の夜7時スタートということで、会社や学校帰りのファンが多くを占めたが、なかには広島から駆けつけた熱心なファンの姿も。
入場と引き換えに参加者が受け取ったのは、新城選手が2017年のレース出場で身につけたゼッケン。約100人ほどのファンの前に、MCのサッシャさんと新城選手、そして飯島美和さんが並んでのトークショーだ。
この日の主役は新城幸也以上に美和さん。サッシャさんをMCとして、この2年ほどはフォトグラファーとして欧州レースを追いかける日々が続いている美和さんの、撮影取材やレース現場での裏話、新城選手とのエピソードなどを中心にトークが展開された。
美和さんは現在、おもにオランダの老舗フォトエージェンシー「Cor Vos(コルボス)」の契約フォトグラファーとして活動している。改めて驚かされるのは美和さんのレース帯同日数だ。ジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランス、ブエルタ・ア・エスパーニャの3つのグランツールに加えて世界各国のレースを撮影した日数は(通常ステージよりも撮影仕事が多い)グランツールの休息日を含めると「147」と、新城が2017シーズンに出場したレース数の「83」よりも多くなる計算に。
2年前から続いている美和さんのカメラマン生活。 ワールドツアーチーム所属選手と、欧州レースを追いかけるフォトグラファー。フランスの家に一緒に居る日が年間30日も無いという状態に、「すれ違いのトランジット(乗り換え)の空港ロビーなどで会うんです」(美和さん)。「僕が家を守って、コリン(愛犬)の世話をしています」(新城)と笑い合うふたり。会場も立場の違うふたりのプロ生活に感心しつつ、笑いに包まれる。
美和さんがコルボスで仕事をするきっかけとなった経緯も語られた。実はそれはリエージュ~バストーニュ~リエージュでの新城の落車だったという。
新城選手が落車して草むらに倒れ込み、しばらく起き上がれなかったというアクシデントがあったそのレースには、美和さんも帯同していた。クルマを走らせる美和さんのもとに、日本でTVを観ていた友人たちから美和さんの携帯電話に新城選手の状況が伝えられていた。新城の状況を心配しながらもゴールへと向かった美和さん。深刻な表情でレースのフィニッシュを待っていたその様子に、「すごい形相の女性カメラマンがいる」と気がついたのがサイクルフォトグラファーの第一人者、コル・ボス氏その人だった。
のちに状況を理解したコル・ボス氏は「そんな状況でもゴールを撮っていたとは、なんて責任感のあるカメラマンだ」と、美和さんに声をかけ、仕事を依頼するようになったという。
コルボスとの話はすぐに「ジロを撮らないか」という流れになったという。そんな話に、サッシャさんも「それはリアル怪我の功名ってやつですね!」と感心。そうして、2年前からコルボスの契約カメラマンとしてレースを追いかける日々が続いている。
そんな仕事を始めた経緯、そしてレースを追いかける苦労話が続々と語られた。現在、コルボスはロットNLユンボやチームサンウェブ、トレック・セガフレードなどプロ6チームと写真配信契約を結んでおり、美和さんの写真はそれぞれのチームや選手たちの公式写真として使われている。引退したコンタドールの最後のブエルタでの写真はコンタドール自身のフェイスブックでも使われた。また、アングリルでの大勝利の際の、拳銃を撃つ様を模した「エル・ピストレロ」のフィニッシュシーンはフランスの自転車レース専門誌「VeloMagazine(ヴェロマガジン)」の表紙にも採用された。
「フォトグラファーとしてはまだまだ勉強、修行中」と言う美和さん。「TTでは良くTVカメラに写る」とサッシャが言えば、「多くのカメラマンがコースに出て撮影しているので、私はスタートしていく選手全員を撮ることに徹したりします。とくに最終日のTTでは全員の表情も撮りたいんです」と、こだわりを話す。
新城選手とのレースでの裏話の数々も披露された。スタート前にふたりが話しているとき、契約チームの選手が通ると、新城選手を「ちょっと邪魔」と言って脇へやり、その選手を撮る美和さん。また、ある日美和さんが忘れたグローブを、新城選手が背中のポケットに入れてレースを走りながらオートバイに乗る美和さんに届けたところ、「今それどころじゃないから要らない」と返された話も。
また、レースを追いかけている美和さんに、家にいる新城選手がTVを観ながら電話をかけてレース状況を伝え、勝ちそうな選手が誰かをアドバイスしたり、「この先は道が狭くなるから集団を追い越しておかないとゴールに間に合わないよ」と教えたりするなど、新城選手による「美和アシスト」の話が披露された。
「そんなアドバイスのおかげで勝つ選手の写真をしっかり撮れたり、カメラマン仲間から『ミワはレースを良く知っているな』と感心されたりしています」。そんなとっておきの裏話が続々と飛びだし、会場は爆笑の渦に包まれた。
美和さんの語る夢は、ツールでの新城の勝利を、フォトグラファーの一番いいポジションで撮ることだとか。この話にはサッシャさんも「いい話すぎる!」と感動しきり。
締めは新城選手による来年の抱負。今季は3位はあったものの勝利に恵まれなかった。しっかりトレーニングして来季の一勝を狙うという抱負に加え、2020年東京五輪ロードでの活躍。そして、2024年には第2の故郷となったフランスでパリ五輪が開催される。その時新城選手は39歳。今までは「東京五輪まで走る」とのコメントだったが、この日、その決意はパリ五輪までに延長されたのだった。
会はお開きになっても、閉場ギリギリまでファンへのサインや記念撮影のリクエストに応える新城選手と美和さん。日本滞在はあと少しの期間だが、その間精一杯ファンサービスにつとめたいという気持ちが伝わってくる。
「オフの今までにいろんなイベントも走ったし、ファンの皆さんからたくさん元気をもらいました。それをエネルギーに、来季こそ勝利を目指します。応援してください」と新城選手は締めくくった。
photo&text:Makoto.AYANO
新城幸也選手と、パートナーの飯島美和さんによるフォト&トークショー。会は平日の夜7時スタートということで、会社や学校帰りのファンが多くを占めたが、なかには広島から駆けつけた熱心なファンの姿も。
入場と引き換えに参加者が受け取ったのは、新城選手が2017年のレース出場で身につけたゼッケン。約100人ほどのファンの前に、MCのサッシャさんと新城選手、そして飯島美和さんが並んでのトークショーだ。
この日の主役は新城幸也以上に美和さん。サッシャさんをMCとして、この2年ほどはフォトグラファーとして欧州レースを追いかける日々が続いている美和さんの、撮影取材やレース現場での裏話、新城選手とのエピソードなどを中心にトークが展開された。
美和さんは現在、おもにオランダの老舗フォトエージェンシー「Cor Vos(コルボス)」の契約フォトグラファーとして活動している。改めて驚かされるのは美和さんのレース帯同日数だ。ジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランス、ブエルタ・ア・エスパーニャの3つのグランツールに加えて世界各国のレースを撮影した日数は(通常ステージよりも撮影仕事が多い)グランツールの休息日を含めると「147」と、新城が2017シーズンに出場したレース数の「83」よりも多くなる計算に。
2年前から続いている美和さんのカメラマン生活。 ワールドツアーチーム所属選手と、欧州レースを追いかけるフォトグラファー。フランスの家に一緒に居る日が年間30日も無いという状態に、「すれ違いのトランジット(乗り換え)の空港ロビーなどで会うんです」(美和さん)。「僕が家を守って、コリン(愛犬)の世話をしています」(新城)と笑い合うふたり。会場も立場の違うふたりのプロ生活に感心しつつ、笑いに包まれる。
美和さんがコルボスで仕事をするきっかけとなった経緯も語られた。実はそれはリエージュ~バストーニュ~リエージュでの新城の落車だったという。
新城選手が落車して草むらに倒れ込み、しばらく起き上がれなかったというアクシデントがあったそのレースには、美和さんも帯同していた。クルマを走らせる美和さんのもとに、日本でTVを観ていた友人たちから美和さんの携帯電話に新城選手の状況が伝えられていた。新城の状況を心配しながらもゴールへと向かった美和さん。深刻な表情でレースのフィニッシュを待っていたその様子に、「すごい形相の女性カメラマンがいる」と気がついたのがサイクルフォトグラファーの第一人者、コル・ボス氏その人だった。
のちに状況を理解したコル・ボス氏は「そんな状況でもゴールを撮っていたとは、なんて責任感のあるカメラマンだ」と、美和さんに声をかけ、仕事を依頼するようになったという。
コルボスとの話はすぐに「ジロを撮らないか」という流れになったという。そんな話に、サッシャさんも「それはリアル怪我の功名ってやつですね!」と感心。そうして、2年前からコルボスの契約カメラマンとしてレースを追いかける日々が続いている。
そんな仕事を始めた経緯、そしてレースを追いかける苦労話が続々と語られた。現在、コルボスはロットNLユンボやチームサンウェブ、トレック・セガフレードなどプロ6チームと写真配信契約を結んでおり、美和さんの写真はそれぞれのチームや選手たちの公式写真として使われている。引退したコンタドールの最後のブエルタでの写真はコンタドール自身のフェイスブックでも使われた。また、アングリルでの大勝利の際の、拳銃を撃つ様を模した「エル・ピストレロ」のフィニッシュシーンはフランスの自転車レース専門誌「VeloMagazine(ヴェロマガジン)」の表紙にも採用された。
「フォトグラファーとしてはまだまだ勉強、修行中」と言う美和さん。「TTでは良くTVカメラに写る」とサッシャが言えば、「多くのカメラマンがコースに出て撮影しているので、私はスタートしていく選手全員を撮ることに徹したりします。とくに最終日のTTでは全員の表情も撮りたいんです」と、こだわりを話す。
新城選手とのレースでの裏話の数々も披露された。スタート前にふたりが話しているとき、契約チームの選手が通ると、新城選手を「ちょっと邪魔」と言って脇へやり、その選手を撮る美和さん。また、ある日美和さんが忘れたグローブを、新城選手が背中のポケットに入れてレースを走りながらオートバイに乗る美和さんに届けたところ、「今それどころじゃないから要らない」と返された話も。
また、レースを追いかけている美和さんに、家にいる新城選手がTVを観ながら電話をかけてレース状況を伝え、勝ちそうな選手が誰かをアドバイスしたり、「この先は道が狭くなるから集団を追い越しておかないとゴールに間に合わないよ」と教えたりするなど、新城選手による「美和アシスト」の話が披露された。
「そんなアドバイスのおかげで勝つ選手の写真をしっかり撮れたり、カメラマン仲間から『ミワはレースを良く知っているな』と感心されたりしています」。そんなとっておきの裏話が続々と飛びだし、会場は爆笑の渦に包まれた。
美和さんの語る夢は、ツールでの新城の勝利を、フォトグラファーの一番いいポジションで撮ることだとか。この話にはサッシャさんも「いい話すぎる!」と感動しきり。
締めは新城選手による来年の抱負。今季は3位はあったものの勝利に恵まれなかった。しっかりトレーニングして来季の一勝を狙うという抱負に加え、2020年東京五輪ロードでの活躍。そして、2024年には第2の故郷となったフランスでパリ五輪が開催される。その時新城選手は39歳。今までは「東京五輪まで走る」とのコメントだったが、この日、その決意はパリ五輪までに延長されたのだった。
会はお開きになっても、閉場ギリギリまでファンへのサインや記念撮影のリクエストに応える新城選手と美和さん。日本滞在はあと少しの期間だが、その間精一杯ファンサービスにつとめたいという気持ちが伝わってくる。
「オフの今までにいろんなイベントも走ったし、ファンの皆さんからたくさん元気をもらいました。それをエネルギーに、来季こそ勝利を目指します。応援してください」と新城選手は締めくくった。
photo&text:Makoto.AYANO
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