2017/11/25(土) - 08:59
“聖地”として、かつてのMTBブームを牽引した白馬岩岳のMTBコースが今年復活。ウインタースポーツの場として名高いこの地にリバイバルした、「世界基準の初級者向けコース」とは?そして「フロートレイル」とは?MTBにトライしてみたい、でも専用コースは敷居が高い気がする。そんな方にこそ訪れてほしいこの場所を尋ねた。
東京都内からは中央道と長野自動車道を使って4時間弱、名古屋から目指す場合も同じくらい。ちょっと遠いけれど、仲間と乗り合いならあっという間に到着するだろう。国内ウインタースポーツの中心地にあるIwatake Ski Fieldのゲレンデが、ここ最近、MTBファンの胸を躍らせている「白馬岩岳MTB PARK」の舞台だ。
白馬岩岳といえば、’90年代に巻き起こった一大MTBブームを牽引した中心地。かつてのコースは10年も経たず惜しまれつつ閉鎖したのだが、ひょんなことから2015年に復活。ローカルでMTBガイドをしていた堀さんと、ライダーの雨宮さんが、半ばボランティアとして白馬岩岳復活のために動き、そこにスキー場を管理運営する会社からの許可が降りた。あれよあれよという間にMTB事業部ができ、オーストラリアの世界的トレイルビルダーを呼び込んで、現在のコースが生まれたのだ(この辺りのストーリーは別レポートにて紹介します)。
SNSのタイムラインで、特に今年の夏から目立つようになってきた「岩岳ヤバい!」「岩岳サイコー!」といった投稿の数々。それを確かめるべく訪れたのだが、驚いたのが、ド平日にも関わらずMTBライダーが非常に多いこと。しかも東北や近畿関西ナンバーを付けたクルマも少なくない。誰かが「MTBが再燃してる」と言っていたが、それにも納得。はやる気持ちを抑えつつ、バイクと共にゴンドラへと乗り込んだ。
多数のコースが引かれている白馬岩岳MTB PARKだが、今最もホットなのが、この夏にオープンした全長6.9kmにも及ぶアルプスダウンヒルコース。このトレイルがどうスゴいかと言うと、ものすごく上下左右にうねっているのだ。それも6.9kmの全域に渡って。
小刻みにターンを繰り返すコースの至る所にパンプがあって、下りはもちろん、ところどころに登りや平坦も。細かく流れるこのレイアウトにこそ、「世界基準の初級者向けコース」たる意味が込められている。
ダウンヒルと聞くと、フルフェイスヘルメットの猛者たちがDHバイクでカッ飛ばす、エクストリームな映像が目に浮かぶだろう。でも、このアルプスダウンヒルコースにも導入された、海外MTBブームの基盤を支える「フロートレイル」はそうじゃない。直滑降がほぼゼロで、自然な流れの中でパンプとコーナーが現れるから、むやみにスピードが出ずにビギナーだって怖くないのだ。そして少しだけでもプッシュ&プルのスキルがあれば、最初から最後まで浮遊感あるライドを味わえる。なんだか、人間の感性にピッタリと合ったリズム。これがサイコーに気持ち良い。フロー(流れる)トレイルとは絶妙な表現だなと、ここを走ったからこそ強く感じる。
それに加えて白馬岩岳をオンリーワンにしているのが、コースのあちこちから望む絶景の数々だ。北には荘厳な白馬連山がそびえ、眼下には白馬村を見渡す大パノラマが広がる。コース途中のビューポイントにバイクラックとベンチが備わるのは、しゃかりきに下るだけじゃなくて、たまには休憩しましょうぜ、というメッセージだ。
そんなわけで、身構える必要は一切ない。フルリジッドだって、頑張ればグラベルロードだって、どんなバイクで走っても楽しいし、ウェアもスニーカーと長袖長ズボンでOK。大人も子供もスキルの違う人が一緒に走って楽しいと言える、稀有なトレイルがここにはある。これが世界基準の遊び方なのだ。
「やっと国内にこんなコースを作ることができました」と、トレイル制作の中心役を担った堀さんは言う。「実は、岩岳に来るお客さんの多くがMTB未経験者なんです。ハイキングに来て、”お、MTBって面白そうだからちょっとレンタルしてみよう”って方が本当にたくさんいる。従来のコースはどうしても初心者には危なかったけれど、ここならどうぞ楽しんで!と心から言えるんです」。
だからといって、堀さんたちはこれで満足したわけじゃない。ゆくゆくは上級者向けの世界基準コースを作成して、しかも”魅せる”作りにすることで、MTBが持つエンターテイメントとしての側面も押し出すつもりだ。地域の子供たちが見て憧れる環境を作り、その中から輝く選手が生まれることで、よりスポーツとしての価値を高めたい、とも。
まだまだ発展途上だという白馬岩岳MTB PARKだが、その充実ぶりや幸せ度は、写真に写った人たちの表情が十分に説明してくれていると思う。来夏のオープンは、雪解け明けの5月頃。随時コースの改良や増強を行っていくとのことで、訪れるたびに新しい楽しみが待っているはず。
最後に、コースではなくパークと名付けられた理由を。競技色の強い「コース」と違って、「パーク」は誰もが楽しめる”公園”だからだ。リピート確定、中毒注意。ちょっと遠いかもしれないけれど、わざわざ海外から訪れるユーザーも増えているというこの白馬岩岳MTB PARK。国内から訪ねない理由はどこにもない。
text&photo:So.Isobe
東京都内からは中央道と長野自動車道を使って4時間弱、名古屋から目指す場合も同じくらい。ちょっと遠いけれど、仲間と乗り合いならあっという間に到着するだろう。国内ウインタースポーツの中心地にあるIwatake Ski Fieldのゲレンデが、ここ最近、MTBファンの胸を躍らせている「白馬岩岳MTB PARK」の舞台だ。
白馬岩岳といえば、’90年代に巻き起こった一大MTBブームを牽引した中心地。かつてのコースは10年も経たず惜しまれつつ閉鎖したのだが、ひょんなことから2015年に復活。ローカルでMTBガイドをしていた堀さんと、ライダーの雨宮さんが、半ばボランティアとして白馬岩岳復活のために動き、そこにスキー場を管理運営する会社からの許可が降りた。あれよあれよという間にMTB事業部ができ、オーストラリアの世界的トレイルビルダーを呼び込んで、現在のコースが生まれたのだ(この辺りのストーリーは別レポートにて紹介します)。
SNSのタイムラインで、特に今年の夏から目立つようになってきた「岩岳ヤバい!」「岩岳サイコー!」といった投稿の数々。それを確かめるべく訪れたのだが、驚いたのが、ド平日にも関わらずMTBライダーが非常に多いこと。しかも東北や近畿関西ナンバーを付けたクルマも少なくない。誰かが「MTBが再燃してる」と言っていたが、それにも納得。はやる気持ちを抑えつつ、バイクと共にゴンドラへと乗り込んだ。
多数のコースが引かれている白馬岩岳MTB PARKだが、今最もホットなのが、この夏にオープンした全長6.9kmにも及ぶアルプスダウンヒルコース。このトレイルがどうスゴいかと言うと、ものすごく上下左右にうねっているのだ。それも6.9kmの全域に渡って。
小刻みにターンを繰り返すコースの至る所にパンプがあって、下りはもちろん、ところどころに登りや平坦も。細かく流れるこのレイアウトにこそ、「世界基準の初級者向けコース」たる意味が込められている。
ダウンヒルと聞くと、フルフェイスヘルメットの猛者たちがDHバイクでカッ飛ばす、エクストリームな映像が目に浮かぶだろう。でも、このアルプスダウンヒルコースにも導入された、海外MTBブームの基盤を支える「フロートレイル」はそうじゃない。直滑降がほぼゼロで、自然な流れの中でパンプとコーナーが現れるから、むやみにスピードが出ずにビギナーだって怖くないのだ。そして少しだけでもプッシュ&プルのスキルがあれば、最初から最後まで浮遊感あるライドを味わえる。なんだか、人間の感性にピッタリと合ったリズム。これがサイコーに気持ち良い。フロー(流れる)トレイルとは絶妙な表現だなと、ここを走ったからこそ強く感じる。
それに加えて白馬岩岳をオンリーワンにしているのが、コースのあちこちから望む絶景の数々だ。北には荘厳な白馬連山がそびえ、眼下には白馬村を見渡す大パノラマが広がる。コース途中のビューポイントにバイクラックとベンチが備わるのは、しゃかりきに下るだけじゃなくて、たまには休憩しましょうぜ、というメッセージだ。
そんなわけで、身構える必要は一切ない。フルリジッドだって、頑張ればグラベルロードだって、どんなバイクで走っても楽しいし、ウェアもスニーカーと長袖長ズボンでOK。大人も子供もスキルの違う人が一緒に走って楽しいと言える、稀有なトレイルがここにはある。これが世界基準の遊び方なのだ。
「やっと国内にこんなコースを作ることができました」と、トレイル制作の中心役を担った堀さんは言う。「実は、岩岳に来るお客さんの多くがMTB未経験者なんです。ハイキングに来て、”お、MTBって面白そうだからちょっとレンタルしてみよう”って方が本当にたくさんいる。従来のコースはどうしても初心者には危なかったけれど、ここならどうぞ楽しんで!と心から言えるんです」。
だからといって、堀さんたちはこれで満足したわけじゃない。ゆくゆくは上級者向けの世界基準コースを作成して、しかも”魅せる”作りにすることで、MTBが持つエンターテイメントとしての側面も押し出すつもりだ。地域の子供たちが見て憧れる環境を作り、その中から輝く選手が生まれることで、よりスポーツとしての価値を高めたい、とも。
まだまだ発展途上だという白馬岩岳MTB PARKだが、その充実ぶりや幸せ度は、写真に写った人たちの表情が十分に説明してくれていると思う。来夏のオープンは、雪解け明けの5月頃。随時コースの改良や増強を行っていくとのことで、訪れるたびに新しい楽しみが待っているはず。
最後に、コースではなくパークと名付けられた理由を。競技色の強い「コース」と違って、「パーク」は誰もが楽しめる”公園”だからだ。リピート確定、中毒注意。ちょっと遠いかもしれないけれど、わざわざ海外から訪れるユーザーも増えているというこの白馬岩岳MTB PARK。国内から訪ねない理由はどこにもない。
text&photo:So.Isobe
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