2017/05/03(水) - 04:12
自転車と鉄道、二つを愛する「テツ店長」ことバイクプラス多摩センターの河井孝介さんの輪行サイクリング紀行。今回の舞台は岡山県。ローカル線がひしめく鉄道マニアの聖地を巡る輪行ライドのレポートが届きました。
みなさんこんにちは!輪行で見知らぬ土地を旅することを愛してやまないテツ店長です。ときは3月に入り、今年もまた青春18きっぷの時期がやってきました。
春・夏・冬と、年に3回発行される青春18きっぷですが、やっぱり春の18キップシーズンが時期的には一番サイクリングには適した時期ではないかと思うのですね。まあ東北地方などはまだまだ寒そうなので、行くなら気候も温暖な西日本に向かうのが宜しかろうということで、今回はちょっと地味(失礼!)ですが、岡山県の内陸部、美作(みまさか)地域を自転車で巡りに行ってきました。
なぜならこの辺り一帯はローカル線の宝庫で、すでに廃線になってしまった路線や、使われなくなって久しい車庫を利用した鉄道博物館、現役の古い木造駅舎など、テツ店長好みのスポットが点在しているのですね!ということで、往復夜行列車を使った弾丸輪行ツアーとなりますが、ここはテツの方もサイクリストの方もどうかお付き合いください(笑)
3月某日、旅の始まりは深夜の横浜駅から。この日一夜のお世話になる列車は、臨時快速"ムーンライトながら"大垣行き。今や貴重な存在となった夜行普通列車になります。青春18きっぷが使える時期のさらにごく一部日程のみで運行されるので、なかなかきっぷも取りづらい人気の列車です。ご利用の際には時刻表でよく調べて、早めにきっぷを手配してくださいね!
いつも満員ですが、小田原駅を過ぎるとほとんど人の出入りもなくなるので、自転車はデッキに置かせてもらうことに……。テツ目線的には、こちらの185系電車は国鉄時代に製作された車両ということで、内装のあちこちに昭和の匂いが感じられてちょっと好きな車両だったりします。こんな差し替え式の座席の表示など、ちょっとしたモノにけっこうグッとくるものがあるんですね(笑)
早朝の大垣駅で吐き出された大勢の乗客の乗り継ぎを見送り、悠々と次の列車に乗り込んでさらに西を目指すことにします。一本遅らせたおかげで、始発駅では車内はガラガラで余裕を持って自転車も置くことができるという特典が付いてきました。
なぜここで余裕をかましていられるのかと言うと、これから向かう先のローカル線の本数が少ないために、焦って先に進んでも、この先の姫路駅の乗り継ぎで長時間待つハメになることが事前を調べで判明していたのですね。鈍行列車の旅では、この乗り継ぎが生命線となるのですが、このあと想定外のトラブルで計画に綻びが生じてくるとは、まだこの時点では知る由もありません。
米原駅を定刻に出した姫路行き新快速の車内でのんびりと車窓を眺めていましたが、大津駅に止まったと思ったらいつまで経っても出発しません!そのうち車内アナウンスで神戸線内で人身事故が発生したとのことで、京都線も含めた東海道線全線で運行見合わせとのこと。
けっこうシビアなタイムスケジュールを組んで移動していた手前、これはかなりな一大事なのですが、他に出来ることもないので、まあ成り行き任せでどこかで時間調整するしかないかな……などと思いながらのんきに朝寝していると、ようやく列車が動き出しました。
約1時間の遅れで姫路駅に到着!乗り継ぎの赤穂線の列車が来るまで約10分あります。10分あれば駅そばをかき込むには十分な時間です。さらにここで昼食の時間を短縮すれば、このあとの行動時間が増えるなということで、迷わず駅ホームにある"えきそば・まねき"ののれんをくぐります。
注文したのは"とり天そば"。ここの麺がちょっと変わっていて、いわゆる日本そばではなくて、中華麺風のソフト麺?に和風だしというユニークなそばが出てきました。つるっとした軽いのどごしで、これはこれでクセになる味なので、姫路駅に訪れた際にはぜひお試しください(笑)
赤穂線に乗ってやって来たのは、サイクリングのスタート地点でもある"西片上駅"。ここで列車は降りましたが、このまっ黄色[末期色?]でのっぺり顔の電車、車両に短編成化で不足した先頭車を補うために、中間車をお手軽に改造して作ったJR西日本名物の魔改造車両で、この顔を見ると西日本に来たなぁと、ちょっと感慨にふけってしまうテツ店長なのでした(笑)
予定より1時間遅れましたが、とりあえず当初予定通りのコースを走ってみることとしましょう。そしてここからは、サイクリングロードとしても人気の高い"片鉄ロマン街道"を走ってみます。かつて片上~棚原(やなはら)間を結んでいた"同和鉱業片上鉄道"の線路を転用した自転車専用道は、全長34kmとまあまあ距離もあって、鉄道遺構も数多く残されているとのこと。
こちらの鉄道、柵原鉱山からの鉱石輸送の衰退で、残念ながら1991年に廃線となってしまったのだそう……。その後整備されて、2003年に"岡山県道703号備前柵原自転車道線"通称「片鉄ロマン街道」として再度開通したというのですから、テツ&サイクリストのテツ店長としては、こんな美味しいコースは他には無いと言っても過言ではありません(笑)
スタートからさっそく勾配票のお出ましなどで、ココロくすぐられる演出に期待が高まります!28.6‰(パーミル)ということで、鉄道としてはけっこうな勾配ですが、%(パーセント)に換算すると2.86%ということですから、自転車だとまあ楽勝な勾配なのですが……。
JR山陽本線との接続駅である"和気"を過ぎた先に日笠川を渡る橋梁がそのまま残されています。古い鉄道橋に多いプレートガーダー橋というやつで、なかなか画になる佇まいを見せてくれています。メシも途中で済またし、せっせと先に進みたいところですが、貨車、信号、駅舎と次からつぎに鉄道遺構が現れて、毎度のことながらなかなか前に進むことができません(泣)
吉井川が近づいてくると、少しずつ山が迫ってきてトンネルも多くなってきます。トンネルもまた独特の鉄道サイズで、自転車に乗りながらも、タイムスリップして当時の列車から車窓を眺めているような気分になってきます。途中の駅舎もキレイに整備されていてまるで現役のよう。先を急ぎたいのは山々ながら、あまりの雰囲気の良さについつい足が止まってしまいます。
サイクリングロード終盤は、線路上ではなく車道に沿って走る区間と川沿いのサイクリングロードを走る区間が多くなったりしてちょっと興ざめしそうなところですが、本来の路盤の跡や橋梁の跡などを探しながら走ると、宝探し的な要素もあって、意外と楽しめるかも知れません。
そんなこんなしているうちに、いつの間にか片上鉄道の終点である"吉ヶ原駅"に到着していました(笑)そこには終着駅らしい木造の三角屋根を持った立派な駅舎が現存していました。さっそく駅舎を散策してみると、改札口にはこれまた立派な石造りのラッチ(改札口)があったり、大きな"駅長"の標識も、鉄道の権威が高かった時代を彷彿とさせます。
広い駅構内には機関車や貨車、客車に気動車とさまざまな車両が展示されており、またその多くが動態保存ということで、今も実際に線路上を走行することができるそうです。片上鉄道保存会により、毎月第一日曜日には実際に車両を動かしたり試乗もできたりするそうなので、時間が取れそうな方はいらしてみてはいかがでしょう♪♪
もっとゆっくり見ていきたいのは山々でしたが、西日もだいぶ低くなってきて、ここで1時間のタイムロスを痛感することに……。まあここは悔やんでもしかたがないことなので、また来ることにして本日の宿泊地に向けてそろそろ出発することとしましょう。
このあたり"美作地域"は低い山と平地が織りなす独特の地形で、サイクリングしていると、その景色や地形の変化から遠くへ来たなぁ……としみじみと感じてしまいます。このあとひと山越えて、津山線の"亀甲(かめのこう)駅"まで下りて来ました。ここの駅舎がけっこうなオモシロ駅舎だということで立ち寄ってみたのですが……
これがまあ面白いと言いますか、かなりユニークな造りの珍駅舎なのでした(笑)それにしても駅舎を亀の甲羅に見立てて、そこに頭をくっつけるという発想には笑ってしまします。しかも目玉が時計になっているとは。
ということで、1日目の行動はこれにて終了。この日は近くに取っておいた宿舎でたっぷり睡眠をとらせていただき、翌日の行動に備えたのでした。後編へつづきます!
旅する人 河井孝介プロフィール
バイクプラス多摩センターの店長を務める48歳。前職で足かけ10年にわたる勤務を鉄道の無い(モノレール除く)沖縄県で過ごした反動からか、帰京後は輪行サイクリングの虜となり、現在は鉄道と自転車を組み合わせ、鉄道廃線跡や未成線など鉄道の歴史を辿るサイクリングをライフワークとする。鉄道趣味のジャンルは「乗り鉄」。旧国鉄型車両を心から愛し、ひそかにJR全線乗車にチャレンジ中。非常勤の防衛省職員である予備三等陸曹の身分も合わせ持っている。
みなさんこんにちは!輪行で見知らぬ土地を旅することを愛してやまないテツ店長です。ときは3月に入り、今年もまた青春18きっぷの時期がやってきました。
春・夏・冬と、年に3回発行される青春18きっぷですが、やっぱり春の18キップシーズンが時期的には一番サイクリングには適した時期ではないかと思うのですね。まあ東北地方などはまだまだ寒そうなので、行くなら気候も温暖な西日本に向かうのが宜しかろうということで、今回はちょっと地味(失礼!)ですが、岡山県の内陸部、美作(みまさか)地域を自転車で巡りに行ってきました。
なぜならこの辺り一帯はローカル線の宝庫で、すでに廃線になってしまった路線や、使われなくなって久しい車庫を利用した鉄道博物館、現役の古い木造駅舎など、テツ店長好みのスポットが点在しているのですね!ということで、往復夜行列車を使った弾丸輪行ツアーとなりますが、ここはテツの方もサイクリストの方もどうかお付き合いください(笑)
3月某日、旅の始まりは深夜の横浜駅から。この日一夜のお世話になる列車は、臨時快速"ムーンライトながら"大垣行き。今や貴重な存在となった夜行普通列車になります。青春18きっぷが使える時期のさらにごく一部日程のみで運行されるので、なかなかきっぷも取りづらい人気の列車です。ご利用の際には時刻表でよく調べて、早めにきっぷを手配してくださいね!
いつも満員ですが、小田原駅を過ぎるとほとんど人の出入りもなくなるので、自転車はデッキに置かせてもらうことに……。テツ目線的には、こちらの185系電車は国鉄時代に製作された車両ということで、内装のあちこちに昭和の匂いが感じられてちょっと好きな車両だったりします。こんな差し替え式の座席の表示など、ちょっとしたモノにけっこうグッとくるものがあるんですね(笑)
早朝の大垣駅で吐き出された大勢の乗客の乗り継ぎを見送り、悠々と次の列車に乗り込んでさらに西を目指すことにします。一本遅らせたおかげで、始発駅では車内はガラガラで余裕を持って自転車も置くことができるという特典が付いてきました。
なぜここで余裕をかましていられるのかと言うと、これから向かう先のローカル線の本数が少ないために、焦って先に進んでも、この先の姫路駅の乗り継ぎで長時間待つハメになることが事前を調べで判明していたのですね。鈍行列車の旅では、この乗り継ぎが生命線となるのですが、このあと想定外のトラブルで計画に綻びが生じてくるとは、まだこの時点では知る由もありません。
米原駅を定刻に出した姫路行き新快速の車内でのんびりと車窓を眺めていましたが、大津駅に止まったと思ったらいつまで経っても出発しません!そのうち車内アナウンスで神戸線内で人身事故が発生したとのことで、京都線も含めた東海道線全線で運行見合わせとのこと。
けっこうシビアなタイムスケジュールを組んで移動していた手前、これはかなりな一大事なのですが、他に出来ることもないので、まあ成り行き任せでどこかで時間調整するしかないかな……などと思いながらのんきに朝寝していると、ようやく列車が動き出しました。
約1時間の遅れで姫路駅に到着!乗り継ぎの赤穂線の列車が来るまで約10分あります。10分あれば駅そばをかき込むには十分な時間です。さらにここで昼食の時間を短縮すれば、このあとの行動時間が増えるなということで、迷わず駅ホームにある"えきそば・まねき"ののれんをくぐります。
注文したのは"とり天そば"。ここの麺がちょっと変わっていて、いわゆる日本そばではなくて、中華麺風のソフト麺?に和風だしというユニークなそばが出てきました。つるっとした軽いのどごしで、これはこれでクセになる味なので、姫路駅に訪れた際にはぜひお試しください(笑)
赤穂線に乗ってやって来たのは、サイクリングのスタート地点でもある"西片上駅"。ここで列車は降りましたが、このまっ黄色[末期色?]でのっぺり顔の電車、車両に短編成化で不足した先頭車を補うために、中間車をお手軽に改造して作ったJR西日本名物の魔改造車両で、この顔を見ると西日本に来たなぁと、ちょっと感慨にふけってしまうテツ店長なのでした(笑)
予定より1時間遅れましたが、とりあえず当初予定通りのコースを走ってみることとしましょう。そしてここからは、サイクリングロードとしても人気の高い"片鉄ロマン街道"を走ってみます。かつて片上~棚原(やなはら)間を結んでいた"同和鉱業片上鉄道"の線路を転用した自転車専用道は、全長34kmとまあまあ距離もあって、鉄道遺構も数多く残されているとのこと。
こちらの鉄道、柵原鉱山からの鉱石輸送の衰退で、残念ながら1991年に廃線となってしまったのだそう……。その後整備されて、2003年に"岡山県道703号備前柵原自転車道線"通称「片鉄ロマン街道」として再度開通したというのですから、テツ&サイクリストのテツ店長としては、こんな美味しいコースは他には無いと言っても過言ではありません(笑)
スタートからさっそく勾配票のお出ましなどで、ココロくすぐられる演出に期待が高まります!28.6‰(パーミル)ということで、鉄道としてはけっこうな勾配ですが、%(パーセント)に換算すると2.86%ということですから、自転車だとまあ楽勝な勾配なのですが……。
JR山陽本線との接続駅である"和気"を過ぎた先に日笠川を渡る橋梁がそのまま残されています。古い鉄道橋に多いプレートガーダー橋というやつで、なかなか画になる佇まいを見せてくれています。メシも途中で済またし、せっせと先に進みたいところですが、貨車、信号、駅舎と次からつぎに鉄道遺構が現れて、毎度のことながらなかなか前に進むことができません(泣)
吉井川が近づいてくると、少しずつ山が迫ってきてトンネルも多くなってきます。トンネルもまた独特の鉄道サイズで、自転車に乗りながらも、タイムスリップして当時の列車から車窓を眺めているような気分になってきます。途中の駅舎もキレイに整備されていてまるで現役のよう。先を急ぎたいのは山々ながら、あまりの雰囲気の良さについつい足が止まってしまいます。
サイクリングロード終盤は、線路上ではなく車道に沿って走る区間と川沿いのサイクリングロードを走る区間が多くなったりしてちょっと興ざめしそうなところですが、本来の路盤の跡や橋梁の跡などを探しながら走ると、宝探し的な要素もあって、意外と楽しめるかも知れません。
そんなこんなしているうちに、いつの間にか片上鉄道の終点である"吉ヶ原駅"に到着していました(笑)そこには終着駅らしい木造の三角屋根を持った立派な駅舎が現存していました。さっそく駅舎を散策してみると、改札口にはこれまた立派な石造りのラッチ(改札口)があったり、大きな"駅長"の標識も、鉄道の権威が高かった時代を彷彿とさせます。
広い駅構内には機関車や貨車、客車に気動車とさまざまな車両が展示されており、またその多くが動態保存ということで、今も実際に線路上を走行することができるそうです。片上鉄道保存会により、毎月第一日曜日には実際に車両を動かしたり試乗もできたりするそうなので、時間が取れそうな方はいらしてみてはいかがでしょう♪♪
もっとゆっくり見ていきたいのは山々でしたが、西日もだいぶ低くなってきて、ここで1時間のタイムロスを痛感することに……。まあここは悔やんでもしかたがないことなので、また来ることにして本日の宿泊地に向けてそろそろ出発することとしましょう。
このあたり"美作地域"は低い山と平地が織りなす独特の地形で、サイクリングしていると、その景色や地形の変化から遠くへ来たなぁ……としみじみと感じてしまいます。このあとひと山越えて、津山線の"亀甲(かめのこう)駅"まで下りて来ました。ここの駅舎がけっこうなオモシロ駅舎だということで立ち寄ってみたのですが……
これがまあ面白いと言いますか、かなりユニークな造りの珍駅舎なのでした(笑)それにしても駅舎を亀の甲羅に見立てて、そこに頭をくっつけるという発想には笑ってしまします。しかも目玉が時計になっているとは。
ということで、1日目の行動はこれにて終了。この日は近くに取っておいた宿舎でたっぷり睡眠をとらせていただき、翌日の行動に備えたのでした。後編へつづきます!
旅する人 河井孝介プロフィール
バイクプラス多摩センターの店長を務める48歳。前職で足かけ10年にわたる勤務を鉄道の無い(モノレール除く)沖縄県で過ごした反動からか、帰京後は輪行サイクリングの虜となり、現在は鉄道と自転車を組み合わせ、鉄道廃線跡や未成線など鉄道の歴史を辿るサイクリングをライフワークとする。鉄道趣味のジャンルは「乗り鉄」。旧国鉄型車両を心から愛し、ひそかにJR全線乗車にチャレンジ中。非常勤の防衛省職員である予備三等陸曹の身分も合わせ持っている。
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