2009/10/02(金) - 19:00
「明日あたり編集部に荷物が届くはずだからヨロシクな!」 久し振りにメタボ会長からの電話が編集部に入った。用件だけ押し付けて一方的にガチャリは以前と全く変わらない。
早速、その日の昼休みに宅急便が届いた。
「荷物が大きいんですが、何処に置きましょうか?」 配達のお兄さんが爽やかな笑顔で問いかけてくる。
あのオッサンは何を頼んだんだかと思いながら、外に出てビックリ!その梱包は明らかに自転車と判る箱だ。しかも2つも。
受取のサインもそこそこに、慌てて梱包を解くと、ピカピカのシクロワイアード号が2台出てきた。状況が把握できない私は、速攻でメタボ会長に電話を入れる。
「会長。シクロワイアード号の新しいのが2台まとめて届きましたが、これは一体どうゆう事なんですか?」
「おぉぉ、やっと来たか!かっこイイか?夕方までには編集部に顔出すから、組立ヨロシクな!じゃ、あとで。」
おぃおぃオッサン! かっこ良いか悪いかじゃなくて、何故これが届いたのかを聞いてんだよ!(怒)
マイペースだけでは済まされない程の傍若無人ぶりは相変わらずである。とにかく編集部でピカピカのシクロワイアード号を組み立てに取り掛かる。コンポは新型アルテグラでホイールはノバテックだ。
ん? 2台ともインラインブレーキが付いてるぞ。って事はメタボ会長専用車か! でもフレームサイズは小さいし?
何が何だか判らないまま2台とも組立完了。
編集部全員がモヤモヤを抱えたまま午後の編集作業に取り組むこととなった。
その疑問に答えるべく、メタボ会長がノコノコと編集部にやって来た。
「おおぉぉ、やっぱかっこイイな!」 開口一番呑気な言葉を垂れ流すメタボ会長を詰問開始だ。
「会長!これは一体どうゆうことなのかキッチリ説明して頂けますか?少なくとも私はこの件に関して一切の報告を受けていないのですが!」 私の強い態度にも全く臆することなく、こちらをニヤッと見ながらメタボ会長が答える。
「君たちがシクロワイアード号に乗らせてくれないから、自分で買っちゃった(笑)。 請求書がメディア事業部あてに届く筈だから、編集部の予算で入金処理しとけよ。」
なぬ? 乗るのはアンタで支払いは編集部って事? そんな理不尽な話が通る訳がないだろ! 赤鬼のごとく険しい形相に化けた私の表情を尻目に、悪ガキのような満面の悪笑みを含みながら
「冗談だよ。俺のポケットマネーで支払いは終わってるから問題なし。前からイベント取材用のバイクが欲しいって言ってなかったっけ? 取材の時に皆で使えるようにサイズも君達に合わせといてやったぞ。」
この一言に編集部全員の表情がパッと輝いた。
しかし何か裏があるに違いないだけに私まで心から喜ぶ訳にはいかない。
そもそも大富豪でもない限りポケットマネーでポッと購入できるシロモノで無いことは一目了然である。
真偽を正すべくメタボ会長に質問を投げる。
「編集部用のバイクなのに、何故、会長お気に入りのインラインブレーキが付いてるんですか?」
犯人を追いつめる警察官のような態度で問い正すと
「前のデファイの時に、インラインブレーキって取材の時には重宝するかもって君たちが言ってたから、頼んで付けてもらったんだけど・・・。邪魔だったか?」 涼しげな表情でサラリとメタボ会長が言ってのけた。
「本当に編集部で使っていいんですね? 支払いも編集部には廻ってこないで間違いないですね?」
疑心暗鬼な私は詰問を止められない。こんな私に懐かしい笑顔でメタボ会長が笑いかける
「大丈夫だよ(笑)。編集部で使っていいし、支払いも完了してるし、たまに俺にも乗らせてくれれば問題なしだよ。なんたって俺は君達と違って高給取りなんだから。」
おぉぉ。この人は案外いい人なのかもしれない!
今まで散々、騙され続けてきた事で、メタボ会長を色メガネで見過ぎていたのかもしれない。目の前のメタボ会長に後光が差しているかのように見えた気がした。私は人一倍、現金な性格なのだ。
編集部員達も、自分たちが乗れると判るや否や、再度丁寧に組み付けの点検を始めたり、メタボ会長にコーヒーを出したりと現金ぶりを如何なく発揮している。
どんな形であれ新車に触れる瞬間は心躍るものである。ましてやそれが、自分たちの為に用意されたモノともなれば尚更のことである。
思い起こせば、メタボ会長が多忙になり編集部に来れなくなってから約1カ月が流れていた。この1カ月がメタボ会長を良い人に生まれ変らせたと信じたい私であった。久し振りの談笑を続けていると、メタボ会長が私に問いかけてきた。
「明後日の東京シティサイクリングに取材用プレス枠を頼んであるんだろ? 俺もこのバイクで一緒に行っちゃダメか?」
少しお茶目な表情で問いかけて来た。この状況では断れる訳が無い。一抹の不安を覚えながらも
「プレス枠は3人分お願いしてありますから、大丈夫ですよ。バイクの整備とポジション合わせはこちらでやっておきますよ。」 と答えると、満面の笑みで
「オッケー! じゃ、日曜日は会社に5時半集合だな。初の多摩湖脱出決定だ! あとはヨロシク! じゃ、会社に戻るわ。」
言葉が終るか終らないかのうちに車に乗り込みすっ飛んで帰って行った。
そっかぁ、メタボ会長ってホームコースの多摩湖サイクリングロード以外を走ったことが無いんだと、改めて気がつく。道理で嬉しそうな顔をしていた訳である。
その余りにも素早い行動に、まさかと思いながらも、再び一抹の不安が顔をもたげ始める私ではあったが、ここは腹を決め、メタボ会長を含めた3人で、イベント取材に支障をきたさない様に段取りを組みなおす作業に取り掛かるしかない私であった。
ただ、ポケットマネーで幾ら払ってくれたのかだけは怖くて聞けないままではあったが・・・。
来月の請求書の中に、この車両の請求書が混ざって無いことだけを祈りながら作業を続ける私だった。
次回? 東京シティサイクリングの取材に同行です。
メタボ会長が集合時間に遅れなければの話ですけどね。
メタボ会長連載のバックナンバーは こちら です
メタボ会長
身長 : 172cm
体重 : 87kg→79kg
自転車歴 : 5ヶ月目
当サイト運営法人の代表取締役。
高校3年まで野球に明け暮れ、大学時代にオートバイのロードレースに夢中になり、卒業後メーカー系チームに所属し全日本選手権に3年間出場。鳴かず飛ばずで所属チームを解雇された後、平成元年に現法人を設立、平成17年に社長を引退。平成20年よりメディア事業部にて当サイトの運営責任者兼務となるが、その勤務実態や社内での立場は謎に包まれている。ゴルフと暴飲暴食をこよなく愛し、タバコは人生の栄養剤と豪語する根っからの愛煙家。
早速、その日の昼休みに宅急便が届いた。
「荷物が大きいんですが、何処に置きましょうか?」 配達のお兄さんが爽やかな笑顔で問いかけてくる。
あのオッサンは何を頼んだんだかと思いながら、外に出てビックリ!その梱包は明らかに自転車と判る箱だ。しかも2つも。
受取のサインもそこそこに、慌てて梱包を解くと、ピカピカのシクロワイアード号が2台出てきた。状況が把握できない私は、速攻でメタボ会長に電話を入れる。
「会長。シクロワイアード号の新しいのが2台まとめて届きましたが、これは一体どうゆう事なんですか?」
「おぉぉ、やっと来たか!かっこイイか?夕方までには編集部に顔出すから、組立ヨロシクな!じゃ、あとで。」
おぃおぃオッサン! かっこ良いか悪いかじゃなくて、何故これが届いたのかを聞いてんだよ!(怒)
マイペースだけでは済まされない程の傍若無人ぶりは相変わらずである。とにかく編集部でピカピカのシクロワイアード号を組み立てに取り掛かる。コンポは新型アルテグラでホイールはノバテックだ。
ん? 2台ともインラインブレーキが付いてるぞ。って事はメタボ会長専用車か! でもフレームサイズは小さいし?
何が何だか判らないまま2台とも組立完了。
編集部全員がモヤモヤを抱えたまま午後の編集作業に取り組むこととなった。
その疑問に答えるべく、メタボ会長がノコノコと編集部にやって来た。
「おおぉぉ、やっぱかっこイイな!」 開口一番呑気な言葉を垂れ流すメタボ会長を詰問開始だ。
「会長!これは一体どうゆうことなのかキッチリ説明して頂けますか?少なくとも私はこの件に関して一切の報告を受けていないのですが!」 私の強い態度にも全く臆することなく、こちらをニヤッと見ながらメタボ会長が答える。
「君たちがシクロワイアード号に乗らせてくれないから、自分で買っちゃった(笑)。 請求書がメディア事業部あてに届く筈だから、編集部の予算で入金処理しとけよ。」
なぬ? 乗るのはアンタで支払いは編集部って事? そんな理不尽な話が通る訳がないだろ! 赤鬼のごとく険しい形相に化けた私の表情を尻目に、悪ガキのような満面の悪笑みを含みながら
「冗談だよ。俺のポケットマネーで支払いは終わってるから問題なし。前からイベント取材用のバイクが欲しいって言ってなかったっけ? 取材の時に皆で使えるようにサイズも君達に合わせといてやったぞ。」
この一言に編集部全員の表情がパッと輝いた。
しかし何か裏があるに違いないだけに私まで心から喜ぶ訳にはいかない。
そもそも大富豪でもない限りポケットマネーでポッと購入できるシロモノで無いことは一目了然である。
真偽を正すべくメタボ会長に質問を投げる。
「編集部用のバイクなのに、何故、会長お気に入りのインラインブレーキが付いてるんですか?」
犯人を追いつめる警察官のような態度で問い正すと
「前のデファイの時に、インラインブレーキって取材の時には重宝するかもって君たちが言ってたから、頼んで付けてもらったんだけど・・・。邪魔だったか?」 涼しげな表情でサラリとメタボ会長が言ってのけた。
「本当に編集部で使っていいんですね? 支払いも編集部には廻ってこないで間違いないですね?」
疑心暗鬼な私は詰問を止められない。こんな私に懐かしい笑顔でメタボ会長が笑いかける
「大丈夫だよ(笑)。編集部で使っていいし、支払いも完了してるし、たまに俺にも乗らせてくれれば問題なしだよ。なんたって俺は君達と違って高給取りなんだから。」
おぉぉ。この人は案外いい人なのかもしれない!
今まで散々、騙され続けてきた事で、メタボ会長を色メガネで見過ぎていたのかもしれない。目の前のメタボ会長に後光が差しているかのように見えた気がした。私は人一倍、現金な性格なのだ。
編集部員達も、自分たちが乗れると判るや否や、再度丁寧に組み付けの点検を始めたり、メタボ会長にコーヒーを出したりと現金ぶりを如何なく発揮している。
どんな形であれ新車に触れる瞬間は心躍るものである。ましてやそれが、自分たちの為に用意されたモノともなれば尚更のことである。
思い起こせば、メタボ会長が多忙になり編集部に来れなくなってから約1カ月が流れていた。この1カ月がメタボ会長を良い人に生まれ変らせたと信じたい私であった。久し振りの談笑を続けていると、メタボ会長が私に問いかけてきた。
「明後日の東京シティサイクリングに取材用プレス枠を頼んであるんだろ? 俺もこのバイクで一緒に行っちゃダメか?」
少しお茶目な表情で問いかけて来た。この状況では断れる訳が無い。一抹の不安を覚えながらも
「プレス枠は3人分お願いしてありますから、大丈夫ですよ。バイクの整備とポジション合わせはこちらでやっておきますよ。」 と答えると、満面の笑みで
「オッケー! じゃ、日曜日は会社に5時半集合だな。初の多摩湖脱出決定だ! あとはヨロシク! じゃ、会社に戻るわ。」
言葉が終るか終らないかのうちに車に乗り込みすっ飛んで帰って行った。
そっかぁ、メタボ会長ってホームコースの多摩湖サイクリングロード以外を走ったことが無いんだと、改めて気がつく。道理で嬉しそうな顔をしていた訳である。
その余りにも素早い行動に、まさかと思いながらも、再び一抹の不安が顔をもたげ始める私ではあったが、ここは腹を決め、メタボ会長を含めた3人で、イベント取材に支障をきたさない様に段取りを組みなおす作業に取り掛かるしかない私であった。
ただ、ポケットマネーで幾ら払ってくれたのかだけは怖くて聞けないままではあったが・・・。
来月の請求書の中に、この車両の請求書が混ざって無いことだけを祈りながら作業を続ける私だった。
次回? 東京シティサイクリングの取材に同行です。
メタボ会長が集合時間に遅れなければの話ですけどね。
メタボ会長連載のバックナンバーは こちら です
メタボ会長
身長 : 172cm
体重 : 87kg→79kg
自転車歴 : 5ヶ月目
当サイト運営法人の代表取締役。
高校3年まで野球に明け暮れ、大学時代にオートバイのロードレースに夢中になり、卒業後メーカー系チームに所属し全日本選手権に3年間出場。鳴かず飛ばずで所属チームを解雇された後、平成元年に現法人を設立、平成17年に社長を引退。平成20年よりメディア事業部にて当サイトの運営責任者兼務となるが、その勤務実態や社内での立場は謎に包まれている。ゴルフと暴飲暴食をこよなく愛し、タバコは人生の栄養剤と豪語する根っからの愛煙家。