2009/09/01(火) - 12:27
「来週から、空調事業部のデッカイ案件と電設事業部のデッカイのが同時に始まるから、悪いけど暫くは来れないぞ。」
恒例の編集会議が始まり、メタボ会長が口を開いた。
悪いけど? いやいや、編集部にとっては大歓迎である。
「暫くとは言わず、ずーっと来ないでね!」
思わず本音がこぼれそうになるが、世渡り上手な私は、心の中の満面の笑みを、神妙な面持ちに差し替える。
今後のスケジュールの聴き取りや案件進捗の打合せを進めていると、おもむろに
「あの白いフレームは、なぁに?」
メタボ会長が指差した先には、パーツテストのベース用としてエヴァディオさんから無償提供頂いたフレームがあった。
「あぁ、シクロワイアード号ですね。これは、ホイールやコンポなどの新製品をテストする為のものです。」
「トップグレードのパーツテストにはトップグレードのフレームが必要ですから。ハイエンドモデルのヴィーナスにオリジナルペイントまでして提供頂いた一品です。」
私としたことが、悪魔相手に普通に答えてしまった。メタボ会長の目がキラキラと輝きだしたのを見つけた私は、慌てて
「剛性感はトップレベル。上級者のみが操る事を許されたリアルレーサーです。少なくとも会長とは全く無縁のシロモノです!」
キッパリと言い放ったのだが、垂れ込め始めた暗雲は広がる事をやめなかった。
「これって確か、前にインプレやってたよな? どれどれ。」 編集部のモニターでヴィーナスのインプレ記事をじっくりと読み始め
「なるほどな!ビギナーはそのピーキーさの洗礼を受けてしまうって書いてあるぞ。早い話が極上品ってワケだ!」
分かったような言葉を吐くものの、大して理解してないに違いないのだが・・・・。
そのビギナーど真ん中のメタボ会長が、私に悪魔の一言をまき散らす時が来た。
「俺もこれに乗っかっていいかどうか、エヴァディオさんに打診しといてくんない?」
はぁ?アンタ何言ってるの?いいワケないじゃんか!!
レース用パーツテストのベースに無償提供頂いた大切なフレームだよ。ど素人には全く無縁のシロモノだって散々言って聞かせたよね?
お願いだから私の前から消滅しちゃって下さい!
とにかく事を荒げるのだけは避けながら、「アンタにゃ無理だよ!」 と優しく優しく諭し続けた。
一通りの打合せが終わり、帰り際にメタボ会長から
「こんなカッコイイのを俺に見せた君たちが悪い。聞いてみてくれ。頼む!」
いくら会長の頼みでも、こればっかりはシカトさせてもらいます!メタボ会長の帰還と共に平静を取り戻す編集部であった。
数日後、エヴァディオの犬塚社長にお礼を言う機会がきた。メタボ会長の言葉などすっかり忘れていたのだが・・・。
「社長。素敵なフレームを提供頂きまして有難うございました。ここまで高性能なフレームを使わせて頂けて幸せです。オリジナルペイントがまた素敵でウチのメタボが俺も乗りたいなんて言い出すくらい大好評です。」
お世辞抜きの心からの感謝を伝えると、
「それは良かった。自転車業界の活性化に一役を担う編集部さんの役に立てて何よりです。メタボ会長にも是非乗ってもらって下さい。」
えっ?あまりにも予想外の言葉を頂き、呆然とする私。
気を取り直して
「ですが社長、ウチのメタボはまだド素人ですよ。とてもじゃないけど・・・。」
わたしの言葉を遮るように犬塚社長から言葉が続く、
「私達メーカーとしては、乗ってみたいと言われる事が一番の幸せなんですよ。メーカーが乗り手を選ぶ事はあってはいけないんです。自転車に乗りたいと感じて頂けた瞬間から、もう私達の仲間じゃないですか!」
「ただ、技量に準じる安全面での不安は正直否めないので、安全面のフォローだけはしっかり編集部さんにお願いしますよ!安全を確保した上でメタボ会長にも楽しんで頂ければ本望ですよ。」
私は言葉を続けることができなかった。
自転車を本当に理解し、本当に愛している犬塚社長の言葉に唯々感嘆させられる事しかできなかった。
この心意気がエヴァディオというブランド誕生の原点なのだと直感した。
パーツテスト用の車両が買えなくて困っていた編集部にフレームを無償提供頂いたばかりか、自転車愛好家の本当のスタンスまで見せて頂けた私はとても恵まれた場所に居るんだなと実感した。
その後、編集部でテストパーツの組付けを済ませたシクロワイアード号がいよいよシェイクダウンの日を迎える。
フロントフォークに刻まれたシクロワイアードのロゴが輝いて見えた気がした。
編集部員たちが順番にホームコースを1周して戻ってくる。何故だか、皆いつものようにハイテンションではない。
一抹の不安を抱く私に順番がまわって来た。不安とともにスタートを切る。
ジックリと味わう筈が、いつもの30分間が一瞬で流れた。
走り終えた私は簡単に全てを理解した。本当に凄いモノに接した時、人は喜びを通り越して、無口になるのだ。
リアルレーサーとはまさにコレである。一切の妥協無く、ただ1秒でも速くゴールラインを通り抜けるためだけに生み出されたバイク。このバイクに跨れる自分がとても幸せに感じる。 やっぱり、自転車っていいもんである!
犬塚社長には申し訳ないが、メタボ会長だけは跨がらせるわけにいかない!!
と強く強く決心を固める私だった。
次回? メタボ会長の仕事次第ですかね?
まぁ、当分の間は顔出せないそうですけどね。(喜)
メタボ会長連載のバックナンバーは こちら です
メタボ会長
身長 : 172cm
体重 : 87kg→79kg
自転車歴 : 4ヶ月目
当サイト運営法人の代表取締役。
高校3年まで野球に明け暮れ、大学時代にオートバイのロードレースに夢中になり、卒業後メーカー系チームに所属し全日本選手権に3年間出場。鳴かず飛ばずで所属チームを解雇された後、平成元年に現法人を設立、平成17年に社長を引退。平成20年よりメディア事業部にて当サイトの運営責任者兼務となるが、その勤務実態や社内での立場は謎に包まれている。ゴルフと暴飲暴食をこよなく愛し、タバコは人生の栄養剤と豪語する根っからの愛煙家。
恒例の編集会議が始まり、メタボ会長が口を開いた。
悪いけど? いやいや、編集部にとっては大歓迎である。
「暫くとは言わず、ずーっと来ないでね!」
思わず本音がこぼれそうになるが、世渡り上手な私は、心の中の満面の笑みを、神妙な面持ちに差し替える。
今後のスケジュールの聴き取りや案件進捗の打合せを進めていると、おもむろに
「あの白いフレームは、なぁに?」
メタボ会長が指差した先には、パーツテストのベース用としてエヴァディオさんから無償提供頂いたフレームがあった。
「あぁ、シクロワイアード号ですね。これは、ホイールやコンポなどの新製品をテストする為のものです。」
「トップグレードのパーツテストにはトップグレードのフレームが必要ですから。ハイエンドモデルのヴィーナスにオリジナルペイントまでして提供頂いた一品です。」
私としたことが、悪魔相手に普通に答えてしまった。メタボ会長の目がキラキラと輝きだしたのを見つけた私は、慌てて
「剛性感はトップレベル。上級者のみが操る事を許されたリアルレーサーです。少なくとも会長とは全く無縁のシロモノです!」
キッパリと言い放ったのだが、垂れ込め始めた暗雲は広がる事をやめなかった。
「これって確か、前にインプレやってたよな? どれどれ。」 編集部のモニターでヴィーナスのインプレ記事をじっくりと読み始め
「なるほどな!ビギナーはそのピーキーさの洗礼を受けてしまうって書いてあるぞ。早い話が極上品ってワケだ!」
分かったような言葉を吐くものの、大して理解してないに違いないのだが・・・・。
そのビギナーど真ん中のメタボ会長が、私に悪魔の一言をまき散らす時が来た。
「俺もこれに乗っかっていいかどうか、エヴァディオさんに打診しといてくんない?」
はぁ?アンタ何言ってるの?いいワケないじゃんか!!
レース用パーツテストのベースに無償提供頂いた大切なフレームだよ。ど素人には全く無縁のシロモノだって散々言って聞かせたよね?
お願いだから私の前から消滅しちゃって下さい!
とにかく事を荒げるのだけは避けながら、「アンタにゃ無理だよ!」 と優しく優しく諭し続けた。
一通りの打合せが終わり、帰り際にメタボ会長から
「こんなカッコイイのを俺に見せた君たちが悪い。聞いてみてくれ。頼む!」
いくら会長の頼みでも、こればっかりはシカトさせてもらいます!メタボ会長の帰還と共に平静を取り戻す編集部であった。
数日後、エヴァディオの犬塚社長にお礼を言う機会がきた。メタボ会長の言葉などすっかり忘れていたのだが・・・。
「社長。素敵なフレームを提供頂きまして有難うございました。ここまで高性能なフレームを使わせて頂けて幸せです。オリジナルペイントがまた素敵でウチのメタボが俺も乗りたいなんて言い出すくらい大好評です。」
お世辞抜きの心からの感謝を伝えると、
「それは良かった。自転車業界の活性化に一役を担う編集部さんの役に立てて何よりです。メタボ会長にも是非乗ってもらって下さい。」
えっ?あまりにも予想外の言葉を頂き、呆然とする私。
気を取り直して
「ですが社長、ウチのメタボはまだド素人ですよ。とてもじゃないけど・・・。」
わたしの言葉を遮るように犬塚社長から言葉が続く、
「私達メーカーとしては、乗ってみたいと言われる事が一番の幸せなんですよ。メーカーが乗り手を選ぶ事はあってはいけないんです。自転車に乗りたいと感じて頂けた瞬間から、もう私達の仲間じゃないですか!」
「ただ、技量に準じる安全面での不安は正直否めないので、安全面のフォローだけはしっかり編集部さんにお願いしますよ!安全を確保した上でメタボ会長にも楽しんで頂ければ本望ですよ。」
私は言葉を続けることができなかった。
自転車を本当に理解し、本当に愛している犬塚社長の言葉に唯々感嘆させられる事しかできなかった。
この心意気がエヴァディオというブランド誕生の原点なのだと直感した。
パーツテスト用の車両が買えなくて困っていた編集部にフレームを無償提供頂いたばかりか、自転車愛好家の本当のスタンスまで見せて頂けた私はとても恵まれた場所に居るんだなと実感した。
その後、編集部でテストパーツの組付けを済ませたシクロワイアード号がいよいよシェイクダウンの日を迎える。
フロントフォークに刻まれたシクロワイアードのロゴが輝いて見えた気がした。
編集部員たちが順番にホームコースを1周して戻ってくる。何故だか、皆いつものようにハイテンションではない。
一抹の不安を抱く私に順番がまわって来た。不安とともにスタートを切る。
ジックリと味わう筈が、いつもの30分間が一瞬で流れた。
走り終えた私は簡単に全てを理解した。本当に凄いモノに接した時、人は喜びを通り越して、無口になるのだ。
リアルレーサーとはまさにコレである。一切の妥協無く、ただ1秒でも速くゴールラインを通り抜けるためだけに生み出されたバイク。このバイクに跨れる自分がとても幸せに感じる。 やっぱり、自転車っていいもんである!
犬塚社長には申し訳ないが、メタボ会長だけは跨がらせるわけにいかない!!
と強く強く決心を固める私だった。
次回? メタボ会長の仕事次第ですかね?
まぁ、当分の間は顔出せないそうですけどね。(喜)
メタボ会長連載のバックナンバーは こちら です
メタボ会長
身長 : 172cm
体重 : 87kg→79kg
自転車歴 : 4ヶ月目
当サイト運営法人の代表取締役。
高校3年まで野球に明け暮れ、大学時代にオートバイのロードレースに夢中になり、卒業後メーカー系チームに所属し全日本選手権に3年間出場。鳴かず飛ばずで所属チームを解雇された後、平成元年に現法人を設立、平成17年に社長を引退。平成20年よりメディア事業部にて当サイトの運営責任者兼務となるが、その勤務実態や社内での立場は謎に包まれている。ゴルフと暴飲暴食をこよなく愛し、タバコは人生の栄養剤と豪語する根っからの愛煙家。