2013/05/19(日) - 08:12
他ブランドとは一味違うセンスで人気のあるサイクルアパレルブランド、bici(ビチ)。アパレル関係から転じてオフィス家具の輸入代理店を立ち上げた中里新三郎氏が代表を務めるブランドだ。ブランドの経緯やコンセプト、そしてこれからを聞いた。
センス良く、着心地良く、楽しいをモットーにオリジナルサイクルウェアや、オーダージャージを作るbici。「自転車のある、余裕を持ったライフスタイルを楽しむ大人」がターゲットのひと味違うデザインは、ブランド設立3年目ながら、都会派のサイクリストに広く知れ渡った。
ちょっと可愛い、洒落の効いたセンス溢れるbiciのウェアは、どこでもキラリと光る存在だ。着ているのは皆感度の高いサイクリストたち。洋モノにみえて、実は日本製。いったいどんな人がデザインしているのだろうと気になってbiciを訪ねてみた。
東京・青山の地下鉄表参道駅から出てすぐにBISLEY COMBOがある。ここはスチール家具のBISLEYのショールームであり、その一角にbiciのショースペースがある。そしてオーダーの際の相談窓口になる。中里さん、岡さんが対応してくれた。
biciの代表を務めるのは、中里新三郎(なかざと・しんざぶろう)氏。アパレル業界で20年以上の経験を積み、現在はSOHO向けスチール家具で高い人気を誇る「BISLEY(ビスレー)」の国内輸入代理店を経営。その傍ら、自らの趣味であるスポーツサイクリング用のウェアブランドとしてbiciを立ち上げたという経緯を持つ。そのきっかけは、既存のサイクルウェア製品の仕上がりに不満を持ったことに始まるという。
―もともとは自転車を趣味として楽しんでいたのですが、どうしても既存のウェアのプリント品質に満足出来なかった。私も含め私の周りにはアパレルやデザイン関係の仕事に就く仲間が多く、その仲間たちと一緒に、試験的にモノを作ってみたんです。そうしたら、やったが最後、ミイラ取りがミイラになっちゃった(笑)。そうしてbiciは立ち上がりました。
biciの自慢は、写真の印刷にも対応する高い昇華プリントの技術。昇華プリントが登場してからまだ10年ちょっとですが、実は凄く奥が深い。写真の現像と似ているんですよ。季節による温度変化やインクの特性、プリントするポリエステル生地、印刷機の特性など、様々な要因によって仕上がりが変わってしまいます。
まだ歴史が浅いこともあって職人さんも少なく、ブランド立ち上げの際は、満足のいく製品を作れる工場を探すのにずいぶん苦労しましたね。
biciではジャージにコンプレッション機能を求めたり、過度なタイトフィットにはしていません。他のブランドさんは皆非常に技術レベルの高いジャージを作っていますが、縫い目が多いほどアタリは増えるし、レーシーな立体成型にするほど着る人を選んでしまうんです。
だからそういうことより、着心地が良くて、プリントの乗りが良いとか、そっちの方が良いんじゃないかな、と。biciのカッティングはごく普通。ポロシャツとかボタンダウンのような、常に変わらない「スタンダード」なこだわりを持ってやっています。常に仲間といろいろ考えて、あーでもないこーでもないと繰り返します。それがbiciのスタイルです。
オリジナルデザインのジャージは、全て私がデザインしています。新しい春夏モデルは、僕の憧れだったオートバイレーサーのレーシングスーツや、炭酸飲料の缶のデザインからイメージしたり。モンドリアン柄ジャージのデザインは、今年のパリコレから。イヴ・サン=ローランやプラダなんかも使う今年のファッションテーマなんですよ。パリコレに反応するジャージ屋さんなんて、国内では他に無いと思いますよ(笑)。
ほとんど全てのデザインは、ふと思いついたり、これいいなぁって思ったもの。ネタ探しに街をプラプラ歩いてて、ピンと来るんですよね。どうして思いつくかは私にもわかりません(笑)。アパレル業界にいたこともあって、常に流行りが気になっちゃうんです。ずっと昔にやんちゃしてた時から変わらず、相変わらずミーハーなんですよね。紀伊国屋や東急ハンズなんか、2ヶ月行かないと気持ち悪くなって。シティーボーイですから(笑)。
でもデザインに関して言うと、ファッション業界のように、アバンギャルドに無作為に想像するのは好きじゃないんです。根拠が無いというか、男の子ゴコロをくすぐるようなものが良いですよね。
私は仕事で20年ほどイタリアを回っていましたが、コモ湖の辺りでは多くのサイクリストを見ました。みんなカッコ良くキマってるんですが、ジャージをよく見れば仲間のお店のロゴをそれっぽく貼った程度で、あまり大したことはない。でもカッコ良く見えたのは多分、皆が楽しそうに乗っているからだと気づいたんです。
そんなふうに、着ている人が笑顔になれるジャージを作ること、2着目も、3着目も欲しくなるような、とにかく自分が着たいものを作ることがbiciの目標です。biciのジャージやアイテムは、余裕を持ってライフスイルを楽しむサイクリストに向けたもの。家庭があって、仕事があって、月に2~3回乗るぐらいの「大人」に着て頂きたいですね。
自転車の世界って、他の業界では考えられないほど次から次へと新製品が出てきて、それがいちいちカッコ良い。特殊な価値観があって、男の子ゴコロに響くものがあって。自己満足の世界ですよね。ぶっちゃけジャージなんかその筆頭です。"健全なコスプレ"です。例えば信号待ちしてる時、向かい側の奥様に「ホラ見てカッコ良いでしょ」なんてやりたいですよね(笑)
男の人ってご褒美が必要で、常に何か買いたいんですよ(笑)。カメラとか腕時計はいい例で、買っても使わずにしまっておくだけでしょう。で、その「買いたいもの」の中に、最近は自転車が入ってきた。いい大人だったら100万ぐらい頑張れば出せます。そんな人に、biciを知ってもらえればな、と。
まだ計画段階ですらないのですが、いずれはビチのショールーム兼ショップを作りたいなと考えているんです。「大人の秘密基地」みたいな雰囲気の、単にジャージやパーツだけでなく、いろんな楽しいものを並べているお店ですね。現状のお店でも試着や購入はできますが、もっと遊びに振ったショップがあったら、楽しいだろうな、と思うんです。
とにかく大人が楽しく思える製品やデザインを、肩肘張らずに。自分が着たいなと思えるジャージを作っていくスタンスは、この先もずっと変わらないと思いますし、変えたくないですね。それが私のこだわりです。
interview:CW編集部
センス良く、着心地良く、楽しいをモットーにオリジナルサイクルウェアや、オーダージャージを作るbici。「自転車のある、余裕を持ったライフスタイルを楽しむ大人」がターゲットのひと味違うデザインは、ブランド設立3年目ながら、都会派のサイクリストに広く知れ渡った。
ちょっと可愛い、洒落の効いたセンス溢れるbiciのウェアは、どこでもキラリと光る存在だ。着ているのは皆感度の高いサイクリストたち。洋モノにみえて、実は日本製。いったいどんな人がデザインしているのだろうと気になってbiciを訪ねてみた。
東京・青山の地下鉄表参道駅から出てすぐにBISLEY COMBOがある。ここはスチール家具のBISLEYのショールームであり、その一角にbiciのショースペースがある。そしてオーダーの際の相談窓口になる。中里さん、岡さんが対応してくれた。
biciの代表を務めるのは、中里新三郎(なかざと・しんざぶろう)氏。アパレル業界で20年以上の経験を積み、現在はSOHO向けスチール家具で高い人気を誇る「BISLEY(ビスレー)」の国内輸入代理店を経営。その傍ら、自らの趣味であるスポーツサイクリング用のウェアブランドとしてbiciを立ち上げたという経緯を持つ。そのきっかけは、既存のサイクルウェア製品の仕上がりに不満を持ったことに始まるという。
―もともとは自転車を趣味として楽しんでいたのですが、どうしても既存のウェアのプリント品質に満足出来なかった。私も含め私の周りにはアパレルやデザイン関係の仕事に就く仲間が多く、その仲間たちと一緒に、試験的にモノを作ってみたんです。そうしたら、やったが最後、ミイラ取りがミイラになっちゃった(笑)。そうしてbiciは立ち上がりました。
biciの自慢は、写真の印刷にも対応する高い昇華プリントの技術。昇華プリントが登場してからまだ10年ちょっとですが、実は凄く奥が深い。写真の現像と似ているんですよ。季節による温度変化やインクの特性、プリントするポリエステル生地、印刷機の特性など、様々な要因によって仕上がりが変わってしまいます。
まだ歴史が浅いこともあって職人さんも少なく、ブランド立ち上げの際は、満足のいく製品を作れる工場を探すのにずいぶん苦労しましたね。
biciではジャージにコンプレッション機能を求めたり、過度なタイトフィットにはしていません。他のブランドさんは皆非常に技術レベルの高いジャージを作っていますが、縫い目が多いほどアタリは増えるし、レーシーな立体成型にするほど着る人を選んでしまうんです。
だからそういうことより、着心地が良くて、プリントの乗りが良いとか、そっちの方が良いんじゃないかな、と。biciのカッティングはごく普通。ポロシャツとかボタンダウンのような、常に変わらない「スタンダード」なこだわりを持ってやっています。常に仲間といろいろ考えて、あーでもないこーでもないと繰り返します。それがbiciのスタイルです。
オリジナルデザインのジャージは、全て私がデザインしています。新しい春夏モデルは、僕の憧れだったオートバイレーサーのレーシングスーツや、炭酸飲料の缶のデザインからイメージしたり。モンドリアン柄ジャージのデザインは、今年のパリコレから。イヴ・サン=ローランやプラダなんかも使う今年のファッションテーマなんですよ。パリコレに反応するジャージ屋さんなんて、国内では他に無いと思いますよ(笑)。
ほとんど全てのデザインは、ふと思いついたり、これいいなぁって思ったもの。ネタ探しに街をプラプラ歩いてて、ピンと来るんですよね。どうして思いつくかは私にもわかりません(笑)。アパレル業界にいたこともあって、常に流行りが気になっちゃうんです。ずっと昔にやんちゃしてた時から変わらず、相変わらずミーハーなんですよね。紀伊国屋や東急ハンズなんか、2ヶ月行かないと気持ち悪くなって。シティーボーイですから(笑)。
でもデザインに関して言うと、ファッション業界のように、アバンギャルドに無作為に想像するのは好きじゃないんです。根拠が無いというか、男の子ゴコロをくすぐるようなものが良いですよね。
私は仕事で20年ほどイタリアを回っていましたが、コモ湖の辺りでは多くのサイクリストを見ました。みんなカッコ良くキマってるんですが、ジャージをよく見れば仲間のお店のロゴをそれっぽく貼った程度で、あまり大したことはない。でもカッコ良く見えたのは多分、皆が楽しそうに乗っているからだと気づいたんです。
そんなふうに、着ている人が笑顔になれるジャージを作ること、2着目も、3着目も欲しくなるような、とにかく自分が着たいものを作ることがbiciの目標です。biciのジャージやアイテムは、余裕を持ってライフスイルを楽しむサイクリストに向けたもの。家庭があって、仕事があって、月に2~3回乗るぐらいの「大人」に着て頂きたいですね。
自転車の世界って、他の業界では考えられないほど次から次へと新製品が出てきて、それがいちいちカッコ良い。特殊な価値観があって、男の子ゴコロに響くものがあって。自己満足の世界ですよね。ぶっちゃけジャージなんかその筆頭です。"健全なコスプレ"です。例えば信号待ちしてる時、向かい側の奥様に「ホラ見てカッコ良いでしょ」なんてやりたいですよね(笑)
男の人ってご褒美が必要で、常に何か買いたいんですよ(笑)。カメラとか腕時計はいい例で、買っても使わずにしまっておくだけでしょう。で、その「買いたいもの」の中に、最近は自転車が入ってきた。いい大人だったら100万ぐらい頑張れば出せます。そんな人に、biciを知ってもらえればな、と。
まだ計画段階ですらないのですが、いずれはビチのショールーム兼ショップを作りたいなと考えているんです。「大人の秘密基地」みたいな雰囲気の、単にジャージやパーツだけでなく、いろんな楽しいものを並べているお店ですね。現状のお店でも試着や購入はできますが、もっと遊びに振ったショップがあったら、楽しいだろうな、と思うんです。
とにかく大人が楽しく思える製品やデザインを、肩肘張らずに。自分が着たいなと思えるジャージを作っていくスタンスは、この先もずっと変わらないと思いますし、変えたくないですね。それが私のこだわりです。
interview:CW編集部
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