2012年12月23日、UCIシクロクロスワールドカップ第5戦がベルギー・ナミュールで開催。泥に覆われた起伏に富んだコースでケヴィン・パウエルス(ベルギー、サンウェブ・レヴォル)が優勝した。ヨーロッパ遠征をスタートさせた豊岡英子(パナソニックレディース)は29位で初戦を終えている。

パウエルスがネイスとアルベルトを振り切る

テクニカルなキャンバーを下るフランシス・ムレー(フランス、FDJ・ビッグマット)テクニカルなキャンバーを下るフランシス・ムレー(フランス、FDJ・ビッグマット) photo:Riccardo Scanferlaベルギー・ワロン地方、ナミュールの街を見下ろす丘の上にシタデル(城塞)がある。UCIワールドカップの会場は、そのシタデルを中心に、丘の斜面をダイナミックに使用したもの。

当然コースは起伏に富んでおり、担ぎが入る激坂や、バランスが要求されるキャンバーの下りなど様々。ただでさえ難易度の高いコースだが、丘を覆う泥がコースの難しさに拍車をかける。

2番手を走りながらも、最終周回でパンクに見舞われたニールス・アルベルト(ベルギー、BKCPパワープラス)2番手を走りながらも、最終周回でパンクに見舞われたニールス・アルベルト(ベルギー、BKCPパワープラス) photo:Riccardo Scanferlaエリート男子レースのスタートから飛び出したのは、フランシス・ムレー(フランス、FDJ・ビッグマット)、ジェレミー・パワーズ(アメリカ、ラファ・フォーカス)、ラルス・ファンデルハール(オランダ、ラボバンク・ジャイアント)、そしてパウエルス。

やがて先頭ではパウエルスとムレーの先行が始まり、ムレーのパンクに伴いパウエルスの独走がスタート。追走者を寄せ付けない走りで、パウエルスがリードを広げて行く。

先頭を快走するケヴィン・パウエルス(ベルギー、サンウェブ・レヴォル)先頭を快走するケヴィン・パウエルス(ベルギー、サンウェブ・レヴォル) photo:Riccardo Scanferla後方ではニールス・アルベルト(ベルギー、BKCPパワープラス)とスヴェン・ネイス(ベルギー、ランドバウクレジット)がそれぞれ単独で追走。最終周回突入の時点で、先頭パウエルスから49秒遅れでアルベルト、1分08秒遅れでネイスという展開に。

すると最終周回の中盤にアルベルトがパンク。隙を突いてネイスが2番手に上がり、パウエルス、ネイス、アルベルトの順でゴールした。

今シーズンのUCIワールドカップ2勝目を飾ったパウエルスは「テクニカルなコースは得意じゃないけど、今日のとてもテクニカルなコースは自分向きだった。2周目で先頭に立ってから、自分のペースで走り続けた。後ろを振り返ると誰もいなかったので、自分のペースで走ることは非常に快適だったよ」とコメント。

UCIワールドカップランキングで、首位アルベルトから11ポイント差の3位に浮上したパウエルス。「次の3戦(ゾルダー、ローマ、ホーヘルハイデ)は自分向き。だから良い方向に転ぶといいね」と語る。現在28歳のパウエルスは、昨シーズンのゾルダーとホーヘルハイデで勝利を収めており、2年連続UCIワールドカップリーダーの座が見えてきた(コメントはベルギーのSporzaより)。

優勝を飾ったケヴィン・パウエルス(ベルギー、サンウェブ・レヴォル)優勝を飾ったケヴィン・パウエルス(ベルギー、サンウェブ・レヴォル) photo:Riccardo Scanferla

コンプトンが4勝目 豊岡英子は29位

ヨーロッパ遠征をスタートさせた豊岡英子(パナソニックレディース)ヨーロッパ遠征をスタートさせた豊岡英子(パナソニックレディース) photo:Sonoko Tanaka同日行なわれたエリート女子レースには豊岡英子が出場。今シーズンのUCIワールドカップ4勝目を飾ったケイティ・コンプトン(アメリカ、トレックシクロクロスコレクティブ)から6分54秒遅れの29位で豊岡はヨーロッパ初戦を終えた。

泥に覆われた難コースを走る豊岡英子(パナソニックレディース)泥に覆われた難コースを走る豊岡英子(パナソニックレディース) photo:Sonoko Tanakaしんどすぎて1周目でやめたかったけど、2周目からは呼吸も楽になって落ち着いて走れた気がします。思っていたよりも、自分にはテクニックがありました!テクニカルな下りも昨日の試走のときはけっこうコケてたけど、今日は昨日より泥のコンディションが悪かったのに、一度もコケずにすみました。女の子たちの大ランニング大会って感じのレースでした。

(ケガをしていた)脚は、全日本選手権から2週間休んだし、もうほぼ大丈夫。いままでヨーロッパで経験してきたなかで、いまだかつてないくらいの難しいレースを走ったので、もう怖いものはないっていう感じです。

1月1日まで2、3日に1回というペースで5レースをこなして、そのあとちょっと休んで、オランダのワールドカップ、アメリカでの世界選手権を走る予定です。ヨーロッパは気温が高く、毎日が雨なので、どれも泥のひどいレースになると思うんですが、それも楽しみながら、2月の世界選手権を目標に頑張っていきたいです。

泥に覆われた難コースを走る豊岡英子(パナソニックレディース)泥に覆われた難コースを走る豊岡英子(パナソニックレディース) photo:Sonoko Tanaka29位でレースを終えた豊岡英子(パナソニックレディース)29位でレースを終えた豊岡英子(パナソニックレディース) photo:Sonoko Tanaka


UCIシクロクロスワールドカップ2012-2013第5戦結果
エリート男子
1位 ケヴィン・パウエルス(ベルギー、サンウェブ・レヴォル)     1h02'47"
2位 スヴェン・ネイス(ベルギー、ランドバウクレジット)         +48"
3位 ニールス・アルベルト(ベルギー、BKCPパワープラス)        +1'00"
4位 フランシス・ムレー(フランス、FDJ・ビッグマット)         +1'21"
5位 クラース・ヴァントルノウト(ベルギー、サンウェブ・レヴォル)    +1'45"
6位 バルト・アールノウト(ベルギー、AAドリンクシクロクロス)      +2'20"
7位 タイス・ファンアメロンヘン(オランダ、AAドリンクシクロクロス)   +2'37"
8位 ラルス・ファンデルハール(オランダ、ラボバンク・ジャイアント)   +2'50"
9位 トム・メーウセン(ベルギー、テレネット・フィデア)         +3'16"
10位 ニールス・ウッベン(オランダ、ラボバンク・ジャイアント)      +3'23"

エリート女子
1位 ケイティ・コンプトン(アメリカ、トレックシクロクロスコレクティブ)  38'09"
2位 カテリーナ・ナッシュ(チェコ、ルナプロチーム)             +28"
3位 マリアンヌ・フォス(オランダ、ラボバンク)               +50"
29位 豊岡英子(日本、パナソニックレディース)               +6'54"

text:Kei Tsuji
interview:Sonoko Tanaka
photo:Riccardo Scanferla, Sonoko Tanaka