2012/09/23(日) - 05:59
スタート直後に木下智裕(エカーズ)がメイン集団から飛び出す。積極的にレースを作る姿勢を見せたが、結果には結びつかなかった。52名による集団スプリントを制したアレクセイ・ルトセンコ(カザフスタン)が、U23のビッグタイトルを手にしている。
9月22日、オランダ・リンブルフ州で行なわれたロード世界選手権U23ロードレース。16.1km周回コースを11周する177.1kmのレースに44カ国・157名の次世代レーサーたちが出場した。
日本から4名が出場したこの大会。朝9時にスタートが切られるとすぐ、「アップの意味も込めて飛び出した」という木下智裕が、ジェスパー・ダールストロム(スウェーデン)とマイケル・フライバーグ(オーストラリア)とともにエスケープを開始した。
木下は「最初から3人で逃げ切るつもりはなくて、(メイン集団から飛び出す選手に)追いつかれることを考えながら先頭を走っていました。先頭がゆっくり走れば集団もペースを落とすことも分かっていた。後ろから選手が追いついたらどうせペースが速くなるので、今はゆっくり行こうと声をかけながら逃げていました」と振り返る。
木下ら3名は最大8分リードを稼ぎ出したが、レース中盤を過ぎるとメイン集団の前方が活性化する。集団前方でカウンターアタックが繰り返されたことで、逃げと集団のタイム差は急速に縮まっていく。ゴールまで4周半を残して、メイン集団から飛び出した8名の追走グループが先頭3名に追いついた。
「後ろから選手が追いついて、先頭は11人ぐらいになった。そのまま先頭でガンガン行こうと思いましたが、逃げに選手を乗せていなかったカザフスタンのコントロールによって、吸収されてしまった」と、逃げグループをリードした木下は話す。結局、木下の逃げはゴールまで4周回を残して吸収。レースはフリダシに戻された。
断続的なアタック合戦によって集団のペースは上がり、寺崎武郎と椿大志、そして木下は脱落する。タイムトライアルU23世界チャンピオンに輝いたアントン・ヴォロビエフ(ロシア)やアンドレア・フェーディ(イタリア)ら5名が一時的に先頭グループを形成したが、カザフスタン勢が率いるメイン集団に最終周回で吸収。勝負はゴール手前のカウベルグの登りに委ねられた。
10%ほどの勾配が続くカウベルグで、ゲオルグ・プライドラー(オーストリア)やジェイ・マッカーシー(オーストラリア)らがアタック。しかし決定的なリードを奪えないまま頂上を迎えてしまう。
頂上通過後の平坦区間で集団はまとまり、50人を越える大きな塊のまま最終ストレートに突入した。
向かい風が吹く中でのゴールスプリント。人数を揃えたベルギーがトム・ヴァンアスブロック(ベルギー)を解き放ったが、バリケードぎりぎりを突き進んだカザフスタンジャージのルトセンコが先頭を奪う。
ロンドン五輪オムニアムで銀メダルを獲得しているブリアン・コカール(フランス)の追い上げも届かず、ルトセンコが先着した。
優勝したルトセンコはこの日のレースについて「カザフスタンチームの作戦は、レースをコントロールして、タイミングを待つことだった。特に最終周回でのチームメイトたちの走りは素晴らしく、集団を一つにまとめて、僕のポジションを守ってくれた。最後のカウベルグでは少し番手を下げてしまったけど何とか集団前方に復帰。そこからはまるで『人間の限界』への挑戦。出来るだけ速くゴールを駆け抜けた」と記者会見で語る。
アスタナのコンチネンタルチームに所属する20歳は、2013年、UCIプロチームであるアスタナへの昇格が決まっている。「ツール・ド・ラヴニールでのステージ優勝しているし、イタリアでも勝っている。その結果が認められて、先月アスタナと契約を結んだんだ。だから来シーズンはエリートレースを走る。努力すれば、良い結果が出ると思う」。
日本人選手の中で唯一メイン集団内で最終周回を迎えた平井栄一(ブリヂストンアンカーU23)は、最後のカウベルグでペースが上がった集団から脱落。25秒遅れの第2集団のゴールスプリントに加わり、3番手でゴールした(57位)。
「脚はきつかったものの、最後のカウベルグまで問題なく集団内で走っていました。登りに入ってアウターを踏んでいたんですが、脚がつってしまってインナーに落とすしかなかった。そこで失速して先頭集団から遅れてしまった。アウターを踏めていれば、先頭集団に残れていたと思います。もう少し自分に力があれば残れたと思うと悔しい。また練習します」と平井は語る。
この日の完走者は116名。寺崎と木下はゴールにたどり着いたもののオーバータイム扱い。椿は最終周回に入れず、DNFに終わった。
ロード世界選手権2012U23男子ロードレース結果
1位 アレクセイ・ルトセンコ(カザフスタン) 4h20'15"
2位 ブリアン・コカール(フランス)
3位 トム・ヴァンアスブロック(ベルギー)
4位 ヒューゴ・ホウル(カナダ)
5位 ルカ・ピベルニク(スロベニア)
6位 ホアンエステバン・チャベルルビオ(コロンビア)
7位 エルナンド・ボオルケスサンチェス(コロンビア)
8位 ケニース・ヴァンビルセン(ベルギー)
9位 ワウテル・ヴィペルト(オランダ)
10位 サム・ベネット(アイルランド)
57位 平井栄一(ブリヂストンアンカーU23) +25"
HD 木下智裕(エカーズ)
HD 寺崎武郎(ブリヂストンアンカーU23)
DNF 椿大志(ブリヂストンアンカーU23)
text&photo:Kei Tsuji in Limburg, Netherlands
9月22日、オランダ・リンブルフ州で行なわれたロード世界選手権U23ロードレース。16.1km周回コースを11周する177.1kmのレースに44カ国・157名の次世代レーサーたちが出場した。
日本から4名が出場したこの大会。朝9時にスタートが切られるとすぐ、「アップの意味も込めて飛び出した」という木下智裕が、ジェスパー・ダールストロム(スウェーデン)とマイケル・フライバーグ(オーストラリア)とともにエスケープを開始した。
木下は「最初から3人で逃げ切るつもりはなくて、(メイン集団から飛び出す選手に)追いつかれることを考えながら先頭を走っていました。先頭がゆっくり走れば集団もペースを落とすことも分かっていた。後ろから選手が追いついたらどうせペースが速くなるので、今はゆっくり行こうと声をかけながら逃げていました」と振り返る。
木下ら3名は最大8分リードを稼ぎ出したが、レース中盤を過ぎるとメイン集団の前方が活性化する。集団前方でカウンターアタックが繰り返されたことで、逃げと集団のタイム差は急速に縮まっていく。ゴールまで4周半を残して、メイン集団から飛び出した8名の追走グループが先頭3名に追いついた。
「後ろから選手が追いついて、先頭は11人ぐらいになった。そのまま先頭でガンガン行こうと思いましたが、逃げに選手を乗せていなかったカザフスタンのコントロールによって、吸収されてしまった」と、逃げグループをリードした木下は話す。結局、木下の逃げはゴールまで4周回を残して吸収。レースはフリダシに戻された。
断続的なアタック合戦によって集団のペースは上がり、寺崎武郎と椿大志、そして木下は脱落する。タイムトライアルU23世界チャンピオンに輝いたアントン・ヴォロビエフ(ロシア)やアンドレア・フェーディ(イタリア)ら5名が一時的に先頭グループを形成したが、カザフスタン勢が率いるメイン集団に最終周回で吸収。勝負はゴール手前のカウベルグの登りに委ねられた。
10%ほどの勾配が続くカウベルグで、ゲオルグ・プライドラー(オーストリア)やジェイ・マッカーシー(オーストラリア)らがアタック。しかし決定的なリードを奪えないまま頂上を迎えてしまう。
頂上通過後の平坦区間で集団はまとまり、50人を越える大きな塊のまま最終ストレートに突入した。
向かい風が吹く中でのゴールスプリント。人数を揃えたベルギーがトム・ヴァンアスブロック(ベルギー)を解き放ったが、バリケードぎりぎりを突き進んだカザフスタンジャージのルトセンコが先頭を奪う。
ロンドン五輪オムニアムで銀メダルを獲得しているブリアン・コカール(フランス)の追い上げも届かず、ルトセンコが先着した。
優勝したルトセンコはこの日のレースについて「カザフスタンチームの作戦は、レースをコントロールして、タイミングを待つことだった。特に最終周回でのチームメイトたちの走りは素晴らしく、集団を一つにまとめて、僕のポジションを守ってくれた。最後のカウベルグでは少し番手を下げてしまったけど何とか集団前方に復帰。そこからはまるで『人間の限界』への挑戦。出来るだけ速くゴールを駆け抜けた」と記者会見で語る。
アスタナのコンチネンタルチームに所属する20歳は、2013年、UCIプロチームであるアスタナへの昇格が決まっている。「ツール・ド・ラヴニールでのステージ優勝しているし、イタリアでも勝っている。その結果が認められて、先月アスタナと契約を結んだんだ。だから来シーズンはエリートレースを走る。努力すれば、良い結果が出ると思う」。
日本人選手の中で唯一メイン集団内で最終周回を迎えた平井栄一(ブリヂストンアンカーU23)は、最後のカウベルグでペースが上がった集団から脱落。25秒遅れの第2集団のゴールスプリントに加わり、3番手でゴールした(57位)。
「脚はきつかったものの、最後のカウベルグまで問題なく集団内で走っていました。登りに入ってアウターを踏んでいたんですが、脚がつってしまってインナーに落とすしかなかった。そこで失速して先頭集団から遅れてしまった。アウターを踏めていれば、先頭集団に残れていたと思います。もう少し自分に力があれば残れたと思うと悔しい。また練習します」と平井は語る。
この日の完走者は116名。寺崎と木下はゴールにたどり着いたもののオーバータイム扱い。椿は最終周回に入れず、DNFに終わった。
ロード世界選手権2012U23男子ロードレース結果
1位 アレクセイ・ルトセンコ(カザフスタン) 4h20'15"
2位 ブリアン・コカール(フランス)
3位 トム・ヴァンアスブロック(ベルギー)
4位 ヒューゴ・ホウル(カナダ)
5位 ルカ・ピベルニク(スロベニア)
6位 ホアンエステバン・チャベルルビオ(コロンビア)
7位 エルナンド・ボオルケスサンチェス(コロンビア)
8位 ケニース・ヴァンビルセン(ベルギー)
9位 ワウテル・ヴィペルト(オランダ)
10位 サム・ベネット(アイルランド)
57位 平井栄一(ブリヂストンアンカーU23) +25"
HD 木下智裕(エカーズ)
HD 寺崎武郎(ブリヂストンアンカーU23)
DNF 椿大志(ブリヂストンアンカーU23)
text&photo:Kei Tsuji in Limburg, Netherlands
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