8月31日~9月9日にかけてオーストリア・レオガング/サーフェルデンで行われたMTB・トライアル世界選手権。各レースに出場した日本人選手たちのダイジェストレポート&コメント集をお届けします。

多数の観客で埋め尽くされるレオガンクグのダウンヒル会場多数の観客で埋め尽くされるレオガンクグのダウンヒル会場

クロスカントリー

エリート男子は今季650Bバイクで優勝を重ねたニノ・シューター(スイス)がロンドンオリンピックの雪辱を果たし2度目の世界選王者に。またルーカスとマティアス・フリュッキガーの兄弟でスイス勢が1-2-3と表彰台を独占。山本幸平は29位だった。

エリート女子はロンドンオリンピックに続いてジュリー・ブルセ(フランス)が制し、二つのビッグタイトルを獲得。片山梨絵は-1周の36位。
ジュニアに出場の沢田時は27位、同じく前田公平は-1周の56位、U23の中原義貴は-3周の82位。

片山梨絵のコメント
「小さい波では好調をもってこられたのですが、大きい流れでいえばオリンピックの疲れを取りきることができないままレースを迎えました。ラップアウトになった時は「まさか!」とびっくりしましたが、やれることはやっての結果です。応援ありがとうございました」

若手3人のコメント

沢田時
「この一年こちらで走っていて一番の苦手と感じたのは、スタートで得意なのは登りでしたが、今日は全く逆の走りになりました。スタートは最高、しかし登りで踏ん張れませんでした。ただ目標だったトップ10に入るにはあのペースで走るしかなかった。やれるだけのことはやった気分。だからこそ悔しいです」

前田公平
「-1周の56位でレースを終えました。 スタート前からポジション争いがあり、スタートする前からレースが始まってました。レースでも、少しでも休んだら抜かれ、離されるのでとても苦しいレースでした。今までの中で断トツで苦しかったです。とても良い経験が出来ました」

中原義貴
「スタートの勢いに負けてしまい、なかなか前に出ることができませんでした。海外の選手のテクニックの凄さを改めて感じたレースになりました。これからはスプリント力とテクニックを付けて、次のレースに繋げたいと思います。」

ダウンヒル

エリート男子はグレッグ・ミナー(南アフリカ)がジー・アーサートン(イギリス)を0.5秒離して2度目の世界選王者に。今季ワールドカップで強さを誇示しているアーロン・グイン(アメリカ)はブレーキトラブルにより昨年に続いてレースを落としている。清水一輝は70位。
エリート女子の優勝は大穴となったシャール・モーガン(フランス)。末政実緒は20位だった。


清水一輝のレポート
「今年で世界選手権出場はジュニアクラスでの出場を合わせて4年目のチャレンジとなりました。世界選手権は年に1度しかないので、一段と気合いの入るレースとなりました。
コースはジャンプとペダリングが続くセクションが中盤にあり、スピードを乗せるのがとても難しい、体力のいるコースという印象でした。
レース期間中は雨の影響でコースコンディションが走る度に悪化してきていて、天気が回復し急速に路面が乾いてきていたのでタイヤの選択はとても悩みました。決勝ではコース脇を埋めてしまう程の観客が集まっており、大歓声に包まれていました。皆さんの凄い声援のお陰で、決勝ランでは集中力を持続させることができました。
去年は約40秒差でしたが、今年は25秒差まで詰めることができ嬉しく思います。世界のレベルはどんどん上がっているので、追いつけるようこれからも頑張りたいと思います」


末政実緒のレポート
「レオガングは前半は斜度のある下りにバームが連続してあり、その後斜度が打って変わってフラットな漕ぎとジャンプセクション、再び斜度のあるシングルトラックがあるなど、テクニック、フィジカル共にタフなコースです。
そして、今回のコースは先が見えない所が多く、そこをどれだけ突っ込んでいけるかが全体的なスピードに繋がるポイントでした。コースはシングルトラックが多いにもかかわらずすごいハイスピードで、コースを覚えるのに一苦労でした。

3日目、朝の試走後にタイムドセッションが行われました。世界選手権には予選というものがなく全員決勝を走るため、タイムドセッションは計測付きの練習といったところです。
朝降っていた雨は午後のタイムドセッショには止み、雨で走り易かった路面は少し重くなり、滑りやすくなり難しくなっていました。
途中木の根に前輪を滑らせ危なっかしい場面があったり、漕ぎ&ジャンプセクションを漕ぎよりもリズムを重視して走ったのがあまり上手く行かず、22位でタイムドセッションを終えました。

ダウンヒルを走る末政実緒(FUNFANCY/INTENSE) 写真は試走時ダウンヒルを走る末政実緒(FUNFANCY/INTENSE) 写真は試走時

タイムドセッションの翌日には決勝。前日までの悪天候から打って変わって天気が回復し、お昼ごろには真っ青な青空が広がりました。
午前中の練習では少しまだ路面はマッドな部分が多く、前日よりさらに掘れ荒れていましたが、路面は乾くのが早く徐々にスピードが上がって来ました。
決勝が始まる午後まで時間があったので、どれだけ乾いているか気になりつつスタートしました。
かなり乾いてきていましたが、前半は少し慎重になりすぎてしまい、中盤の漕ぎセクションでタイムを取り返そうと必死になりましたが、終盤のシングルトラックでペースダウンしてしまい20位でゴールしました。
今回はコース試走時間の短さ、路面の変化に対応出来ずに終わってしまった世界選手権でした。
ここ最近ワールドカップはバイクパークで開催されることもあり、ハイスピード化しバームやジャンプ、ドロップが多様したコースが多くなり、コースのスタイルも年々変化しています。
コースのスタイルや状況、様々な変化に対応出来るよう、もっと経験や練習を積み自分自身のレベルを高めて良ければと思います」

クロスカントリー・エリミネーター

今年から正式種目となったクロスカントリー・エリミネーターは、4人の選手によるトーナメント戦で街中をコースにして走るショートトラックレース。男子はラルフ・ナフ(スイス)。女子はアレクサンドラ・エンゲン(スウェーデン)。山本幸平・前田公平・片山梨絵は予選落ちだった。

4X

今年はワールドカップは設定されなかったものの、世界選は行われた4X。男子はロジャー・リンダーネクト(スイス)、女子はアネケ・ベルテン(オランダ)が優勝。

トライアル準決勝を走る寺井一希トライアル準決勝を走る寺井一希

トライアル

トライアル エリート20”はベニト・ロスとアベル・マステイルスのスペイン選手同士の優勝争いとなり、ロスとマステイルスの年齢差は10歳の正に新旧対決。常にトップを引き続けてきたロスが3ポイント(+タイムペナルティ0.5ポイント)の差で優勝した。
エリート26"は今年ワールドカップでも勝ち続けている、ジルズ・コステイラー(フランス)が圧勝してその力を見せつけた。

今年からJCF公認となり、初挑戦となったUCIトライアル世界選の日本人選手最高順位は、エリート20"で寺井一希が6位となっている。

JBTA事務局からのレポート

「UCIトライアル世界選手権は、今年もMTBとの併催。トライアル競技はザールフェルデンの市街の真ん中で行われたため」、多くの観客に囲まれながら競技が行われた。
町中の為日本の自然の中のコースとは違い、コンクリートブロックやヒューム管、丸太などを使った人工物を多用したものとなる。観客にとっては高さや飛距離が見物となるショーレースだったろう。

トライアルでは、車両と年齢、性別により5つのカテゴリーが設けられている。車両は車輪径が18~23インチまでの「20"」と24~26インチまでの「26"」の2つ。年齢は16~18歳までのジュニアと19歳以上のエリート。以上の組み合わせによる4カテゴリーとウーメン(車両・年齢オープン)カテゴリーが加わった5カテゴリーとなる。

日本からはジュニア20”に3名、エリート20”に2名のライダーが出場した。UCI世界選手権のセクション(コース)は、人工物の比率が高く「跳べる」選手に有利。細やかなバランスが得意な日本選手には厳しい設定だ。

セミファイナルは6セクション×3で行われ、ファイナルには8名が進めるが、日本選手は厳しい設定のコースに跳ね返され、ほとんどのセクションの出口が見えない。途中で失格となる5点になってしまう。

トライアル決勝は夜間ライトアップされた。エリート20インチ6位となった寺井一希トライアル決勝は夜間ライトアップされた。エリート20インチ6位となった寺井一希

ジュニア20"の坪井大地・甘利大斗・飯沼裕慧は全てセミファイナルで姿を消した。エリート20"の寺井・柴田泰嵩の2名はワールドカップを転戦後の参戦で徐々に調子を出していく。だが、柴田は3ラップ目から調子が上がったが間に合わず11位で決勝に上がれず、誰もが認める日本最強の寺井一希が5位で決勝へコマを進めた。

2日後に行われたファイナル、エリート20”のスタート時間は21:00と夜間でのまばゆい昭明の中、ディナーも済ませた大観衆の中での競技となった。
設定時間がギリギリの為、セクション間での休憩が難しい中、寺井は疲労との戦いとなったが持ちこたえて54点でフィニッシュ。リック・ククック(ニュージーランド)と同点となったがセミファイナルの結果により6位となった。現在のUCIスタイルになってからの日本人最高順位となった。日本人選手には、今回の経験を元により飛躍してくれると信じたい」。


edit:Akihiro.Nakao

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