2012/09/01(土) - 05:08
最速スプリンターチームとして、アルゴス・シマノがメイン集団を徹底的にコントロール。全日本チャンピオンの土井雪広も長時間メイン集団をリードしたが、強力な逃げを捉えるには至らなかった。31歳スティーブ・クミングス(イギリス、BMCレーシングチーム)がグランツール初勝利を手にした。
第13ステージのスタート地点は、ガリシア州の州都サンティアゴ・デ・コンポステーラ。キリスト教の三大巡礼地の一つであり、その巡礼路は世界遺産に指定されている。
大きなバックパックを背負ってヨーロッパ中から集まる巡礼者の目的地が、市の中心に位置するカテドラル(大聖堂)。11世紀に建立された荘厳なカテドラルとパソ・デ・ラショイ(庁舎)の間、観光客と巡礼者でごった返すオブラドイロ広場にスタートが置かれた。ブエルタが同地をスタートするのは実に27年ぶり。
前日に落車したモーリス・ポッソーニ(イタリア、ランプレ・ISD)はスタートせず。同じ場所で落車したナセル・ブアニ(フランス、FDJ・ビッグマット)はスタートしたものの、膝の痛みが収まらず、レース中盤にリタイアしている。
レースは開始早々アタックの応酬。選手が飛び出しては吸収され、続いて8人、11人、24人と立て続けにアタックが繰り出される。全チームが首を縦に振る逃げが形成されるまでに要した時間は1時間。44km地点で7人のアタックが決まった。
逃げたのはエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)、サイモン・クラーク、キャメロン・マイヤー(ともにオーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、リーナス・ゲルデマン(ドイツ、レディオシャック・ニッサン)、フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)、トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)、そしてクミングス。スピードと経験を兼ね備えた7人は、メイン集団から最大3分50秒のリードを稼ぎ出した。
メイン集団をコントロールしたのは、ステージ5勝目ならびにグリーンジャージ奪回を狙うジョン・デゲンコルブ(ドイツ)をスプリントに導きたいアルゴス・シマノ。「今日はレース終盤の位置取りではなく、集団コントロールの役目を担うことになった」と話す土井雪広も集団コントロールに加わった。
ロット・ベリソルも時折手を差し伸べる中、アルゴス・シマノが終始メイン集団を指揮し、逃げグループとのタイム差を縮めにかかる。集団スプリントで4回トップ10フィニッシュしているブアニがリタイアしたため、FDJ・ビッグマットは集団コントロールに加わらず。
「最初の100kmをコントロールしたのはアルゴスの3人。役目的には、後半に吹きさらしの橋(ラスト25km地点)に突入するまでにタイム差を1分台に乗せること。世界のトップ選手相手の追いかけっこは厳しさを増すばかり。コントロールできれば彼は必ずやってくれるという気持ち一心で引き続けた。3時間50分の平均ワット数は314W。自分のレコード更新。リミッター解除だった」と土井。
その甲斐もあって、ラスト20km地点でタイム差は早くも1分を割り込む。しかしここから先頭7名が粘りの走りを見せ、タイム差が30秒から縮まらない。
ゴールまで8kmを切った短い登りでヘルト・ステーグマン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)やアンドレイ・カシェチキン(カザフスタン、アスタナ)、ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)がアタックするなど、メイン集団のスピードが上がりきらない。
タイム差が30〜40秒を推移する中、すでに敢闘賞獲得を決めていたフレチャがラスト5kmでアタック。これにクミングスとマイヤーが反応し、ラスト3kmでクミングスが抜け出すことに成功する。
ラスト1200mの長い最終ストレートに入り、後続のマイヤーとフレチャを気にしながら一人踏み続けたクミングス。その差は最後まで縮まらず、クミングスが独走のままゴールに飛び込んだ。
ランドバウクレジット、ディスカバリーチャンネル、バルロワールド、チームスカイを転々とし、今年からBMCレーシングチームで走るクミングス。2005年にトラック世界選手権団体追い抜きで金メダルを獲得している31歳が、初出場のブエルタでグランツール初勝利を手にした。
少し戸惑いの表情を浮かべながら表彰台に上がったクミングスは、遅れてゴールしたチームメイトたちの祝福を受けてようやく笑顔を見せる。「キャリアの中で一番最高の勝利。夢が叶った」。BMCレーシングチームは今大会2勝目を掴んだ。
「逃げメンバーはみんな強力だった。勝つためにはアタックする必要があるけど、出来るだけタイミングを待ったんだ。フレチャがアタックしたとき、向かい風が強かったので、グリーンジャージの2人に追走させた。そこから自分で行ったんだ」。
40秒遅れでやってきたメイン集団はデゲンコルブを先頭にゴール。ステージ7位のデゲンコルブは9ポイントを獲得したが、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)からポイント賞トップの座を奪うには8ポイント足らなかった。
13分50秒遅れでゴールした土井は、何とも悔しそうな、やるせない表情でチームバスへの帰路につく。「次のフラットステージは負けない。チームは逃げに選手を乗せることは無いと言い切っている」。総合成績は160位にダウンしたが、仕事人は引き続きチームのために尽くす。
総合は動かずロドリゲスがマイヨロホを着る。いよいよブエルタは最大の難所であるアストゥリアスの山岳地帯へと入っていく。第14ステージからの4連続頂上ゴールで総合に大変動が起こるだろう。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2012第13ステージ結果
1位 スティーブ・クミングス(イギリス、BMCレーシングチーム) 4h05'02"
2位 キャメロン・マイヤー(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +04"
3位 フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)
4位 サイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +14"
5位 リーナス・ゲルデマン(ドイツ、レディオシャック・ニッサン)
6位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)
7位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ) +40"
8位 アラン・デーヴィス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
9位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
10位 ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
183位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +13'50"
敢闘賞
フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)
個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 48h56'17"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) +13"
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +51"
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +1'20"
5位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +2'59"
6位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +3'29"
7位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル) +4'22"
8位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ) +5'17"
9位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク) +5'18"
10位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク) +6'01"
160位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +1h25'54"
ポイント賞(プントス)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 119pts
2位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ) 112pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 106pts
山岳賞(モンターニャ)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 22pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 20pts
3位 サイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 16pts
複合賞(コンビナーダ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 4pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 8pts
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) 10pts
チーム総合成績
1位 ラボバンク 146h24'05"
2位 チームスカイ +2'19"
3位 アージェードゥーゼル +3'40"
text&photo:Kei Tsuji in Ferrol, Spain
第13ステージのスタート地点は、ガリシア州の州都サンティアゴ・デ・コンポステーラ。キリスト教の三大巡礼地の一つであり、その巡礼路は世界遺産に指定されている。
大きなバックパックを背負ってヨーロッパ中から集まる巡礼者の目的地が、市の中心に位置するカテドラル(大聖堂)。11世紀に建立された荘厳なカテドラルとパソ・デ・ラショイ(庁舎)の間、観光客と巡礼者でごった返すオブラドイロ広場にスタートが置かれた。ブエルタが同地をスタートするのは実に27年ぶり。
前日に落車したモーリス・ポッソーニ(イタリア、ランプレ・ISD)はスタートせず。同じ場所で落車したナセル・ブアニ(フランス、FDJ・ビッグマット)はスタートしたものの、膝の痛みが収まらず、レース中盤にリタイアしている。
レースは開始早々アタックの応酬。選手が飛び出しては吸収され、続いて8人、11人、24人と立て続けにアタックが繰り出される。全チームが首を縦に振る逃げが形成されるまでに要した時間は1時間。44km地点で7人のアタックが決まった。
逃げたのはエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)、サイモン・クラーク、キャメロン・マイヤー(ともにオーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、リーナス・ゲルデマン(ドイツ、レディオシャック・ニッサン)、フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)、トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)、そしてクミングス。スピードと経験を兼ね備えた7人は、メイン集団から最大3分50秒のリードを稼ぎ出した。
メイン集団をコントロールしたのは、ステージ5勝目ならびにグリーンジャージ奪回を狙うジョン・デゲンコルブ(ドイツ)をスプリントに導きたいアルゴス・シマノ。「今日はレース終盤の位置取りではなく、集団コントロールの役目を担うことになった」と話す土井雪広も集団コントロールに加わった。
ロット・ベリソルも時折手を差し伸べる中、アルゴス・シマノが終始メイン集団を指揮し、逃げグループとのタイム差を縮めにかかる。集団スプリントで4回トップ10フィニッシュしているブアニがリタイアしたため、FDJ・ビッグマットは集団コントロールに加わらず。
「最初の100kmをコントロールしたのはアルゴスの3人。役目的には、後半に吹きさらしの橋(ラスト25km地点)に突入するまでにタイム差を1分台に乗せること。世界のトップ選手相手の追いかけっこは厳しさを増すばかり。コントロールできれば彼は必ずやってくれるという気持ち一心で引き続けた。3時間50分の平均ワット数は314W。自分のレコード更新。リミッター解除だった」と土井。
その甲斐もあって、ラスト20km地点でタイム差は早くも1分を割り込む。しかしここから先頭7名が粘りの走りを見せ、タイム差が30秒から縮まらない。
ゴールまで8kmを切った短い登りでヘルト・ステーグマン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)やアンドレイ・カシェチキン(カザフスタン、アスタナ)、ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)がアタックするなど、メイン集団のスピードが上がりきらない。
タイム差が30〜40秒を推移する中、すでに敢闘賞獲得を決めていたフレチャがラスト5kmでアタック。これにクミングスとマイヤーが反応し、ラスト3kmでクミングスが抜け出すことに成功する。
ラスト1200mの長い最終ストレートに入り、後続のマイヤーとフレチャを気にしながら一人踏み続けたクミングス。その差は最後まで縮まらず、クミングスが独走のままゴールに飛び込んだ。
ランドバウクレジット、ディスカバリーチャンネル、バルロワールド、チームスカイを転々とし、今年からBMCレーシングチームで走るクミングス。2005年にトラック世界選手権団体追い抜きで金メダルを獲得している31歳が、初出場のブエルタでグランツール初勝利を手にした。
少し戸惑いの表情を浮かべながら表彰台に上がったクミングスは、遅れてゴールしたチームメイトたちの祝福を受けてようやく笑顔を見せる。「キャリアの中で一番最高の勝利。夢が叶った」。BMCレーシングチームは今大会2勝目を掴んだ。
「逃げメンバーはみんな強力だった。勝つためにはアタックする必要があるけど、出来るだけタイミングを待ったんだ。フレチャがアタックしたとき、向かい風が強かったので、グリーンジャージの2人に追走させた。そこから自分で行ったんだ」。
40秒遅れでやってきたメイン集団はデゲンコルブを先頭にゴール。ステージ7位のデゲンコルブは9ポイントを獲得したが、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)からポイント賞トップの座を奪うには8ポイント足らなかった。
13分50秒遅れでゴールした土井は、何とも悔しそうな、やるせない表情でチームバスへの帰路につく。「次のフラットステージは負けない。チームは逃げに選手を乗せることは無いと言い切っている」。総合成績は160位にダウンしたが、仕事人は引き続きチームのために尽くす。
総合は動かずロドリゲスがマイヨロホを着る。いよいよブエルタは最大の難所であるアストゥリアスの山岳地帯へと入っていく。第14ステージからの4連続頂上ゴールで総合に大変動が起こるだろう。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2012第13ステージ結果
1位 スティーブ・クミングス(イギリス、BMCレーシングチーム) 4h05'02"
2位 キャメロン・マイヤー(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +04"
3位 フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)
4位 サイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +14"
5位 リーナス・ゲルデマン(ドイツ、レディオシャック・ニッサン)
6位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)
7位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ) +40"
8位 アラン・デーヴィス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
9位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
10位 ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
183位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +13'50"
敢闘賞
フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)
個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 48h56'17"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) +13"
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +51"
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +1'20"
5位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +2'59"
6位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +3'29"
7位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル) +4'22"
8位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ) +5'17"
9位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク) +5'18"
10位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク) +6'01"
160位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +1h25'54"
ポイント賞(プントス)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 119pts
2位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ) 112pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 106pts
山岳賞(モンターニャ)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 22pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 20pts
3位 サイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 16pts
複合賞(コンビナーダ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 4pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 8pts
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) 10pts
チーム総合成績
1位 ラボバンク 146h24'05"
2位 チームスカイ +2'19"
3位 アージェードゥーゼル +3'40"
text&photo:Kei Tsuji in Ferrol, Spain
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