2012/08/30(木) - 03:26
2012年のブエルタ・ア・エスパーニャ唯一の個人タイムトライアル。数分遅れると見られていたホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が気を吐いて、1秒差で総合首位を守ってみせた。最速の称号はフレデリック・ケシアコフ(スウェーデン、アスタナ)が得ている。
MTB出身32歳ケシアコフが最速タイム
ちょうど折り返し地点の第11ステージを迎えた2012年ブエルタ。大会唯一の個人タイムトライアルが、ガリシア州のカンバドスから半島の稜線を越えてポンテベドラにゴールする39.4kmで行なわれた。
「ガリシアの天候は変わりやすいから気をつけたほうがいい」と地元紙の記者は警戒を発したが、曇り時々晴れという気象コンディションが崩れることはなかった。気温は20度前後。海からの涼しげな風がコースを包む。
39.4kmコースのほぼ中間地点に、標高490mの3級山岳モンテ・カストロベがある。登坂距離10kmで平均勾配は4.4%だが、実際は下りや平坦区間を含んでいるため、体感的に8%ほどの登りが続く。この登りを攻略するため、DHバーを装着しただけのノーマルバイクや、前後にディープリムホイールを使用するチームも見られた。
3級山岳モンテ・カストロベを最速で駆け上がったのは、147番手スタートのケシアコフ。前走のクネゴとサルミエントを抜いたケシアコフは、テクニカルな下り区間でもハイスピードを維持。総合上位のオールラウンダーたちの力をもってしても、52分36秒の暫定トップタイムは破られることがなかった。
MTB出身で、2009年にロード選手に転向したケシアコフ。今年ツール・ド・スイスの個人タイムトライアルでカンチェラーラを下して優勝を飾っており、ツール・ド・フランスでは合計7日間山岳賞ジャージを着た(最終的に山岳賞2位)。
「グランツールでの勝利はチームにとっても大切なこと。この勝利を掲げて家に帰るのが楽しみだ」。キャリア最大の勝利を手にした32歳のケシアコフはそう語る。3度目のブエルタ(5度目のグランツール)で手にしたグランツール初勝利。「今日は出だしから好調で、出し切らないように心がけながら、そして調子の良さを感じながら走った」とケシアコフ。アスタナにとっては、アムステル・ゴールドレース、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ、ジロ・デ・イタリア区間2勝に続く大きな勝利だ。
コンタドールの力走 秒差の総合争い
ケシアコフの暫定トップタイムから約1時間後、ポンテベドラの街は熾烈な総合争いに沸いた。3級山岳モンテ・カストロベの頂上をケシアコフから2秒遅れのタイムで通過したのは、総合3位につけるアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)。ライバルたちから一歩リードした状態で下りをこなし、ケシアコフから17秒遅れでゴールした。
しかし、総合ライバル勢も黙っていない。総合2位のクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)は39秒遅れ(コンタドールから22秒遅れ)、総合4位のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が1分08秒遅れ(コンタドールから51秒遅れ)と好走する。
さらに最終走者ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)は、コンタドールからの遅れを54秒に抑えて3級山岳モンテ・カストロベをクリアしてみせる。ロドリゲスは下りでもタイムロスを最小限に抑え、ケシアコフから1分16秒遅れ(コンタドールから59秒遅れ)でゴール。ステージ7位に入る力走で、僅か1秒差でマイヨロホを守った。
歓喜の表情で表彰台に上がり、オスカル・ペレイロからマイヨロホを受け取ったロドリゲスは「タイムトライアルは僕の得意分野じゃない。今日の走りの裏には、大きな使命感と、これまでのハードワークがあった。最後まで何が起こるか分からないけど、大会制覇に向けた大きな一歩だ」とコメントする。
対するコンタドールは「ライバルたちからタイムを奪うことが出来たので、今日の走りには満足している。でも勝ちたかった」と、複雑な心境を語る。ロドリゲスとの総合タイム差は1秒。コンタドールは残る6つの頂上ゴールに目を向ける。「ここまで(総合上位陣の間に)大きな差はない。ブエルタはアストゥリアスの山岳ステージで決まるだろう」。
「もっと良い成績を期待したけど、これが最大限努力した結果」と語るのは、総合2位から総合3位にダウンしたフルーム。「でもまだ山が残されている。何でも起こり得る」。
結果的に、大会唯一のタイムトライアルで総合に大激震は起こらなかった。ステージ49位に終わったイゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)が総合トップ10圏内から脱落。代わってステージ9位のアンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)が総合8位に浮上している。ブエルタの総合争いは後半戦に突入する。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2012第11ステージ結果
1位 フレデリック・ケシアコフ(スウェーデン、アスタナ) 52'36"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) +17"
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +39"
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +1'08"
5位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +1'09"
6位 リッチー・ポルト(オーストラリア、チームスカイ) +1'15"
7位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +1'16"
8位 キャメロン・マイヤー(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +1'17"
9位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ) +1'24"
10位 ヨナタン・カストロビエホ(スペイン、モビスター) +1'34"
11位 トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ) +1'39"
12位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +1'42"
13位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM) +1'50"
14位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム) +1'57"
15位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +2'02"
16位 ティアゴ・マシャド(ポルトガル、レディオシャック・ニッサン) +2'04"
17位 マキシム・ブエ(フランス、アージェードゥーゼル) +2'05"
18位 ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク) +2'06"
19位 フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ) +2'16"
20位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク) +2'20"
164位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +7'44"
敢闘賞
フレデリック・ケシアコフ(スウェーデン、アスタナ)
個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 40h26'15"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) +01"
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +16"
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +59"
5位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +2'27"
6位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +2'54"
7位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル) +3'39"
8位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ) +4'08"
9位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク) +4'22"
10位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク) +5'10"
137位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +1h07'03"
ポイント賞(プントス)
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ) 103pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 94pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 90pts
山岳賞(モンターニャ)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 21pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 17pts
3位 サイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ ) 16pts
複合賞(コンビナーダ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 5pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 8pts
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) 13pts
チーム総合成績
1位 ラボバンク 120h51'40"
2位 チームスカイ +1'58"
3位 モビスター +3'18"
text&photo:Kei Tsuji in Pontevedra, Spain
MTB出身32歳ケシアコフが最速タイム
ちょうど折り返し地点の第11ステージを迎えた2012年ブエルタ。大会唯一の個人タイムトライアルが、ガリシア州のカンバドスから半島の稜線を越えてポンテベドラにゴールする39.4kmで行なわれた。
「ガリシアの天候は変わりやすいから気をつけたほうがいい」と地元紙の記者は警戒を発したが、曇り時々晴れという気象コンディションが崩れることはなかった。気温は20度前後。海からの涼しげな風がコースを包む。
39.4kmコースのほぼ中間地点に、標高490mの3級山岳モンテ・カストロベがある。登坂距離10kmで平均勾配は4.4%だが、実際は下りや平坦区間を含んでいるため、体感的に8%ほどの登りが続く。この登りを攻略するため、DHバーを装着しただけのノーマルバイクや、前後にディープリムホイールを使用するチームも見られた。
3級山岳モンテ・カストロベを最速で駆け上がったのは、147番手スタートのケシアコフ。前走のクネゴとサルミエントを抜いたケシアコフは、テクニカルな下り区間でもハイスピードを維持。総合上位のオールラウンダーたちの力をもってしても、52分36秒の暫定トップタイムは破られることがなかった。
MTB出身で、2009年にロード選手に転向したケシアコフ。今年ツール・ド・スイスの個人タイムトライアルでカンチェラーラを下して優勝を飾っており、ツール・ド・フランスでは合計7日間山岳賞ジャージを着た(最終的に山岳賞2位)。
「グランツールでの勝利はチームにとっても大切なこと。この勝利を掲げて家に帰るのが楽しみだ」。キャリア最大の勝利を手にした32歳のケシアコフはそう語る。3度目のブエルタ(5度目のグランツール)で手にしたグランツール初勝利。「今日は出だしから好調で、出し切らないように心がけながら、そして調子の良さを感じながら走った」とケシアコフ。アスタナにとっては、アムステル・ゴールドレース、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ、ジロ・デ・イタリア区間2勝に続く大きな勝利だ。
コンタドールの力走 秒差の総合争い
ケシアコフの暫定トップタイムから約1時間後、ポンテベドラの街は熾烈な総合争いに沸いた。3級山岳モンテ・カストロベの頂上をケシアコフから2秒遅れのタイムで通過したのは、総合3位につけるアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)。ライバルたちから一歩リードした状態で下りをこなし、ケシアコフから17秒遅れでゴールした。
しかし、総合ライバル勢も黙っていない。総合2位のクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)は39秒遅れ(コンタドールから22秒遅れ)、総合4位のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が1分08秒遅れ(コンタドールから51秒遅れ)と好走する。
さらに最終走者ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)は、コンタドールからの遅れを54秒に抑えて3級山岳モンテ・カストロベをクリアしてみせる。ロドリゲスは下りでもタイムロスを最小限に抑え、ケシアコフから1分16秒遅れ(コンタドールから59秒遅れ)でゴール。ステージ7位に入る力走で、僅か1秒差でマイヨロホを守った。
歓喜の表情で表彰台に上がり、オスカル・ペレイロからマイヨロホを受け取ったロドリゲスは「タイムトライアルは僕の得意分野じゃない。今日の走りの裏には、大きな使命感と、これまでのハードワークがあった。最後まで何が起こるか分からないけど、大会制覇に向けた大きな一歩だ」とコメントする。
対するコンタドールは「ライバルたちからタイムを奪うことが出来たので、今日の走りには満足している。でも勝ちたかった」と、複雑な心境を語る。ロドリゲスとの総合タイム差は1秒。コンタドールは残る6つの頂上ゴールに目を向ける。「ここまで(総合上位陣の間に)大きな差はない。ブエルタはアストゥリアスの山岳ステージで決まるだろう」。
「もっと良い成績を期待したけど、これが最大限努力した結果」と語るのは、総合2位から総合3位にダウンしたフルーム。「でもまだ山が残されている。何でも起こり得る」。
結果的に、大会唯一のタイムトライアルで総合に大激震は起こらなかった。ステージ49位に終わったイゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)が総合トップ10圏内から脱落。代わってステージ9位のアンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)が総合8位に浮上している。ブエルタの総合争いは後半戦に突入する。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2012第11ステージ結果
1位 フレデリック・ケシアコフ(スウェーデン、アスタナ) 52'36"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) +17"
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +39"
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +1'08"
5位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +1'09"
6位 リッチー・ポルト(オーストラリア、チームスカイ) +1'15"
7位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +1'16"
8位 キャメロン・マイヤー(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +1'17"
9位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ) +1'24"
10位 ヨナタン・カストロビエホ(スペイン、モビスター) +1'34"
11位 トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ) +1'39"
12位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +1'42"
13位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM) +1'50"
14位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム) +1'57"
15位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +2'02"
16位 ティアゴ・マシャド(ポルトガル、レディオシャック・ニッサン) +2'04"
17位 マキシム・ブエ(フランス、アージェードゥーゼル) +2'05"
18位 ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク) +2'06"
19位 フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ) +2'16"
20位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク) +2'20"
164位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +7'44"
敢闘賞
フレデリック・ケシアコフ(スウェーデン、アスタナ)
個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 40h26'15"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) +01"
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +16"
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +59"
5位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +2'27"
6位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +2'54"
7位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル) +3'39"
8位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ) +4'08"
9位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク) +4'22"
10位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク) +5'10"
137位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +1h07'03"
ポイント賞(プントス)
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ) 103pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 94pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 90pts
山岳賞(モンターニャ)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 21pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 17pts
3位 サイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ ) 16pts
複合賞(コンビナーダ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 5pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 8pts
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) 13pts
チーム総合成績
1位 ラボバンク 120h51'40"
2位 チームスカイ +1'58"
3位 モビスター +3'18"
text&photo:Kei Tsuji in Pontevedra, Spain
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