2012/08/26(日) - 06:59
ロドリゲス、バルベルデ、そしてコンタドールによる頂上ゴールバトル。隣国アンドラの1級山岳コリャーダ・デラ・ガリーニャにゴールするブエルタ・ア・エスパーニャ第8ステージで、スペインが生んだ3人のクライマーが火花を散らした。
ブエルタ第8ステージは、カタルーニャ州のリェイダから山岳地帯に向けて北上する。徐々に標高を上げていき、ゴール40km手前で国境を越えてアンドラ公国に入国。終盤にかけて2つのカテゴリー山岳が登場する。
まずは2級山岳コメーリャ峠をクリア。そこから休む間もなく1級山岳コリャーダ・デラ・ガリーニャに挑む。アンドラの山岳と言えば、標高がありながらも勾配が緩い峠のイメージが強いが、ブエルタ初登場のコリャーダ・デラ・ガリーニャは急勾配で九十九折り。登坂距離7.2kmで標高差580m、平均勾配は8%で、頂上の手前4kmは10%オーバーが続く。
そんな前半戦最大の山場に向かって、レースはハイスピードで動き出す。追い風も手伝って、レース最初の1時間の平均スピードは52km/hをマーク。アタックと吸収の応酬は、75km地点でようやく沈静化を見せた。
逃げたのはミカエル・ブファズ(フランス、コフィディス)、アマエル・モワナール(フランス、BMCレーシングチーム)、ハビエル・ラミレス(スペイン、アンダルシア)、キャメロン・マイヤー(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、マルティン・ケイゼル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)、そして前日にも逃げて敢闘賞ゼッケンを付けるハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)。
追い風のなか、アラメンディアら6人は最大9分30秒のリードを稼ぎ出す。メイン集団はマイヨロホ擁するカチューシャがコントロールしたが、レース後半に入るとチームスカイにスイッチ。メンバーを揃えるチームスカイがグングンとメイン集団のペースを上げた。
2級山岳コメーリャ峠で先頭グループはブファズ、モワナール、ラミレス、マイヤーの4人に絞り込まれ、メイン集団から2分30秒リードで頂上を通過。そしてそのままのタイム差でこの日最後の1級山岳コリャーダ・デラ・ガリーニャに突入する。
急勾配の登りが始まると、先頭はマイヤー単独に。1分ほどのリードで頂上を目指す2008年のツアー・オブ・ジャパン総合優勝者。しかしチームスカイは追走の力を弱めない。リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)の強力な引きにより、マイヤーのリードは削がれていった。
総合を懸けた動きは、ラスト3kmでのバルベルデのアタックで動き出す。バルベルデにはフルーム、コンタドール、ロドリゲス、ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)だけが合流。九十九折りの急勾配の登りを進んでいく。
続いてフルームがアタックを仕掛け、コンタドールだけがこれに反応。フルームとコンタドールは、それまで逃げ続けた先頭マイヤーをラスト2kmで吸収する。マイペース走行に徹したバルベルデとロドリゲスはしばらくしてコンタドールとフルームに合流。一旦レースはリセットされる。
互いの様子を伺いながらのハイスピードクライミング。やがて、ゴールまで1kmを切って道が細くなると、ヒートアップする観客を縫ってコンタドールがアタック。歯を食いしばって飛ぶように登るコンタドールは、後続を6秒ほど引き離すことに成功した。
しかし、ゴールまで200mを切ると、フルームを置き去りにしたロドリゲスとバルベルデが猛烈な勢いで追い込んでくる。徐々にスピードを失うコンタドールが振り返る先に、迫り来るロドリゲスとバルベルデの姿。ラスト50mの最終コーナーでバルベルデとロドリゲスがコンタドールに並ぶ。3名によるスプリントで、バルベルデが先着した。
「今日は登りを熟知しているホアキンをマークして走った。アタックしたのは、総合下位の選手とのタイム差を広げたかったから。他の3人(コンタドール、ロドリゲス、フルーム)を引き離そうとしたわけじゃない」と、今大会ステージ2勝目を飾ったバルベルデ。モビスターとしてはステージ3勝目で、ここまで文句無しの活躍だと言っていい。
「とにかくリズムが掴みにくくて、登りにくい峠だった。アルベルトのハイペースはゴールまで続かないというホアキンの言葉は正しかったよ。最終コーナーを先頭で抜けることが出来ればチャンスがあると思って突っ込んだんだ」。
15秒のビハインドを食らったフルームに対し、並んでゴールしたバルベルデ、ロドリゲス、コンタドールは、それぞれ12秒、8秒、4秒のボーナスタイムを獲得した。この日を終えて、総合タイム差50秒以内にバルベルデ、ロドリゲス、コンタドール、そしてフルームがひしめく状態。前半戦最大の山場を終えてなお、ブエルタのボスは見えて来ない。
「最高とまでは言えないけど、感触の良さを感じていた。日に日に調子は良くなっている。このまま調子を上げることが出来ればと思う」。全盛期を彷彿とさせる強力なアタックを見せ、あわやステージ優勝を掴みかけたコンタドールは満足げだ。「今日はフルームを徹底的にマークして、彼を引き離すことだけにフォーカスしていた。目標はステージ優勝じゃない。マドリードでマイヨロホを着ることだ」。
選手コメントはレース公式リリースならびにチーム公式サイトより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2012第8ステージ結果
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 4h06'39"
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)
4位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +15"
5位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +23"
6位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +33"
7位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)
8位 ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・ISD) +39"
9位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
10位 プリジミスラウ・ニエミエツ(ポーランド、ランプレ・ISD) +42"
139位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +15'41"
敢闘賞
ハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)
個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 29h59'35"
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +33"
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) +40"
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +50"
5位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +1'41"
6位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +1'48"
7位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル) +2'14"
8位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル) +2'47"
9位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク) +2'58"
10位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク) +3'07"
119位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +50'52"
ポイント賞(プントス)
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ) 76pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 66pts
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 65pts
山岳賞(モンターニャ)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 21pts
2位 サイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ ) 16pts
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 15pts
複合賞(コンビナーダ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 7pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 7pts
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) 14pts
チーム総合成績
1位 ラボバンク 89h28'24"
2位 アージェードゥーゼル +2'27"
3位 チームスカイ +2'34"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic
ブエルタ第8ステージは、カタルーニャ州のリェイダから山岳地帯に向けて北上する。徐々に標高を上げていき、ゴール40km手前で国境を越えてアンドラ公国に入国。終盤にかけて2つのカテゴリー山岳が登場する。
まずは2級山岳コメーリャ峠をクリア。そこから休む間もなく1級山岳コリャーダ・デラ・ガリーニャに挑む。アンドラの山岳と言えば、標高がありながらも勾配が緩い峠のイメージが強いが、ブエルタ初登場のコリャーダ・デラ・ガリーニャは急勾配で九十九折り。登坂距離7.2kmで標高差580m、平均勾配は8%で、頂上の手前4kmは10%オーバーが続く。
そんな前半戦最大の山場に向かって、レースはハイスピードで動き出す。追い風も手伝って、レース最初の1時間の平均スピードは52km/hをマーク。アタックと吸収の応酬は、75km地点でようやく沈静化を見せた。
逃げたのはミカエル・ブファズ(フランス、コフィディス)、アマエル・モワナール(フランス、BMCレーシングチーム)、ハビエル・ラミレス(スペイン、アンダルシア)、キャメロン・マイヤー(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、マルティン・ケイゼル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)、そして前日にも逃げて敢闘賞ゼッケンを付けるハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)。
追い風のなか、アラメンディアら6人は最大9分30秒のリードを稼ぎ出す。メイン集団はマイヨロホ擁するカチューシャがコントロールしたが、レース後半に入るとチームスカイにスイッチ。メンバーを揃えるチームスカイがグングンとメイン集団のペースを上げた。
2級山岳コメーリャ峠で先頭グループはブファズ、モワナール、ラミレス、マイヤーの4人に絞り込まれ、メイン集団から2分30秒リードで頂上を通過。そしてそのままのタイム差でこの日最後の1級山岳コリャーダ・デラ・ガリーニャに突入する。
急勾配の登りが始まると、先頭はマイヤー単独に。1分ほどのリードで頂上を目指す2008年のツアー・オブ・ジャパン総合優勝者。しかしチームスカイは追走の力を弱めない。リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)の強力な引きにより、マイヤーのリードは削がれていった。
総合を懸けた動きは、ラスト3kmでのバルベルデのアタックで動き出す。バルベルデにはフルーム、コンタドール、ロドリゲス、ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)だけが合流。九十九折りの急勾配の登りを進んでいく。
続いてフルームがアタックを仕掛け、コンタドールだけがこれに反応。フルームとコンタドールは、それまで逃げ続けた先頭マイヤーをラスト2kmで吸収する。マイペース走行に徹したバルベルデとロドリゲスはしばらくしてコンタドールとフルームに合流。一旦レースはリセットされる。
互いの様子を伺いながらのハイスピードクライミング。やがて、ゴールまで1kmを切って道が細くなると、ヒートアップする観客を縫ってコンタドールがアタック。歯を食いしばって飛ぶように登るコンタドールは、後続を6秒ほど引き離すことに成功した。
しかし、ゴールまで200mを切ると、フルームを置き去りにしたロドリゲスとバルベルデが猛烈な勢いで追い込んでくる。徐々にスピードを失うコンタドールが振り返る先に、迫り来るロドリゲスとバルベルデの姿。ラスト50mの最終コーナーでバルベルデとロドリゲスがコンタドールに並ぶ。3名によるスプリントで、バルベルデが先着した。
「今日は登りを熟知しているホアキンをマークして走った。アタックしたのは、総合下位の選手とのタイム差を広げたかったから。他の3人(コンタドール、ロドリゲス、フルーム)を引き離そうとしたわけじゃない」と、今大会ステージ2勝目を飾ったバルベルデ。モビスターとしてはステージ3勝目で、ここまで文句無しの活躍だと言っていい。
「とにかくリズムが掴みにくくて、登りにくい峠だった。アルベルトのハイペースはゴールまで続かないというホアキンの言葉は正しかったよ。最終コーナーを先頭で抜けることが出来ればチャンスがあると思って突っ込んだんだ」。
15秒のビハインドを食らったフルームに対し、並んでゴールしたバルベルデ、ロドリゲス、コンタドールは、それぞれ12秒、8秒、4秒のボーナスタイムを獲得した。この日を終えて、総合タイム差50秒以内にバルベルデ、ロドリゲス、コンタドール、そしてフルームがひしめく状態。前半戦最大の山場を終えてなお、ブエルタのボスは見えて来ない。
「最高とまでは言えないけど、感触の良さを感じていた。日に日に調子は良くなっている。このまま調子を上げることが出来ればと思う」。全盛期を彷彿とさせる強力なアタックを見せ、あわやステージ優勝を掴みかけたコンタドールは満足げだ。「今日はフルームを徹底的にマークして、彼を引き離すことだけにフォーカスしていた。目標はステージ優勝じゃない。マドリードでマイヨロホを着ることだ」。
選手コメントはレース公式リリースならびにチーム公式サイトより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2012第8ステージ結果
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 4h06'39"
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)
4位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +15"
5位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +23"
6位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +33"
7位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)
8位 ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・ISD) +39"
9位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
10位 プリジミスラウ・ニエミエツ(ポーランド、ランプレ・ISD) +42"
139位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +15'41"
敢闘賞
ハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)
個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 29h59'35"
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +33"
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) +40"
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +50"
5位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +1'41"
6位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +1'48"
7位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル) +2'14"
8位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル) +2'47"
9位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク) +2'58"
10位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク) +3'07"
119位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +50'52"
ポイント賞(プントス)
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ) 76pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 66pts
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 65pts
山岳賞(モンターニャ)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 21pts
2位 サイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ ) 16pts
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 15pts
複合賞(コンビナーダ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 7pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 7pts
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) 14pts
チーム総合成績
1位 ラボバンク 89h28'24"
2位 アージェードゥーゼル +2'27"
3位 チームスカイ +2'34"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic