2012/07/20(金) - 08:05
スペシャライズド社のロードカテゴリにおける総合コンセプト、「smoother is farster」をさらに追求したROUBAIX(ルーベ)SL4。サイズ別に異なるコラム径を持たせた「サイズ・スペシフィック・フォーク」や、専用シートピラーの「コブルゴブラー」、新型ゼルツなど注目の構造を取り入れた新型ルーベの詳細をアメリカからレポート。
「smoother is farster」をさらに追求したROUBAIX(ルーベ)SL4 photo:Yukio Yasui
昨年、競技専用車たるTARMACをSL4に進化させ、圧倒的な剛性と動的性能で世のピュアレーサー達を驚かせたスペシャライズド。そのTARMACを追うようにして、今年は快適性を重視したROUBAIXシリーズがSL4世代へと移行した。
サイズ別にフォークを専用設計とした新型
フレームサイズごとにヘッドの下ワン径を変化させる「サイズ・スペシフィック・フォーク」を搭載したRoubaix SL4 photo:Yukio Yasuiエンジニアリング上の最も大きなトピックは、「サイズ・スペシフィック・エンジニアリング」のさらなる発展である。スペシャライズドが作る全てのカーボンフレームには、サイズごとにパイプ径やカーボンの積層を変化させるサイズ別専用設計が施されてきた。ROUBAIX SL4ではその設計思想をさらに前進させ、サイズによってフォークの下ワン径を変化させたのだ。
多くのメーカーは、コストダウンのために全フレームサイズでフォークを共通とする。しかし新型ルーベはフォーク下ワンの径を、サイズ49と52で1-1/8インチ、54と56で1-1/4インチ、58と61で1-3/8インチと変化させ、小さいフレームサイズでは横剛性を損なうことなくスムーズな走りを実現し、大きなサイズでは大柄な選手の負荷にも耐える剛性をもたせたという。
「大柄なライダーだとバイク前半が剛性不足になりがちで、小柄なライダーには剛性過多になりやすい。それを解消して、どのフレームサイズでも完全なライドフィールを提供する“サイズ・スペシフィック・フォーク”は、開発サイドとして非常に大きなポイントだった。生産費用はもちろん、エンジニアリングタイム(設計に費やされた時間)を含めるとコストは跳ね上がるけど、ここはROUBAIX SL4開発のキーポイントだったんだ」とエンジニア。ここまで徹底したサイズ別設計はもちろん世界初。これこそがROUBAIX SL4最大の注目点である。
湾曲ピラーの採用で振動がSL3比で半減 ゼルツも一新
後方からクリップのようにフォークとシートステーをはさみこむ新型ゼルツ photo:Yukio Yasuiシートポストも特徴的だ。ヤグラ部分で大きく湾曲し、間にエラスティックダンパーを挟み込んだこれはコブルゴブラー(凹凸を食べてしまう、征服するという意味)と呼ばれる。
SL3とSL4とを比較すると、鉛直方向の柔軟性はフレーム単体では変化していない。しかしこのコブルゴブラーによって柔軟性がSL3(ゼルツシートピラー採用)比で約2倍になっているという。なお、コブルゴブラー部の振動解析は、VENGEと同じくマクラーレン社と共同で行われた。
フォークブレードとシートステーに設けられる振動吸収材、ゼルツはSL4でも使われているが、形状は大幅に変更されている。SL3ではシートステーとフォークに設けた窪みにゼルツをボルトオンしていたが、SL4では左右から挟み込むような形状に。真ん中にアルミを設け、その周りをゴム製のエラスティックダンパーが囲むような構造となっている。コンセプト自体は従来モデルと同じだが、この構造によってシートステーの形状が直線に近くなり、剛性の向上につながっているという。
プレゼンテーションで、マイク・シンヤード(スペシャライズド創業者)は「今、世の中に存在するカーボンフレームの中で、間違いなくベストな一台だ」と断言した。開発コストの増大を承知で理想の走りを追求したROUBAIX SL4の出現は、今後のフレーム設計に大きな影響を与えることになるだろう。
ヤグラ下部で大きく湾曲し、間にゴム製のエラスティックダンパーを仕込んだ「コブルゴブラー」 photo:Yukio Yasui
後方からクリップのようにフォークとシートステーをはさみこむ新型ゼルツ photo:Yukio Yasui
トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)がパリ〜ルーベで使用したプロトタイプのROUBAIX photo:Makoto Ayano
インプレッション「進化幅はこのROUBAIXのほうが大きい」
酸素の薄さを感じるほどの高地で新モデルを試乗 photo:Yukio Yasui試乗したのはS-WORKS。SL3に比べると動的性能の向上は明確で、加速・コーナリング時の軽快さは段違い。この性能は、従来のルーベが持つ「ただの安楽バイク」というイメージとは全く一致しない。驚いたのはヘッド~フォークのバランスである。ダンシングでハンドルを振り回すと、このバイクの進化と真価が実感できる。柔らかくもなく、硬すぎてつっぱりもせず、いい意味でフォークの存在感が全くない(少なくともサイズ49では)。
サドルとBB部に伝わってくる振動はよりマイルドになった。マクラーレン社と共同で振動解析を行ったとのことだが、ただ振動を減少させたのではなく、伝わり方を綿密にチューニングしたような印象を受ける。単純な「剛性のアップ」ではなく、フレーム~フォークのバランスをサイズごとに最適化し、上質なライドクオリティを加えてきたという意味では、SL3→SL4の進化幅はTARMACよりもROUBAIXのほうが大きい。スペシャライズド社のフレーム設計における技術レベルが一段上がったことを実感した。
photo&text:Yukio Yasui in Snowbird, USA
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昨年、競技専用車たるTARMACをSL4に進化させ、圧倒的な剛性と動的性能で世のピュアレーサー達を驚かせたスペシャライズド。そのTARMACを追うようにして、今年は快適性を重視したROUBAIXシリーズがSL4世代へと移行した。
サイズ別にフォークを専用設計とした新型
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「大柄なライダーだとバイク前半が剛性不足になりがちで、小柄なライダーには剛性過多になりやすい。それを解消して、どのフレームサイズでも完全なライドフィールを提供する“サイズ・スペシフィック・フォーク”は、開発サイドとして非常に大きなポイントだった。生産費用はもちろん、エンジニアリングタイム(設計に費やされた時間)を含めるとコストは跳ね上がるけど、ここはROUBAIX SL4開発のキーポイントだったんだ」とエンジニア。ここまで徹底したサイズ別設計はもちろん世界初。これこそがROUBAIX SL4最大の注目点である。
湾曲ピラーの採用で振動がSL3比で半減 ゼルツも一新
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フォークブレードとシートステーに設けられる振動吸収材、ゼルツはSL4でも使われているが、形状は大幅に変更されている。SL3ではシートステーとフォークに設けた窪みにゼルツをボルトオンしていたが、SL4では左右から挟み込むような形状に。真ん中にアルミを設け、その周りをゴム製のエラスティックダンパーが囲むような構造となっている。コンセプト自体は従来モデルと同じだが、この構造によってシートステーの形状が直線に近くなり、剛性の向上につながっているという。
プレゼンテーションで、マイク・シンヤード(スペシャライズド創業者)は「今、世の中に存在するカーボンフレームの中で、間違いなくベストな一台だ」と断言した。開発コストの増大を承知で理想の走りを追求したROUBAIX SL4の出現は、今後のフレーム設計に大きな影響を与えることになるだろう。
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インプレッション「進化幅はこのROUBAIXのほうが大きい」
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photo&text:Yukio Yasui in Snowbird, USA