2012/06/25(月) - 06:14
チームのために走りチームを立ち上げた男が、ついにキャリア初の勝利を飾った。フルメンバーが参戦した東日本ロード、序盤から逃げた廣瀬佳正(宇都宮ブリッツェン)がスプリントを制した。
グレードが上から2番目に高いAAに位置づけられる6月24日(日)の実業団東日本ロード。今年で46回目の歴史ある大会。距離も長めの150kmに設定され、そして参加チーム・メンバーはすべてと言っていい、シーズン序盤の実業団頂上決戦だ。
ビッグタイトルを狙う選手たちの中でも有力候補は、このコースを得意とする畑中勇介(シマノレーシング)、1週間目の全日本個人TTチャンピオンの西薗良太(ブリヂストンアンカー)、JPTリーダー増田成幸(宇都宮ブリッツェン)、そして鈴木真理(キャノンデールスペースゼロポイント)ら。シマノもアンカーも数日後に海外遠征を控えるため、ここでぜひ勝っておきたいところ。
会場は群馬CSC6kmサーキット。ここを25周する160kmで争われた。朝から晴天に恵まれた会場、P1クラスは12時のスタート。その直後からアタックがかかる。レース前に逃げると公言していた阿部嵩之(シマノレーシング)を中心にアタックの応酬に。一旦は10人ほどが先行するが仕切りなおした2周目、13人の逃げができる。さらに3周目に3人が合流して逃げは16人に。シマノ3人(鈴木譲、阿部、入部正太朗)、マトリックスパワータグは安原大貴と池部壮太、チーム右京は嶌田義明と若杉圭祐、キャノンデールは遠藤績穂と岡泰誠、Team MASSA-ANDEXは丸山厚と伊藤翔吾、ブリヂストンアンカーU23は平井栄一と椿大志、さらに廣瀬佳正(宇都宮ブリッツェン)、内野直也(湘南ベルマーレ)、井上和郎(ブリヂストンアンカー)の計16名。この逃げは人数を減らしながら最後まで逃げ切ることになる。
メイン集団は落ち着き2分ほどの差に。5周目にメイン集団から福島晋一(ボンシャンス飯田JPT)と山本聖吾(イナーメ・アイランド信濃山形-JPT)が、そして飯島誠(GRUPPO ACQUA TAMA)と栂尾大知(パールイズミ・スミタ・ラバネロ)が追走する。さらに7周目、森本誠(イナーメ・アイランド信濃山形-JPT)、普久原奨(宇都宮ブリッツェン)、ワン・インチー(ボンシャンス飯田JPT)が追走に出る。
これら追走メンバーのうち、森本と普久原が50kmにわたる追走のすえ、15周目に先頭集団に合流する。
メイン集団は最大5分差にまで広がる。組織だった動きはキャノンデール勢がペースを上げようと動いたが同調する動きにならず差は開く。中盤過ぎてから畑中、西薗、増田、鈴木真理ら有力どころが動くが後が続かず、先頭との差は少しずつしか縮まらない。
18周目、先頭から阿部と椿がアタックして逃げる。椿は1週間前の全日本個人TTのU23で優勝しており、阿部はもちろん独走が得意。この2人の逃げは強力でゴールまでの60kmを逃げ切るかに見えた。が、集団はこれを追走、森本が多く引いて5周後の23周目に吸収する。
さらにその周回の上り区間で鈴木譲がペースを上げると廣瀬と平井の3人が抜け出す。この3人でローテーションするが、またも森本と井上が多く引く集団がこれを吸収。10人で最終周回へ入る。
ここで阿部がアタック、森本が追走して心臓破りの坂へ。仕掛けたのは井上。これに廣瀬、鈴木譲、平井が反応、森本とともにゴールスプリントへ。鈴木譲そして平井をかわして最後に先頭に立ったのは廣瀬。たくさんのサポーターがいる前で雄叫びを上げてゴール。
メイン集団は最後に追い上げ、1分11秒差で鈴木真理を先頭にゴール。18歳の小橋勇利(ボンシャンス飯田JPT)はその6番手でゴールした。
優勝した廣瀬は、長い競技生活でメジャーレースでの勝利は初めて。今までチームのために走り続けてきた廣瀬は、宇都宮ブリッツェン立ち上げの中心人物。立ち上げ後もチームの仕事をこなし、レースではチームメイトのためにアシストしてきた。この日は宇都宮などから訪れたたくさんのサポーターそして家族がいる前での優勝。表彰式が終わるまでずっと、廣瀬の目は潤んでいた。
この日は森本の動きがポイントだった。廣瀬を終盤にアシストしたのは普久原。その普久原とともに先頭に追いついたのは森本。そのため廣瀬は逃げの当初はローテーションに加わらず脚を貯めることができた。さらに終盤の阿部と椿の逃げをおもに追ったのは森本。そして最終周回の阿部のアタックに反応したのも森本。富士山ヒルクライムで驚きの走りを見せた森本は、ロードレースでも高いポテンシャルを見せた。
そしてブリヂストンアンカーU23勢の強さも光った。全日本選手権ロードエリートで全員が前方で完走したが、そのときに強烈なアタックを仕掛けたのは椿だった。今回も椿のアタックと平井のスプリントの連携が光った。
結果
P1クラス 150km
1位 廣瀬佳正(宇都宮ブリッツェン)3時間49分02秒
2位 平井栄一(ブリヂストンアンカーU23)
3位 鈴木譲(シマノレーシング)
4位 井上和郎(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)
5位 森本誠(イナーメ・アイランド信濃山形-JPT)+01秒
6位 入部正太朗(シマノレーシング)+06秒
7位 普久原奨(宇都宮ブリッツェン)
8位 安原大貴(マトリックスパワータグ)+08秒
9位 阿部嵩之(シマノレーシング)+16秒
10位 椿大志(ブリヂストンアンカーU23)+1分01秒
Jプロツアーリーダー 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)
U23リーダー 平井栄一(ブリヂストンアンカーU23)
Fクラス 30km
1位 高橋奈美(Vitesse-Serotta-Feminin)54分16秒
2位 西加南子(LUMINARIA)
3位 赤塚友梨恵(Ready Go JAPAN)+31秒
Jフェミニンリーダー 高橋奈美(Vitesse-Serotta-Feminin)
E1クラス 60km
1位 山崎航(Team EURASIA)1時間29分48秒
2位 金田智行(湘南ベルマーレクラブ)
3位 小坂光(ブラウ・ブリッツェン)
4位 黒岩信允(Racing VAX)+01秒
5位 真坂哲平(ブラウ・ブリッツェン)
6位 大森廉(湘南ベルマーレクラブ)
E2クラス 42km
1位 山下雅典(SPADE・ACE)1時間03分25秒
2位 鈴木悠史(トーヨー・レーシング・チーム)
3位 佐々木謙介(チバポンズかわぐち農園)
4位 小口尚思(スミタ・ラバネロ)+01秒
5位 河合達朗(チーム・Y)+02秒
6位 長塚寿生(SPACE ZEROPOINT)
E3クラス 36km
1位 末永周平(明治大学自転車部)56分01秒
2位 市山襄(明治大学自転車部)
3位 西沢倭義(明治大学自転車部)
4位 城下直哉(SPADE・ACE)+01秒
5位 加納篤(ブラウ・ブリッツェン)+02秒
6位 古知屋一成(SEKIYA)+05秒
photo&text:高木秀彰
グレードが上から2番目に高いAAに位置づけられる6月24日(日)の実業団東日本ロード。今年で46回目の歴史ある大会。距離も長めの150kmに設定され、そして参加チーム・メンバーはすべてと言っていい、シーズン序盤の実業団頂上決戦だ。
ビッグタイトルを狙う選手たちの中でも有力候補は、このコースを得意とする畑中勇介(シマノレーシング)、1週間目の全日本個人TTチャンピオンの西薗良太(ブリヂストンアンカー)、JPTリーダー増田成幸(宇都宮ブリッツェン)、そして鈴木真理(キャノンデールスペースゼロポイント)ら。シマノもアンカーも数日後に海外遠征を控えるため、ここでぜひ勝っておきたいところ。
会場は群馬CSC6kmサーキット。ここを25周する160kmで争われた。朝から晴天に恵まれた会場、P1クラスは12時のスタート。その直後からアタックがかかる。レース前に逃げると公言していた阿部嵩之(シマノレーシング)を中心にアタックの応酬に。一旦は10人ほどが先行するが仕切りなおした2周目、13人の逃げができる。さらに3周目に3人が合流して逃げは16人に。シマノ3人(鈴木譲、阿部、入部正太朗)、マトリックスパワータグは安原大貴と池部壮太、チーム右京は嶌田義明と若杉圭祐、キャノンデールは遠藤績穂と岡泰誠、Team MASSA-ANDEXは丸山厚と伊藤翔吾、ブリヂストンアンカーU23は平井栄一と椿大志、さらに廣瀬佳正(宇都宮ブリッツェン)、内野直也(湘南ベルマーレ)、井上和郎(ブリヂストンアンカー)の計16名。この逃げは人数を減らしながら最後まで逃げ切ることになる。
メイン集団は落ち着き2分ほどの差に。5周目にメイン集団から福島晋一(ボンシャンス飯田JPT)と山本聖吾(イナーメ・アイランド信濃山形-JPT)が、そして飯島誠(GRUPPO ACQUA TAMA)と栂尾大知(パールイズミ・スミタ・ラバネロ)が追走する。さらに7周目、森本誠(イナーメ・アイランド信濃山形-JPT)、普久原奨(宇都宮ブリッツェン)、ワン・インチー(ボンシャンス飯田JPT)が追走に出る。
これら追走メンバーのうち、森本と普久原が50kmにわたる追走のすえ、15周目に先頭集団に合流する。
メイン集団は最大5分差にまで広がる。組織だった動きはキャノンデール勢がペースを上げようと動いたが同調する動きにならず差は開く。中盤過ぎてから畑中、西薗、増田、鈴木真理ら有力どころが動くが後が続かず、先頭との差は少しずつしか縮まらない。
18周目、先頭から阿部と椿がアタックして逃げる。椿は1週間前の全日本個人TTのU23で優勝しており、阿部はもちろん独走が得意。この2人の逃げは強力でゴールまでの60kmを逃げ切るかに見えた。が、集団はこれを追走、森本が多く引いて5周後の23周目に吸収する。
さらにその周回の上り区間で鈴木譲がペースを上げると廣瀬と平井の3人が抜け出す。この3人でローテーションするが、またも森本と井上が多く引く集団がこれを吸収。10人で最終周回へ入る。
ここで阿部がアタック、森本が追走して心臓破りの坂へ。仕掛けたのは井上。これに廣瀬、鈴木譲、平井が反応、森本とともにゴールスプリントへ。鈴木譲そして平井をかわして最後に先頭に立ったのは廣瀬。たくさんのサポーターがいる前で雄叫びを上げてゴール。
メイン集団は最後に追い上げ、1分11秒差で鈴木真理を先頭にゴール。18歳の小橋勇利(ボンシャンス飯田JPT)はその6番手でゴールした。
優勝した廣瀬は、長い競技生活でメジャーレースでの勝利は初めて。今までチームのために走り続けてきた廣瀬は、宇都宮ブリッツェン立ち上げの中心人物。立ち上げ後もチームの仕事をこなし、レースではチームメイトのためにアシストしてきた。この日は宇都宮などから訪れたたくさんのサポーターそして家族がいる前での優勝。表彰式が終わるまでずっと、廣瀬の目は潤んでいた。
この日は森本の動きがポイントだった。廣瀬を終盤にアシストしたのは普久原。その普久原とともに先頭に追いついたのは森本。そのため廣瀬は逃げの当初はローテーションに加わらず脚を貯めることができた。さらに終盤の阿部と椿の逃げをおもに追ったのは森本。そして最終周回の阿部のアタックに反応したのも森本。富士山ヒルクライムで驚きの走りを見せた森本は、ロードレースでも高いポテンシャルを見せた。
そしてブリヂストンアンカーU23勢の強さも光った。全日本選手権ロードエリートで全員が前方で完走したが、そのときに強烈なアタックを仕掛けたのは椿だった。今回も椿のアタックと平井のスプリントの連携が光った。
結果
P1クラス 150km
1位 廣瀬佳正(宇都宮ブリッツェン)3時間49分02秒
2位 平井栄一(ブリヂストンアンカーU23)
3位 鈴木譲(シマノレーシング)
4位 井上和郎(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)
5位 森本誠(イナーメ・アイランド信濃山形-JPT)+01秒
6位 入部正太朗(シマノレーシング)+06秒
7位 普久原奨(宇都宮ブリッツェン)
8位 安原大貴(マトリックスパワータグ)+08秒
9位 阿部嵩之(シマノレーシング)+16秒
10位 椿大志(ブリヂストンアンカーU23)+1分01秒
Jプロツアーリーダー 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)
U23リーダー 平井栄一(ブリヂストンアンカーU23)
Fクラス 30km
1位 高橋奈美(Vitesse-Serotta-Feminin)54分16秒
2位 西加南子(LUMINARIA)
3位 赤塚友梨恵(Ready Go JAPAN)+31秒
Jフェミニンリーダー 高橋奈美(Vitesse-Serotta-Feminin)
E1クラス 60km
1位 山崎航(Team EURASIA)1時間29分48秒
2位 金田智行(湘南ベルマーレクラブ)
3位 小坂光(ブラウ・ブリッツェン)
4位 黒岩信允(Racing VAX)+01秒
5位 真坂哲平(ブラウ・ブリッツェン)
6位 大森廉(湘南ベルマーレクラブ)
E2クラス 42km
1位 山下雅典(SPADE・ACE)1時間03分25秒
2位 鈴木悠史(トーヨー・レーシング・チーム)
3位 佐々木謙介(チバポンズかわぐち農園)
4位 小口尚思(スミタ・ラバネロ)+01秒
5位 河合達朗(チーム・Y)+02秒
6位 長塚寿生(SPACE ZEROPOINT)
E3クラス 36km
1位 末永周平(明治大学自転車部)56分01秒
2位 市山襄(明治大学自転車部)
3位 西沢倭義(明治大学自転車部)
4位 城下直哉(SPADE・ACE)+01秒
5位 加納篤(ブラウ・ブリッツェン)+02秒
6位 古知屋一成(SEKIYA)+05秒
photo&text:高木秀彰
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