2012/06/09(土) - 23:04
オスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)が3ステージ連続の逃げ切りを決め、総合リーダー、ジェイ・クロフォード(オーストラリア)とのタイム差逆転に成功し、イエロージャージに袖を通した。ステージ優勝はプジョルと一緒に逃げたハミド・シリシサン(イラン、ウズベキスタン・スラン)が獲得。
日没まで開催された最後の難関ステージ
イスラム教の安息日にあたる金曜日。この日は関係者がお祈りに行く時間が考慮されて、スタートは14時とゆっくりのタイムスケジュールが組まれた。しかし、スタートが遅いというだけで、パダン・パンジャンからシンカラまでのレース距離は149km、途中に1級山岳が含まれる厳しい山岳ステージとなっており、ゴール予定時間は18時。そこからパダンまで2時間の移動が待っているという、なんともスタッフ泣かせの1日だった。
今大会で圧倒的な登坂力を見せつけているのが、昨年オメガファーマ・ロットに所属していたオスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)。第3、第4ステージと逃げ切りを決め、総合順位はトップから46秒差の5位。翌日からの第6,第7ステージは平坦基調となるためこのステージに総合順位逆転の望みをかける。
雨が降る中、パダン・パンジャンの街をスタートすると、シンカラ湖へと抜ける下りで激しいアタックがかかり、中島康晴(愛三工業レーシング)や六峰亘(日本ナショナル)らが含まれた9人の逃げが決まり、コースのちょうど中盤に組み込まれた平均勾配8.1%の1級山岳に向けて後続からタイム差を奪う。
昨ステージの「ケロック44」の登坂区間も日本人選手からは衝撃的な厳しさだったが、今回の1級山岳もコースプロフィールを見ると、平均勾配では「ケロック」の上を行く。またこれまでにコースに上りとして組み込まれたことがなかったため、状況が読めないなかで選手たちは上り口へと到着した。
得意の登坂区間でオスカル・プジョルがアタック
9人の先頭集団は徐々に人数を減らしながら、次から次へと登場する壁のような坂を上っていく。そして、やはり集団からは総合逆転を狙うオスカル・プジョルが単独で飛び出して前を追った。彼を追い掛けるようにして、総合リーダー、ジェイ・クロフォード(オーストラリア)擁するジェネシスがメイン集団を牽引。しかし本格的な上りが始まると、アシスト選手が脱落し、中盤を過ぎる頃にはクロフォード本人が、先頭を必死に引く形となる。
KOMの山頂付近で、9人の先頭集団は完全にバラけ、山頂を過ぎてからの、さらに続く登坂区間で、山頂をトップ通過したハミド・シリシサン(イラン、ウズベキスタン・スラン)にプジョルが合流。2人の先頭グループができ、後続はクロフォードを含む8人ほどのグループという展開になる。
総合5位のプジョルと総合首位のクロフォードとのタイム差は46秒。両者渾身の走りで長い下りを終え、シンカラ湖のほとりに設置されたゴール地点をめざす。そして、日が落ち始めたフィニッシュラインに飛び込んできたのはシリシサンとプジョルの2選手だった。2名のスプリントをシリシサンが制し、そこから遅れること1分47秒、がっくりと頭を下げたクロフォード擁する第2グループがゴールし、黄色のリーダージャージはプジョルの手に渡ることになる。
プジョルは「上り始めまでに、少しタイム差が大きく開いてしまっていたけど、前をめざしてアタックをかけた。美しい景観の上りを、キツかったけど楽しませてもらったよ。昨日のステージで総合逆転ができず、今日はチャンスがあるのか、わからなかった。でも、動かないことには何も始まらない。だから仕掛けて、最後にリーダージャージを獲得したんだ」と振り返る。
日本ナショナルチーム、山本元喜が総合8位でフィニッシュ
寺崎武郎、山本元喜(日本ナショナル)、鈴木謙一(愛三工業レーシング)がトップから3分27秒差の第3集団でフィニッシュ。厳しい山岳2連戦を終えて、山本元喜が総合8位、寺崎武郎が総合9位と、アジアツアーの強豪選手のなかで、非常にいい位置に付けている。「ここぞ、という勝負どころで粘れるかどうかが課題」とスタート前に高橋松吉監督は話していたが、若い選手の今後が楽しみだ。
ツール・ド・シンカラ第5ステージ結果
1位 ハミド・シリシサン(イラン、ウズベキスタン・スラン) 3h46'54"
2位 オスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)
3位 ペトルス・ウエスタンブルグ(オランダ、グローバルサイクリング)+1'45"
4位 フェン・チュンカイ(台湾、アクション)
5位 ヴァイド・ガファリ(イラン、アザド大学)
6位 アレクサンドル・クレメンツ(オーストラリア、オーストラリアナショナル)+1'47"
16位 寺崎武郎(日本ナショナル)+3'27"
17位 鈴木謙一(愛三工業)
20位 山本元喜(日本ナショナル)
23位 中島康晴(愛三工業)+3'34"
44位 伊藤雅和(愛三工業)+11'40"
66位 六峰亘(日本ナショナル)+17'10"
82位 平井栄一(日本ナショナル)+17'22"
84位 清水太己(日本ナショナル)
97位 木守望(愛三工業)+33'35"
DNF 綾部勇成(愛三工業)
個人総合順位
1位 オスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)+15h39'50"
2位 ジェイ・クロフォード(オーストラリア、ジェネシス)+1'08"
3位 フェン・チュンカイ(台湾、アクション)+1'15"
4位 アレクサンドル・クレメンツ(オーストラリア、オーストラリアナショナル)+1'29"
5位 ダディ・スラディ(インドネシア、プトラペルジャンガン)+1'31"
6位 ジョン・エブソン(デンマーク、CCN)+2'30"
8位 山本元喜(日本ナショナル)+4'57"
9位 寺崎武郎(日本ナショナル)+6'10"
18位 鈴木謙一(愛三工業)+11'19"
21位 伊藤雅和(愛三工業)+12'48"
27位 秋丸湧哉(日本ナショナル)+15'10"
50位 中島康晴(愛三工業)+30'57"
71位 平井栄一(日本ナショナル)+45'48"
73位 六峰亘(日本ナショナル)+49'01"
84位 清水太己(日本ナショナル)+1h04'01"
87位 木守望(愛三工業)+1h09'32"
ポイント賞
オスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)
山岳賞
オスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)
チーム総合首位
プトラペルジャンガン
photo & text : Sonoko Tanaka
日没まで開催された最後の難関ステージ
イスラム教の安息日にあたる金曜日。この日は関係者がお祈りに行く時間が考慮されて、スタートは14時とゆっくりのタイムスケジュールが組まれた。しかし、スタートが遅いというだけで、パダン・パンジャンからシンカラまでのレース距離は149km、途中に1級山岳が含まれる厳しい山岳ステージとなっており、ゴール予定時間は18時。そこからパダンまで2時間の移動が待っているという、なんともスタッフ泣かせの1日だった。
今大会で圧倒的な登坂力を見せつけているのが、昨年オメガファーマ・ロットに所属していたオスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)。第3、第4ステージと逃げ切りを決め、総合順位はトップから46秒差の5位。翌日からの第6,第7ステージは平坦基調となるためこのステージに総合順位逆転の望みをかける。
雨が降る中、パダン・パンジャンの街をスタートすると、シンカラ湖へと抜ける下りで激しいアタックがかかり、中島康晴(愛三工業レーシング)や六峰亘(日本ナショナル)らが含まれた9人の逃げが決まり、コースのちょうど中盤に組み込まれた平均勾配8.1%の1級山岳に向けて後続からタイム差を奪う。
昨ステージの「ケロック44」の登坂区間も日本人選手からは衝撃的な厳しさだったが、今回の1級山岳もコースプロフィールを見ると、平均勾配では「ケロック」の上を行く。またこれまでにコースに上りとして組み込まれたことがなかったため、状況が読めないなかで選手たちは上り口へと到着した。
得意の登坂区間でオスカル・プジョルがアタック
9人の先頭集団は徐々に人数を減らしながら、次から次へと登場する壁のような坂を上っていく。そして、やはり集団からは総合逆転を狙うオスカル・プジョルが単独で飛び出して前を追った。彼を追い掛けるようにして、総合リーダー、ジェイ・クロフォード(オーストラリア)擁するジェネシスがメイン集団を牽引。しかし本格的な上りが始まると、アシスト選手が脱落し、中盤を過ぎる頃にはクロフォード本人が、先頭を必死に引く形となる。
KOMの山頂付近で、9人の先頭集団は完全にバラけ、山頂を過ぎてからの、さらに続く登坂区間で、山頂をトップ通過したハミド・シリシサン(イラン、ウズベキスタン・スラン)にプジョルが合流。2人の先頭グループができ、後続はクロフォードを含む8人ほどのグループという展開になる。
総合5位のプジョルと総合首位のクロフォードとのタイム差は46秒。両者渾身の走りで長い下りを終え、シンカラ湖のほとりに設置されたゴール地点をめざす。そして、日が落ち始めたフィニッシュラインに飛び込んできたのはシリシサンとプジョルの2選手だった。2名のスプリントをシリシサンが制し、そこから遅れること1分47秒、がっくりと頭を下げたクロフォード擁する第2グループがゴールし、黄色のリーダージャージはプジョルの手に渡ることになる。
プジョルは「上り始めまでに、少しタイム差が大きく開いてしまっていたけど、前をめざしてアタックをかけた。美しい景観の上りを、キツかったけど楽しませてもらったよ。昨日のステージで総合逆転ができず、今日はチャンスがあるのか、わからなかった。でも、動かないことには何も始まらない。だから仕掛けて、最後にリーダージャージを獲得したんだ」と振り返る。
日本ナショナルチーム、山本元喜が総合8位でフィニッシュ
寺崎武郎、山本元喜(日本ナショナル)、鈴木謙一(愛三工業レーシング)がトップから3分27秒差の第3集団でフィニッシュ。厳しい山岳2連戦を終えて、山本元喜が総合8位、寺崎武郎が総合9位と、アジアツアーの強豪選手のなかで、非常にいい位置に付けている。「ここぞ、という勝負どころで粘れるかどうかが課題」とスタート前に高橋松吉監督は話していたが、若い選手の今後が楽しみだ。
ツール・ド・シンカラ第5ステージ結果
1位 ハミド・シリシサン(イラン、ウズベキスタン・スラン) 3h46'54"
2位 オスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)
3位 ペトルス・ウエスタンブルグ(オランダ、グローバルサイクリング)+1'45"
4位 フェン・チュンカイ(台湾、アクション)
5位 ヴァイド・ガファリ(イラン、アザド大学)
6位 アレクサンドル・クレメンツ(オーストラリア、オーストラリアナショナル)+1'47"
16位 寺崎武郎(日本ナショナル)+3'27"
17位 鈴木謙一(愛三工業)
20位 山本元喜(日本ナショナル)
23位 中島康晴(愛三工業)+3'34"
44位 伊藤雅和(愛三工業)+11'40"
66位 六峰亘(日本ナショナル)+17'10"
82位 平井栄一(日本ナショナル)+17'22"
84位 清水太己(日本ナショナル)
97位 木守望(愛三工業)+33'35"
DNF 綾部勇成(愛三工業)
個人総合順位
1位 オスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)+15h39'50"
2位 ジェイ・クロフォード(オーストラリア、ジェネシス)+1'08"
3位 フェン・チュンカイ(台湾、アクション)+1'15"
4位 アレクサンドル・クレメンツ(オーストラリア、オーストラリアナショナル)+1'29"
5位 ダディ・スラディ(インドネシア、プトラペルジャンガン)+1'31"
6位 ジョン・エブソン(デンマーク、CCN)+2'30"
8位 山本元喜(日本ナショナル)+4'57"
9位 寺崎武郎(日本ナショナル)+6'10"
18位 鈴木謙一(愛三工業)+11'19"
21位 伊藤雅和(愛三工業)+12'48"
27位 秋丸湧哉(日本ナショナル)+15'10"
50位 中島康晴(愛三工業)+30'57"
71位 平井栄一(日本ナショナル)+45'48"
73位 六峰亘(日本ナショナル)+49'01"
84位 清水太己(日本ナショナル)+1h04'01"
87位 木守望(愛三工業)+1h09'32"
ポイント賞
オスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)
山岳賞
オスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)
チーム総合首位
プトラペルジャンガン
photo & text : Sonoko Tanaka
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