6月2日に長野県・富士見パノラマリゾートで行われた全日本マウンテンバイク選手権大会DHI。その会場で決勝前のレースピットを訪れて、注目選手たちに今期の体制やマシンのセッティングなどについて話を聞いた。

#7 阿藤寛(1-jyo Telescope/Lapierre)

阿藤寛(1-jyo Telescope/Lapierre)阿藤寛(1-jyo Telescope/Lapierre)

トゥルバティブのX0カーボンクランクと、コーワ・ターサスペダルの組み合わせトゥルバティブのX0カーボンクランクと、コーワ・ターサスペダルの組み合わせ -まず今日の意気込みを聞かせてください

トップ5には入りたいですね。UCIでポイント獲得対象なのが7位までですので。表彰台、と言えないのは、実は二週間前に左手を大きく怪我してしまい、それがかなりひどいんですね。痛みは薬でなんとか抑える事ができるのですが、握力がまったくないんです。これはテーピングで修正しようとしてもだめでした。
ですから、予選は手の握力の在庫といいますか、温存して走ります。対策として久しぶりにグローブもしたんですけど、手の面とグリップのずれが気になって、やはりだめでした。

-MTBに乗る、という事以外で何か力を入れたり活動されている事はありますか?

ぼくは一条アルチメイトファクトリーが運営するチームに所属するのですが、お店では裏方の作業に徹していて、その一環でビデオを作っています。1-jyo Telescopeというwebサイトです。観てみてください。

-バイクについても聞かせてください

今年はラピエールを駆っています。このバイク、パッと見た目の印象はクセモノ感があるんですけど、乗ると全然そういったのはないんです。とても自然に乗れます。

サスペンションはテスト品だ。トリプルクランプが目を引くサスペンションはテスト品だ。トリプルクランプが目を引く ラピエールの特徴であるペンドボックスラピエールの特徴であるペンドボックス BBがフローティングされているBBがフローティングされている


あと、他所のバイクとは設計思想がまったく違う、という印象を受けます。リアバックがしなるんですね。縦ではなくて横方向に。この特性がコーナリングでアドバンテージになっています。それと、リアセンター・センタートップ共にものすごく長いんです。この辺からしても、見た目の印象で異色のバイクと言えると思います。
リアサスペンション機構に独自のペンドボックスというものを採用していて、はじめはBB(ボトムブラケット)がフローティング構造なのでそれが気になるかな、と思ったんですけど、まったく気になりませんでした。
で、この機構がおもしろいんですね。リアスイングアームが上側に動くとBBは前に動くんです。そのお陰かキックバックがまったく来ません。機構周りに見えるボルト3つを一直線になるようサグ出しをすると適性になる、というセッティングのイージーさも良い点だと思います。

-リアショックは珍しいエルカ製ですね

はい、エルカはサポートしていただいています。特性としては、リバウンドが反比例するのが特徴ですね。速い入力に対してはゆっくりと戻る。遅い入力に対しては逆です。ですから細かい砂利の路面でも大きいバンプでも、等しく適性に反応してくれます。ロッドの動きがとてもスムーズな点もポイントです。
エルカは車種毎に特性を調整した商品を用意する、という体制を取っていて、「これ用が欲しい」と言うとそれにあった特性に調整されて出荷されるんです。

-なるほど。怪我を推しての出走ですが健闘を期待します。本日はありがとうございました。


#8 小山航(BANSHEE)

小山航(BANSHEE)小山航(BANSHEE)

セイントクランクにXTRのSPDペダル。昨年からの継続仕様になるセイントクランクにXTRのSPDペダル。昨年からの継続仕様になる -昨年もインタビューさせてもらいましたが、今年変わった点などはありますか?

体制に変更はありませんね。バイクのサイズをSからMに変えたぐらいです。これは、昨年の振り回す乗り方から、今年は無茶をしてもバイクが助けてくれる方向性にスイッチしたからです。サイズを大きくするとバイクもライダーも挙動がややおおらかになります。変わって、Sサイズは暴れる代わりにライダー自身の可動域は広いですよね。この辺は乗り方の好みになってくると思います。

突き出し量などの変更で、好みのセッティングに追い込んでいる突き出し量などの変更で、好みのセッティングに追い込んでいる -そのサイズ変更も含めてバイクに乗り始めたのは?

開幕の一週間前からです。ぼくは、冬の間はまったく自転車に乗らないんです。スノーボードなどをする時間が増えますね。でも足や腰の使い方で共通点は多くて、おかげで開幕から身体はよく動いてくれました。

-フロントサスペンションに今年もBOSを使っていますね:

昨年まではサポートしていただいてたんです。今年は自前です。昨年まで3年間使ってノートラブルだったので、実力あるブランドだと思います。今年のサスペンションは見た目に変化はありませんが、新型です。シールが変わったそうです。

-新型になった事で何か変更点は?

見た目的には昨年と変化がないように見えるが、リニューアルされているBOS見た目的には昨年と変化がないように見えるが、リニューアルされているBOS セッティングには結構時間がかかりましたね。フレームサイズが変わった事も影響していると思います。今は突き出し量を減らしてヘッドアングルを寝かせたセッティングです。
ハンドルポジションを上げたかった、というのもあっていろいろ試して今の状態に落ち着きました。とてもモノはいいんですけど、ちょっと高値な所がたまにキズですかね。

-MTBに乗る、という事以外で何か力を入れたり活動されている事はありますか?

ぼく、国際自然環境アウトドア専門学校の卒業なんですけど、そこの同期がキャンプ場をやっていて、8月の中旬頃にスクールを開いて欲しいという事で、それを予定しています。
あとは富士見パノラマで、ショップスクールに参加させてもらっています。教えるのがとても好きなんですよ。

-なるほど。新しい仕様での活躍が楽しみです。本日はありがとうございました。


#9 井本はじめ(Team Transition Racing)

井本はじめ(Team Transition Racing)井本はじめ(Team Transition Racing)

-まず今日の意気込みを聞かせてください

感触として、普通に走れればイケる、という感じです。とにかく攻めきって。午前中の時点では、コンディションもちょっと湿ってる程度で、今日は自分好みの路面です。自分の走りをできれば、という感じですね。

相当に突き出して見えるフォークセッティングは、好みと仕様から導き出された結果という相当に突き出して見えるフォークセッティングは、好みと仕様から導き出された結果という 井本選手お気に入りのペダル、ヌークプルーフ・プロトン。軽量さがウリ井本選手お気に入りのペダル、ヌークプルーフ・プロトン。軽量さがウリ


12年モデルから採用されたリアアクスルのポジション選択。3パターンから選べる12年モデルから採用されたリアアクスルのポジション選択。3パターンから選べる -昨シーズンから体制などに変更はありますか?

体制は昨年と変わりません。バイクなどは一式、小川輪業さんに出していただいて、レース会場での面倒はキャサリンバイクスさんに診ていただいています。フロントサスペンションが今期から、マムアンドポップス(輸入卸業)さんに出していただけるようになり、これはうれしかったです。

-それはどういった経緯で?

先方さんから声を掛けてもらえたんです。昨年の成績が認められた、という事でしょうか。あと、タイヤでマキシスも使い続けていたのですけど、今シーズンから“スポンサー”として新たに提供していただける事になりました。

-MTBに乗る、という事以外で何か力を入れたり活動されている事はありますか?

NinjyaTVという活動をしています。これも関連するのですが、ぼくの中では“自転車中心に楽しく”が目的にあるんです。そうすると、日々が充実する。毎日が楽しければそれが1番ですね。

-バイクについても聞かせてください

リア・アクスルの位置が変更できるようになった、というのが今年のモデルからで、大きな変更点です。ぼくは、フレームはMサイズを選択して、このアクスルを1番短くして詰める方向でセッティングをまとめています。全体の印象としては、相変わらず乗りやすいバイクですね。クセというものがないんです。今期も、バイクはいい調子です。

-フォークの突き出しがかなり出ている印象なのですが

このフォークは、突き出しの推奨値がマニュアルで上側16.7cmというのがありまして、それをぼくは7mm縮めて16cmで使用しています。フレームがテーパードでヘッドチューブが短いので、余計に“出ている”という印象を与えるのかもしれません。

他に、ヌークプルーフ・プロトンのペダルがすごくいいですね。マグネシウムボディとチタンシャフトで構成されるトップモデルなのですが、もの凄く軽くて、プラペダル並みのイメージです。

―なるほど。あのペダルの軽さって確かに異次元ですよね。本日はありがとうございました。


#10 栗瀬裕太(team mongoose)

栗瀬裕太(team mongoose)栗瀬裕太(team mongoose)

栗瀬選手の乗り方だと、ダイレクトマウントを変更しポジションが下がった効果が非常に大きいという栗瀬選手の乗り方だと、ダイレクトマウントを変更しポジションが下がった効果が非常に大きいという -昨年もインタビューさせてもらいましたが、今年変わった点などはありますか?

体制に変更はありません。DHに限らず、ずべてマングースサポートです。

-今シーズンは富士見パノラマのフォークロスコース作成から外れた、と伺ったのですが?

これはですね、以前から会社からはファミリーゲレンデをレベルダウンして欲しい、という声があったんです。昨年は内嶋君(元DHライダー)がフォークロスレースをシリーズ戦で開催する、という計画があったのでそれをプッシュする意味で押し通して作らせてもらいました。
今年はそれがもう押し通せなくなった、という事ですね。毎回、大阪から出て来てるので、本格的なコースが作れなければ、と。
昔は瀬女(石川県)に立派なコースがあったのですが、今は閉鎖されちゃっていますから、これで終わりです。

-課金制の新しいコース作成の構想がある、とも聞いていますが

はい、実はここ(富士見パノラマ)から30分ぐらいの所にBMX用ですが作っています。課金とかはまだ決めていませんが、用地や作業代というのがあるので、出資者を募って、3月ぐらいからひとりでコツコツとやっています。
現状はBMXコースとDJ(ダートジャンプ)を設けて、底辺の拡大や技術の向上、プロライダー育成を狙っています。
というのがですね、世界のBMXってスタートヒルもジャンプもとんでもなく大きいんです。で、エクアドル選手の例があるんですが、元々、彼らもやはりBMXレースの文化なんてない。それが協会などが発起して世界レベルのコースを作るようになったら、多くのライダーがメキメキと力をつけて世界に出てきたんですね。だから、日本にもそういうコースが必要なんです。
ぼくが若い頃は多くのカリスマライダーがいて、それに憧れて乗り始めたりする。今では同じ土俵に立たせてもらっていますが、塚本(岳)選手なんて当時、メチャメチャ憧れだったんですね。そういう環境をもう一度作りたい。

-確かにぼくも、当時、白馬・岩岳などで塚本選手とかを見かけて震えたものです

そう、それなんです。催しモノがあって、フィールドがあって、そこで多くの観客を惹きつけるパフォーマンスがあって。そういったものをもう一度盛り返したいんです。早ければ今年中にオープンして、スクールとデモぐらいはやりたいですね。とりあえずはBMXで、空きがあればバンプトラックなんかも作りたいですね。

-そうすると、全然自転車乗ってない?

はい、まったく乗っていません(笑)。今ならユンボで缶ジュースのプルタブ開けられそうなくらい、そっちの方が馴染んじゃっています。
でも、そういった中でだから昨日今日の成績がものすごく満足なんです(栗瀬選手は決勝後にインタビューした)。
決勝はちょっと他者とのアクシデントがあってもう少し詰められたかな、というのはありますが、今持っているパフォーマンスは出し切れていると思います。

ドライブトレイン周辺 ドライブトレイン周辺  リニューアルされたサスペンション機構、フリードライブリニューアルされたサスペンション機構、フリードライブ


完成車仕様の前後サスペンションはそのままに、パーツの小変更で留められている完成車仕様の前後サスペンションはそのままに、パーツの小変更で留められている 乗っているバイクはマイナーチェンジだけなのですが、かなり進化している印象です。軽くなったように感じるんです。またぼくは、グレードで言うと上から2番目のモデルに乗っていますが、それでもこの成績が出せます(決勝10位)。
あと、元々自分が持っているBMXなどのスキルに加え、AMAモトクロスで活躍しているジャスティン・バーシアのライディングスタイルが今、凄く嵌っていて、ぼくもDHでブイブイ言わせようとしています。
バイクのサイズをSにして、あと、今使っているダイレクトマウントにしたらハンドル位置が低くなって、そういった自分の持っているスキルを物凄く発揮できるようになりましたね。

-MTBに乗る、という事以外で何か力を入れたり活動されている事はありますか?

先ほどのコース製作に加えてweb tvと雑誌でライディング講座を努めています。

-何かまだ言いたい事があってウズウズしている様子なのでどうぞ(笑)

ショーアップはやっぱり大きな起爆剤になりますし、自転車を始めた頃のピュアな心を大切にしたいと思います。それと多くの選手に対して、憧れを持ちながらも「負けないぞ」と思っていろいろと取り組んでいきます!

-熱のあるお話、ありがとうございました。


#11 今泉仁(sunday riders-monkey)

今泉仁(sunday riders-monkey)今泉仁(sunday riders-monkey)

-まず「はじめまして」の人が多いと思いますので、簡単に自己紹介などをお願いします。

「いまいずみひろ」と申します。普段は原宿のアパレルショップで販売員をやっています。今回は金曜土曜とお休みをいただいていて、明日(日曜)はまた仕事です。
MTB歴は家がMTBショップ(東京・高田馬場にあるワークショップ モンキー)なので、長いです。小学生から乗っています。
DH自体は3年前から始めています。きっかけは4年前にカナダのウィスラーに行った事で、そこに3か月いたんですが、ものすごく影響を受けました。

-バイクが日本のDHシーンでは珍しいスコットですよね:

今年から乗っています。そのカナダに行った時に絡んだ好きなライダーと彼が所属するチーム、コースタルクルーが当時、スコットに乗っていて、その憧れが影響していますね。国内だと珍しいってのもいいし、実際乗ってもいいバイクです。

-そのDHですが、国内ではどのような戦歴になりますか?

3年間で、スポーツ→エキスパート→エリートと順調に上がってきて、エリートになっても予選落ちなく通っています。エリートとしての活動は今シーズンが初めてですが、今年もJシリーズは転戦する予定でいます。

-なるほど。そういえば、何かバイクに関連してマル秘トピックスがある、と聞きつけたのですが?

鋭いですね。実は、海外ではもう試験的に選手向けに出荷されているサンツアーのダブルクラウンサスペンション(RUX)を日本で初めてテストする予定でいます。時期は未定ですが、そういう話しにはなっています。残念ながらまだ販売はしないみたいですけど、今から楽しみにしています。

-ほう、それは確かに楽しみですね。本日はありがとうございました。


#12 五十嵐優樹(重力技研/STORMRIDERS)

五十嵐優樹(重力技研/STORMRIDERS)五十嵐優樹(重力技研/STORMRIDERS)

-まず「はじめまして」の人が多いと思いますので、簡単に自己紹介などをお願いします。

長野県在住の16才です。今月(6月)の27日で17才になります。MTB歴は、小学生でクロスカントリーを始めて、小学2年生の時に富士見パノラマのDコースを使ったDHに出て、そこからは卒業までダブルエントリーをしていました。
中学生からDHのみに専念しています。昨年まで2年間はコナのグラスルーツに所属していました。

-今シーズンは重力技研/STORMRIDERSですね

はい。きっかけは、昨年の白鳥のレースでフロントサスペンションが壊れて、周りから重力技研を紹介されてフォークを送って診てもらった事です。萩原さん(重力技研代表)にはたいへんお世話になっていまして、昨冬はある山を教えてもらい、そこを走ったりもしていました。

-着々と実力を付けて、今日はジュニアで優勝ですが、この成績はどういった流れで来たものですか?(五十嵐選手も決勝後にインタビューした)

MTBを始めた頃は、ただただ純粋に楽しかっただけですね。続けていくうちに速くなった。今は同じ地元の小山(航)さんたちに揉んでもらっていて、勉強になっています。エリートはやっぱりとても速いんですよ。今後も楽しみながらMTBと関われれば、と思います。

-これからの活躍も期待しています。本日はありがとうございました。



photo&report : Harumichi ”YAKAN” SATO

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