2012/05/18(金) - 09:08
序盤に形成された9名による逃げ切りが決まった。マリア・ローザ獲得を目論んだサンディ・カザールは26秒差で届かず。ラスト1.6kmで飛び出したラルスイティング・バクが個人として初のグランツールステージ優勝を飾った。
5月17日に開催されたジロ・デ・イタリア第12ステージ。255kmを走った前日と比べ、この日はちょうど100km少ない155kmで争われた。
第14ステージから始まるジロらしく厳しい山岳コース突入を明後日に控えたこの日のコースは、紺碧のティレニア海に面したセラヴェッツァから海岸線を北上し、内陸にある山岳を経由しながらセストリ・レヴァンテへと至る。
途中には2級山岳が1つ、3級山岳が2つ、4級山岳が1つ用意されているため、大会側が設定した難易度は星3つ。最後の3級山岳ヴィッラ・タッサーニは頂上からゴールまでの距離がわずか11kmと程近く、今ステージは序盤からの逃げ切り、もしくは終盤に抜け出したアタッカーに有利と見られていた。
この日はスタートから快晴に恵まれ、気温は20℃少々、湿度35%ほどとレースには絶好の天候に。デンマークステージでのクラッシュの影響を引きずるウィリアム・ボネ(フランス、FDJ・ビッグマット)はこの日スタートを取りやめた。
スタート後のファーストアタックはマッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)。しかし逃げにチャンスが多いこの日は、しばらくエスケープが決まらなかった。アタックと吸収を続ける集団からは、ようやく50kmを消化した付近で7名が抜け出しに成功する。しばらくして2名が追いつき、先頭集団は9名となる。逃げメンバーは以下の通り。
逃げた9名
ジャクソン・ロドリゲス(ベネズエラ、アンドローニジョカトリ)
イヴァン・サンタロミータ(イタリア、BMCレーシング)
アメツ・チュルカ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
サンディ・カザール(フランス、FDJ・ビッグマット)
ラルスイティング・バク(デンマーク、ロット・ベリソル)
アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)
ミカル・ゴラス(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
ヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・ニッサン)
マルティン・ケイゼル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
この中で総合成績が良いのは、4分1秒遅れにつけるカザール。最終的に総合争いで脅威になる選手が入っていなかったためメイン集団はこの動きを容認した。
協力してローテーションを繰り返し、差を広げていく先頭9名。カテゴリー山岳が4つ含まれるこの日のコースでは上りでゴラスが積極的な動きを見せた。
ポイントの獲得次第ではこの日のステージ終了後にマリア・アッズーラ着用の可能性があるゴラスは最初の4級山岳ラ・フォーチェと、91.7km地点のヴァリコ・グアイタローラでトップ通過。持ち点を25ポイントとし、ミゲルアンヘル・ルビアーノ(コロンビア、アンドローニ・ジョカトリ)と並んだ。
後方を走るメイン集団は、マリア・ローザのホアキン・ロドリゲス(スペイン)擁するカチューシャが集団前方に位置するものの先頭を追走する動きは見せない。徐々にタイム差は拡大していき、残り40kmで7分に。
この時点で先頭の逃げ切りが確定し、ヴァーチャルのマリア・ローザはカザールへと渡った。やがて広がり続けるタイム差にしびれを切らしたリクイガス・キャノンデール勢が集団のコントロールを開始した。
122.1km地点の3級ヴァリコ・ラ・モーラへと到達した先頭集団からは、頂上付近でゴラスがアタック。1位通過を果たし山岳賞を確定させると、後続が追ってこないのを確認したゴラスは頂上を越えてもペダルを止めず、単独で下りへと突入していく。
ステージ優勝に向けて、オーバーランしかけながらテクニカルなダウンヒルを飛ばしていくゴラスだったが、続く4級ラ・フォーチェの上り口でキャッチされる。逃げグループの中、確実に脚があるのはカザール。ステージ優勝とマリア・ローザ獲得を狙いたいカザールはペースアップを繰り返し、人数の絞込みにかかる。
その中でチュルカやアマドールがアタックを試みるもののどれも決定権を欠き、先頭は牽制の雰囲気が漂い始める。ラ・フォーチェ頂上ではカザールら3名が抜けだしたが急コーナーのワインディングでは後続を引きなはせない。ペースの上がり切らない先頭グループは、メイン集団とのタイム差を3分40秒ほどにまで縮小。カザールのマリア・ローザ獲得には微妙なタイム差となる。
その頃、メイン集団内でも動きが発生。シルヴェスタ・シュミット(ポーランド)がテンポで上るその背後から、32秒遅れの総合3位パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)が成績ジャンプアップを狙ってアタック。これにダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)が付いたが、この危険な動きはすぐに吸収された。
一方上りで遅れていたバクやロドリゲス、バケランツが追いついた先頭集団では、散発的なアタックがかかるもののいずれも成功せず、完全な牽制状態に。そして残り1.6kmで上手くタイミングをついたのはバク。それまで全ての動きに反応していたカザールは、一瞬の隙をつかれ動くことができなかった。
スーパードメスティックとして、普段スプリンターのアシスト役として集団コントロールを担うバクの独走が冴える。ラスト500mのヘアピンコーナーをクリアした先、振り返っても後続はやってこなかった。アタックした勢いをそのままキープしたバクが独走でゴールへと飛び込んだ。
そして11秒遅れの2位はカザール。ペースを上げるメイン集団が3分34秒遅れでゴールしたためマリア・ローザには結果26秒届かず、ステージとローザを逃す悔しい結末となった。
優勝したラルスイティング・バク(デンマーク、ロット・ベリソル)のコメント
「昨年はカヴェンディッシュのため、そして今年はアンドレ・グライペルというエーススプリンターのためのアシストをこなしているけど、今日は自分にチャンスが回ってきて勝利することができた。(タイムトライアルを除いて)初めてグランツールでの勝利。気分は最高だよ。」
別府史之(オリカ・グリーンエッジ)は7分12秒遅れの84位でこの日のステージを終えている。
ジロ・デ・イタリア2012第12ステージ結果
1位 ラルスイティング・バク(デンマーク、ロット・ベリソル) 3h58'55"
2位 サンディ・カザール(フランス、FDJ・ビッグマット) +11″
3位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)
4位 ヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・ニッサン)
5位 イヴァン・サンタロミータ(イタリア、BMCレーシング)
6位 ジャクソン・ロドリゲス(ベネズエラ、アンドローニジョカトリ)
7位 アメツ・チュルカ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
8位 マルティン・ケイゼル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) +43″
9位 ミカル・ゴラス(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ) +48″
10位 フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ) +03′34″
84位 別府史之(オリカ・グリーンエッジ) +07′12″
個人総合成績
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)51h19’08”
2位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) +17"
3位 サンディ・カザール(フランス、FDJ・ビッグマット) +26″
4位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ) +32"
5位 イヴァン・サンタロミータ(イタリア、BMCレーシング) +49″
6位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) +52"
7位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)
8位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)+57"
9位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ)+1'02"
10位 ダリオ・カタルド(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
ポイント賞 マリアロッサ・パッシオーネ
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)
山岳賞 マリアアッズーラ
ミカル・ゴラス(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
新人賞 マリアビアンカ
ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
チーム総合成績
リクイガス・キャノンデール
text:So.Isobe
photo:Kei.Tsuji,Riccardo Scanferla
5月17日に開催されたジロ・デ・イタリア第12ステージ。255kmを走った前日と比べ、この日はちょうど100km少ない155kmで争われた。
第14ステージから始まるジロらしく厳しい山岳コース突入を明後日に控えたこの日のコースは、紺碧のティレニア海に面したセラヴェッツァから海岸線を北上し、内陸にある山岳を経由しながらセストリ・レヴァンテへと至る。
途中には2級山岳が1つ、3級山岳が2つ、4級山岳が1つ用意されているため、大会側が設定した難易度は星3つ。最後の3級山岳ヴィッラ・タッサーニは頂上からゴールまでの距離がわずか11kmと程近く、今ステージは序盤からの逃げ切り、もしくは終盤に抜け出したアタッカーに有利と見られていた。
この日はスタートから快晴に恵まれ、気温は20℃少々、湿度35%ほどとレースには絶好の天候に。デンマークステージでのクラッシュの影響を引きずるウィリアム・ボネ(フランス、FDJ・ビッグマット)はこの日スタートを取りやめた。
スタート後のファーストアタックはマッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)。しかし逃げにチャンスが多いこの日は、しばらくエスケープが決まらなかった。アタックと吸収を続ける集団からは、ようやく50kmを消化した付近で7名が抜け出しに成功する。しばらくして2名が追いつき、先頭集団は9名となる。逃げメンバーは以下の通り。
逃げた9名
ジャクソン・ロドリゲス(ベネズエラ、アンドローニジョカトリ)
イヴァン・サンタロミータ(イタリア、BMCレーシング)
アメツ・チュルカ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
サンディ・カザール(フランス、FDJ・ビッグマット)
ラルスイティング・バク(デンマーク、ロット・ベリソル)
アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)
ミカル・ゴラス(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
ヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・ニッサン)
マルティン・ケイゼル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
この中で総合成績が良いのは、4分1秒遅れにつけるカザール。最終的に総合争いで脅威になる選手が入っていなかったためメイン集団はこの動きを容認した。
協力してローテーションを繰り返し、差を広げていく先頭9名。カテゴリー山岳が4つ含まれるこの日のコースでは上りでゴラスが積極的な動きを見せた。
ポイントの獲得次第ではこの日のステージ終了後にマリア・アッズーラ着用の可能性があるゴラスは最初の4級山岳ラ・フォーチェと、91.7km地点のヴァリコ・グアイタローラでトップ通過。持ち点を25ポイントとし、ミゲルアンヘル・ルビアーノ(コロンビア、アンドローニ・ジョカトリ)と並んだ。
後方を走るメイン集団は、マリア・ローザのホアキン・ロドリゲス(スペイン)擁するカチューシャが集団前方に位置するものの先頭を追走する動きは見せない。徐々にタイム差は拡大していき、残り40kmで7分に。
この時点で先頭の逃げ切りが確定し、ヴァーチャルのマリア・ローザはカザールへと渡った。やがて広がり続けるタイム差にしびれを切らしたリクイガス・キャノンデール勢が集団のコントロールを開始した。
122.1km地点の3級ヴァリコ・ラ・モーラへと到達した先頭集団からは、頂上付近でゴラスがアタック。1位通過を果たし山岳賞を確定させると、後続が追ってこないのを確認したゴラスは頂上を越えてもペダルを止めず、単独で下りへと突入していく。
ステージ優勝に向けて、オーバーランしかけながらテクニカルなダウンヒルを飛ばしていくゴラスだったが、続く4級ラ・フォーチェの上り口でキャッチされる。逃げグループの中、確実に脚があるのはカザール。ステージ優勝とマリア・ローザ獲得を狙いたいカザールはペースアップを繰り返し、人数の絞込みにかかる。
その中でチュルカやアマドールがアタックを試みるもののどれも決定権を欠き、先頭は牽制の雰囲気が漂い始める。ラ・フォーチェ頂上ではカザールら3名が抜けだしたが急コーナーのワインディングでは後続を引きなはせない。ペースの上がり切らない先頭グループは、メイン集団とのタイム差を3分40秒ほどにまで縮小。カザールのマリア・ローザ獲得には微妙なタイム差となる。
その頃、メイン集団内でも動きが発生。シルヴェスタ・シュミット(ポーランド)がテンポで上るその背後から、32秒遅れの総合3位パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)が成績ジャンプアップを狙ってアタック。これにダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)が付いたが、この危険な動きはすぐに吸収された。
一方上りで遅れていたバクやロドリゲス、バケランツが追いついた先頭集団では、散発的なアタックがかかるもののいずれも成功せず、完全な牽制状態に。そして残り1.6kmで上手くタイミングをついたのはバク。それまで全ての動きに反応していたカザールは、一瞬の隙をつかれ動くことができなかった。
スーパードメスティックとして、普段スプリンターのアシスト役として集団コントロールを担うバクの独走が冴える。ラスト500mのヘアピンコーナーをクリアした先、振り返っても後続はやってこなかった。アタックした勢いをそのままキープしたバクが独走でゴールへと飛び込んだ。
そして11秒遅れの2位はカザール。ペースを上げるメイン集団が3分34秒遅れでゴールしたためマリア・ローザには結果26秒届かず、ステージとローザを逃す悔しい結末となった。
優勝したラルスイティング・バク(デンマーク、ロット・ベリソル)のコメント
「昨年はカヴェンディッシュのため、そして今年はアンドレ・グライペルというエーススプリンターのためのアシストをこなしているけど、今日は自分にチャンスが回ってきて勝利することができた。(タイムトライアルを除いて)初めてグランツールでの勝利。気分は最高だよ。」
別府史之(オリカ・グリーンエッジ)は7分12秒遅れの84位でこの日のステージを終えている。
ジロ・デ・イタリア2012第12ステージ結果
1位 ラルスイティング・バク(デンマーク、ロット・ベリソル) 3h58'55"
2位 サンディ・カザール(フランス、FDJ・ビッグマット) +11″
3位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)
4位 ヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・ニッサン)
5位 イヴァン・サンタロミータ(イタリア、BMCレーシング)
6位 ジャクソン・ロドリゲス(ベネズエラ、アンドローニジョカトリ)
7位 アメツ・チュルカ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
8位 マルティン・ケイゼル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) +43″
9位 ミカル・ゴラス(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ) +48″
10位 フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ) +03′34″
84位 別府史之(オリカ・グリーンエッジ) +07′12″
個人総合成績
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)51h19’08”
2位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) +17"
3位 サンディ・カザール(フランス、FDJ・ビッグマット) +26″
4位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ) +32"
5位 イヴァン・サンタロミータ(イタリア、BMCレーシング) +49″
6位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) +52"
7位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)
8位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)+57"
9位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ)+1'02"
10位 ダリオ・カタルド(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
ポイント賞 マリアロッサ・パッシオーネ
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)
山岳賞 マリアアッズーラ
ミカル・ゴラス(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
新人賞 マリアビアンカ
ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
チーム総合成績
リクイガス・キャノンデール
text:So.Isobe
photo:Kei.Tsuji,Riccardo Scanferla
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