2012/05/17(木) - 15:07
前日ジロ・デ・イタリアで盛大に盛り上がったアッシジが第11ステージのスタート地点。と言っても、実際のスタート地点は8kmほど離れたサンタマリア・ディ・アンジェリ。美しいアッシジの街をスタートする光景を撮影しようと思っていたのに、朝から肩すかしを食らう。
「今日はチームとしてゴスのスプリント狙いですが、最後の4級山岳でゴスが遅れた場合は、前の集団に残っても良いと言われています」。オリカ・グリーンエッジの別府史之はスタート前にそう話した。
エーススプリンターのマシュー・ゴス(オーストラリア)は、第9ステージの落車のダメージがまだ残っている。第10ステージの終盤には「傷が痛み始めた」と言う。オリカ・グリーンエッジはプランBとして、ダリル・インペイ(南アフリカ)のスプリントを用意した。
第11ステージは255kmというワンデークラシック並の今大会最長コース。スタート後すぐ、ペルージャの街を通過する頃に、激しい雨が降った。と思ったら晴れ間がのぞき、また大雨。レース開始から1時間が経過するまでの間、天候はコロコロと変わり続けた。しかも北西からの風がまともにコースに吹き付ける。
ウンブリア州からトスカーナ州へ。向かい風基調のため、レースは比較的スローペースで進んだ。選手たちは7時間近くをサドルの上で過ごすことになる。
イタリアで4番目に広いトラジメーノ湖のほとりを走り、花の都フィレンツェの南をかすめ、ワインの産地として知られるキアンティ(個人的にはキャンティと呼びたくない。ヤの音は無い)のブドウ畑を縫い、レオナルド・ダヴィンチ(名字はヴィンチ出身という意味)の生誕地ヴィンチを通り抜け、温泉地モンテカティーニ・テルメに至る。
モンテカティーニ・テルメは国際的に知られる温泉リゾート地だ。その歴史はローマ時代まで遡る。現在では200以上のホテルが立ち並び、街中にはイタリア語以外の言語が溢れている。警備にあたるスタッフも流暢な英語を使いこなす。
ゴール11km手前の4級山岳ヴィーコは登坂距離3.3km・平均勾配5.2%。この登りが始まってすぐ、マリアロッサを着るゴスが力無く遅れて行った。フミは集団の最後尾で登りをこなす。
ここで重要な選手が遅れる。登り手前の平坦路でポジションを下げ、登りで落車の影響を受けたフランク・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン)が集団から遅れる。
懸命に追走したが、シュレクは46秒のタイムロスを被った。前日も26秒遅れており、総合ではロドリゲスから2分11秒も遅れている。
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)は難なくこの4級山岳ヴィーコをこなしてみせた。実は、カヴェンディッシュはこのモンテカティーニ・テルメから10kmほど離れた場所に住んでいる。
コースの発表時から、カヴェンディッシュはこの4級山岳ヴィーコを何度も登り、イメージトレーニングを続けていたそうだ。
ゴール地点には母親も駆けつけ、「第二故郷での錦」の準備は整った。しかし再びジロ特有のテクニカルなコースがカヴの予定を狂わせた。第9ステージのそれを彷彿とさせるラスト400mの鋭角コーナー(正確には110度ぐらい)で落車が発生。カヴは落車しなかったが、そこで上手く抜け出した先頭とのギャップを詰めることは出来なかった。
オリカ・グリーンエッジは落車したインペイに代わってトーマス・ヴァイクス(リトアニア)が勝負するも、ロベルト・フェラーリ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)が一枚上手だった。第3ステージで大落車の原因と作ったフェラーリが、今度こそ誰にも文句の言われないスプリントで勝利した。
フェラーリはレース後の記者会見でも、まず第3ステージの落車について謝罪する。丁寧に、言葉を選びながら。「自分の動きで多くの選手を落車させてしまったことを今一度謝りたい。そして、あの日、レース後すぐのインタビューで言った言葉(自分が原因ではないと言った)についても謝りたい。今日はラスト数キロの時点で、カヴェンディッシュがチラッとこっちを見た。彼が何を言いたいのか分かったよ。でも今日は最高のチャンスだった。ミスするわけにはいかなかった。自分の仕事はスプリントに集中することだった」。
アンドローニ・ジョカトリは第6ステージに続く2勝目。ミゲルアンヘル・ルビアーノ(コロンビア)はマリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)を守っている。今年チームNIPPOからアンドローニ・ジョカトリに移ったルビアーノは「毎日こうして注目されるのは本当に嬉しいこと」とウキウキ顔で話す。
カヴはステージ4位。イタリア国営放送RAIのコメンテーターは「今年のスカイには、昨年のHTCほどの力は無い」と言うが、落車が発生するまでチームスカイは上手くスプリントに持ち込んでいた。
カヴにとっての救いは、ポイント賞リーダーの証であるマリアロッサが回ってきたこと。ステージ優勝ではなく、マリアロッサ授賞式でステージに上がったカヴは、手にした大きな花束を駆けつけた母親に笑顔で手渡した。
text&photo:Kei Tsuji in Montecatini Terme, Italy
「今日はチームとしてゴスのスプリント狙いですが、最後の4級山岳でゴスが遅れた場合は、前の集団に残っても良いと言われています」。オリカ・グリーンエッジの別府史之はスタート前にそう話した。
エーススプリンターのマシュー・ゴス(オーストラリア)は、第9ステージの落車のダメージがまだ残っている。第10ステージの終盤には「傷が痛み始めた」と言う。オリカ・グリーンエッジはプランBとして、ダリル・インペイ(南アフリカ)のスプリントを用意した。
第11ステージは255kmというワンデークラシック並の今大会最長コース。スタート後すぐ、ペルージャの街を通過する頃に、激しい雨が降った。と思ったら晴れ間がのぞき、また大雨。レース開始から1時間が経過するまでの間、天候はコロコロと変わり続けた。しかも北西からの風がまともにコースに吹き付ける。
ウンブリア州からトスカーナ州へ。向かい風基調のため、レースは比較的スローペースで進んだ。選手たちは7時間近くをサドルの上で過ごすことになる。
イタリアで4番目に広いトラジメーノ湖のほとりを走り、花の都フィレンツェの南をかすめ、ワインの産地として知られるキアンティ(個人的にはキャンティと呼びたくない。ヤの音は無い)のブドウ畑を縫い、レオナルド・ダヴィンチ(名字はヴィンチ出身という意味)の生誕地ヴィンチを通り抜け、温泉地モンテカティーニ・テルメに至る。
モンテカティーニ・テルメは国際的に知られる温泉リゾート地だ。その歴史はローマ時代まで遡る。現在では200以上のホテルが立ち並び、街中にはイタリア語以外の言語が溢れている。警備にあたるスタッフも流暢な英語を使いこなす。
ゴール11km手前の4級山岳ヴィーコは登坂距離3.3km・平均勾配5.2%。この登りが始まってすぐ、マリアロッサを着るゴスが力無く遅れて行った。フミは集団の最後尾で登りをこなす。
ここで重要な選手が遅れる。登り手前の平坦路でポジションを下げ、登りで落車の影響を受けたフランク・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン)が集団から遅れる。
懸命に追走したが、シュレクは46秒のタイムロスを被った。前日も26秒遅れており、総合ではロドリゲスから2分11秒も遅れている。
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)は難なくこの4級山岳ヴィーコをこなしてみせた。実は、カヴェンディッシュはこのモンテカティーニ・テルメから10kmほど離れた場所に住んでいる。
コースの発表時から、カヴェンディッシュはこの4級山岳ヴィーコを何度も登り、イメージトレーニングを続けていたそうだ。
ゴール地点には母親も駆けつけ、「第二故郷での錦」の準備は整った。しかし再びジロ特有のテクニカルなコースがカヴの予定を狂わせた。第9ステージのそれを彷彿とさせるラスト400mの鋭角コーナー(正確には110度ぐらい)で落車が発生。カヴは落車しなかったが、そこで上手く抜け出した先頭とのギャップを詰めることは出来なかった。
オリカ・グリーンエッジは落車したインペイに代わってトーマス・ヴァイクス(リトアニア)が勝負するも、ロベルト・フェラーリ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)が一枚上手だった。第3ステージで大落車の原因と作ったフェラーリが、今度こそ誰にも文句の言われないスプリントで勝利した。
フェラーリはレース後の記者会見でも、まず第3ステージの落車について謝罪する。丁寧に、言葉を選びながら。「自分の動きで多くの選手を落車させてしまったことを今一度謝りたい。そして、あの日、レース後すぐのインタビューで言った言葉(自分が原因ではないと言った)についても謝りたい。今日はラスト数キロの時点で、カヴェンディッシュがチラッとこっちを見た。彼が何を言いたいのか分かったよ。でも今日は最高のチャンスだった。ミスするわけにはいかなかった。自分の仕事はスプリントに集中することだった」。
アンドローニ・ジョカトリは第6ステージに続く2勝目。ミゲルアンヘル・ルビアーノ(コロンビア)はマリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)を守っている。今年チームNIPPOからアンドローニ・ジョカトリに移ったルビアーノは「毎日こうして注目されるのは本当に嬉しいこと」とウキウキ顔で話す。
カヴはステージ4位。イタリア国営放送RAIのコメンテーターは「今年のスカイには、昨年のHTCほどの力は無い」と言うが、落車が発生するまでチームスカイは上手くスプリントに持ち込んでいた。
カヴにとっての救いは、ポイント賞リーダーの証であるマリアロッサが回ってきたこと。ステージ優勝ではなく、マリアロッサ授賞式でステージに上がったカヴは、手にした大きな花束を駆けつけた母親に笑顔で手渡した。
text&photo:Kei Tsuji in Montecatini Terme, Italy
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イタリア(紙ジャケット仕様)
EMIミュージックジャパン
イヴニング・アット・トラジメーノ・レイク(ライブ・イン・イタリア 2010)
BSMF RECORDS