2012/05/14(月) - 14:50
ポッツォヴィーヴォの体重は53kgしかない。ポジションも日本人にとって妙に親近感の沸くものだ。地元に近く、多くの応援団が詰めかけたラーゴ・ラチェーノに向かって、狙いすましたタイミングでアタックを決めた。
ジロ第8ステージのスタート地点は、2009年大会の第18ステージと全く同じアブルッツォ州のスルモーナ・ガリバルディ広場。
アブルッツォ州といえば、地元チームであるアックア・エ・サポーネが毎年のように活躍する。同チームの公式ウェブサイトのアドレスはアブルッツォチーム・プント・コム(www.abruzzoteam.com)。
直訳で「水と石鹸」を意味する化粧品メーカーがメインスポンサーをつとめるチームには、2000年大会の覇者ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)や、2007年大会覇者ダニーロ・ディルーカ(イタリア)が所属している。しかし今年はアックア・エ・サポーネが出場していない。
毎年アックア・エ・サポーネはジロのスポンサーにも名前を連ね、キャラバングッズを盛大に振る舞っていたが、さすがに持ちチームが出場リストから外されたことを受け、大会から手を引いている。
それどころか、同社はプロチームのサポートからも手を引いてもおかしくないような状況。イタリアにとって決して良い決断だったとは思えない。
そんな明確な影響を知っていながらもアックア・エ・サポーネを外し、RCS Sportはドイツのチームネットアップを招待した。ドイツのテレビ局の放映料獲得が狙いだが、チームネットアップがドイツを盛り上げるほどの活躍を見せるのは難しいだろう。大会にとってデメリットばかりが目につく。
アペニン山脈を斜めに横切りながら、コースは南を目指す。51km地点でアブルッツォ州を抜けてカンパニア州へ。街並は「南」を感じさせるものになる。コンクリート打ちっぱなしのような建物が増える。沿道に立つ観客と選手の距離が近くなる。ただでさえ安いピッツァの値段が更に下がる。水牛の乳を原料としたモッツァレッラ・ディ・ブファラの新鮮さが更に上がる。
この日のゴール地点ラーゴ・ラチェーノは、ナポリから東に100kmほど入った内陸にある。標高1050mの高原にあり、冬はスキーリゾートとして、そして夏はゴルフやトレッキングの拠点となっている。
街の活性化と国内外へのアピールとして、閑散期にジロを誘致するのはお決まりのパターンだ(ゴールの誘致額は数千万円、具体的な数字は知ってるけど言えない。ちなみにスタート誘致は安い)。少なくともこのレポートで少しはその名前が日本に広まっている。
ジロのゴールを迎えるのは1975年と1988年に続く3回目。最後に登場した24年前の第6ステージは、アレックス・ツェッレ(スイス)が制している。ここが2012年大会の最南端。翌日の第9ステージからジロは北上を開始する。
カンパニア州の隣、ちょうどイタリア半島の足裏に位置するバジリカータ州でドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)は誕生した。つまりこの最南端ステージが、今大会の中で地元に最も近い場所。沿道にはポッツォヴィーヴォ応援団の姿が目立つ。
「昨年の冬からこの(ラーゴ・ラチェーノの)登りで何度もトレーニングした」。レース後にそう話すポッツォヴィーヴォが、狙い通り最も勾配のあるポイントでアタック。身長165cm・体重53kg(大会期間中はおそらくもっと軽い)というポッツォヴィーヴォのアタックには、誰も反応しなかった。
ポッツォヴィーヴォは、ジロ前哨戦として知られるジロ・デル・トレンティーノの急勾配モンテ・ヴェレーノを制し、総合優勝を飾っている。急勾配の登りを得意とするピュアクライマーは、メイン集団に対して27秒のリードを得てゴールし、20秒のボーナスタイムを得たが、前半の個人TTとチームTTの遅れが響き、総合13位に上がるのがやっとだった。
ポッツォヴィーヴォは第1ステージ個人TTで55秒、第4ステージチームTTで1分12秒タイムを失っている。しかも最終日には距離の長い個人TTがある。それらを考慮して、総合狙いの本命たちが積極的にポッツォヴィーヴォを追わなかった可能性は高い。
とにかくマルケ州、アブルッツォ州、カンパニア州を舞台にした中級山岳ステージ3連戦は終了した。結果的に、総合における決定的なタイム差は生まれなかった。総合争いにおいてリードしているのはホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)で、この日もボーナスタイムを獲得し、また一歩マリアローザに近づいている。
ちなみにポッツォヴィーヴォのお決まりのゴールポーズは、親指と小指を立てる変わったもの。これはセリエAのパルマFC(中田英寿が2001年から2003年まで所属)でプレーするセバスティアン・ジョヴィンコ(身長164cm・体重62kg)のポーズをあやかったものだ。
この日のグルペットは21分遅れでゴールした。逃げた日や厳しいステージでどれだけ疲れたかは翌日の朝に分かるというが、別府史之(オリカ・グリーンエッジ)はケロッとした表情でスタートし、先頭から9分53秒遅れでゴールしている。
オリカ・グリーンエッジは、ステージ上位3名のタイムの積算で争われるチーム総合成績で、トップのリクイガス・キャノンデールから1時間50分39秒遅れの最下位。個人総合成績の最高位はダリル・インペイ(南アフリカ)の102位・33分37秒遅れ。
翌日からも引き続きステージ優勝に的を絞って行く。第9ステージの天候は雨。フロジノーネのテクニカルなゴールを攻略するため、マリアロッサを着るマシュー・ゴス(オーストラリア)のポジションオ守るタフな任務が待っている。
text&photo:Kei Tsuji in Lago Laceno, Italy
ジロ第8ステージのスタート地点は、2009年大会の第18ステージと全く同じアブルッツォ州のスルモーナ・ガリバルディ広場。
アブルッツォ州といえば、地元チームであるアックア・エ・サポーネが毎年のように活躍する。同チームの公式ウェブサイトのアドレスはアブルッツォチーム・プント・コム(www.abruzzoteam.com)。
直訳で「水と石鹸」を意味する化粧品メーカーがメインスポンサーをつとめるチームには、2000年大会の覇者ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)や、2007年大会覇者ダニーロ・ディルーカ(イタリア)が所属している。しかし今年はアックア・エ・サポーネが出場していない。
毎年アックア・エ・サポーネはジロのスポンサーにも名前を連ね、キャラバングッズを盛大に振る舞っていたが、さすがに持ちチームが出場リストから外されたことを受け、大会から手を引いている。
それどころか、同社はプロチームのサポートからも手を引いてもおかしくないような状況。イタリアにとって決して良い決断だったとは思えない。
そんな明確な影響を知っていながらもアックア・エ・サポーネを外し、RCS Sportはドイツのチームネットアップを招待した。ドイツのテレビ局の放映料獲得が狙いだが、チームネットアップがドイツを盛り上げるほどの活躍を見せるのは難しいだろう。大会にとってデメリットばかりが目につく。
アペニン山脈を斜めに横切りながら、コースは南を目指す。51km地点でアブルッツォ州を抜けてカンパニア州へ。街並は「南」を感じさせるものになる。コンクリート打ちっぱなしのような建物が増える。沿道に立つ観客と選手の距離が近くなる。ただでさえ安いピッツァの値段が更に下がる。水牛の乳を原料としたモッツァレッラ・ディ・ブファラの新鮮さが更に上がる。
この日のゴール地点ラーゴ・ラチェーノは、ナポリから東に100kmほど入った内陸にある。標高1050mの高原にあり、冬はスキーリゾートとして、そして夏はゴルフやトレッキングの拠点となっている。
街の活性化と国内外へのアピールとして、閑散期にジロを誘致するのはお決まりのパターンだ(ゴールの誘致額は数千万円、具体的な数字は知ってるけど言えない。ちなみにスタート誘致は安い)。少なくともこのレポートで少しはその名前が日本に広まっている。
ジロのゴールを迎えるのは1975年と1988年に続く3回目。最後に登場した24年前の第6ステージは、アレックス・ツェッレ(スイス)が制している。ここが2012年大会の最南端。翌日の第9ステージからジロは北上を開始する。
カンパニア州の隣、ちょうどイタリア半島の足裏に位置するバジリカータ州でドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)は誕生した。つまりこの最南端ステージが、今大会の中で地元に最も近い場所。沿道にはポッツォヴィーヴォ応援団の姿が目立つ。
「昨年の冬からこの(ラーゴ・ラチェーノの)登りで何度もトレーニングした」。レース後にそう話すポッツォヴィーヴォが、狙い通り最も勾配のあるポイントでアタック。身長165cm・体重53kg(大会期間中はおそらくもっと軽い)というポッツォヴィーヴォのアタックには、誰も反応しなかった。
ポッツォヴィーヴォは、ジロ前哨戦として知られるジロ・デル・トレンティーノの急勾配モンテ・ヴェレーノを制し、総合優勝を飾っている。急勾配の登りを得意とするピュアクライマーは、メイン集団に対して27秒のリードを得てゴールし、20秒のボーナスタイムを得たが、前半の個人TTとチームTTの遅れが響き、総合13位に上がるのがやっとだった。
ポッツォヴィーヴォは第1ステージ個人TTで55秒、第4ステージチームTTで1分12秒タイムを失っている。しかも最終日には距離の長い個人TTがある。それらを考慮して、総合狙いの本命たちが積極的にポッツォヴィーヴォを追わなかった可能性は高い。
とにかくマルケ州、アブルッツォ州、カンパニア州を舞台にした中級山岳ステージ3連戦は終了した。結果的に、総合における決定的なタイム差は生まれなかった。総合争いにおいてリードしているのはホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)で、この日もボーナスタイムを獲得し、また一歩マリアローザに近づいている。
ちなみにポッツォヴィーヴォのお決まりのゴールポーズは、親指と小指を立てる変わったもの。これはセリエAのパルマFC(中田英寿が2001年から2003年まで所属)でプレーするセバスティアン・ジョヴィンコ(身長164cm・体重62kg)のポーズをあやかったものだ。
この日のグルペットは21分遅れでゴールした。逃げた日や厳しいステージでどれだけ疲れたかは翌日の朝に分かるというが、別府史之(オリカ・グリーンエッジ)はケロッとした表情でスタートし、先頭から9分53秒遅れでゴールしている。
オリカ・グリーンエッジは、ステージ上位3名のタイムの積算で争われるチーム総合成績で、トップのリクイガス・キャノンデールから1時間50分39秒遅れの最下位。個人総合成績の最高位はダリル・インペイ(南アフリカ)の102位・33分37秒遅れ。
翌日からも引き続きステージ優勝に的を絞って行く。第9ステージの天候は雨。フロジノーネのテクニカルなゴールを攻略するため、マリアロッサを着るマシュー・ゴス(オーストラリア)のポジションオ守るタフな任務が待っている。
text&photo:Kei Tsuji in Lago Laceno, Italy
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